「ネイビーシールズ」感想【ネタバレ若干】 | カキオキ

「ネイビーシールズ」感想【ネタバレ若干】

ネイビーシールズ」感想。
本物と作り物を混ぜたのはともかく、練りこみ方が下手な上に、味付けも計算されていない、更に余計な調味料を加えてしまい、案の定つまらなくなってしまった戦争映画。
100点満点で45点です。

FPSゲームのコールオブデューティーモダンウォーフェア(以下COD:MW)シリーズをモロに意識した感じの映画。

この映画、とにかく本物である事にこだわったらしく、主人公側の部隊を本物の海軍兵が演じ、登場兵器や戦術などは全て本物なんだそうです。
だが、ドキュメンタリーでも、フェイクドキュメンタリーでもなく、あくまで脚本上で動いている劇映画。
観た感じ、主人公部隊以外の登場人物は、敵テロリストも味方のスパイも一般市民も全て役者みたい。
んで、残念な事に、この変な真偽のバランスがことごとくこの映画をつまらなくしている。
ドキュメンタリーとしての面白さは、いかにもなテロリスト役者達が悪巧みを語らう役者パートの作り話感で台無しになってる。
かといって脚本ありきのフィクションとしての面白さも、リアルな演技ではあるが全く「華」が無い本物の軍人のパートで全て台無し。
これ、星新一の小説「リオン」の中で「ブロン」と言う、ブドウとメロンを掛け合わせて、ブドウのようたくさん成るメロンを作るつもりが、ブドウのように小さな実がメロンのように一つしか生らなかった話を思い出しました。
本物のようにリアルで映画のように面白い物を作るつもりが、本物のようにつまらない上に映画のように嘘くさくなってました。
本物を使いつつあくまで作り物の脚本に拘るのなら、落とし所として、フェイクドキュメンタリーにしてしまえばよかったと思うのだが。
そうすれば、役者が演じるテロリスト側からの視点を描かなくて済んだはず。
要は練りこみ方が下手。

それと、この映画は発生する事件の流れがアンバランスで、後半ほど盛り上がって行く感じが皆無です。
具体的には、映画の冒頭で子供達数十人が犠牲になる、最悪のテロが発生してしまうので、それ以降の物語のテンションまるっきり上がりません。
少なくとも、僕の中では、この後エンドロールに至るまでに、序盤の子供達が大量虐殺されるこの事件以上に最悪な状況は起きませんでしたし、これ以上の大事件を主人公たちが阻止したような印象も受けませんでした。
ヒューマンドラマである、ヒアアフターで冒頭いきなり津波が発生してしまうのとは訳が違います。
戦争映画ならば終盤に向けて緩急付けつつ、テンションを高めて行くべきでは無いでしょうか。
序盤で子供達を大虐殺されるシーンを流して、その後に仲間の女スパイが拷問を受けてるシーンを流されても僕は大した危機感を持てません。
まして、この女スパイとテロリストのやり取りはいかにも役者のやり取りその物で、全くテンションが上がりません。
早い話、先に薄い味で、徐々に濃い味にして行くような味付けが計算されていないから途中で飽きるんです。

んで、主人公達を演ずる方々は素人とは言え本物の軍人なので、戦闘時の行動や演技は非常に自然なのですが、いかんせん役者ではないので、明らかに「華」が無いんです。
テロリストや囚われた女スパイなどの役者達の隠しても隠し切れない「華」、要は「演者としてのカリスマ性」が、主人公達には無いのです。
だから、この主人公達、キャラが全然立ってないんです。
脚本や演出のほうで、もうじきガキが生まれるとか、なんとかのエキスパートだとか、華のないキャラクター達に色んな添加物を加えていますが、人数も多いのでなんかあんまり記憶に残らない。
んで、人物紹介の時に、ビデオゲームのデジタル表示を20年前のセンスで再現したかのような吹き出しが出てきて超幻滅。
いや、COD:MWシリーズの様な文字通りモダンなセンスでグラフィカルに表示してくれるならともかく、ホントにプレステが出る前後位の時代のセンスで吹き出しがポップアップしてくるんで、心の中で失笑しました。
ホントにダサいんでやめて欲しいです。
後、劇中で唐突に出てくる本人視点(FP:ファーストパーソンビュー)。
本人視点で、全編貫き通すなら面白い映画にもなったかも知れないけど、所々思い出したかのようにFPSゲームオマージュのように用いられる。
フリーマン博士(傑作FPS、ハーフライフシリーズの主人公で、同ゲームはオープニングからエンディングまで彼の一人称視点のみで全て完結する)が知ったらどう思うだろうか。
余計なゲーム的調味料を加えるのはマジやめて。
調味料の味しかしないよ。

この映画の最大の売りである「兵器、戦術はすべて本物である」って所が観たいなら、スカパーの「ディスカバリーチャンネル」の「フューチャーウェポン」とかの兵器系ドキュメンタリーとか観た方が遥かに面白いと思う。
「物語はフィクションだが」って所に惹かれるなら、古今東西、戦争映画の傑作は山ほどある。
このリアルとフィクションが混同したテイストを味わいたいならばそれこそ「ハートロッカー」でも観れば良いと思うし。

この映画の最大の見所は、予告で桟橋にいる男を殺す所でした(上の動画)。
おーこれが本物か!って思うもの。
これ観たら本編観たくなるよそりゃ。
だからこの映画は予告を観れば十分だと思います。

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