Master先生の白番です。

3線を3つ這ったら一つ飛ぶもの、と思ってました。

この手はD5の切りから右上方向へのシチョウが白良いときの手だそうです。

つまり、この手は定石外れで悪手、ということになります。

人間の棋譜から学んだのなら、この手は出て来ないハズなんですが、不思議です。

下辺にでっかい黒壁がありますから、厚みを背景にこの1子へ黒からの攻めが効果的な感じです。

そうそう、こういう感じ。

中央が真っ黒になりそうでイヤしょ、先生。

いやいやいや、それは無い。

目を疑いますね。

この右に黒がつなぐと、完全に白は裂かれ形ですよ。

裂かれ形が悪いというのも否定するんですか? 先生は。

これでしっかり治まれるから構わんということなんでしょうが、G16の1子が腐ってるでしょう。

D17の1子は取られるけど取らないと動き出す味がありますからね。

裂かれ形まで否定されたらもう、かなんなあ。

今まで信じていた打ち方の指針が、音を立てて崩れる感じですよ。

戦後、教科書が黒塗りされたことがあるそうですが、そんな感じですね。

こんなもん、誰がどう見たって黒良しでしょう。

これで白良しだとでも?

「ボクたち、ワタシたちは、これまで一体何を学んできたのでしょうか?」

小学校の卒業式風に、大声で叫びたい気持ちです。

またまたあ。

そんなに厚みに近寄っちゃダメ、ダメですよ。

攻められて痛い目に会うだけです。

さすがにこの巨大な壁を攻めるのは無理でしょう。

ほら、当然の攻めです。

これは相当厳しいことになりましたよ。

あれ? プロの手ですが、上辺への攻めを継続しない?

先生は右下のかかりに受けず、上辺に1手備えました。

E14の1子が動き出したらややこしいことになります。

軽いですねえ。

打たれてみればここしか無いって感じのコスミです。

黒の右下かかりが悔やまれます。

E14の1子を動き出される訳に行かないですからね。

でも、ここを打たされるのはツライ。

2線ですが、大きそうな曲りです。

右下隅に黒が両がかりした後、右辺白の断点を放置して、三々入りです。

先生は中央が好きな印象ですが、地も辛いですね。

三々入り、結構好きですよね。

三々は碁石が落っこちそうで打てない、って言った有名な中央大好き棋士も居るんですけど、先生は地も好きだし中央も好き。

まさにオールマイティですね。

今度は右上隅を放置して右辺の断点を守る。

本当に、一貫性が無いですね。

あっちもこっちも全部打ちたい、打っちゃおー、て感じです。

そういうことやると、普通は潰れるんです。

ほら、取られた。

あ、いや、コウは残ってるかな?(適当)

ここは後手でもガッチリ生きるんですね。

右辺から中央の黒石を狙ってるんでしょうか。

右辺、ノゾカれた瞬間、外側にツケ。

格好いい! プロみたい。

プロの実戦でこういうの見たことがあります。

いつか打ってみたいです。

右辺から中央の黒一団を攻めるのかと思いきや、地を取りました。

意外です。

あ、ひょっとしたら下辺左の黒壁も狙ってる?

きっとそうだ。

先生が下辺の地を取ってる間に、黒は中央に逃げ出しましたよ。

もう捕まらないでしょう。

金持ち喧嘩せず、ですね。

勝利宣言かな。

ほほう。先生、まだこういう手が出ますか。

少し前のAIみたいで、人間は小躍りして喜んじゃいますよ。

「AIもまだまだだ」なんてね。

さすがにこの手は意味がないです。

コウでもないのに、コウ材を一つ無意味に消費しましたよ。

まさかの時間稼ぎですか?

細かい勝負なので、最後までのヨセ手順を読んだとか?

いやいや、もうそんなに打つ所もないし。

なに?

また人間を喜ばそうと?

まあ、確かに手は抜けないから損はしてないけど、碁の美学には反しますよ。

相手の間違いを期待して打つようなことをしてはいけないですね。

終局図。

白の1目半勝ちです。

裂かれ形も悪くないと言い、黒の厚みをも小馬鹿にした、面白い碁でした。

しかし、こんなに僅差になった理由は、裂かれ形と厚みを過小評価したから、かも知れません。

最後の頃、ムダな2手も理解出来ませんね。

Master先生、実は内心、相当焦ってたのかも知れません。

終局後に「ふ〜、足りてたかあ」って

そう思うと、ちょっと愉快です。笑