★ご訪問ありがとうございます。一葉です。
こちらはだぼはぜ様 とのコラボ連載、のち一葉のみで連載作です。
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■ sWitch ◇21 ■
夢と魔法の国ディジョウェイランドは、地球上で一番ハッピーな場所、をテーマにしたテーマパークである。
アメリカにはカリフォルニアとフロリダにそれぞれパークがあるのだが、そのどちらも日本より歴史が古く、特にカリフォルニアのDWLは世界で最初に出来たこともあって、世界中のファンからは聖地と呼ばれている場所だった。
今日、キョーコはサラと一緒にその聖地に行っている。
そして蓮と社は予定通りロンドンに到着していた。
「 社さん 」
「 ああ、お疲れ、蓮。終わったのか? 」
「 ええ、先ほど終わりました 」
「 了解 」
壁に背を預けていた社が、見ていたスマホを胸ポケットに収める。それを見て蓮が疑問を口にした。
「 またスマホを見ていたんですか。今日は朝からずーっとじゃないですか。いったい何を確認しているんです? 」
「 ん?気になるか? 」
「 そうですね。気にならないと言えば嘘になります 」
「 ふっふっふ。実はキョーコちゃんからのメールを見ていたんだ 」
「 最上さんからの?それを何度も確認する必要があるんですか? 」
「 そりゃそうだ。都度、写メを送ってきてくれているからな 」
「 は?なんで俺じゃなく社さんに、都度? 」
「 おや、蓮くん。もしかしたらいま俺に軽く嫉妬した? 」
「 別に、していませんけど。それより、なぜ最上さんが社さんに? 」
「 俺がキョーコちゃんにお願いしたからだな。実は俺もDWLが大好きでね。だからファンの聖地だと言われている園内の様子がどうしても知りたいんだ!!ってキョーコちゃんにお願いして、アトラクションに乗るたびに都度メールしてもらっているというわけだ 」
「 へー・・・。社さんってDWLのファンだったんですか。初めて聞きましたけど、俺 」
「 だろうな、嘘だから 」
「 っっっ!!! 」
「 そんな顔するなって。お前にも見せてやるから 」
ほら、と渡されて見てみると、すでにキョーコからのメッセージは20を超えていた。
予定では朝イチからパークに入っているはずだから、当然と言えば当然だった。
あ。この景色は宇宙を駆け巡るSpace Mountainか。
こっちは水飛沫をあげて急降下するSplash Mountain。
これは秘境の冒険を回るIndian Jones Adbenture。
アトラクションだけじゃなく、キョーコはご丁寧にプリンセス城の写メも送ってきていた。
どの画像にも必ずキョーコが映っていて、中にはサラと二人で撮られているものもある。
おそらくキョーコ一人のものはサラが、二人で映っているのはパーク内のスタッフが撮ってくれているのだろう。
順に追って見ていくと、キョーコの表情が時間経過とともに徐々に柔らかくなっているのが分かった。
「 安心したか? 」
「 ・・っ 」
「 パーク内の様子が知りたいから写メを送って欲しいっていうのは口実で、本当はキョーコちゃんの様子が知りたかったんだよ、俺は。だから必ずキョーコちゃんも映ることって条件を入れたんだ。その方がイメージしやすいから、とか言い含めて 」
「 なるほど 」
「 こうしてみると一目瞭然だよな 」
さすが敏腕マネージャー。
「 そうですね 」
正直、ホッとした、というのが蓮の素直な感想だった。
よくよく見てみれば、キョーコだけでなくサラもちゃんとした笑顔になっている。
少なくとも、昨日コンビニで見た策略的な笑顔とは全く違う表情で、つまるところこれはこれで良かったのかな、と思った。
二人とも、心から楽しむことが出来ているのなら。
「 敦賀サァン、社サァン、ヨロシイでショウかぁ 」
「「 はい? 」」
たどたどしい日本語で話しかけられて、蓮と社が同時に返事した。
話しかけてきたのは、今回のヨーロッパ遠征で案内を務めてくれる現地スタッフの男性だった。
彼は、日本の某番組で海外特派員をしているらしい。その名目で現地の様子を紹介するコーナーを持っているとのことなのだが、けれど日本の地を踏んだことは一度もないとのことだった。
日本語は独学で、日本アニメから学んだという。
そのせいかイントネーションが外国人あるあるそのものだった。
「 このアトは外食でぇすが、予定通りで大丈夫ですカ? 」
「 大丈夫です 」
「 良かったデス。おや?そちらの女性は彼女さんですか? 」
「 え? 」
「 あなたの手の中にいる女性のことデス 」
「 ああ!いえ、まだ彼女ではないんです 」
口にして、ふと蓮の気持ちが和んだ。
確かにまだではあるのだが、先が見えない「まだ」ではないのだ。
たとえば今日、それなりの成果を上げることが出来たらその日が来るのが少しでも早まるかもしれない。
そのためにも頑張らないと、と思った。
「 ほほー、まだ、ですか。それは先が楽しミですね。今日は、有名な監督さんも大勢いらっしゃっているそうですから、ご存分にアピールして次の仕事に繋げてくだサイね 」
「 ええ。もちろんそのつもりです 」
「 Oh、応援していマーす。では移動しましょうカ。ご案内いたしまぁす 」
「 よろしくお願いします 」
この日の仕事終わり、蓮はスケジュールに一分の狂いもなく、社とともに滞在予定のホテルに到着した。
ここで一晩を過ごし、翌日はオランダ、オーストリア、ギリシャを回ってのち、夜間飛行でLAに戻る弾丸スケジュールの予定である。
「 ・・・現場の仕事だったら自分の頑張りで巻くことが出来るんだけどな 」
軽くシャワーを浴びた後、蓮は自分のスマホを見つめながらポツリとつぶやいた。
演技やモデルの仕事とは異なり、映画宣伝やPR、果ては舞台挨拶の仕事となると、さすがに蓮がどう頑張ってみたところで短縮するのは不可能だった。
蓮がベッドに腰を下ろしたタイミングでベルが鳴った。
応じるとドア向こうにいたのは社だった。
「 蓮。ちょっといいか? 」
「 ええ、どうぞ 」
「 なんだよ、携帯なんて握りしめて。もしかしたらキョーコちゃんに連絡するところだったとか? 」
「 そうですけど、違いますよ 」
「 どっちだよ 」
「 本音を言うと電話を掛けたいんですけどね。でも海外では通話料が高いからダメだとあの子に言われているんです。だからいまメールを送った次第で 」
「 なるほど。キョーコちゃんらしい 」
「 あ、言ってるそばから返信が来ました 」
「 へー、どんなのか見せてもらってもいいか? 」
キョーコからの返信は、お疲れ様ですというタイトルで、キョーコが映った写真が添付されていた。
どこかの敷地内なのだろう、芝生の緑が美しく映えている。
「 ・・・別に、いいですけど 」
「 なんだ、これ。写メだけ?しかもパーク内のものじゃない・・・とすると。はっはーん。もしかしたらお前のおねだり品か 」
「 何のことですか? 」
「 とぼけるな。察するにこれは、今キョーコちゃんがいる場所ってところだろう? 」
「 おぉー、鋭いですね、社さん 」
「 お前ね、小馬鹿にしたように拍手するのはやめろ。それより、いまずいぶんゴージャスなホテルにでもいるのかな、キョーコちゃん 」
「 え?なんでそう思うんです? 」
「 だって、見てみろよ、キョーコちゃんの後ろに映っているコレ。これって門構えだろう?とするならかなりハイクラスなホテルのような気がしないか?こんなに広い庭があるってことならば 」
「 あれ、言われて見ればそうです、ね・・・? 」
え?あれ、待てよ。
ここって、まさか?
社にスマホを返してもらって再びそれを手にした蓮は、画面をスクロールさせて最後にあったキョーコからのメッセージに目を通した。
それによると、キョーコはいま、『 サラさんがお世話になっているおうちにお邪魔しているところです 』という状況らしかった。
蓮は頭を抱えた。
やっぱり、そうなのか。なにしてくれてるんだ、母さんは・・・。
間違いないと思った。
そもそも見間違えるはずも忘れられるはずもないのだ、自分は。
自己の実力だけでいつの日か必ず
本来の姿に戻って二人がいるあの家に帰る。
その目標を掲げて、その目標に向かっていま自分は邁進している真っ最中なのだから。
⇒sWitch◇22へ続く
お待たせしてすみませんです。でも実はまだラストまで構成できていないんですけど(笑)
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