sWitch ◇14 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 こちらはだぼはぜ様 とのコラボ連載、のち一葉のみで連載作です。


 前話⇒【sWitch/12345678910111213


■ sWitch ◇14 ■





 海外旅行本LA版によると、ロサンゼルスの気候は日本と比較すると湿度が低く、たとえ35℃を超えたとしても快適に過ごせますよ、とのこと。


 生れて初めてロサンゼルスにやってきたキョーコは、空港で現地の空気に触れた瞬間にその事実を実感した。



 温暖なロサンゼルスの気候を一言でたとえるなら、日本の春の陽気に似ている、だろうか。



 周囲を見回したキョーコは、雲一つない空から降り注がれる陽光のあまりのまばゆさに目を細めた。



 こんなにも日差しを眩しく感じるのは、新緑が美しいからだろうか。

 それとも、周囲に集っている人々の衣服が黒いせい?



 え。どうして黒い服?



 瞬間、キョーコの心臓が高鳴った。同時に彼女は思わず自分の目を疑った。



 どうしてここに居る全員が黒い衣装なの。



 キョーコは息をひそめて周囲をじっくり見まわした。自然と眉がしかめられる。

 よくよく気づいて見てみれば、自分は墓地の中にいた。


 日本の墓場などではなく

 映画などで見たことがある、緑溢れたアメリカの墓所。




 なぜ?

 なぜ自分はこんなところに・・・。




 背筋が冷たくなっていくのを感じた。

 まさか、という思いが徐々に強くなってゆく。


 まさか、そんなはずがない!と、キョーコが信じられない思いで何度も周囲を見回すと、5メートルほど先に蓮がいたことに気付いた。



 蓮もまた同じように黒い衣装を身に着けていて

 幾人かの人が蓮に話しかけている。


 泣いている女性を慰めているのだろうか。

 蓮は気持ち腰をかがめて、慰藉な表情を浮かべていた。


 周囲の人々の囁き声が、段々はっきりと届き始める。



「 I never imagined this day would come. 」



 マサカ、コンナ日ガ来ルナンテ、想像シテイナカッタワ・・・?



 聞こえた言葉に目を見開いたキョーコの足元が一瞬で崩れ落ちた。足場が無くなった影響でキョーコの体が激しくビクリと揺れ動いた。



「 ・・・っっっ!?? 」



 そこで目覚めたキョーコは、いま自分がベッドに居ることを理解できずにいた。



 心臓が痙攣しているかのように呼吸が険しく乱れている。

 鮮明なビジョンのまま、浮かんでは消えてゆく先ほどの光景が、繰り返しキョーコの脳裏を横切った。




「 ・・・っ・・・は、バカじゃないの、キョーコ。なんで、なんでこんな夢を見るのよ!!! 」




 信じない。

 絶対に信じない。


 先生が亡くなるかもなんて

 そんなこと絶対にあり得ないんだから!!!



 水を飲もうと上半身を起こすとキョーコの目から涙が溢れた。

 慌ててそれを拭ったキョーコは腹の底から力を籠めた。




 泣いちゃダメ!

 ここで泣いたら、先生が死ぬかもしれないなんて、そんなあり得ない予感を受け入れたことになってしまう。

 先生は死なないの。絶対に死んだりなんかしない。

 絶対そんなことにはならない!!!



 時刻を確認すると、ベッドに入ってから2時間ほどしか経っていなかった。


 ということは、昨日目覚めてからおよそ30時間以上の中で、わずかに眠れたのが2時間という事に。

 しかも最悪の夢見でまるで寝た気がしない。



 これでは身が持たなくなる。だからさすがに寝なきゃと思うのに、こんな夢を見た後ではとても眠れそうにはなかった。



 ・・・・もう敦賀さん、社さんは眠ってしまっただろうか。



 ふとそんなことを考えたが、ドアをノックする勇気はとてもじゃないけど持てなかった。

 眠れているならせめて邪魔をしてはならない。



 そもそもこのところの蓮の忙しさは異常すぎた。マネージャーの社もそれは同じだろう。

 しかもさきほど渡された蓮のスケジュールだってびっしりだったのだ。


 それでも社の話によると、日本にいた時よりはずいぶん余裕があるらしいけれど。


 その余裕があったというスケジュールも、結局自分が迷惑をかけたことで大幅に調整し直され、本来なら各国を一日一か所ずつ順番に訪問していけば済んだところを、自分の付き添いをしなければならなくなったことでLAを拠点に何度も行き来をする羽目になっていた。


 しかも蓮は行き来だけでは済まないのだ。

 LAに戻った後でキョーコに付き添い病院に向かわなければならない。



「 明日の午前中はハリウッドで、午後はシアトルに行くのね。シアトルまでは2時間47分って書いてある・・・ 」



 空港を利用するという事は、空港での待機時間も考慮しなければならないだろう。

 乗機するのは社長さんが手配してくれたチャーター機らしいから少しは時間的な融通が利くのかもしれないが、それでも拘束時間は必ず発生するに違いない。



 それが判っているのに、我が儘なんて言えるはずもなかった。

 だけど本音を言えば居ても立っても居られないというのが自分の正直なところだった。

 しかもこんな夢を見てしまった以上、不安にならないはずがない。



「 でも、たとえ明日の昼間に外出できたとしても、結局病院には行けないのよ 」



 行けない事は分かっていた。

 それでも近くに行くことは出来ないだろうか。


 顔を見ることが出来なくても

 せめて一ミリでも近く先生のそばに・・・。



「 要は病院に行くなんて言わずに外出するって言えばいいんじゃないのかしら、社さんに。たとえば一人の食事は味気ないから、ホテルの食事はやめてコンビニでご飯を買って来て食べたいんです、とか。それとも、部屋の中でじっとしているのは辛いから、ホテルの庭を散策してもいいですか、とか・・・? 」



 でも、そんな伺いを立てようものなら、目的があって外出する気ですよ、と言っているも同じ様な気がする。社さんのようなスーパーマネージャーがそれに気づかない訳が無い。


 我ながら無駄なことを考えている様な気もしたけれど、どうしたってもう眠れそうにはなくて。


 キョーコは膝を抱えたベッドの上で懸命に不安を押し殺しながら、どういったら外出を許可してもらえるか。

 それを必死に考えた。






 ⇒sWitch◇15 へ続く


ゆっくり進行ですみません。

んで、お話とは全然関係ありませんけれども、最近、自分で作るウィンナコーヒーに沼ってます。

気軽にたんぱく質を摂れるのがいいなって。(脂肪の方が多いような気がするけれども)



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