sWitch ◇19 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 こちらはだぼはぜ様 とのコラボ連載、のち一葉のみで連載作です。

 

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■ sWitch ◇19 ■

 

 

 

 

「 最上さん、着いたよ、コンビニ 」

 

 

 そう言って蓮が車を停めた場所は、ガソリンスタンドの一端だった。

 アメリカのコンビニは日本とは異なり、そのほとんどがガソリンスタンドに併設されている。

 

 見た目は日本のそれとそっくりな外観のセブンイレブンに一歩を踏み入れたキョーコは、自身が持っていた店内イメージとのギャップに目をしばたかせた。


 

「 え?!なんですか、このおびただしい数のドリンクマシーンは?!しかもホットスナックコーナーがこんなに広いなんて信じられない! 」

 

「 あははは、そうなんだよね。俺も蓮と一緒にアメリカに来た最初はそんな風に驚いたよ。アメリカのコンビニって日本とは全然違うんだーって 」

 

「 日本では便利を追求して日用品も含めた品揃えになっているんだけど、アメリカのコンビニはいつでも腹ごしらえできる便利さを追求した店構えになっているんだ。ね、驚けたでしょ 」

 

「 はい、びっくりしちゃいました。まるでホットスナックのテーマパークみたいです 」

 

「 ぷ、確かに 」


 

 そもそもアメリカのコンビニは、食べ物だけなら何でも揃うぐらいの品ぞろえを常としているらしいとか。

 つまり、食べ物・飲み物・お菓子がメインの取扱品なのである。

 

 

 キョーコはまじまじと店内を眺め歩いた。


 

 セルフのドリンクマシーンが壁際に何台も整列している。ざっと見た感じでも10台はありそうだ。

 その機械の合間、合間には壁から真横に生えた紙コップがにょきにょきと刺さっていて、その横に小さく値段が表示されていた。


 

 飲み物はコーヒーやソーダ類など豊富な種類が揃っている。どうやら壁からカップを抜き取って、自分でチョイスしたドリンクをドリンクバーのように自分で注いでからレジに持っていって清算するスタイルらしい。

 とすると、紙コップのサイズで値段が決まっているということだろう。

 

 レジの横にはピザやホットドッグ、揚げ春巻きに似たエッグロールなどが置いてあって、さらにその横にはチキンウイングやポテトも揃っていた。

 

 ホットドッグは様々な種類の熱せられたソーセージを自分でパンに挟み、やはり自分でピクルスなどをトッピングしてからそれを清算するシステムらしく、社がそれを実践して見せてくれた。


 

 ほかにも、プラスチックケースには甘そうなドーナツが鎮座している。その半端じゃない数と種類にキョーコは思わず口を開けてしまった。


 

 そういえば、アメリカ人の警察官が警らの途中でどこかに寄って、ドーナツを持って戻ってくるというシーンを過去にドラマや映画などで何度も見たことがあった気がするが、あれはドーナツ屋で買ってきたものではなくて、コンビニで手に入れたものだったのかとこのとき初めて合点がいった気がした。

 

 冷蔵コーナーにはチンして食べるハンバーガーやブリトー、サンドウィッチ、サラダなどもあり、フルーツまで置いてあった。

 その他、ガム・キャンディ・袋に入ったスナック類も多数陳列されていて、ここが食の殿堂館だと紹介されたら素直にそれを信じてしまいそうな品揃えだった。


 

「 welll、Excuse me・・・ 」

 

「 え? 」


 

 初めて目の当たりにしたアメリカンコンビニに圧倒されている最中に、いきなり見知らぬ誰かに声をかけられてキョーコがそちらに顔を向けた。

 声の主は個性的な恰好をした年配の男性だったのだが、すると蓮が急にキョーコの肩に手を置きキョーコを自分に引き寄せた。


 

「 最上さん、こっちにおいで 」

 

「 え、でもいま・・・ 」

 

「 振り向かなくていいから。このまま社さんがいるカフェスペースに向かうんだ 」

 

「 ・・・どうして 」

 

「 いいから 」

 

「 はい・・・ 」


 

 実は、アメリカのコンビニには必ずと言っていいほどホームレスを見つけることが出来る。

 

 この傾向は人が多い街ほど顕著であり、もちろんLAも例外ではなかった。

 

 

 ホームレスたちの目的はもちろん食事をおごってもらうことで、中にはおごってもらえるまでしつこく追い掛け回す人がいたりもする。

 

 それを知っていたからこそ、社はキョーコが一人でコンビニに行くことを容易に許可できなかったのだ。


 

「 キョーコちゃん、おいで 」

 

「 社さん 」

 

「 大丈夫。いま蓮が対応してるから 」

 

「 ・・っっ 」


 

 振り向くと、先ほど自分に声をかけてきた男性に、蓮がハンバーガーやドリンクを選ばせていた。

 間違いなく蓮がごちそうするのだろう。

 

 蓮は、まるで春の小川のような笑顔を浮かべていた。そこにはいつもの優しい蓮がいた。

 


 

「 ・・・なんで、敦賀さん 」

 

「 うん? 」

 

「 なんでさっきは・・・ 」

 

「 もしかしたら、病院でのことを言ってる? 」

 

「 はい。私、今もまだ信じられないんです。あんなに冷たくジュリエナさんの提案を断る敦賀さんなんて、敦賀さんらしくない気がして・・・ 」


 

 実は、社もいまそれと同じようなことを考えていた。


 

 今日の次にキョーコがクーの見舞いで病院に行けるのは早くて4日後。

 なぜかというと、明日からの3日間、蓮が不在になるからだ。


 

 当初、蓮のヨーロッパ巡りはイギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシャに一日ずつ、計5日間の工程のはずだった。

 

 その時間を大幅に削り込み、社が3日間で戻ってくるスケジュールに変更した。

 

 

 実はヨーロッパ各国の移動時間は多くても2時間程度なため、5か国を2日間で回るのは決して難しいことではなかった。

 しかし、LAとの行き来に限ってはそうではなく。

 

 片道11時間超のフライトはどうやっても縮めることが出来ず、つまり明日からの3日間だけはキョーコを一人きりにするより他に手段が取れなかった。


 

 そういう事情であることをジュリエナは承知していた。昨日、彼女にも予定表を手渡してきたのだから。

 それでだろう、彼女が明日からの3日間、キョーコを家に招きたいと申し出てきた。

 

 それが、折り入って話したい事、の中身だった。

 

 

 

 キョーコはそれを嬉しいと思った。

 もう来ないで欲しい、ではなく、我が家に来て欲しいと言われたことが本当に嬉しかった。

 

 

 先生の目覚めを心待ちにしているのは自分だけではないのだ。

 それよりもっと強い願いをこの人は持っている。

 

 

 それはおそらく自分よりはるかに切実に。

 

 

 自分が先生を心配するより何倍も、ジュリエナはそれを凌駕した悲しみや不安を抱いているに違いないと想像できた。

 だとするなら、その気持ちに自分が寄り添えるとは到底思えなかったけれど、それでもほんの少しだけでも元気づけることが出来たら・・・とキョーコは思った。

 

 

 そうだ。その3日間で先生の人形を作ってプレゼントしたらどうかしら。

 先生の髪の毛を一本譲ってもらって、それを人形の中にいれて、ジュリエナさんがいつでもどこでも先生に話しかけることが出来るようにするの。

 

 そしたらその声が先生に届くかもしれない。

 ううん、そうならないにしても。

 

 

 ジュリエナさんの気持ちをほんのちょっとでも安らげさせることが出来るのなら、それだけでいい気がした。

 

 

 

 このとき、キョーコの気持ちは前のめりだった。

 勝手によろしくお願いします、と言いそうになっていた。

 

 蓮が断りを入れるとは予想していなかったし、

 同じく社も蓮が断るとは思ってもいなかった。

 

 なにしろキョーコを一人でホテルに残していくには不安がある。なにより一人きりにさせてしまうのはかわいそうだとも思った。

 ならばこそ、ジュリエナに預けた方がずっと安心できるし、キョーコも安心できるだろう。

 それに、それなら万が一クーに何かあったときでもすぐに駆けつけることが出来るから・・・。そう考えていたのだが。

 

 

 

「 お断りします 」

 

「 え? 」

 

「 お気持ちはわかります。Mr.を心配する者同士、ということで彼女を話し相手にして気を紛らわせたいという気持ちは察して余りあります。しかし、彼女がLAに来たのはあなたの相手をするためではありません。彼女に許されているのは彼の見舞いをすることだけですから・・・ 」

 

「 もちろん、それはわかって・・・ 」

 

「 だったらご理解ください。彼女の付き添いは俺で、と社長からきつく言われていることもありますし 」

 

 

 お気持ちに添えず申し訳ありません。

 そういって蓮は深く頭を下げ、以降ジュリエナが何を言っても蓮は彼女からの申し出を頑なに断った。

 

 

 そのせいだろう。

 ジュリエナは早々に病院を後に去ってしまった。

 肩を落として帰ってゆく彼女の様子が心配で、キョーコの胸は深く痛んだ。

 

 

 

 

「 敦賀さん、あんまりです。ジュリエナさんは先生のことが心配で心配で、すっごく心細くなっていらっしゃるに違いないのに 」

 

「 そんなことはわかってるよ。でも君がクー家族の心のケアまでする必要はないんだ。悲しみは伝播してしまうもの。それを知っているのにそんな気苦労を自ら背負いにいくことに賛成などできない。今だって君はじゅうぶん苦しんでいるのに 」

 

 

 

 心のケアだなんて、そんな大それたことを自分が出来るとはハナから思っていなかった。それでも、先生のために、ひいてはジュリエナさんのために何かできればと思った。

 

 けれど、蓮の発言が自分を慮ってくれたからこそ出てきた言葉だと知ってしまったことで、それ以上の言葉を続けることがキョーコには出来なかった。

 

 

 病院を後にして、約束通りコンビニに連れてきてもらって、さっきの件は忘れようと思った。

 けれど。

 一度心に引っかかってしまった棘は、そう簡単には抜けそうにもなかった。

 

 

「 俺が思うに蓮は、キョーコちゃんのことを一番に心配しているんだと思うよ。キョーコちゃんが心労で参ってしまわないように、って 」

 

「 ・・・そう、なんですよね、きっと 」

 

 

 確かに、さっきは自分もそうだと思った。

 でもいまは少しの違和感を覚えてる。

 

 

 自分への態度も

 社への言葉も

 ホームレスへの対応も

 それらすべては敦賀蓮らしい気がするのに

 

 ジュリエナさんに対してだけ、蓮の態度が違うような気がするのだ。気のせいかもしれないけれど。

 

 いい意味でも、悪い意味でも。

 

 

 

「 大変お待たせしました 」

 

「 あれ。なんだよ、蓮。ピザなんて持って来たんだ。珍しいチョイスだな? 」

 

「 ええ。懐かしいなって思ったら、つい 」

 

「 懐かしい?ああ、そういえばお前、前にLAに来たことがあるんだっけ? 」

 

「 ええ、だいぶ子供のころのことですけどね 」

 

「 え、そうなんですか。家族旅行で、とかですか? 」

 

「 ん、まぁそんなとこ 」

 

「 それで?なにが懐かしいんだよ 」

 

「 LAのレストランで食事をしたときのことなんですけど、父が頼んだピザの味がイマイチだったことがあったんですよ。それで、どこのピザが美味しいかって話題に発展したことがあって 」

 

 

 

『 私は断然ダウンタウンのあのレストランが良かったわ! 』

 

『 いや、意外とコリアンタウンにあったあの店も良かったぞ 』

 

『 そうね。あのお店のピザは確かにおいしかったと私も思った。でもあのお店はちょっと割高だったじゃない?お料理はお値段と味を総合的に考えなくちゃだめだと思うのよ 』

 

 

 

「 それで、さんざんどこが良かったって話した挙句、最終的に安定して美味しいのはセブンイレブンのピザだね、って結論に至ったことがありまして・・・ 」

 

「 へー。そんな話、初めて聞いた。お前の両親ってLA通だったんだ?なんか、そんな話を聞いたら俺も急に食べたくなってきたかも。買ってこようかな、俺もピザ。そういえば食べたことがなかったし 」

 

「 いいんじゃないですか。どうぞ行ってらしてください 」

 

「 よし。あ、そうだ。キョーコちゃんも食べてみる? 」

 

「 え、はい、そうですね!私も興味があります、のでぜひ食べてみたいです 」

 

「 おっけー 」

 

 

 

 笑顔で立ち上がった社にお願いしますと頭を下げたキョーコの目の端に、そのとき信じられない光景が映った。

 

 大きなトレーにこれでもかと積まれたホットスナックの箱の山。それを持った誰かが軽快な歩みでこちらに向かってきていた。

 正確には、空いている席に向かっているのだろうが。

 

 

 わあ、すごい食欲。まるで先生みたい・・・。

 

 

 

 一瞬、キョーコは本当にクーではないかと期待してしまった。しかし残念なことにトレーを持っている人物は少なくとも女性だと思われた。

 なぜ分かったかというと、その人物がマキシ丈のスカートを履いていたからだ。

 

 

 

 大食いの人って、いるところには本当にいるのね。

 

 

 

 その人物は、顏すら見えないほど高くホットスナックの箱を積んでいた。どうやらその隙間から前を見て歩いているらしい。

 その女性が奥のテーブルに向かってキョーコの横を通り過ぎる。その瞬間、キョーコは偶然その人物と目が合った。

 

 

 

「 え、えええぇっ?!うそ、サラ?! 」

 

「 まぁ、キョーコ?こんなところで会えるなんて偶然ね! 」

 

「 なっ・・・!! 」

 

 

 

 さすがに蓮は驚きを隠せなかった。

 まさかこんな方法で接触して来るとはさすがに予想していなかったのだ。

 

 

 サラを凝視して蓮は絶句してしまった。

 

 

 

 

 

 ⇒sWitch◇20 へ続く


私の中のジュリ様は、あくまでもクーが言っていた「容姿は生きた宝石と称される」というイメージなのですが、原作に登場したサラさんは特にお美しいっていう感じではなかったですよね。キョーコちゃんもモー子さんも特に何も言っていなかったですし。

 

そのことから、ジュリ姿とサラ姿は全く異なる外見になるメイク変装なのだろうな、と私は解釈し、その設定でお話を綴っていますことをご承知おきください。

ところでそれってキョーコちゃんの変身術とちょっと似ていますよね♡ふふふ

 

ちなみに、蓮キョは両想い、という設定になりました★



⇒sWitch◇19・拍手

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