ドラマった ◇5 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 お付き合いいただきありがとうございます、一葉です。

 りかちゃん様からの妙番78787リクエストの続きをお届けです。


 前のお話はこちら⇒クマくまった【前編後編】おまけふたたび

 ドラマった【



■ ドラマった ◇5 ■





「 あ、蓮様 」


 外ロケ休憩の真っ最中、目ざとく蓮を見つけたマリアちゃんの発言でそっちの方に顔を向けた。キョーコちゃんも一緒に。



「 おー、蓮、やっと戻って来たか 」


「 蓮様~!! 」


「 敦賀さん、お疲れ様です 」


「 それで、目的の物はあったのか? 」


「 お疲れ様、最上さん。ええ、なんとか。お待たせしてすみませんでした 」


「 そこはお前が謝るところじゃないだろ 」


「 それはそうですが、一応の礼儀として 」



 実は今より2時間ほど前、衣装係によると、蓮が着用する予定だった服を勘違いし、間違えたセットを持ってきてしまったという。そこで急遽その辺の店で服を調達することに。


 ところが、どんなにいいと思えるデザインでも、蓮が着られなきゃ意味がない。・・・ということで、蓮が着用できるサイズかどうかをその場ですぐ確認できるよう、蓮も一緒に探し回っていた、というわけ。



 担当俳優の労をねぎらうべく俺がイスに座るよう蓮にジェスチャーで促すと、蓮は冷静に笑顔を浮かべながらパラソル付きのテーブルに拡がっていたパンたちを一巡した。



「 ところで、この個性的なパンたちはどうしたんですか 」


「 これは魔女の手しごとのパンですわ、蓮様。いまSNSでバズっているパン屋さんがこの近くにあるんですの! 」 ※創作です


「 魔女の手しごと? 」


「 ちょっと敦賀さん。どうしてそこで私に視線を移すんですか 」


「 いや、別に 」


「 言っときますけど、そんなパン屋があることを私も今日マリアちゃんから教わって知ったんですよ 」


「 あ、そうなんだ。俺はまたてっきり君が・・・ 」


「 てっきり私が?なんでしょう 」


「 いや。そうだよな、君も忙しいだろうし。

 SNSでバズってるってことなら、最上さんが知っている訳もないのか 」


「 はいはい、私はガラケー民です(笑) 」


「 ふっ。それで?その魔女の手しごとっていうお店で、マリアちゃんと最上さんが二人で買ってきたってこと? 」


「 いや、買って来たのは俺 」


「 え。社さんが?これはまた意外な展開 」


「 だって仕方がなかったんですわ。本当は私だってお姉さまと二人で楽しくお買い物♪したかったのに、でもお店にはとにかく大勢のお客様が並んでいらっしゃって、とてもじゃありませんけど撮影の合間に買いに行けるような状況ではありませんでしたの。それで泣く泣く・・ 」


「 社さんに。なるほど 」


「 そういうこと。お前もどうだ、何か食べるか。ちなみにこの猫の顔が黒猫クリームパン。コウモリの形のはコウモリチョコパン 」


「 こっちは毒リンゴかもパイとステッキフィセル、ブルードッグカンパーニュと水仙の嘆きサンドですわ 」


「 ちなみに敦賀さん。これはドラキュラの生き血コッペです 」 ※あくまでも創作です


「 え、どうしようかな。どれもかなり個性的だね 」


「 何しろ店の名前が魔女の手しごとだからな。ちなみに店内の品揃えはかなりすごかった。キョーコちゃんとマリアちゃんが行ったら、間違いなく二人とも1一時間は帰ってこないんじゃないかっていう感じで 」


「 それ、まるで目に見えるようです 」


「 だろ 」


「 蓮様、蓮様。・・・じゃなくて、蓮パパ。この黒猫クリームパンを半分こにしませんこと? 」



 急に蓮をパパ呼びしたマリアちゃんが、そう言って手にしたパンを差し出した。すると蓮は少しも動じず、ただ甘い笑顔を浮かべてクスリと微笑んだ。

 敦賀蓮から、急にパパになった目で。



「 ・・・いいよ、マリア。半分こして食べよう 」


「 今度はどんな風に半分こ? 」


「 そうだね。さすがにこれだと顔と後頭部に分けるのは無理だから。左右で半分こかな 」


「 ふふっ。うん、それでいいわ 」



 なんだよ、顔と後頭部で半分こって。ふつうそんな風に分けるか?

 なんて、俺が脳内でツッコミを入れたとき、キョーコちゃんまでプッと笑って、それから示し合わせた様に3人が互いに顔を見合わせクスクスと笑い合った。



 ああ、つまりそういうこと。

 何かよくわからないけど、3人にしか分からない会話ネタってこと。



 そんな風にしていると

 まるで本当の家族みたいだな、お前たち。



「 敦賀くん、敦賀くん、敦賀くーん 」


「「 あ、監督さん 」」


「 監督、お待たせしてすみませんでした 」


「 いやいや、こちらこそ2時間近くも申し訳ない。それで、お昼休憩もそこそこで申し訳ないんだけど、そろそろ敦賀くんの撮影もしたいんだ。だから着替えをお願い出来る? 」


「 分かりました 」


「 おや。皆さんでパンを食べていたんですか。何だか胸ときめく形ばかりですね 」


「 この道の先にある、魔女の手しごとっていうパン屋さんのパンですの。SNSでいま人気のパン屋さんですわ 」


「 へー、そんなお店があるんですか。魔女の手しごと。へー 」


「 監督もよろしければおひとつどうですか 」


「 ありがとう、いいんですか。じゃあ、このスタンダードなコッペパンを頂こうかな。色から察するに中はイチゴソースかな? 」


「「 それはドラキュラの生き血コッペです 」」 ※しつこいようですが創作です



 マリアちゃんとキョーコちゃんからのツッコミで一瞬だけ凍ったように動きを止めた監督は、けれどどうやらすぐ春の日差しが注いだらしい。

 まるで悟りを開いたように監督は開眼していた。逆に俺たちがびっくりするぐらいに。



「 それ、いいかも・・・ 」


「「「「 え 」」」」


「 実はずっと考えていたんですよ。ドラマの放映は秋だから、何かシーズン物を取り入れたいって。でも何もアイディアが出て来なくて…。でもそうか!そうだよ、いま秋の行事と言えばハロウィンがあるじゃないか。よし、それに決定だ!すると、仮装は何にしよう 」



 空を仰ぎ、自分で考えるそぶりを見せた監督は、けれどどうやら自分で答えを出す気はなかったらしい。

 ダブル主演プラス子役である、蓮、キョーコちゃん、マリアちゃんの三人にすぐ質問をぶつけていたから。



「 どうかな。なにか希望はある? 」


「 私、魔女とか魔王とかゾンビとか、そういうありきたりなのは嫌ですわ。ねぇ、キョーコママ。キョーコママはどう思う? 」


「 えー、でもそういうのが定番じゃないかしら、マリアちゃん 」


「 だから逆に嫌なんですわ 」


「 だったら、マリアはどういうのが良いの? 」


「 純日本風・・・・よ、蓮パパ。だってここは日本だもの!日本の伝統を重んじなくちゃ 」


「「「 純日本風ってどんな? 」」」




 蓮とキョーコちゃんに合わせるように俺まで声を重ねてしまった。


 そもそもハロウィン仮装を純日本風にって、どういうんだよ。



 つまり、妖精じゃなくて妖怪とか?

 魔女じゃなくてろくろ首とか?

 だとするなら小道具はろうそくとか着物とかか?


 いや、ろうそくは外国にもあるよな。日本風にこだわるならここは敢えて行燈にすべきか。



 もしくは提灯と、衣装はやっぱり着物かな。着物・・・・。



「 あ! 」


「 ん?社さん、なんです 」


「 いや、ちょっと思いついたかも 」


「 純日本風なハロウィン仮装ですか? 」


「 うん、そう。いや、でも待てよ。これって俺が言っちゃっていいのか? 」


「 良いと思いますけど 」


「 ともかく言うだけ言ってみればいいんじゃないですか。ねぇ、監督 」


「 ええ、是非 」


「 ・・・じゃあ言いますけど、泥中の蓮の仮装っていうのはどうですか?ほら、忍者って日本にしかいないから純日本風って言えばそうだし 」




 本当にふと湧いてきた思いつきだった。

 もちろん一つの案としての提示のつもりで。


 ちなみに顔色を見る限り、キョーコちゃんはこのアイディアに明らかに難色を示していたが、監督はいたくお気に召したようだった。


 それにしましょうと言って監督が早々に踵を返した。

 俺たちから4~5歩離れた所で一度くるりと振り返った監督は、蓮に再度着替えをお願いしてから足取り軽く背を向けて行ってしまった。



「 じゃあ社さん、俺も席を外します。着替えますので 」



 ああ、行って来い。

 男性の着替えはあっちのロケバスだからな。


 蓮の姿がロケバスに吸い込まれる。そこでやっとキョーコちゃんが不満を漏らした。



「 社さん!なんであんなことを言ったんですか。監督さん、ノリノリになっちゃったじゃないですかぁ 」



 いや、そんなことを言われても。

 俺は思いついたことを口にしただけで・・・・。



「 だいいち、泥中の蓮の仮装なんて、敦賀さんは志津摩をやればいいでしょうけど、私が紅葉をやったら仮装にならないじゃないですか! 」


「 えー、そうかな?作品を超えての紅葉なんて、それはそれで面白いと思うけど・・・ 」


「 あら、そうするとどうしましょう、キョーコママ 」


「 え 」


「 だって蓮パパが志津摩、キョーコママが紅葉だとすると、私が千鳥をやる訳にはいかないじゃない?だってキョーコママとパパの取り合いになっちゃうから。ということは、私は二人の幻の子供ってことでいいのかしらね、キョーコママ 」



 おお、マリアちゃんもすっかりその気になっているじゃん。



 ちなみに翌日

 監督は呉前プロデューサーから、ちゃっかりコスプレ使用許可をもらっていた。



 さすが彗星の如くと称されたやり手の監督。的確に仕事が早いわ。






 ⇒ドラマった6


前倒しでお届けした理由は、実は予定していたシーンに届かなかったからなんですぅぅ。余裕ぶっこいて執筆を始めて良かったと思いました。

・・というわけで、次話がハロウィン当日に間に合わなかったら笑って下さい。



⇒ドラマった◇5・拍手

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