いつも有難うございます、一葉です。о(ж>▽<)y ☆
予定より一日遅れてのお届けになってしまった!!
こちらは38巻ACT.226からの派生です。
お楽しみいただけたら幸いです。ちなみにいつもの如く後編は物凄く長いです。悪しからず(笑)
■ クマくまった ◇後編 ■
運動会を見に来て欲しい。
俺がマリアちゃんにそうお願いをされたのは、『 蓮様の方からお電話して来てね♡ 』…と言付かった旨を社長から聞き、折を見て電話を入れた時だった。
「 ……運動会?俺がマリアちゃんの運動会を見に行ってもいいの? 」
「 出来れば…というより絶対に来て欲しいの!!マリア、誰も応援に来てくれないし… 」
「 マリアちゃんがお願いすれば社長が喜び勇んで行くと思うけど? 」
「 ちっがーう!!それはそれで嬉しいけど、マリアは普通の運動会を味わいたいの!!ね、蓮様、お願い!! 」
必死…とまではいかないまでも、来て欲しいという熱意は伝わってきた。
「 ……普通?の定義が俺には良く判らないけど 」
「 普通よ、蓮様!!普通の運動会。それをたった一度だけで良いの!!それでね、そのときある役をお願いしたら蓮様は演じてくれる? 」
「 え? 」
いったい俺に何をさせようって言うんだ?
この時点では答えなど見当もつかなかったけれど、少なくとも妙な事にはなるまいと思った。
ある意味、マリアちゃんも俺の子供時代と同じように大人社会にもまれている。
もちろん年相応に子供っぽい所もあるけれど、彼女もまたどこか達観した考えた方を持っていることを俺は知っていたのだ。
それに、お願いごとの根本は普通の運動会を味わいたいってことのようだから、問題は無いだろう思った。
「 ……いいよ。なに? 」
「 えっと……来てくれた時にお願いする 」
「 ん。何だかよく判らないけどお願い事があるのは判った。じゃあマリアちゃん、スケジュールを調整して必ず行くから 」
「 …っ!?蓮様、本当に?!本当に、本当よ?! 」
「 本当に本当だよ。行かせてもらうから待ってて? 」
「 うんっ!!!判った、ありがとう、蓮様。マリア待ってる!あ、お昼の心配はしなくていいわ。これからお願いするから。じゃあ日曜日に絶対来てね! 」
「 うん、行くね 」
そして迎えた運動会当日。
お昼近くになってしまったけれど、スケジュールの調整をしてくれた上に行ってらっしゃいと見送ってくれた社さんと別れ、指定された場所に赴いた俺の視界に入ったのは最上さん。
その時点で俺は、マリアちゃんが俺に言った普通の運動会を味わいたい…の意味が何となく理解できた気がした。
「 つ…敦賀さん?! 」
「 あれ?最上さん。来てたんだ。……なるほど 」
「 あー、蓮様!!!本当に来てくれたぁぁ♡♡♡ 」
二畳ほどのピクニックシートに腰を下ろしていた最上さんに甘えていたのだろうマリアちゃんが、俺に気付いてすぐ足元に近づいた。
幼い笑顔と目線を合わせるために腰を落とすと、マリアちゃんは俺の首に抱きついた。
「 マリアちゃん。お招きいただいたので来たよ 」
「 えへへ。嬉しい!!お姉様が居て、蓮様が居て…。これでやっと念願が叶うわ!! 」
「 …で、俺に何をして欲しいの? 」
「 蓮様!今日一日だけマリアのパパになって!それでね、お姉様がマリアのママなの! 」
――――――― ほら、やっぱり……。
クスリ…と笑顔が浮かんで、それと同時にどこから見ても驚いています…の顔をした最上さんの顔を見て俺は笑顔を苦笑に変えた。
マリアちゃんが言った普通の運動会っていうのは、つまり両親が揃った運動会を味わいたいって意味だったんだ。
「 マ…マリアちゃん? 待って、私がマリアちゃんのママに???それは無理でしょぉぉぉ!!私まだ17歳よ?! 」
「 あん、お姉様、お願い!!今日一日だけで良いの。ここにいる間だけマリアのママになって!私、それを一度だけでいいから味わいたいの!! 」
「 そんなの無理よぉぉ!敦賀さんがパパって言うのはともかく私じゃ年齢が合わないじゃないのぉぉぉ 」
「 なんで俺ならともかくなんだ。もしマリアちゃんが俺の子供だとしたら俺が13~4歳の時の子ってことになるだろ。どっちにしろ有り得ない設定なんだから普通に楽しめばいいじゃないか 」
「 楽しむって…簡単に言わないで下さい! 」
「 そんな難しい事じゃないと思うけどね。役者を目指しているならどんな役でもこなせなければそれを名乗る資格は無い 」
「 うっ…!!! 」
抱きついてきた小さな腕が静かに外れ、俺を見上げたマリアちゃんがニッコリと微笑む。
視線を交わした俺たちは同時に目を細めた。
「 マリアちゃんはキョーコママが良いんだ? 」
「 うん、キョーコママがいい。それでね、蓮パパが良いの! 」
「 よし、良い選択だ。良い子だね 」
「「 ねー♡ 」」 ←基本合意(笑)
そのとき校内放送が入り、マリアちゃんが招集された。
時間はお昼少し前。
きっと午前ラストの競技なのだろう。
依頼された以上はこなすのが定石。
父親の顔になって俺はマリアちゃんの背中を押し出す。
「 ほら、マリア呼ばれた。ここで見ているから頑張っておいで 」
「 ありがとう、蓮パパ!キョーコママも見ててね 」
「 マ…ママって、マリアちゃぁぁん!! 」
「 行って来ま~す♪ 」
手を振りながら走って行く姿はとても満足そうで、俺的にかなり萌えるお願い事をしてくれたマリアちゃんを見送ってから、ピクニックシートに腰を下ろしている最上さんの隣に座ろうと肩を落とした最上さんに声をかけた。
「 ……良いじゃないか、最上さん。マリアちゃんが君がいいって言ってるんだからそんな固く考えなくても 」
「 固く考えている訳じゃなくて…。だって私、母親なんて何をしたらいいのか判らないですし 」
「 ああ、そっか。そっちを気にしていたんだ。てっきり俺が夫なのが気に入らないのかと思ったよ 」
「 にょうっ!…そんな滅相も無いです!でも、敦賀さんが夫っていうのは実際に恐れ多いって言うか……っっ!! 」
「 くっ。君、顔真っ赤。だから、そんな真剣に考える必要ないだろ?おままごとの延長だと思えばいいよ。ところで俺、最上さんの隣にお邪魔してもいい? 」
「 あ、どうぞ。すみません、気付きませんで!!どうぞ、どうぞ、狭いですが… 」
「 じゃ、お邪魔します 」
見た目にも小さめのピクニックシートはやっぱり狭小で、おかげで俺はこれ幸いとばかりに肩が触れ合うほどの距離に座った。
最上さんは俺の隣で変わらず頬を赤らめたまま、意を決したように顔を動かし、下から覗き込むように俺を見た。
「 あの…敦賀さん? 」
「 うん? 」
「 社さんはご一緒じゃないんですか? 」
「 うん、ご一緒じゃない。これ完璧なプライベートだし。なんで? 」
「 だって、こんなに人が大勢いらっしゃる場所に敦賀さんお一人で…なんて大丈夫なんですか? 判っていると思いますけどいま凄い注目を浴びていらっしゃいますよ? 」
「 平気だよ、心配しなくても。格式高い学校にお子さんを通わせている親御さんなら礼儀正しい方ばかりだろうと考えて俺はここに来たんだから 」
↑さりげなく周囲を牽制
「 でも、もし写真とか隠し撮りされたりしたら… 」
「 それもね。断りなくシャッターを切られたら肖像権の侵害に当たるからたとえ一般人相手でも事務所が黙っていないだろうけど、そんな常識を欠いている人はここには一人もいないよ。だから大丈夫 」
↑と二重の牽制
「 ……そうですか 」
「 そう。ちなみに社さんがここに居ないのはあの人が驚異のマシンクラッシャーだからだよ 」
「 は? 」
「 運動会ならお子さんの活躍を撮るために持ち込まれた撮影機器があちこちにあるだろ。加えて携帯で写真撮影する人も沢山いると思うんだよ。
そのときもし写真を撮って下さいって社さんにお願いする人がいたら、手袋を装着しないと出来ないだろ 」
「 そうですね 」
「 でもそれ、人によってはまるで汚いものを触りたくないかの如く手袋を装着…って見る人もいるかもしれない。
要らぬ誤解だからとそのたびに理由を説明するのも大変だし、そもそも信じてもらえるかも判らない。つまり人が多く集まる行事は社さんにとって鬼門なんだ。…で、一応誘ったけど予想通り行きたくないって言われて俺一人ってこと 」
「 ぶっ!!確かに。ふっ…ふふふ、社さん、かわいそうだけど面白い! 」
「 ね、本当だよ。最上さんお手製のお昼ご飯にあり付けない社さんは確かに可哀想だ 」
「 ……え? 」
「 その隅っこに置いてある包み、お昼じゃないの?マリアちゃんが俺にはお昼ご飯の心配いらないって言っていたんだけど、最上さんを見てすぐ理解したよ、俺は 」
「 あ…。そうなんです。マリアちゃんが可愛いお弁当が欲しいって言ったので我ながら張り切っちゃって… 」
「 そう。さすがキョーコママ。そういうので良いんだよ、最上さん。世間一般のママ像にこだわらなくても、君らしさでマリアちゃんと接すればいいんだ 」
「 ………そう……でしょうか 」
「 そうだよ。なに?俺の言葉じゃやっぱり不安? いまいち信じられない? 」
「 不安なんてそんな… 」
「 最上さん、こっち向いて? 」
「 ………っっ!!照れくさいですっ!! 」
「 何を照れる?いま俺達、夫婦だろ? 」
「 夫婦じゃないです。やんっ、肩に手を回そうとしないで下さい! 」
「 夫婦だろ?一人娘の運動会を俺達で見に来たんじゃないか 」
「 にゃふうぅぅぅっ!!敦賀さん、そういうのはマリアちゃんが居る時だけにしてください! 」
「 ぷっ!! 」
やばいな。まさかこんな事態になるとは。
だけどダメ。
君が可愛すぎて、からかわずにはいられない。
「 ダメだよ。演技っていうのはその役をやっている間はそれに徹すべき事柄だろ。それに、そんなに恥ずかしがる必要は無いだろ?
以前、二人で指を絡めて並んで歩いた仲じゃないか 」 ←カインとセツカのことを言ってます
「 あれは、ああいう役だったからでっ 」
「 今度は夫婦の役だ。だろ?……ん? 」
「 顔っ!!顔が近いです、敦賀さん! 」
「 当たり前だよ。君が俺から顔を逸らそうとするから君の頭を捕まえて今おでこをくっつけた所なんだから 」
「 どっ…どうしてこういう事をするんですか。人っ!人目が気にならないんですか!それに、絶対これすごく誤解されますよっ 」
「 キョーコママが俺から逃げようとするからだろ? 大丈夫。みんな子供の活躍に夢中だ。黄色い声援が聞こえるのはまさしくそれだよ 」
「 違いますっ!いま皆さんこっちを見ていらっしゃいますぅぅぅ!! 」
「 しょうがないな。そんなに恥ずかしいなら君は俺だけ見ていればいいだろ? 」
「 出来ないですよ!お願いですから離れてください、敦賀さん 」
「 敦賀さんじゃない。俺は蓮。呼んで?キョーコ 」
「 ……っっっ!!呼べるかぁぁぁっ!!! 」
耳まで真っ赤にした最上さんが逆上したように諸手を上げた。
本当に、いまお湯から上がったみたいに全身ゆでだこのよう。
「 …っ……くっ…あ、やばい。あははははは…。お腹痛くなりそうだ 」
「 もう!からかうのもほどほどにして下さいよぉぉ!! 」
いやそれ誤解。
半分以上、俺本気だったんだ。
残念。
君から蓮って呼ばれてみたかったのに。
そしてこのタイミングでマリアちゃんが戻った。
少し離れた所で彼女は堂々の仁王立ち。怒っているのかと思いきや、マリアちゃんもまたこれを楽しむつもりのようだった。
「 もおぉぉ、仲がいいのは結構だけど、マリアの活躍、本当に見てた? 」
「 あはははは。お帰りマリア。見てた。もちろん見てたよ。よく頑張ったね 」
「 ウソよ、蓮パパ。ずっとキョーコママしか見ていなかったでしょう? 」
「 それこそ嘘だよ。マリアのことも本当にちょっとは見てたよ 」
「 ちょっとなの? 今日は私の運動会なんだけどっ 」
「 あああ、マリアちゃん、ごめんね。敦賀さんがからかうからつい… 」
「 敦賀さんじゃないでしょ。蓮パパよ、キョーコママ 」
「 うっ… 」
「 ね?すぐ素が出ちゃうからママにお仕置きしてたんだよ、マリア 」
「 そうだったのね。それは蓮パパが正しいわ 」
「「 ねー♡ 」」 ←合意(笑)
「 ところでキョーコママ。マリア、お弁当が食べたい!やっとお昼になったんだもの 」
「 あ、はい!マリアちゃんが食べたいって言ったものをたくさん持ってきたのよ。はい、どうぞ! 」
あっという間に広げられたお弁当は色とりどり。
特におにぎりは秀逸で、俺の目から見てもじゅうぶん力作だと判った。
マリアちゃんはもちろん喜んでいたけど、いままで遠慮がちに様子を伺っていた周囲の反応がまた凄かった。
「 わー、すごい!マリアちゃんちのお弁当、可愛い!ねぇ、ママ、見てぇ 」
「 あら、ほんと。すっごく可愛いわ 」
「 キョーコママが作ってくれたの 」
「 本当にすっごくいい。今日だけマリアちゃんママ。
写真。お弁当の写真、撮ってもいい? 」
「 平気!大丈夫よね、キョーコママ? 」
「 平気だけど、マリアちゃん、そんな周囲の人にまで… 」
既に最上さんが作ったお弁当は周囲の人に引っ張りだこ。
褒められて嬉しかっただろうに、どこか戸惑いを捨て切れないのか最上さんは困り顔。
そんな彼女の耳元に口を寄せた。
「 最上さん、大丈夫。みんな判ってくれてる。今日だけマリアちゃんママって呼ばれただろ。マリアちゃんのママは有名人だったんだ。皆さん理解してくれている。
いいからマリアちゃんの好きなようにさせてあげて 」
「 あ…… 」
そう。マリアちゃんの母親はとても有名なピアニストだった。
そして事故の報道があったとき、有名ピアニストの父親が大手芸能プロダクションの社長であることも報じられていたのだ。
俺がここに居る理由を推察できる人は多くいる。
そして、先ほどの俺と最上さんのやり取りから、これがマリアちゃんのお願いから来ているのだろうことも周囲に知れ渡っている。
誰もそれを非難したり指摘したりはしないだろう。
「 どれも美味しそうね~。おにぎりが特に可愛いわ 」
「 でもこのサンドイッチも具沢山で美味しそうよ 」
「 あ、それ。豪快に色々詰めてみたんです。ひとつで全部の栄養が摂れるのを目指して 」
「 よね!あたしもそれ目指して作ったけど、マリアちゃんママのは色バランスがとってもいいわ。マリアちゃんママ、すごい 」
「 そ…そうですか?ありがとうございます 」
「 マリアちゃん 」
「 え? 」
「 お願いして良かったね! 」
「 え……えへへ。……うん…… 」
同級生らしい子にそう言われて、涙ぐんだマリアちゃんが最上さんに抱きついた。
たぶん、相当嬉しかったに違いない。
傍で見ている俺まで今そういう気分なのだから。
「 マリア。俺の膝の上においで。一緒にお弁当を食べよう 」
「 うん!! 」
「 敦賀さん、あまあまパパ… 」
「「 違う、蓮パパ!!……ねー♡ 」」 ←最高に気が合っている(笑)
この日は素晴らしいほどの快晴で、清々しく渡りゆく風が心地よく。
最上さんからどうぞと手渡されたクマ顔のおにぎりを受け取って俺は極上の笑みを浮かべた。
「 はい、どうぞ 」
「 ありがとう、いただきます 」
「 あー、蓮パパにクマ顔のおにぎり?私もこれが良かったぁ 」
「 あ、ごめんね、マリアちゃん。じゃあ敦賀さんには別のを… 」
「 いいよ、半分こするから。マリア、それでいい? 」
「 半分こ?するっ!嬉しいっ。他のも半分こで食べましょう、蓮パパ 」
「 うん、いいね。そうしようか 」
俺の膝の上でまるで実の子のように遠慮なく甘えるマリアちゃん。
本当はコウキさんにこうしたかったに違いないのに。
それをおくびにも出さないこの子が本当にいじらしいと思う。
そして――――――― …
「 マリアちゃん 」
「 え? 」
最上さんには聞こえない様、小さな声でお礼を伝えた。
「 ありがとう。まさかこんな経験が出来るなんて。おかげで俺いますごく楽しい 」
マリアちゃんはとても柔らかく頬を染め、ひどく愛らしく微笑んだ。
「 ……マリアも、いますごく楽しい!! キョーコママも楽しい?! 」
「 う…うん。恥ずかしいけど、でも楽しい 」
「 良かった 」
君が居て、俺が居て
そして愛しい子供がいる。
いつかきっとこの想いを君に告げて
君と共にこんな時を過ごしたい。
「 あ、飲み物もあるわよ、マリアちゃん。…と、蓮…パパ… 」
「 ふっ。声小さいけどまあ、聞こえた。貰うよ。ありがとう、キョーコママ 」
「 マリアも飲むぅ♡ 」
いつかその日が来たときは
たくさんのクマのおにぎりを君に作ってもらおうと思う。
E N D
OKもらえる前提なのが面白いな、蓮くん。
さてタイトルにしたクマくまった。う…かわいい♡(〃∇〃)
くまる⇒分る(くばる)の古形で、分配するという意味です。
いつかその日が来たとき、こんな事もあったな…と蓮くんがクマをくまりながら思い返すんですよ。
実はおまけを思いついていたのですが時間がないので割愛です。
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※このお話のおまけが出来ました⇒「クマくまった・おまけ」
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