本日お届け致しますこのお話で闇色のイバラは終話となります。
お楽しみいただけたら幸いです。
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■ 闇色のイバラ ◇32・雪降る朝の誕生日 ■
冬に生まれた私の18回目の誕生日は朝から雪が舞い降りた。
「 キョーコ。誕生日に欲しいものはある? 」
数日前、魔法使いさまからそう尋ねられて思わず胸がぎゅっと縮んだ。
――――――― キョーコ。もうすぐ誕生日だね。
何か欲しいものはある?
魔法使いさまと過ごした10年。
彼は毎年私にそう聞いてくれた。
自分の誕生日なんて教えてもくれないくせに。
私の誕生日が近づくと彼は必ずそう聞いてくれたのだ。
『 私、一日一緒に居て欲しいです。魔法使いさまに… 』
『 ……それでいいの? 』
『 はい 』
『 ……無欲だな、キョーコは。本当にそれでいいの? 』
『 いいです。それがいい 』
毎年聞かれるその質問に、毎年そう答える私のお願いを、魔法使いさまは必ず叶えてくれていた。
だから、数日前にそう訊ねてくれた魔法使いさまに、ありますよ…と私が初めて違う答えを紡いだのを、魔法使いさまは意外に思ったのかも知れない。
少しだけ息を飲み、明らかに目を見開いてから魔法使いさまは口を開いた。
「 えっと……なに? 」
「 今はまだ言えないから当日お伝えします 」
「 当日? 用意出来ないかも知れないじゃないか。欲しいものがあるならいま言って欲しい 」
「 ダメです。実はまだ決まっていないんです 」
「 ……なんだ。そうなの? 」
「 はい 」
そう。
まだ決まってないの。
あなたに、どう言おうかを……。
「 別に一つに絞らなくてもいいよ? 欲しいものがあるなら何でも言えばいいのに 」
「 そんなのはダメですよ。欲張ったらダメなの 」
「 本当にいい子だな、キョーコは。判ったよ。じゃ、決まったら言って?当日じゃなくてもいいから 」
「 はい、そうします 」
生き方を決めるのは決して難しい事じゃないと思う。
ただ自分が願うままに
自分の心が欲するままに
素直でまっすぐ正直に生きればいいだけなのだから。
「 ……さむっ 」
冬に生まれた私の18回目の誕生日は
世界を埋めるような真っ白な雪が朝からシンシンと舞い降りた。
目覚めてから温かいスープを作り、そして魔法使いさまが大好きなチシャのサラダを作る。
蓮の食事を作るだけで自分がこんなにも幸せになれるのだと実感する。
そして改めて私はなんて強欲な女なのだろうと思った。
無欲なんてとんでもない。
少なくとも私は、ここから先のあの人の全てを自分のものにしたいと願っているのだ。
朝食が整った頃合いで魔法使いさまが顔を出した。
いつもなら挨拶を交わす所なのによほど気にしていたのだろうか。
魔法使いさまは私の顔を見るなりこうせがんだ。
「 約束だよ、キョーコ。欲しいものを教えて? 」
自分が幸せになれる方法はもう知っている。
そして自分はなんて欲張りなのだろうか、と再び思う。
もっと、もっと
私は幸せになりたいと願っているのだ。
この人の全てが私は欲しい。
「 本当に絶対、叶えてくれますか? 」
「 ……うん。叶えてあげる 」
この人が長く生きているのは自身に術をかけたからだろう…と気付いていた。
その術の名前など私は知る由も無いけれど……。
「 魔法使いさま。私に魔法をかけて下さい。ずっとあなたのそばに居られるように。
同じ時を一緒に刻んでゆけるように 」
「 …っ?! 」
私は、これから先もずっとあなたと共にありたい。それが私が選んだ道。
だから今日
私は自分の意思で、あなたのいる魔道に下る。
E N D
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