ドラマった ◇1 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 いつもありがとうございます、一葉です。

 こちらは総拍手78787に該当した、りかちゃん様からのリクエスト成就作です。


 実はこちら、弊宅で2年前にお届けしたSS「クマくまった・ふたたび」の続きです。シリーズの最初は4年前というやつ・・・。

 そのため、設定は原作沿い両片想い蓮キョとなります。


 前話を読まなくても十分通じると思いますが、続きという意識で書きますので前ネタが盛り込まれることがあります。あらかじめご了承ください。


 前のお話はこちら⇒クマくまった【前編後編】おまけふたたび



■ ドラマった ◇1 ■





 この日、私は運命のいたずらってあるものだなと思った。


 おじい様のお仕事部屋である、LME社長室の一角で。



「 このたびは敦賀くんの出演にご許可を頂き本当にありがとうございます 」


「 いや、なぁに。こちらこそ、蓮を使いたいと言ってもらえて何よりだ。しかも君は彗星の如く登場したと称されるほど才能あふれる監督だという。どうにもニヤニヤが止まらんよ 」


「 ありがとうございます。そんな風に言っていただけると嬉しいです。でも、僕自身に注目が集まったのは運が良かっただけだと僕は思っているんです。だって才能あふれる監督なんてそこかしこにいますからね 」


「 確かに。この業界はそういう才能の宝庫だからな。それで、俺に相談とは? 」



 おじい様のこの言葉に監督さんは何度も縦に頷いて、それから少しだけ眉尻を下げ、困った顔を浮かべた。



「 それだけに僕はちょっとの妥協もしたくないと思っているんですよね 」



 ソファに浅く腰かけ、軽く開いた膝の間で監督さんが両手を組む。

 肩を落とした様子から、もしかしたらだいぶ深刻な相談なのかなと思った。



 ちなみにこれはルト情報だけれど。

 今日この人がおじい様の所に来たのは、新しく始まる連ドラについての相談らしい。


 それだけに何をそんなに困ることがあるのかしらと私は思った。



 だって、主役を蓮様にするんでしょ?だったら平気よ、大当たりよ。

 もちろん、脚本がダメならダメダメって事もあるでしょうけど、今まで蓮様、社さんが良しと判断したドラマでそうなったことがある?

 いいえ、無いわ。だから平気よ。


 よっぽど腕が悪くなければ。



「 ・・・という訳なんです。LMEには俳優養成所があると伺ったのですが、今回のドラマに出演できそうな子はいないでしょうか 」


「 いや、そう言われてもなー。確かに該当する年齢も所属してはいるが、君が気に入るかどうかが判らんからな。いっそ、その子らの顔写真だけでも見てみるか? 」


「 はい、是非お願いしたいです! 」


「 うむ。ルト、ちょっといいか 」


「 はい、用意してございます。こちらがご希望年齢層でLME養成所に所属している方々のファイルです 」



 おじい様に声を掛けられ、ルトがパーテーションの向こうに行ってしまった。

 退屈さを満喫していた私は天井を見上げて口を開けた。



 あーあ、もう。

 いっそ部屋から出ちゃおうかしら。

 着いたら連絡くれるって話でまだ電話は無いけれど

 もしかしたらもうそろそろお姉さまが来る頃かもしれないし。



 今日、私はお姉さまにはお礼を言うためにLMEに来ていた。



 この前のお礼を言いたいの。

 運動会に続いて授業参観にまで来てくれたキョーコママに。



 うん、そうしよう、と立ち上がって伸びをした。

 ついでに俳優セクションに顔を出したら蓮様の顔が見られるかも。

 ・・・というより、最近の蓮様はラブミー部室で待つ方が会える確率が高い気がする。



「 ふふ・・・ 」



 蓮パパ、キョーコママの顔を思い浮かべたら、つい笑ってしまった。

 我ながら大ヒットだと思った。

 私が大好きなあの二人がパパ、ママなんて。

 だって本当にお似合いだから。



「 おじい様 」


「 なんだ、マリア 」


「 私、お姉さまの所に行って来るわ 」


「 まだ連絡来とらんだろうが 」


「 そうだけど、もうすぐ来そうな気がするから 」


「 そうか。いいが、あんまりウロチョロするなよ。それから人様に迷惑を掛けないようにな 」


「 分かってるわ 」


「 ルト、お前一緒に 」


「 はい、かしこまりました 」



 ふと顔を上げた監督さんが、突然出て来た私を一瞥して目と口を大きく開いた。声こそ出ていなかったけれど、何じゃそりゃって感じで。



 そうよね、誰だってビックリするわよ。

 だって普通は想像すらしないでしょうから。

 芸能プロダクションの社長室に、まさか小学生が紛れ込んでいるなんて。



 大丈夫よ、別にこういうことには慣れているから。


 何事もなかったようににっこりと笑った私は、失礼しましたと頭を下げた。

 差し伸べられたルトの手を握ろうと片手を持ち上げて背中を向ける。

 すると大きく口を開いたままだった監督さんが、そこからもっと大きな声をあげた。



「 宝田社長っっ!!! 」


「 ・・・っっ、なんだ、急に元気になりおって。気になる子でも発見できたか 」


「 彼女が良いです、社長!! 」


「 あ? 」


「 あの子は誰なんですか!? 」


「 あ?ああ、あれは俺の孫娘だ。今日、たまたまここに来ていてな 」


「宝田社長の孫娘なんですか?すごい可愛い、美少女じゃないですか。敦賀くんの娘役にピッタリですよ。彼の娘ならちょっとかわいいぐらいじゃ務まりませんからね。僕、いまインスピレーションがビビっと来ました。僕は彼女を希望します! 敦賀くんの娘役は宝田社長の孫娘さんにお願いしたい! 」



 え、なんですって、蓮様の娘役?!

 聞き捨てならないフレーズに私の足が止まってしまった。


 だってそれ、私以外にあり得ない。


 それで、蓮様がパパ、お姉さまがキョーコママよ!!




「 ああ、マリアを?いや、しかしマリアは演技など全く出来んし・・・ 」


「 あら。私、出ても良いわよ、おじい様 」


「 マリア・・・。これは仕事の話なんだ 」


「 いいのかい? 」


「 ええ、もちろん。でもその前に、そのお話、もうちょっと詳しく話してくださる?蓮様がパパならママ役は誰なんですか? 」


「 ああ、あのね、まだ正式には決定していないんだけど、現時点で候補に挙がっているのは、演技にも定評があるアイドルグループの子と、最近CMで人気が出て来た子と、雑誌モデルから女優に転身しようとしている子の3人なんだ。マリアちゃんならどの子がママだったら嬉しいかな?3人とも君ぐらいの歳の子にすごく人気があるから選ぶの大変かもだけど 」



 なーんだ。

 そんなんじゃ全然やる気が起きないわ。



「 誰も嫌だわ。私、キョーコママじゃないならやらなーい 」


「 キョーコママ?って、誰? 」


「 こら、マリア 」


「 あなた監督のくせにLMEの京子を知らないの?そんなんじゃ全然だめね 」


「 あ、なんだ、京子さんのことか。いや、もちろん知ってるよ。いじめ役で当たった子だよね。そうすると今回のママ役は全く雰囲気が違っちゃうから・・・・・・なるほど、いじめ役か。いや、むしろそれ、意外性があって、いいかもしれない。彼女、演技力ありそうだし 」


「 ありそう、じゃないわ。有る、の! 」



 この日、私は運命のいたずらってあるものだなと思った。


 学校行事で両親を呼べるのは運動会と授業参観ぐらい。だから、今度大好きな二人に甘えられるのは来年のはずだった。


 でも、そうじゃなくてもいいのね。



「 蓮様がパパ、京子がママなら私、娘役をやってもいいわ。あ、でも、二人が離婚するって話とかだったらお断り 」


「 そこは大丈夫。このお話は若い夫婦がいちゃいちゃしつつ成長していく物語だから。宝田社長!!彼女も了解してくれましたし、是非ご許可をお願いします!孫娘さんの出演と、京子さんの出演も! 」


「 おじい様、良いわよね?! 」


「 むぅ・・・ 」



 言葉だけを見たら渋っている風に聞こえるかもだけど、この時おじい様は面白そうに口ひげを揺らした。






 ドラマった・2に続く


こちら、本当は一話ずつタイトルを換えてオムニバス形式で書いていきたかったのですが、そうすると目次がエライ事になりそうなのでタイトル統一でお届けすることにしました。

オムニバス、ですのでリクエスト作なのに気まぐれ連載となります。どうぞよろしくお願いします。



⇒ドラマった◇1・拍手

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