いつも有難うございます、一葉です。
久しぶりに本日はSSをお届けいたします。
実は38巻ACT.226からの派生です。
読み返せばどこからの派生なのか気付ける方も多少はいらっしゃるかも?注意点はお話の季節は春だということです。
ちなみに少し前にお届けした「パンダった」と似ているタイトルに思えるでしょうが内容は全く関係ありません。
お楽しみいただけたら幸いです。
■ クマくまった ◇前編 ■
午前4時―――――――…。
だるまやの一室でけたたましく鳴り響いた目覚ましベルの音を消して、のっそりと起き上がった私は手早く身支度を整えると台所へ向かった。
もちろんおかみさんには了解をもらっている。
今日、私はこれから物凄く張り切ってお弁当を作るのだ。
実は先日、マリアちゃんからこんな電話がかかってきた。
「 お姉様?!マリア、お姉様にぜひお願いしたいことがあるの! 」
「 お願いしたいこと? 」
一体何事かしらと考えた私にマリアちゃんは本当に意外なお願いを口にした。
「 そう!春の運動会でお弁当を作って応援に来て欲しい!! 」
「 う……運動会?? 」
「 そうよ、お姉様、お願い!! 」
その瞬間はさすがの私も思考が止まった。
運動会…というと秋というイメージが強いかも知れないけれど、現在は春に運動会をする学校も割とある。
特に小学校は6年制と長い上、児童の数も少ないからクラス数も少なく、クラス替えをしても学年が上がるにつれて初めて会う顔自体が極端に少なくなる。
つまり、仲が良くなって来ただろう頃合いの秋に、より親睦を深める目的で運動会を催す必要性を感じない一部の学校では春に運動会をするのだ。
運動会?…ともう一度呟いた私にマリアちゃんは受話器の向こう側からとても寂しそうな声を漏らした。
「 そうよ。だってマリア…誰も応援に来てくれないから…… 」
シュン…としてしまったのだろう声音を聞いて、数年前の自分の小学生時代を思い出し私は胸が締め付けられた。
運動会の醍醐味は家族の応援とお弁当だと思う。
当時、お弁当はショータローの両親が物凄い豪華なのを用意してくれたけれど、それでも私は寂しかった。
そうね。おんなじだ。
マリアちゃんもそうなのだ。
お父さんは海外で仕事をしているし、マリアちゃんのお母さんはもう…。
「 あれ?でも社長さんが応援に来るんじゃない? 」
「 おじい様のは断ったわ!!ねぇ、お姉様、お願い。今度の日曜日なの。マリア、お姉様に来て欲しいの! 」
「 ……うん。特に用事も入っていないし、大丈夫。行けるわ 」
「 本当に?! 」
「 うん、本当。だからマリアちゃんが食べたい物を教えて? 」
「 あっ!!!あのね、マリアねっ 」
から揚げ、卵焼き、ウインナー。
爆弾サンドとお手軽サラダ。デザートを添えて…。
それから定番のおにぎりを作りながら私はクスクスと笑った。
「 パンダ、ウサギ、イヌ、ネコ…ペンギンもいけるかしら。クマと、ニコちゃん!色々な顔のおにぎりが欲しいなんてマリアちゃん、可愛いわよね 」
どんなお弁当にしようかと考え、運動会のお弁当…で検索をかけた私はヒットしたそれらを見て本当に驚いた。
今や運動会のお弁当は、お弁当の博覧会でもしているのかと勘違いしそうなほどキレイで可愛いものが多いのだ。
マリアちゃんが私にお弁当を作って欲しいとお願いした理由はそれだったのだろう。
それに、そういう可愛いのがいいのって言ったマリアちゃんが、なんだか大人っぽく思えた。
子供の自分を否定するより、子供である自分を受け入れた子の方が大人っぽく見えるなんて正直、不思議。でも、世の中にはそういうこともあるのだなと知った気分だった。
「 よし、完成。はっ、いま何時?!やだ、こんなじか~ん!! 」
凝ったお弁当を作るのはやっぱり手間と時間がかかる。
だけど、自分が作ったこのお弁当を見たとき、喜んでくれるマリアちゃんの顔を想像しただけで色々なアイディアが沸き出した。
―――――――…喜んで…くれるかな。
「 お姉様、4人分ぐらいお願いねって言われた時は目が点になっちゃったけど、作っちゃえばどうってことないわね 。ふふっ♡ マリアちゃん、喜んでくれるかなぁ…」
お昼時間にきっと、仲の良いお友達とお弁当交換でもするのかもしれない。
そんなことも想像して、私は取り分けやすい様に…と一つ一つをラップでくるんだ。
「 よし、これでオッケ!じゃあ着替えて早速行かなくちゃ! 」
お昼時間に間に合えばいいなんて言われたけど、どうせなら最初から応援したいと思った。
私はマリアちゃんの身内でも何でもないけれど、私をお姉様と慕ってくれるマリアちゃんのはじける笑顔が見たい。
だから朝4時起きで頑張った。
マリアちゃんが喜んでくれるならそれでいいとしか考えていなかったから
私は予想すらしていなかったのだ。
まさか、敦賀さんがマリアちゃんの運動会を見に来るなんて。
私よりだいぶ遅れて到着した敦賀さんを見たときは、まさか幻を見ているのかと思ったぐらい私の目は点になった。
「 つ…敦賀さん?! 」
「 あれ?最上さん 。来てたんだ。……なるほど」
「 あー、蓮様!!!本当に来てくれたぁぁ♡♡♡ 」
「 マリアちゃん。お招きいただいたので来たよ 」
「 えへへ。嬉しい!!お姉様が居て、蓮様が居て…。これでやっと念願が叶うわ!! 」
――――――― 念願?
私からしてみれば敦賀さんがここに来たってだけでも意外性充分だった。
なのにこのあと続いたマリアちゃんの発言で、敦賀さんの言動はおかしな方へと走り出す。
⇒ 後編に続きます
いま眼精疲労が半端なく、目が死にそうな上、パソコンも体調不良です…。
⇒クマくまった◇前編・拍手
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