恋をするなら ◇7 | 有限実践組-skipbeat-

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 前話はこちら⇒【



■ 恋をするなら ◇7 ■





 

 

 その後、キョーコがどうなったかというと、電話越しではあったが社からたっぷりと怒られた。

 電話越しとなった理由は、約束通りに蓮がその場で社にコールをしたから。


 その際、蓮が懲らしめたネズミは御園井組が引き取る事に。次に話題となったのは、キョーコの潜伏先の件。

 問題提起をしたのは蓮だった。



「 このネズミが報告したかどうかは分かりませんが、どちらにせよこの子の居場所が特定されるのは時間の問題のような気がするんですよね 」


『 そうだな。けど、じゃあどうするか・・・ 』


「 社さん。そこ、悩む必要ないと思うんですよ。良く言うでしょう。木を隠すなら森に 」


『 人を隠すなら人混みに、か? 』


「 そうです。とはいえ、東京は避けた方がいいと思うから・・・・・最上さん 」


「 はい? 」


「 君、どこか旅行したい場所とかある?なるべく人が多い所がいいんだけど 」


「 人が多い所?でも、どこに行っても外に出られないんじゃ、どこに行っても一緒な気がしますけど 」


「 な訳ないだろ。人ごみに紛れるつもりなんだからむしろ積極的に外出するよ。観光だってしたければすればいい。それを踏まえて、どこに行きたい? 」


「 本当に?だったら私、京都がいい! 」


「 京都か、いいね。・・・社さん、今の、聞こえましたか?彼女がそう言っているので、俺達は京都に遊びに行こうと思うのですが 」



 あっけらかんと言ってのけた蓮のそれを聞きながら、社は案外いいかも、と思った。



 人を隠すなら人混みに。


 それが東京以外ならアリのような気がした。しかも蓮が一緒ならたとえ離れた地であったとしても心配は不要だろう。


 何しろこの男は最初からドブネズミを捕まえるつもりで、当たり前顔でそれをいとも容易くやってのけたのだから。



 それに。

 社にはキョーコがなぜ京都を指名したのか、理由を知っていた。


 京都・奈良は関東の学校では定番の修学旅行先だ。しかし彼女は過去、抗争のあおりを受け旅行参加を諦めたという過去がある。


 加えて京都は彼女の父母が出会って恋に落ちた場所。


 だから、いつか絶対に行ってみたい。

 いつだったかそうキョーコが言っていたのを社はちゃんと覚えていた。




『 ・・・いいだろう 』


「 許可が出た 」


「 うそ、すごい!!自分で大人しくしていますって言ったばかりでなんだけど、家の中でじっとしているのって精神的にかなり凹むからすごい嬉しい! 」


「 分かるよ、俺も 」


『 念のために聞いておくが、どのぐらい行くつもりだ? 』


「 それは社さんの腕次第ってところでしょうか。反対に、どのぐらいでカタが付きますか? 」



 不破組のいざこざは今に始まった事ではなく、数えればもう18年近くなる。


 そんな中、もちかけられた御園井組組長の一人娘キョーコと、不破組組長の一人息子、松太郎との契りの件。


 先方は挨拶に伺いたい、などと殊勝な態度で申し出て来たが、キョーコを攫おうとしたところを見るとこちらの答えは聞かずとも判っているようだ。

 だからこそスムーズな話し合いの材料として、彼女の身柄を拘束しようとしたのだろうから。




 どのぐらい・・・。


 社は指折り数えた。


 祭りは来週開催のつもりだ。しかしその準備もまだ途中のまま。

 今度が最後の祭りになる予定だから、確実に問題なく実行したかった。


 それに、そもそもキョーコはまだ高校生だ。なるべく早く登校できるようにしてやりたい。普通の生徒と同じ様に。



 腹をくくる必要があるな。



 心の奥底で、社は決意を固めた。



『 そうだな、4日だ。3泊4日で行ってこい 』


「 了解です 」



 強い意図が込められた社の言葉に同意した蓮は、そこで通話を終わらせた。



「 社さん、なんて? 」


「 ん?3泊4日ならいいって 」


「 3泊4日?なんだぁ、修学旅行の日程より一日少ないぃぃぃ 」



 キョーコが不満げに唇を尖らすと、蓮がこの上もなく優しく微笑んだ。

 彼の右手が優しくキョーコの頬に触れる。



「 ・・・良かった、もう震えてないね 」


「 え? 」


「 やっぱり、すぐ社さんの声が聞けたからかな。怖い思いが消えて、安心できたなら良かった 」


「 ・・・っっ 」



 蓮の甘い笑みと、驚くほど優しい所作に、キョーコの瞳が揺れ動いた。


 もしかしたら

 もしかしたらこの人はそういう事も考えて、敢えてこの場から社さんに電話した?



「 もしかしたら敦賀さん・・・ 」


「 ごめんね 」


「 え? 」


「 いくら気絶しているとはいえ、自分を襲ってきた男がいる場所にいつまでもとどまりたくなかっただろ。頑張ってくれてありがとう。もういいから行こうか 」


「 え?でも・・・ 」


「 大丈夫。あと5分もしないうちに御園井組の若いのが引き取りにきてくれるらしいから。たぶんもうかなり近くにいると思うよ 」


「 そうなんだ 」


「 ただね、これで分かっただろ。君は女の子なんだってことが。どんな事情があろうとこんな夜中に一人で出歩くもんじゃないよ 」


「 ・・・はい、ごめんなさい 」


「 ただでさえ可愛い子は狙われやすいんだ。君は特に自分のことを自覚したほうがいい 」


「 へ? 」


「 でも俺と一緒なら夜中でも平気だよ。なぜなら俺が君を守るからね 」


「 ・・・は、はいっ・・・あの、ありがとうございますっ



 妙にくすぐったい気持ちになる。



 社だったら絶対そんな扱いしないから。



 女の子ってはっきり言われたのも嬉しかったし

 お世辞だろうけど可愛い子と言ってもらえたのも嬉しかった。


 しかも



 なんのてらいもなく

 当たり前の様に自分を守ると言ってくれた蓮のそれが、キョーコにはとにかく胸キュンだった。




 公園の出入り口に向かって

 自分より数歩先に歩いていく蓮の後姿を見つめながら

 キョーコはこの時になって初めて蓮のことをちゃんと見た気がした。


 大きな背中が自分を気遣うようにゆっくりと振り向く。



「 ところで最上さん 」


「 はうっ?! 」


「 京都までは新幹線で良いよね? 」


「 え?いいですけど、どうしてですか? 」


「 いや、バイクでも行けないことはないと思うんだけど、新幹線の方が楽だし早いから。出来ればそっちが良いなと思って 」


「 そもそもバイクで行こうなんて考えハナからありませんでしたけど。ちなみにバイクと新幹線ってだいぶ違うものなんですか? 」


「 そうだね。新幹線ならたぶん2時間ちょっとで着くと思うんだけど、バイクだと5時間ぐらいかかるんじゃないかな。しかも一人の場合でそれだからタンデムなら更にかかるだろうね 」


「 タンデム? 」


「 バイクで二人乗りをすることをタンデムって言うんだ 」


「 へー、そうなんですか、タンデム。初めて知った。そう言えばバイクの後ろって乗ったことないから、それで行けるならそれはそれで楽しそうな気がするけど 」


「 ごめん。出来れば新幹線で納得して。その代わりにバイクの後ろはいま乗せてあげるから 」


「 え?もしかしたらここまでバイクで来たんですか? 」


「 そうだよ。じゃなければとても追いつけなかったよ、君に 」



 ゆっくりを歩をすすめ、公園の入り口に停められていたバイクに近づき、蓮がバイクをポンポンと叩いた。

 これに乗って来た、という意味だろう。


 バイクの種類なんて一つも知らないけれど、大きな種類のバイクだということだけはキョーコにも分かった。



 もしかしたらこのバイクに乗って

 私のことを探してくれたのかな。ひょっとしたらかなり焦りながら・・・。


 なんか、それ、ドラマみたい!!!



 そんなシーンを想像するだけで、また胸の奥がキュンとした。



「 ・・・よく、分かりましたね。私がここに居るって 」


「 まぁね。俺は君を匿うだけじゃなく、社さんから任命された君のボディーガードだから。それぐらいの事はやってのけないと 」


「 ・・・っっ!! 」



 言いながらバイクにまたがった蓮が、なんだか急にカッコいい人に見えた。

 大きなバイクが大柄な蓮にぴったりフィットしている。


 はい、とヘルメットを手渡されて、キョーコはふと我に返った。




 あれ?

 もしかして私、いまこの後ろに乗れって言われた?

 バイクの後ろってことは、つまりそれってこの人に抱き付かなきゃいけないって事よね?



 抱き付く?!

 そんなの、社さんにだってした事ないのに?!



「 どうした?安全運転するし、スピードも出すつもりないし、大丈夫だから乗って? 」


「 ・・・は、い・・・お邪魔します 」


「 そのカーディガンの前のボタン、留めた方が良いよ 」


「 はい 」



 どうしよう。

 何だか急に恥ずかしくなってきちゃった。


 どうしてさっき、京都に行きたいなんて言っちゃったんだろう。



 だってそれ、敦賀さんと二人きりって事よね?

 つまり傍から見たら男と女の旅行って事になるわよね?

 もしかしたら周りの人たちには恋人同士に見えるかもしれないのよね?!



 キャー!!恋人同士ですって!

 なんだか萌え、萌えしちゃうじゃない。


 やだ、動悸が激しくなってきちゃった。

 この状態で敦賀さんに抱き付いたりしたら、絶対にこの心臓の音が敦賀さんに聞こえちゃう。



「 最上さん?もっとちゃんと掴まって 」


「 ・・・はい、こうですか? 」


「 そうじゃなくて、こう!! 」


「 ひゃうっ!! 」


「 そのまま、しっかり抱きついているんだよ?行くよ! 」


「 あわわわわ・・・ 」



 さっきのあの男と同じ様に、腕を掴まれて引っ張られたっていうのに、怖いどころか妙に頬が緩んでそわそわしてしまう。



 そうだ。この乗り方がタンデムっていうのね。

 これは人生初体験!

 だからこんなにドキドキしちゃっているのね、私ってば!!




 蓮のお腹にしがみつき、蓮の背中にヘルメットをこすりつけながら、キョーコはとにかく落ち着こうと、そんなことばかりを必死に、必死に考えた。






 ⇒ へ続く


旅行・・・いいな。



⇒恋をするなら◇7・拍手

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