一葉です。いつも有難うございます。
実は、最終話の後編がUPになった日の朝、番外編を入力しようとPCに向かった一葉は、一体何を考えていたのか番外編3本のデータをいきなり削除しました。メッチャ肝が冷えました……。
慌てて元に戻そうとしたのですがゴミ箱を見てもカラ。……削除したデータってゴミ箱に入るのが常だと思っていましたけど、USBのデータはゴミ箱に入らないのってご存じでした?一葉、初めて知った。
フリーのデータ復旧ソフトを使って事なきを得ましたが、まじ顔面蒼白、過去の出来事が走馬灯のように脳内を巡りました。
一つお利口になったとともに、連載が完璧に終了するまで削除作業は絶対にしない!!ことを固く心に誓いました。
そんな経緯を経てお届けいたします番外編1。お楽しみいただけたら幸いです。
前のお話はこちら↓
藤道奨物語シリーズ・番外編1
■ 欲望まみれの彼 ■
恩師片桐への報告は冴菜に一任していたのだが、恐らく冴菜はどう伝えたらいいのか…と真剣に考え過ぎていたに違いない。
冴菜との婚姻届け及び彼女の子供であるキョーコとの養子縁組手続きを済ませたあと、クー・ヒズリのリサーチに忙しくしていた藤道が、自分の妻となった冴菜から恩師片桐に何の報告もしていない旨を打ち明けられたのは、未来の息子と定めた蓮が抱える秘密に気付いた翌早朝のことだった。
時間が時間なだけにいつもの如く、ウィリデ法律事務所には二人だけ。だから冴菜も素直に藤道の問いに受け答えた。
「 え?まだ片桐先生に何の報告もしていないのかい? 」
「 ……はい 」
「 なんで。いつも迅速に対処する最上らしくもない 」
「 しようとは思いました!思いましたけど……っ……どう…伝えたらいいのかが判らなくて… 」
「 ……別に、僕と婚姻したことをそのまま口にすればいいだけだろうに 」
「 それはっっっ……そうなんですけど……… 」
「 ま、いい。どうせ君のことだ。余計な事を色々考えすぎたんだろう。
片桐先生にどうしてそういう事になったんだって聞かれたらどう答えようかとか、仕事はどうするんだ、名前はどうするんだ、これから二人は一緒に住むのかとか、思い浮かぶ限りの質問に自分はどう答えていこうかと、それこそくそ真面目に色々なことを 」
「 ……っっ… 」
冴菜の眉間に寄った皺を見て藤道は軽く頬を緩めた。
「 そうだな。こういうのは本来二人で一緒にするものだから。悪かったね、最上一人に押し付ける形になってしまって。
じゃあ今日これから二人で一緒に報告するか。片桐先生からの質問は全て僕が答えるから君は何も考えなくていいよ 」
「 ……はい 」
「 その前に確認してもいいか?最上はしばらく最上のままで行くのかな?それとも僕と同じ姓を名乗る? 」
「 …っっ!!あの子は…… 」
「 キョーコちゃん?キョーコちゃんは芸名自体が京子だし、学校は数年で卒業するだろ。だからしばらくは最上キョーコで過ごすって言っていた 」
「 じゃ、私もそうします 」
「 だろうな。……それにしても、先生きっと色々文句を言うんだろうなー 」
「 ……… 」
「 真っ先に言われるセリフはもう分かってる。どうせお前が良からぬことを企んで最上を落とし穴にはめたんだろうって所だろうな…。ま、その通りなんだけど 」
「 ……っ… 」
何も言わずに困惑顔で眉をしかめ、俯いてしまった冴菜を見下ろしながら藤道はひっそりと目を細めた。
確かに卑怯だったよな、と今更ながらに考える。
17年前、冴菜が踏んだ人生最大の地雷劇。
総ての責任を取らされた恩師片桐はアスカムから除名となった。
それを知っていながら……。
『 キョーコちゃんにまとわりつくだろう下卑た噂と、このままでは地に落ちかねないウィリデ法律事務所の名誉を救う道を君に託す 』
冴菜が否の道を選択できないことを知っていて、自分はそれを迫ったのだ。
もしこれが裁判で証明されようものなら自分は間違いなく脅迫者。
だが冴菜はそんな事すら出来ない、しない。
なぜなら自分と同じく彼女もまた、ウィリデ法律事務所の看板を背負っているから。
恩師片桐のために、自分が差し出す辛酸を彼女が黙って飲み込むだろうことなど容易に予想できていた。
「 ……最上 」
「 はい? 」
「 片桐先生の所に行く前に、少しだけ寄り道してもいいかな? 」
だけど最上
僕はね…
「 構いませんけど。甘喜廊の鯛焼きでもお土産になさるんですか? 」
「 ふっ…しないよ。片桐先生のスイーツブームなんて僕の知ったことじゃない。そうじゃなくて、結婚指輪が欲しいな、と思って。僕らの薬指に 」
「 いっ…要りません!! 」
「 要らなくても必要だろう。なにしろ僕らはめでたく夫婦となったのだから 」
「 書類上のことじゃありませんか!そんなものは結構です!! 」
「 最上。君にとっては書類上でも僕にとっては僕の人生史上でトップ3を飾るぐらい最高に嬉しい出来事なんだ。その証拠となる物が僕は是が非でも欲しい 」
「 じゃ、ご自分のだけお買い求めになれば… 」
「 僕だけ指輪をしたんじゃ意味ないだろ。君と僕が夫婦になったことを他者に知らしめることが出来ないじゃないか 」
「 する必要ありません!! 」
「 そう……そんなに強烈に否定されると是が非でも君の薬指に指輪をはめてやろうって気に僕はなるんだけど 」
「 むっ……無理矢理そんなことをしたら今度こそ本当に噛みつきますよ!! 」
「 うそっ?!それは是非とも実行せねば!!よし、有言実行!僕としては必死な抵抗を見せる君の顔が見られるだけでも十分ご馳走だけど、更に噛みついてくれるとあらば実行せずにはいられない 」
「 …っっ!!…はめられてもすぐ外します 」
「 いいよ。君が外したと同時にまた僕がハメてあげよう。それが繰り返されるたびに君があちこち僕に噛みついてくれるというのならそれこそ本望だ 」
「 ……っっ!!藤道さん、そこでうっとりしないで下さい!!! 」
「 さ、行くよ、最上。先生の目の前で無言のまま僕らの薬指を見せつけたい。どういう反応をするのか君だって見たいだろう 」
「 見たくない!見たくないです!! 」
「 そんなこと言わずに。きっと笑えると思うから 」
身を翻した藤道は片桐の所に顔を出す旨のメモをしたため、強引に冴菜の手首を掴んだ。二人で共に外に出る。
「 ……藤道さん、あなたはどうしてそういう……っ… 」
「 これが僕なんだよ!君の同僚であり、君の夫であり、君の血を引く子供キョーコちゃんの父親にもなった、これが藤道奨なんだ 」
変わらぬ欲を携えて、ハンター藤道奨の快進撃はこれからも秘かに続いてゆく。
E N D
開店と同時に飛び込んだジュエリー店で楽しそうに指輪を選ぶ藤道氏と、どうしたらいいのか分からず俯いて顔を真っ赤にした冴菜さんの姿がどうしたって浮かびます。
「 彼女、やっと僕と一緒になってくれてね。それで愛の証明が欲しくて朝一番でここに来てしまったんだ。こんな年でお互い初婚だから恥ずかしいんだけどね 」
「 まぁ、そんなこと関係ないですわ。おめでとうございます!だとしたらシックなデザインの指輪は如何ですか?大人だからこそお似合いになるだろうおススメデザインが多数ございますわ 」
「 ありがとう。やはり少しでも永く輝き続けてくれるものがいいかな。あ、これって給料の3ヶ月分にする必要があるのかな? 」
「 いいえ~、今はあまりこだわる必要ないですよ。奥様の指輪には宝石をお付けになりますか? 」
「 うーん、どうだろう。僕の奥様、どうする?君はどっちがいい? 」
「 ……(指輪なんて)要りません 」
「 宝石は要らないって。僕とそっくり同じデザインがいいってことだね。照れ屋だから上手く言葉に出来ない人なんだ。可愛いだろう? 」
とか嬉しすぎてはっちゃけながらメロメロに惚気る藤道氏が可愛いと思います。
…で、このあと片桐先生の所に行った藤道氏は光り輝く笑顔を放ちながら片桐先生から投げつけられるだろうあらゆる質問を鮮やかにけむに巻いていくのですよ。
その姿が見えるようです。ふふ…。藤道氏、最強!!!
Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止
※番外編2⇒「深める彼」 へ続きます。
◇有限実践組・主要リンク◇