一葉です。いつも有難うございます。
MでGでHな藤道さんが繰り広げる「キョーコちゃんのお父さんになろう計画」をお届けします。
ちなみに、長いです(笑)
お楽しみいただけたら幸いです。
前のお話はこちら↓
藤道奨物語シリーズ本編13話目
■ 胸を張る彼 ■
自分の胸に突き返された婚姻届けごと冴菜の手を取った藤道は、妻の手の甲に口づけた。
「 うきょあうっっっ?!!! 」
「 ・・・っっ・・・うん、なんか慣れたよ。最上のその意外過ぎる驚き方 」
「 ・・・・・・っっ!!! 」
我ながら下衆な手段だったことは否めない。
けれどその時が来たら絶対に逃がさないと藤道はそう決めていた。
このあとの彼はかつてないほど忙しく、それこそ怒涛の行動力を発揮した。
「 最上。片桐所長には君から報告してくれ。僕は行くところがあるから 」
「 なっ!! 」
ウィリデ法律事務所の所長である片桐への報告は敢えて冴菜に一任し、藤道自身はLME事務所へ一路を急いでローリィ宝田と面会を果たした。
藤道の顔を見るなり想定通りの展開でしたな、とローリィは笑顔で藤道を迎え入れた。
「 ええ、本当に。それで、無茶を承知でお願いした記者の居所は・・・ 」
「 もちろん把握している 」
実は昨日、キョーコとの写真を撮られたあと、藤道はキョーコを下宿先に送迎してすぐローリィへ一報を入れていた。
藤道としてはそれがどんなにえげつない記者であったとしても、冴菜を手に入れられる布石を敷いてくれる人物に煮え湯を飲ませる気が無かったのだ。
「 助かります。ではその記者を呼び寄せる前にキョーコちゃんと話をさせてもらっても? 」
無論です…と答えたローリィに導かれ、続いて社長室の奥へ進むと既にキョーコが待っていた。
一度は登校したのだろう、キョーコは制服を着用している。
ネットに写真が公開されていることに気付いたローリィ宝田が、秘書に命じてキョーコを保護、社長室で待たせていたのだ。
未来の娘キョーコに向けて藤道は笑顔を手向けた。
「 キョーコちゃん、おはよう 」
「 おはようございます!それで藤道さん、このあと・・・・・・ 」
「 あとじゃない。もう捕まえて来たよ 」
「 へ? 」
胸元から婚姻届けを出した藤道は満面の笑顔でそれをキョーコに差し出した。
受け取ったキョーコは書面をまじまじと眺め、信じられない…と呟く。
「 っっっ・・・信じられない!本当にあの人の字です。こんなに早く、本当に?藤道さん、一体どんな手を使ったんですか 」
「 キョーコちゃんの協力あっての結果だよ、これは。それで、まだ一晩しか経っていないけど決めてくれたかなキョーコちゃん。首を縦に振ってくれるかい? 」
「 あ・・・・・・ 」
「 まぁ、立ち話もなんだから掛けて下さい 」
ローリィに腰かけるよう勧められ、キョーコは元のソファに、藤道はキョーコのはす向かいのソファに腰を掛け、ローリィは少し離れた場所から二人の会話を見守った。
昨夜、キョーコを下宿先に送り届ける傍ら、藤道は冴菜を手に入れてからのことをキョーコに話していた。
もちろんそれはキョーコにとっても重要なことではあったが、藤道にとっては自分史上最高に重要な案件の一つだった。
さて、日本の法律では、母親が子供連れで再婚をしたとしても、母親の戸籍に存在する子どもが自動的に相手の戸籍に入る訳ではないことをご存じだろうか。
冴菜は未婚の母であるので再婚とは言わないが、母親の連れ子と再婚相手は他人であるため、本来であれば再婚相手に連れ子の養育義務は無いのである。
しかし藤道はキョーコの父親にもなりたかった。そんな藤道が胸を張ってキョーコの父親と名乗るには、キョーコとの養子縁組届を提出する必要があったのだ。
だが当然のことながら藤道がこれを勝手に作成、提出することは出来なかった。
なぜなら子供が15歳以上の場合、子供自身が届出人となるからである。
母親が結婚をすれば自動的に自分も藤道の戸籍に入るのかも…と漠然と考えていたキョーコは車中でキョトンと首を傾げた。
「 普通養子縁組届け、ですか? 」
「 そう。赤の他人の子供・・・つまりこの場合はキョーコちゃんだね。キョーコちゃんを本当の意味で僕の子とするにはその届け出が絶対に必要なんだ 」
普通養子縁組届が受理されれば、法定の親子関係が発生する。
つまりこの場合は藤道と、冴菜の子供であるキョーコが法律上の親子と認められるのである。
「 それをすると具体的には何が違うんですか? 」
「 まず、親子関係と認められれば僕にキョーコちゃんを養育する義務が生じる。そしてキョーコちゃんの立場から言うなら実子と同じように法定相続人となって僕の財産を相続する権利が与えられるんだ。もっとも僕の血を引く子供なんていないけど 」
「 お金なんて私は・・・!!! 」
「 分かってる!キョーコちゃん、これはあくまでも外から見るとこういう義務や権利が発生するってだけなんだ。
キョーコちゃんが自分で稼いだお金で学校に行っていることも、養成所のお金を自分で支払っている事も僕はもう全部知っているよ。なぜなら僕は君の弁護士だからね 」
諭す様に柔らかく、藤道は説明を続けた。
その気になればキョーコを丸め込むことなど藤道には簡単に出来たかもしれない。けれど藤道はそうしなかった。
彼はキョーコから真に信頼される父親になりたかったのだ。
「 僕と最上が婚姻関係を結んだからって、キョーコちゃんの生き方に干渉するつもりはないよ。養育なんて必要ないと思うならそれでいいんだ。君がしたい様にすればいい。
名前もそう。普通養子縁組届が受理されたら君は僕の戸籍に入ることになる。そうなれば当然、名字も変わることになるけど、知っているかい?いまは結婚しても旧姓を名乗ることが許されているんだ。子供にも同じ権利が与えられているんだよ。
君は無理に藤道を名乗る必要はない。正式な書類の場合は藤道の名前が必要だけど、それ以外では最上キョーコを名乗り続けることが出来るんだ。君の人生は君の意思で選び取って行けばいいから 」
だから前向きに考えて、と藤道は続け、返事は冴菜から婚姻届けを貰えた時にして欲しいとお願いしたのが昨夜のこと。
性急すぎるかもしれないと思っていたが、藤道の危惧を裏切りキョーコは迷いすら見せずにはっきり首を縦に振った。
「 はい、養子縁組、お受けします。だって、あの人がそれにサインした要因って私にもあるんですよね。・・・ってことで、毒を食らわば皿まで精神で行こうと思います 」
「 ありがとう!!キョーコちゃん、本当に!! 」
「 あの・・・でも私はしばらく最上キョーコを名乗ると思います 」
「 もちろん!君の好きにしていいよ。けど僕はね、実はもう何年も前から君の父親になりたい気持ちがあったんだ。だから本当に嬉しいよ 」
「 えぇっっっ??!そうだったんですか?知らなかったです 」
「 そりゃそうだろうね。最上にも言ったことが無かったし。
よし!じゃあキョーコちゃんの気が変わらないうちに養子縁組届を書いてもらおうかな。それと婚姻届けを一緒に提出すれば一気に受理してもらえるから 」
「 了解です 」
「 ・・・・・ということで、お手数ですが居所を掴んでいる記者を呼び寄せて頂けますか? 」
「 それは、あの写真記事の撤回をさせるってことで? 」
「 もちろん撤回はしてもらいますけど、記者くんには僕たちと一緒に役所について来て貰おうと思ってます。証拠を見せて納得してもらい、差し替え報道をしてもらうために 」
キョーコからしてみれば、藤道が父親と認められようが認められまいがそれほど大きな違いを感じないかも知れない。
だが藤道には大きな問題だった。
冴菜と結婚するにあたり、藤道はキョーコの実の父親が名乗りを上げて来る可能性を完全に排除したかった。
いまさらノコノコ冴菜の前に現れて欲しくない。そしてキョーコの認知もさせるつもりがなかった藤道は、自分がキョーコと親子関係になることでキョーコの実の父親からキョーコを養育する義務を奪ってしまおうと考えた。
キョーコの実の父親は、自分の血を引く子供がこの世にいるなど知らないはず。
その存在をたとえばこの報道で知ることになったとしても、今までずっと独身のままでいた冴菜がキョーコのことを含めて結婚したことを知ればさすがに名乗りを上げては来られまい。
この事実を広く知らしめ実の父親を完全に排除するためには報道が絶対に必要で、そのために藤道は蓮を巻き込み、記者を誘い出したのだ。
だがそんな藤道でも記者に煮え湯を飲ませる気は無かった。
自分が掴んだスクープが、実は藤道の誘導によってやらされたものだと知らされれば記者の自尊心が傷つくことは明白で、しかも流してもらった情報は撤回してもらわねばならない。
それが、今後の記者生活に悪影響を及ぼす可能性は否めず、ひいては役者としての蓮やキョーコにも波及してしまうかもしれない。
無用な悔恨を残したくなかった藤道は、その善後策として記者の居所をローリィに把握してもらったのだ。
この情報を記者一人に独占させるために。
あらゆる条件がすべて揃ったのは本当に偶然だった。
しかし神の啓示か導きか。蓮を前に閃いた藤道の策は、我ながら自分史上最高の神謀だったと胸を張って言えるものだった。
「 失礼します 」
「 お、着いたか、蓮。社 」
この策にとって重要な立役者となってくれた蓮とマネージャーが共に社長室に姿を現した。
蓮を認めた藤道は誇らしげに胸を張り、未来の息子に微笑んだ。
「 やあ、丁度良かったよ、敦賀くん。君に是非お願いしたいことがあるんだ 」
「 え?俺に?・・・なんですか? 」
「 キョーコちゃんが提出する養子縁組届の証人欄を埋めてくれないだろうか。成人の証人が2人必要なんだ 」
「 養子縁組? 」
「 そう 」
まさかこれが蓮の大きな秘密に気付くきっかけとなるとは、さすがの藤道も夢にも思っていなかった。
E N D
下衆な藤道さんはどこいった…。
ちなみに言うと養子縁組届の用紙はA3で、一見するとまるで履歴書の様だと思いました。
そしてお気づきでしょうか。伸びても大丈夫ですよ・・・の優しいお言葉に煽られたのか、予定通りに収まっておりませんのです。一話増えます。
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※本編最終話「はぐくむ彼◇前編」 に続きます。
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