SS はぐくむ彼 ◇前編 | 有限実践組-skipbeat-

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 一葉です。いつも有難うございます!!

 スマヌ!!結局一話に収まらず前編になってしまった。(。-人-。)


 一葉が目指した着地点!前編ですけれども

 お楽しみいただけたら幸いです。



 前のお話はこちら↓

 その時の彼

 そのあとの彼【前編 後編】

 諦めたくない大切なこと

 その次の彼

 お休みの日の彼

 翌日の彼(5話目のおまけ)

 接近する彼

 後押しする彼

 広がる波紋(番外編)

 探察する彼

 閃きを得る彼

 結託する彼

 愛おしむ彼

 攫取する彼

 胸を張る彼


藤道奨物語シリーズ本編14話目

■ はぐくむ彼 ◇前編 ■





「「 どうしてそういうことに? 」」


 キョーコの養子縁組の話を聞いて蓮と社は同時に口を開いた。それも当然のことだろう。何しろ藤道の目的が何だったのかさえ二人は何も知らなかったのだから。


 素っ頓狂な表情を浮かべた二人を目の当たりにしたローリィは、愉快な気分で左の口端を歪めた。



「 あぁ、それだ。それをお前たちに説明したくて呼んだんだ 」


「 説明? 」


「 …つっても簡単なんだがな。最上君の母親と、同僚の藤道氏が婚姻を結ぶことになったっつーだけだからな 」


「 結婚?あ!そうだったんですか。ああ、それで… 」



 ソファから身を乗り出し、ローテーブルの上で書き辛そうに届出書をしたためているキョーコの横から腰を折り曲げ覗き込む蓮。


 用紙に視線を配ると右半分の下側に、確かに証人欄が2人分設けられていた。

 住所、本籍、生年月日と区切られていて、署名の横に押印欄も用意されている。それを見ていかにも日本らしい書式だな…と蓮は思った。



「 藤道さん、申し訳ありません。最上さんの人生にとって大切な書類ですから本心としては協力したいのですが、俺はこの書類にサインをすることが出来ません 」


「 え……どうしてだい? 」


「 俺の名前、敦賀蓮というのは芸名なんです。もちろん芸名である以上、俺にも本名はありますが…… 」


「 ん?まさか… 」


「 自分の本当の名前は、ある目標を達成するまで明かさないと決めています。LMEともそういう契約をしています。申し訳ありませんがお力になれません。本当にすみません 」


「 ……そう、か……契約…… 」



 このときふと、藤道は少し前に抱いたある疑問を思い出した。


 蓮のリサーチをしていた時だ。不思議なことに蓮のデビュー以前を知っている者が誰一人としていなかった。

 藤道が蓮について知ることが出来たのは芸能年鑑に載っていた基本的な情報と、人々が抱く敦賀蓮に対する印象、役者としての彼の姿勢、それのみ。


 地方出身者でもないのに不思議だな、と思った。だが藤道は意識的にそれ以上の深追いを避けたのだ。


 誰にだって秘密はある。誰にも触れられたくないことだって。

 その背景を知る由は無かったが、しかし気配は察せた気がした。それはもしかしたら弁護士という職業がそれを感知させたのかも。



 ある目標を達成するまでは…と言った蓮の瞳はやけに真剣で、強い決意を垣間見た気がする。

 まるで覚悟を持って過去と決別して来たようなまなざし。藤道はそれを一瞬で読み取った。


 だからこそ彼は敢えて明るく笑ってみせた。



「 なんだ、そうか。僕はまたてっきり君も不破松太郎みたいに恥ずかしい本名だから名乗りたくないって理由なのかと思ったよ。そうじゃないと判ってホッとした 」


「 え…… 」


「 なんて、悪い。どんなに嫌な奴でも人が秘密にしたがっていることを暴露するのは大人じゃないな。今のは聞かなかったことにしてくれるかい? 」


「 え、はい…… 」



 キョーコが京子という芸名で芸能活動をしている以上、蓮のそれが芸名であっても少しもおかしくはないというのに、それが全く脳裏を過ぎることはなかった。


 蓮に頭を下げられて、藤道は初めて自分が浮かれていたことに気づいた。


 冴菜から婚姻届けを貰えたことと、キョーコが養子縁組を快諾してくれたことですっかり舞い上がっていたな、と、藤道は反省を含んだ苦笑を浮かべた。



 これまでの弁護士人生の中で、たった少しの気の緩みが裁判の行方を左右したことは幾度もある。それで学んだことは、針の孔ほどの決壊すら決して注意を怠ってはならないということ。


 自己の経験を思い出し、偶然とはいえ蓮のそれに触れてしまったことを藤道は本当に申し訳なく思った。

 どうかこのたった一回の接触が蓮の未来を悪い方へ導いたりしませんように、と願わずにはいられなかった。



「 そうか。そうだよな。そういう可能性だってあるのに君の芸名、あまりに君にしっくりきていたからそんなこと、考えてもみなかったんだ。

 本当に済まない。何の説明も無しに君を巻き込んだ挙句に、君の都合を考えずに無茶なお願いをして 」


「 いえ、そんなこと 」


「 大丈夫。ちゃんと別の人にお願いするから、君は気にしないで平気だから 」


「 あ、それ!!俺で良ければ証人欄、俺が書きますよ。キョーコちゃん、俺でいい? 」


「 ええっ?!社さん、いいんですか? 」


「 もちろんだよ~!!俺は大丈夫!芸名じゃないから(笑) 」


「 俺もだ。社と俺でちょうどよかろう 」



 マネージャーの社が右手を上げ、続いてローリィが右手を上げた。

 藤道の思いを知ってか知らずか、何も聞かなかったと言わんばかりの態度が有難いな、と藤道が優しく口元を緩めたとき、ローリィの携帯が着信を告げた。


 ポップアップを見てローリィが眉をしかめる。繋げた途端に発信者の声が社長室に響いた。



『 どーういうことだ、ボスッッッ!?キョーコの蜜愛とはなんなんだ!? 』


「 ・・・っっっ・・・・・クー、声がでかすぎる 」


「 あ、先生 」



 ネット閲覧の利便性は、どこの国でも可能であること。この一言に尽きる。

 恐らくクーは愛する息子のことが気がかりで、日本の芸能情報をマメにチェックしていたに違いない。


 そしてあと数時間もすれば差し替え記事が入るというのに、その絶妙な間合いで偶然キョーコの記事を見つけてしまったのだろう。


 もっとも、キョーコは未成年であるので目のラインは黒く塗りつぶされていたのだが、その状態であるにもかかわらずそれがキョーコだとクーが見抜けたのは、少なからずキョーコの父親であるという自覚があったからかも知れなかった。



『 説明をしてくれ、ボス!キョーコはまだ未成年…… 』


「 あーうるせ。最上君 」


「 え? 」


「 君が出たまえ。その方が早かろう 」


「 あ、はい!出ます。……あの、もしもし?お電話代わりました、先生? 」


『 キョーコ?!そこに居たのか! 』


「 はい、居ました。あの、ご心配をおかけしてすみません。でも大丈夫ですので… 」


『 大丈夫?何が大丈夫なんだ!身を隠すためにボスの近くに居るんじゃないのか? 』


「 あ、いえ、最初はそうだったかもですけど、今は平気なんです 」


『 どういうことだ?この写真はヤラセってことか?それとも合成か? 』


「 ヤラセでも合成でもないですよ。実はですね…… 」



 キョーコが手短に真実を話そうとしたところで通話がブチンと切れてしまった。あまりに唐突だったのでさすがのキョーコも戸惑う。

 だが、キョーコがいくら、先生!と叫んだところで米国に居るクーに通じるはずもなかった。



「 やだ、先生?!先生~~~っ!!! 」


「 どうした? 」


「 切れてしまいました。どうしてでしょう~~??? 」


「 まあ、平気だろ。こっちが午前中なら向こうは前日の夜のはずだ。とするならクーはいま仕事の真っ最中。きっとその関係で切れたのだろう 」


「 そうでしょうか。そうならいいですけど… 」



 言いながらキョーコが携帯をローリィに返却した所で再び着信音が流れた。



「 あ、先生?! 」


「 いや、これはメールの着信音だ。・・・・が、確かに発信者はクーだな。なんだ? 」



 中身を確認して思わず吹き出す。

 ひっくり返された携帯の画面を見せられたキョーコはその文面を見て驚いた。



 そこには、今から日本に行く、とだけ書かれていた。



「 ええっ?!先生、いまからこっちに?嘘でしょう??!!そんな無茶です!社長さん、今すぐその必要はないって返信してください!! 」


「 まぁ、そんな焦るな 」



 しかし掛け直すも電話は不通。どうやら電源を切ったらしい。

 ローリィはほくそ笑みながらキョーコの肩をポンと叩いた。



「 クーが来たいって言ってんだ。放っておけ 」


「 でも先生、お仕事があるでしょうに、こんな情報を真に受けて私なんかのために 」


「 いやいや、それこそ要らん心配だ。さすがのクーも仕事を放り出してくるようなことはせんだろう。後回しに出来るものは後回しにして、やらねばならんことを巻きで済ませて来る気だろ。

 到着は早くて明日ってところだな。その頃には君の手続きもすべて終わっているだろうからむしろゆっくり話が出来ていいじゃねぇか。直接会って君の口から説明をした方がクーの為にもよかろう 」


「 ……はい、そうですね。じゃあ、そうします 」


「 あとで奴から連絡が来るだろうから、そのとき着時間を最上君に知らせるから 」


「 はい、ありがとうございます 」


「 へぇ~……。あのMr.クー・ヒズリが僕の娘、キョーコちゃんの為にわざわざ来日して下さるんですか。仕事を後回しにしてまで?

 それはそれは。キョーコちゃんの父親として是非とも直接お礼を申し上げなければならないですね。ということで、お手数ですが僕にも連絡をいただけますか? 」



 そう言った藤道は朗らかに微笑んだというのに、何故か一同の背筋に悪寒が走った。





  ⇒後編 に続く


前話で感想を下さった方の殆どが、蓮くんが「本名でサインをする」と断定していた事にちょっとびっくりしてしまいました。書かないという選択肢だってあるのに。


ミスリードとなった要因は、たぶんこのシリーズの着地点が義理父対決だと初めから宣言してあったから。だから「蓮キョが成立していなきゃ」・・・という先入観がそう思わせたのだろうな、と。


固定概念に囚われてしまうとやはり見えなくなる事はあるのですよね。もちろん、そうじゃないお嬢様も少なからずいらっしゃいましたけれどね。



さて、二人の蜜愛写真をネット公開としたのは、実はクーを呼び込むためでした。

月を跨ぐことになってしまいますが後編もお付き合い頂けたら幸いです。



⇒はぐくむ彼◇前編・拍手

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