一葉です。いつもありがとうございますっ!!(。-人-。)
ひっそりと驀進を続けております、MでGでHな藤道さんが繰り広げます「キョーコちゃんのお父さんになろう計画」をお届け致します。
実は目次の更新って記事を用意した時に済ませてしまうのですが、このシリーズを始めた当初は10話前後ぐらいで終わるだろうと予想を立てていた自分に吹き出してしまいました。
ちなみに先日ようやくラスト一歩手前までの流れを思いつきプロット組みをしてみた結果、あくまでも概算ですがあと7話程度で完結する見通しとなりました。
意外と長いですよね~(笑)
それでは、お楽しみいただけたら嬉しいです。
前のお話はこちら↓
藤道奨物語シリーズ8話目
■ 探察する彼 ■
彼女の右に秀でる者などこの世に居まい…と強く確信できる女性、最上冴菜。
その一人娘である最上キョーコと藤道が再び喫茶店で顔を合わせたのは、藤道がLMEの社長であるローリィ宝田と面会してから二週間後のことだった。
喫茶店店内に人はまばらで、けれど静まり返っている訳ではない。
そこかしこで飛び交っている他愛もない会話をBGMに、藤道は少しばかり前のめりでキョーコと向かい合っていた。
「 …で、どうかな、キョーコちゃん。その後は… 」
「 へ?どう…とは…? 」
言葉の意味が分からないらしく、キョーコは砂糖とミルクを注いだばかりのコーヒーをひと口味わってからキョトンとした目になった。
キョーコが過去の痛手を乗り越え、新たな恋を息吹かせている事に藤道が気付いたのはまさしく偶然。
……キョーコちゃんには、とことんまで倖せな恋をして欲しい。
そう願う気持ちは本物で、けれど彼女は恋の成就にやけに消極的だった。
自分がキョーコの弁護士になろうと考えたのは、もちろんキョーコの身を案じてのことではあったけれど、それ以上に藤道はこう考えた。
自分がキョーコの身近にいれば、キョーコの恋の後押しがしやすくなる。
そしてその思惑通り、先日藤道はその一手を打ったばかりだった。
デビュー間もない新人芸能人、京子…もとい最上キョーコの身を案じる顔をしながらLMEのトップ俳優である敦賀蓮にキョーコの送迎をして欲しいと願い出た。
そして敦賀蓮本人から快諾を貰って二週間が経過した。
つまり藤道はその後の二人の進展具合を知りたいがために、今日ここにキョーコを呼び出したのだ。
キョーコが恋の成就に消極的だった理由は、彼女曰く、愚かで浅はかになり下がる無様な恋の相手だったハナクソな幼馴染、不破ショータローから卑怯な毒牙を受けていたから。
その事実を知った藤道が既に幼馴染を撃退済み。
従ってキョーコが秘かに抱く淡い恋心は何の憂いも無くなったということだ。
正直、彼はワクワクしていた。
自分の策が少しでもキョーコの為になった事を期待していたし、何かしら相談されたら喜んでアドバイスをするつもりでいた。
どんな話が聞けるだろう。
どんな相談をされるだろう。そんな期待が膨らんでいたのだ。
だから余計に落胆が大きかった。
なぜならキョーコの返答は、藤道の予想を完全に裏切ったものだったのだから。
「 だから、仕事の状況とか、色々だよ。ほら、キョーコちゃん少し前にCMの仕事が来たって言っていただろう?それから映画のオーディションがあるって話もあった。なら結構忙しかったんじゃない? 」
「 ああ、はい!おかげさまで充実しています! 」
「 そう。それで?敦賀くんには何回ぐらい送ってもらった? 」
「 え?それは…えっと、2回です 」
「 2回?!たったそれだけ?! 」
「 そりゃそうですよ。私、新人ですからそもそもそんなに仕事量もありませんし。従いましてそんな頻繁に遅くなったりもしないですから 」
そうである。
仕事が毎日あったとしても、23時過ぎに帰宅になりそうな場合に限り送って欲しいとお願いしたのは藤道だった。
「 ……それにしても少なくないかな? 」
「 なに言ってるんですか、藤道さん!前にも言いましたけど本当に忙しいのは敦賀さんの方なんですよ!だから私、なるべく遅くならないようにしているんです! 」
「 あ……そうなんだ 」
確かに、遅くならないならそれに越したことはないのだろうが、藤道的にはそれでは本末転倒なのである。
なにしろ敦賀蓮の送迎が無いという事は、二人が顔を合わせるチャンスも時間も無いという事になる。
せっかく機会を作ってあげたっていうのに…。
「 ……キョーコちゃん 」
「 はい? 」
「 直球で聞くけど、キョーコちゃんは少しでも彼と一緒に居たいと思わない?一緒に居て嬉しくない?あのトップ俳優がキョーコちゃんのために時間を割くことを快諾してくれたんだよ?彼の名を騙るぐらいキョーコちゃんは彼に想いを寄せているんだろう? 」
「 やめて下さい、藤道さん!!私、本当に申し訳ないと思っているんです。敦賀さん、誰よりも忙しい人なのに 」
「 ……キョーコちゃんは、彼のスケジュールを把握してるの? 」
「 してないですよ。なんでですか? 」
「 いや…。だって、敦賀くんが忙しいのを知っている風だから 」
「 スケジュールの内容を知らなくても敦賀さんが毎日忙しくしている事は判ります。だって私、以前、敦賀さんの代マネをしたことがありますから 」
「 代マネ? 」
「 代理マネージャーです。本来のマネージャーである社さんが風邪でお仕事ができなくなった時、私がマネージャーとして敦賀さんに付いた事があったんです 」
「 そうなんだ 」
「 藤道さん!私のために敦賀さんを巻き込むのは止めて下さい!それでなくたって敦賀さん、責任感が人一倍強い人なんです。あのときだって自分も風邪を引いたくせに、敦賀さん、一つも仕事に穴をあけなかったんですよ。夜なんてすごい熱が出たりしたのに、倒れるまで仕事はするって言い張って… 」
「 え?それ、キョーコちゃんが看病したとか? 」
「 しました。だって、敦賀さんからしてみたら人生初の風邪だったんです。だから心配だったし、それに私も自分の仕事に責任を持ちたかったから… 」
「 なるほど?じゃあ、キョーコちゃんが遅くなったときはいっそ彼の家に泊めてもらえばいいんじゃないか?そうすれば遅くなって申し訳ないって思わなくても済むだろう? 」
「 でっ!!出来る訳ないじゃないですか、そんな破廉恥大迷惑なこと!!
だいたい、藤道さん、人の話を聞いてます?お願いですから私のために敦賀さんを巻き込まないで下さい!!! 」
藤道を睨むキョーコは今にも両手でテーブルをひと叩きしそうな勢い。
自分を見つめる彼女の目は真剣で、それだけに藤道は判断に迷った。
迷惑?一体どんな迷惑だとこの子は思うのか。
少なくとも敦賀くんは快諾してくれたことなのに。
「 キョーコちゃんは……少しも嬉しくない?好きな人と一緒に居られることに幸福を感じない? 」
「 …っ!!!私のことはいいんです!お願いですから敦賀さんを巻き込もうとしないで下さい。敦賀さんは優しい人だから頼まれたら断れない人なんですから… 」
「 それでは僕の質問に答えたことにならないよ 」
「 私のことはいいんです!ただ私は敦賀さんに迷惑を掛けたくないだけなんです。重荷になんてなりたくない… 」
「 重荷…… 」
藤道はイスの背もたれに寄りかかり、腕組みをしながら大きなため息を一つついた。
キョーコの気持ちに気付いてから、実は藤道は敦賀蓮のリサーチをしていた。
自分の将来の娘が心を寄せる男のことだ。知っておくに越したことは無いと思った。
けれどリサーチは大っぴらに行ったものではなかった。
あくまでも自分がテレビ番組の仕事に出向いたとき、そこにいる芸能人にさりげなく会話を振って聞き及ぶ程度に過ぎなかった。
『 敦賀くん?敦賀くんはきっと、生まれながらの紳士だと思うよ 』
『 彼は物腰が柔らかくて、温和で争いごとを好まず
誰に対しても優しい態度で接してくれる、まるで紳士の見本みたいよ 』
誰に聞いても返って来る答えはだいたい同じで、藤道はそれを聞いたとき少しの違和感を覚えた。初対面で自分が持った彼との印象にずれがあったのだ。
自分が藤道ショウだと名乗ったとき、敦賀蓮は弾かれたように顔を上げ、視線だけで鋭く自分を射抜いた。
そのとき見せた鋭利な目。
彼が本当に生まれながらの紳士だというのならあんな目つきはしないだろう。
だがそれは、藤道の中で決して悪い印象ではなかった。
それからこんな事も聞いた。
役者としての敦賀蓮の顔だ。
どうやら彼は芝居に対して常に真摯な居住まいを見せるらしい。
大御所だろうが大女優だろうが妥協は一切しない…という蓮の話を聞いたとき、藤道はそれこそ彼らしいと思った。
確固たる信念を持つ男は、自分の懐に入った人間をとにかく大切に扱う傾向がある。
名刺に視線を落とすふりをしながら心配そうにキョーコを見つめた彼のそこには慈愛に似たものがあったし、先日自分がLMEの社長室で彼に不躾なお願いをしたときも彼は嫌な顔ひとつ見せずに微笑んだ。
それは彼が紳士だから…と言われてしまえば辻褄は合うような気もする。だがやはり藤道はそうではないと思うのだ。
他人の目から見てもはっきりと判るほど芝居に対してストイックさを持ち、相手が誰であろうと真摯な姿勢を貫く彼ならば、意に沿わぬことをお願いされたら首を縦に振ることは無いと思う。
ましてや彼はその場で自身のマネージャーにスケジュール調整が可能かどうかまで確認している。
忙しいならなおの事。なんの利害もない子のために自らの時間を割くような真似を彼がするとは到底思えなかった。
少なくとも自分ならそんな真似はしない。たとえ恩師にお願いされたとしても、したいともしようとも思わない。
だから間違いないと思うのだ。
彼もまたキョーコに好意を寄せてくれているに違いないと。
むしろ藤道が判らないのはキョーコの態度の方だった。
なぜこんなにも頑なまでに消極的な態度を貫くのか。
憂いは無くなったはずなのに。
彼が笑顔で快諾したのをキョーコ自身もちゃんと見ているはずなのに……。
「 キョーコちゃん、一つ確認させてもらえる? 」
「 は…… 」
「 キョーコちゃんは彼が快諾してくれたにも拘わらず、なぜそれが彼の迷惑になると考えるんだろう?社長さんだって敦賀くんの意思を尊重するようなことを言っていたのに 」
「 なぜって…。だって、敦賀さんの周りを私みたいなのがちょろちょろしていたら… 」
「 それを不快に思う誰かがいる?もしかしたら敦賀くんには恋人がいるとか? 」
瞬間、キョーコの肩が小さく揺れた。
藤道は眼鏡の奥で目を見開いた。
「 ……いないです。言ったでしょう?敦賀さんはその手の噂話が全くない人だって 」
「 ああ、うん。そういえば言っていたね。社長室で… 」
そして社長さんはこう言っていた。
迷惑…。最上君がそんなこと気にする必要はないぞ…と。
つまり社長さん自身、敦賀くんとキョーコちゃんのそういう噂が流れたとしても別に困らないと言っていることになる。
GOサインが出てないのはキョーコだけのように見える。
いや、正確には蓮も同じだ。
藤道は蓮本人の意思を確認してはいないのだから。
「 藤道さん。お話がそれだけなら私は失礼したいんですけど… 」
「 そうか。ごめん。そうだね、出よう 」
いつの間に飲み干してしまったのか、二人のカップはともに空っぽになっていた。
キョーコより先に伝票に手を伸ばした藤道は腰を上げるとさっさと会計の前に立ち、どうしようかと悩んだ。
キョーコから一つの収穫も得ることが出来なかったのは藤道としては予想外。
しかも肝心の本人が消極的なままではこちらがいくら場を用意しようとこれ以上の進展は見込めまい。
ならばどうすべきかと、藤道は人より優れた頭脳をフル回転させ模索した。
「 ありがとうございましたー。またのご来店をお待ちしております 」
昔ながらのドアベルが店を出てゆく二人を見送る。
先にドア向こうに出たキョーコが藤道に向けて丁寧に頭を下げた。
「 藤道さん。ごちそうさまでした 」
「 いいえ、お粗末様でした…っと、キョーコちゃん、車!! 」
「 うえっ? 」
車はスピードを落とさずあっという間に二人に近づきそして瞬く間に走り去る。
咄嗟にキョーコの肩に手を回していた藤道は過ぎ去った車を睨みながら眉間に深い皺を寄せた。
「 …ったく、危ないな。道路交通法違反で訴えてやろうか。大丈夫?キョーコちゃん 」
「 あ、平気です。驚いちゃいましたけど 」
「 そう。なら良かった 」
「 ふふっ。いまの藤道さん、ちょっと敦賀さんみたいでした 」
「 ん?僕が? 」
微笑みながら自分を見上げるキョーコの顔は間違いなく嬉しそう。
人は好きな人の話をするとき大抵こういう顔をする。
藤道も自然と表情を崩した。
「 いやいや、あんなイケメンヒーローと一緒にされたら敦賀くんが不快に思うよ 」
「 思わないですよ、敦賀さんなら。あの人優しいですからね。本当に、相手が誰だろうとこんな風に手を差し伸べて颯爽と助けてしまうような人なんです 」
「 優しい…ね。でもね、キョーコちゃん。僕はこう思う。
どんなに心優しいヒーローが居たとしても、たった一人しか助けられない場面に遭遇したらきっとそのヒーローだって自分の大切な人を先に助ける。人はいつだって自分の想いに利己的だから 」
「 それは…そうかもですけど。そう考えると夢がないですね 」
「 夢?そんなの無くていいんだ。そこに愛さえあれば 」
「 ぷっ 」
「 あ、笑ったな。けど本当だよ、キョーコちゃん。
敦賀くんが僕の不躾なお願いを聞いてくれたのは彼が優しいからでも断れない性格だからでもないだろうし、ましてや誰彼構わず咄嗟に手を差し伸べてしまうヒーローだからでもないよ、きっと 」
「 ……そんなことないですよ。敦賀さんは優しい人だから 」
キョーコは大きく首を横に振った。
それが藤道にはまるで必死に何かを自分に言い聞かせているかのように見えた。
その理由を知りたい、と思う。
それを知り得なければ先へは進めないのだから。
「 キョーコちゃん。これは僕の人生経験から言うけど、優しいからってだけで自分の時間を誰かの為に使おうとする人なんて一人も居なかった。だから少なくとも敦賀くんはキョーコちゃんを大切に思っているのだと思う。だからこそ了承してくれたと思うんだ 」
「 ……大切?だとしたらそれは絶対に私のことじゃない 」
「 え? 」
「 藤道さん。私、ここでお先に失礼します!! 」
「 あ、キョーコちゃん?! 」
勢いよく駆け出してしまったキョーコを目線だけで追いかけて、藤道はキョーコの言葉を反芻した。
「 それは私のことじゃない…って、どういうことだ? 」
その言葉を素直に受け止めるとしたら、敦賀蓮には大切な人がいるということになってしまう。
そして、それをキョーコが知っているということに……。
「 だから?だからキョーコちゃん、そんな態度なのか?いや、けど…敦賀くんに好きな人?キョーコちゃん以外に? 」
所詮、敦賀蓮に対する自分の知識など他人の言葉から得ただけの付け焼刃に過ぎない。
本質的に自分が彼を理解している訳ではないのだ。
だが、弁護士として多くの人間と対峙してきたからこそ自然と判ることがある。自ずと見えることがある。
「 それ、キョーコちゃんの勘違いだろう? 」
間違いない、と藤道は思った。
敦賀蓮は間違いなくキョーコに対して特別な感情を抱いているはずだと。
それこそ本当に直感でしかないけれど…。
「 いっそ、敦賀君本人に探りを入れてみるか? 」
キョーコが何かを勘違いしているとしたら、それは勘違いしてしまうような何かがあったか、あるいは聞いたかという所だろう。
それをいくら想像したところでそれは想像以外の何物でもないのだ。
一度やると決めたからにはとことんまで見極める。藤道が次に取るべき行動を、弁護士業で培ってきた見地がはっきりと示唆していた。
「 うん。本人に聞いた方が早いな。問題は会ってくれるかどうかだ 」
一人車に乗り込んだ藤道は現在時刻を確認し、着実に前へと進むために慣れた手つきでハンドルを握りしめた。
E N D
このお話、お忘れかも知れませんが39巻巻末マンガから派生してスタートおります。そして着地点は義理父対決と決まっています。
ちなみに5話目の時点で少なくとも父の日が過ぎておりまして、原作沿いで行けばキョーコちゃんはこの時期あたり、既に紅葉役を貰って撮影している頃かもだと想像できるのですが、原作の進みを待っているとこちらが全然進まないことになってしまいますのでもうここら辺りから感性でお付き合い頂ければと思います(笑)
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※本編9話目「閃きを得る彼」に続きます。
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