一葉です。いつも有難うございます!!
MでGでHな藤道さんが繰り広げる「キョーコちゃんのお父さんになろう計画」をお届け。
そう。藤道さんの目的はキョーコちゃんのお父さんになること。
だけど一葉の目的は義理父対決です。そこんとこお忘れなく(笑)
前のお話はこちら↓
藤道奨物語シリーズ本編11話目
■ 愛おしむ彼 ■
蓮とのやり取りから一週間ほどが過ぎた。
その間、藤道は恩師片桐の仕事を代行すべく、テレビ局の仕事を一手に引き受け、様々な局を頻繁に出入りすると同時に時間が許す限りなるべくキョーコと接触を図っていた。
目的は二つ。
ひとつはあの夜、蓮と交わしたあの会話が素早く駆け抜けてゆくように。そしてもう一つはタイミングを見誤らないためだった。
おかげで噂話の波及は上々で、芸能界に限ってはほぼ浸透しつつあると考えてもいいだろう。それはもちろん藤道が見越した通りの流れ。
しかし、自分がウィリデ法律事務所の弁護士である以上、よほど決定的な何かがない限り、これ以上の伝播は望めまい。
なぜならウィリデ法律事務所はもともと企業を顧客に持つからだ。
キョーコのことを思えばこそ、藤道は自分がキョーコの弁護士となるべくLMEの社長に筋を通した。
だが日本だけでも星の数ほど存在する企業のうち、ウィリデ法律事務所が抱える顧客は一等星と呼ぶにふさわしき大企業ばかりなのである。
当然その中にはテレビ局のスポンサーとなっている会社がいくつもあり、立場はもちろん局より上。
そんな大企業の顧問弁護士を務める事務所の、しかも所長の片桐氏でさえ一目を置く辣腕弁護士、藤道を相手に、噂話を鵜呑みにしたスクープをおいそれと立ち上げるのは難しかった。
なにしろ藤道が凄腕の弁護士であることは一部の者たちには既に周知の事実なのだ。万が一にも藤道に睨まれたらただでは済まない。
もちろん藤道もそれを見越していた。だがそこで行き詰っては困るのだ。
なにしろ冴菜の耳に届かなければ意味が無い。
キョーコにとって不名誉な噂に自分が関わっていることを冴菜が知り得なければ、藤道が冴菜をおびき寄せること自体が不可能なのだから。
しかし有難いことに抵抗勢力というのはどんな世界にも存在するもの。
故にこれがベストの時期だと判断し、藤道は本日、最上冴菜を我が物とするべく詰めの一手としてキョーコを自宅に招いていた。
「 どうぞ。遠慮せず入って、キョーコちゃん 」
「 お邪魔します。…あっ!藤道さん、もしかしたらこの鉢植え… 」
「 そう。キョーコちゃんがくれたカーネーションだよ。花が無くても綺麗だろう? 」
「 すごい。鉢が前より大きくなってる 」
「 うん、そうしたんだ。そういう風に手入れをするものだと知ったのでね 」
「 ええ~、そうなんですかー 」
「 花が咲いていた時より小さく見えるのは、上部分を切ってしまったからなんだ。
開花が終わったら鉢から上の部分を半分くらいの高さで切って、枯れてしまった枝や細い茎を取り除いて風通しを良くしてやる。そして液体肥料を月1~2回与えるか、緩効性化学肥料を月1回与えると秋にもう一度花が咲くらしいんだ 」
「 うそっ?!カーネーションって秋にも咲けるんですか? 」
「 調べたらそうだって載っていた。だからチャレンジしたいと思ってね。せっかくキョーコちゃんから貰ったから、今度は僕自身の手で咲かせてみたくて 」
「 ふふっ。この鉢植え、やっぱり藤道さんにお渡しして正解でした。嬉しいです。まさか育てて下さっているなんて思ってもいませんでした 」
「 当然だよ。どう?花が咲いたら見に来るかい? 」
「 はい、是非!! 」
一点の曇りもない笑顔を自分に向けてくれるキョーコにいじらしささえ感じながら、藤道もまたキョーコに向かって微笑んだ。
藤道が蓮を前にこの計画を思いついたとき、敢えて蓮には何も語ることはしなかった。
しかしキョーコには計画の半分を話そうと思っていた。
蓮とキョーコの仲を取り持とうとしている事だけを伏せて、自分が冴菜を捕まえる気でいるそれだけを告げようとしたのだ。
何しろ最上冴菜に対する自分の気持ちを知っているのはキョーコだけなのだから。
しかしなぜそういう流れになったのか、までを告げようとすると、それはキョーコに対する蓮の気持ちまで自分が吐露しなければならなくなる。それは絶対に避けたかった。
何度も言うようだが恋愛の醍醐味は自分で動くことにこそ意味がある。
恋焦がれた相手と心が通じ合った瞬間にのみ得られる喜びを、ぜひ自分の手で掴んで欲しいと思うのだ。
結果、藤道は嘘こそつかなかったが、今より一週間前。正確に言うと、カフェバーを後にした翌日に、事実の一部を伏せる形でキョーコに計画を話した。
その時のキョーコはとても真剣な面持ちだった。
「 ……え?あのときの挨拶が? 」
「 そう。キョーコちゃんも社長室で聞いただろう。キョーコちゃんが自分の彼氏…つまり敦賀くんに自分の父親を紹介していたように見えた…ってやつ。その風聞が相当広がってしまったみたいなんだ。敦賀くん、行く先々で色々な人から聞かれてしまってちょっと困惑しています…って言っていたから 」
「 そんな……そんなつもりなかったのに!それに、どうして?私には誰も何も聞いて来ないっていうのに。でも、平気なんですよね?敦賀さん、ちゃんと否定して下さっているんでしょう?だって、あり得ないじゃないですか!私と敦賀さんがそんな… 」
「 それが、最初はそうしていたみたいなんだけど今は放置しているって話だった。敦賀くんぐらいになると聞かれる数も相当数にのぼるんじゃないかな。ほら、テレビに映るのは一部の人間だけで、実際には一般人の目に触れないスタッフが山のようにいるだろう? 」
「 確かに。ああ、もう!!どうしてそこで諦めるの、敦賀さんは!!どうしよう、藤道さん!!敦賀さん、そういう噂話、いままで無かった人なのに!! 」
「 ……うん、それもう何度も聞いた。それで、僕としても考えてみた。結果ひとつの案が浮かんだ。
どうする、キョーコちゃん。僕の話に乗る? 」
「 私で出来ることなら!! 」
「 本当に?敦賀くんを助けるために、君が不名誉な泥をかぶることになるかも知れなくても? 」
「 構いません!!どうせ私なんてたかが知れていますから 」
「 ……そう。本音を言うと僕は助かる。なぜならキョーコちゃんが敦賀くんを助けるためにしてくれることが、結果として僕が最上を捕まえることに繋がるから 」
「 へ? 」
「 思いついたそれはとても単純なものだった。どうすればいいと思う?答えは明白だ。先の噂話よりインパクトのある噂で払拭してしまえばいい 」
「 インパクトのある噂? 」
まさか、藤道がキョーコの母親の同僚だ…なんて事実を一目見て理解する人間などいないだろう。
その通り、藤道はキョーコの父親と間違えられた。
だからその意識を逆手に取ろうと思う、と藤道はキョーコに告げた。
「 逆手…ですか? 」
「 そう。僕と君が男女の関係だと想像させるんだ。彼氏に父親を紹介していたのではなく、事務所の先輩に自分の恋人を紹介していた風にすり替えてしまえばいい 」
「 ……っ…ぷっ!!あははははは。藤道さん、それ本気で?藤道さんはともかく、私が女???あはははは…… 」
「 笑い事じゃないよ、キョーコちゃん。事実、君は敦賀くんに恋をしている。異性に恋心を抱いている時点で君は立派な女性じゃないか 」
「 …っっっ!!! 」
「 そして君は、敦賀くんを守りたいんだろう? 」
「 ……でも、それで……そんなことで藤道さん、本気であの人を捕まえられると思っているんですか? 」
「 間違いない。最上は必ず自分の意思で僕の罠に飛び込んで来る 」
「 どうして?どうしてそんなことが言えるんですか。一体どんな確証があって… 」
「 確証?簡単だよ、キョーコちゃん。
最上の心の天秤に、キョーコちゃんと僕をかけたとする。さて、どうなる? 」
「 そんなの、考えたこともない 」
「 僕はあるよ、何度もね。そして何度やってみてもキョーコちゃんの方が重くなる。それぐらい、僕は最上にとって取るに足らない存在ってことだ 」
「 そうでしょうか?逆ってことはあり得ないんですか? 」
「 もちろん今回に限っては逆でも最上は僕に食らいつくと思う。けれど僕としてはね、キョーコちゃんの方に重きがある方が嬉しいし楽しいんだ 」
「 楽しい?なんで… 」
「 なんで?考えてもみてごらん。最上にとって何の価値もない男が、合法的に最上を手に入れるんだよ?最上に逃げ場はなくなるっていうのにね。
そして僕は自らの意思で飛び込んで来たご褒美を囲い、じっくり時間をかけて最上を攻略するに至れる。
想像するだけでワクワク、ゾクゾクするだろう?さてどんな手を使って解きほぐしてやろうかって、それに思考を傾けるだけで時間があっという間に過ぎていくよ…… 」
キョーコはそこで苦笑を浮かべた。
所詮、自分程度の理解力では藤道がしようとしている事の全てが判るはずも無かった。
けれどそれでいいと思った。
蓮を守れるならキョーコは何でも良かったのだ。そして藤道の案なら平気だろうという安心感もどこかにあった。
結果、今日、キョーコは藤道の招きで藤道宅を訪れた。
俗な記者が自分達にぴったり張り付いているのを二人は同時に確認していた。
あとはその証拠となる写真を撮って貰って、大々的にそれを宣伝してもらえればいいだけ。
もちろん藤道は事前にLMEの社長にきちんと話を通している。
カフェバーを後にしてすぐ、藤道はローリィ宝田社長に電話をいれているのだ。
迷惑をかける事はない…と断言していたが、最上冴菜と争うことにメリットあり…と判断し、現状を有効活用すべく策を講じさせてもらったことを報告。
そのために巻き込むことになってしまった蓮のこと。
そのせいで巻き込むことになってしまうキョーコのこと。
策の内容こそ全てを明かすことはしなかったが、藤道は弁護士として、責任ある大人として、そして一人の男として、LMEの社長にちゃんと筋を通しておこうと考えた。
「 ……御社で敦賀くんにはその手の噂話が出たことがないと聞いていたので、決して悩まなかった訳ではなかったのですがね 」
「 それに関して蓮に拒否する権利は? 」
「 もちろん与えました。人気商売なのに困ることになるだろうと訊ねたら、彼はこう答えてくれましたよ。自分の仕事は役者であり、人気の有無を商売にしている訳ではないと 」
「 …ならこちらから言う事は何もない。男二人で一人の女を奪い愛?結構。
アイツも成人しているんだ。自分の事ぐらい自分で何とか出来なきゃ、この先この業界で生き抜くのは難しい。蓮のことは気にせんで構わんですよ 」
「 ありがとうございます。ご厚情に深謝いたします。これによって付着するだろう汚垢は責任を持って僕が落とすことをお約束します。それこそ、眩しいほどピカピカに 」
すべてから理解は得られた。
あとは詰めの一手だけ。この絶妙なタイミングは絶対に逃せなかった。
藤道はここぞとばかりに腕を振るった料理をテーブルに並べ、未来の娘と二人きり、ご馳走を囲った。
「 うっわ、すごいですね!藤道さん、実は料理好きだったんですか!? 」
「 ……若い頃はそうでもなかったんだけどね。年を重ねるにつれて自然と腕が上がって行ったんだよ。もともとじっくり時間をかけるのが好きな性分なんでね 」
「 すごい!じゃあ、敦賀さんもそのうちそういう風になるのかしら? 」
「 ん?敦賀くん?敦賀くんも時間をかけるのが好きなタイプなんだ?ってことは、今はまだ料理上手じゃないってこと?あんなに何でもできます風な顔をしているのに 」
「 あはは。そこ、顔で判断するんですか?敦賀さん本人に料理上手かどうかって意識があるかは知らないですけど、少なくとも才能はないのかなーって私は思っていますけどね。でも、そういう所があった方が可愛らしくないですか?完璧じゃないのがまたいいと思います 」
「 なるほど、イケメンだとそういう所からも優遇されるんだ 」
「 優遇~~??あはははは… 」
食事の間中、藤道はキョーコの話に耳を傾け、仕事のことなども聞き出した。
役者の仕事に触れたのは本当に偶然だったらしいが、このことが自分自身を作り上げるのに必要なことだと彼女は感じ取ったらしい。
そしていつか、誰からも一流と評される女優になれたとき、人生で初めて母親に頭を撫でてもらえる、その日を夢見ているのだと思うだけで父性愛が積もった。
「 ごちそうさまでした!どれも美味しかったです!! 」
「 そりゃよかった。片付けはいいよ。遅くなる前に下宿先に送るから 」
「 そうですか。……そうですね。でないとあの記者さん、可哀想ですよね 」
「 それがゴシップ記者の仕事だろ。アレは自分の目的のために必要なコマだけど、アレがどれほど腹を減らそうが僕の知ったことじゃないよ 」
「 ぷぷっ!! 」
玄関先で靴を履き、キョーコが一礼を捧げる。
扉を開けてもう一度記者が居ることを確認した藤道は、一歩外に踏み出した所で足を止め、キョーコに振り返った。
「 そういえば……最上が料理をすることってあったのかな? 」
「 え?……ええ、ありましたよ。何て言っても世間体だけで食事を作れる人でしたから 」
「 ふぅん。ちなみに何を? 」
「 なにって……そうですね。一番多かったのはパスタでしょうか 」
「 パスタ? 」
「 はい。簡単だからだったと思います。麺を茹でて、ソースを鍋で温めて、全部を皿に盛れば食べられる訳ですから 」
「 それはまたとんだ手抜き料理だな 」
「 手抜き?!それのどこにあの人の手が入っているって言うんですか。手抜きレベルに至っていません!! 」
「 ……違いない。そうだね、確かに 」
眉宇をくゆんと歪ませたキョーコを見て藤道の胸が疼いた。
寂しかったに違いない。そんなにも些細な事さえ鮮明に覚えているほど…。
それが痛いほど伝わって来た。
大丈夫。もうすぐ僕が最上を捕まえる。
そしたら最上の代わりにこの僕が、父親の愛情をたっぷり君に注いであげるから……。
決意と愛情を込め
藤道はキョーコを優しく抱き寄せた。
その数秒後、ホクホク顔で踵を返した記者の後姿を二人は無言で見送った。
E N D
甦る数年前の記憶。
猛暑で食事の支度が面倒だったMY親友。
朝昼晩、しかも連日そうめん三昧。さすがに悪いと思っていたのか、夏休みの娘たちに謝った。
「 ごめんね、手抜きばかりで…」
「 手抜き?良く言えたね。どこに手が入ってる? 」
翌日から弁当屋を利用したらしい。ことを告白して来たんですよ。久しぶりに会った時。
※一応、栄養士として、そうめんは高カロリーだから頻繁に食べない方がいいことと、高校生なんだし文句があるなら自分で作れぐらい言ってもいいと思うよ、と言っておいた。
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※本編12話目「攫取する彼」 に続きます。
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