2020年5月29日

 群馬県議会一般質問の2日目。質疑の中で、「数ヶ月前に東洋大学が群馬県内の板倉キャンパスからの撤退を決めた」ことが取り上げられた。「県としては、大学側に白紙撤回を求めるべきではないか?」と質された。

 3月24日、東洋大学は、「板倉キャンパス(群馬県板倉町)の2つの大学の学部と大学院の2つの研究科を、4年後の2024年に、東京都内や埼玉県内のキャンパスに移転させる」と発表した。

 東洋大学(板倉キャンパス)は、県の企業局が開発してきた「板倉ニュータウン」の中核的な存在だ。現在、学生を含む約2千人が在籍中。撤退となれば、当然、地域の経済にも、交流人口にも大きな影響がある。

 東洋大学板倉キャンパスが開設されたのは平成9年。開設にあたっては、県の財源から10億円、公営企業である県の企業局から23億6千万円、板倉町から10億円の補助等を行なっている。開設後も、産官学の連携による共同研究等を行うなど、県と東洋大学は、20年以上に渡って良好な関係を築いて来たはず(?)だった。

 ところが、平成30年11月、大学側から「板倉キャンパスに設置されている2つの学部に関して、移転を前提とした検討を始める」という知らせが届いた。この報告を受けた県側は、当時の副知事を窓口として、大学側への説得を行なっていたと聞いている。

 昨年夏、山本一太知事が誕生した。就任して間もなく、前副知事から東洋大学の現状を聞いた。こんな展開になっているとは、全く知らなかった。

 急いで東洋大学の理事長に連絡を取り、面会の時間を作ってもらった。理事長との意見交換の直後に、2人の副知事を含む関係部局の幹部を招集。東洋大学に移転を考え直してもらうための作戦を話し合った。

 「この状況を打開するためには、板倉キャンパスの活動を支援する県の本気(覚悟)を示すしかない」という点で、皆の見解が一致した。

 早速、各部局で知恵を出し合った。大学側に提案出来る県の支援のパッケージの中身を急いで練り上げた。例えば、県が主催する板倉キャンパスでの講義の設置や、学生の就職支援、県産の農産物に関する共同研究の拡充等、「今、県として提供出来る最大限の支援策」を盛り込んだ。

 この提案を携えて、東京(白山)のキャンパスに足を運んだ。理事長を含む幹部たちの前で、知事自身がプレゼンを行った。真剣勝負だった。

 続けて、東武鉄道の社長ともお目にかかった。大学側から(再三に渡り)「通学の鉄道ダイヤが不便だ」という指摘があったからだ。会話の内容は書かないが、根津社長は、とても立派な方だった。

 2人の副知事、関係部局と力を合わせ、全力で東洋大学との交渉を続けていたのだ。

 残念ながら、この努力は実らなかった。本年3月に理事長が来庁。その場で、「4年後の令和6年4月に板倉キャンパスを埼玉県朝霞市等へ移転する」と伝えられた。その理由として、「志願者が集めにくい」等の説明があった。その後、大学側から事実上の撤退声明となる文書が公表された。

 正直言って、今回の東洋大学の決定には、納得がいかない。そもそも、東京一極集中の是正や地方創生を進めようとする国の大きな方針に逆行している。加えて言うと、巨額の財政支援や産学連携による共同研究の実施など、大学に対して多大な協力をして来た地元への配慮が欠如している。

 今後は、ある種の覚悟を持って、大学側との難しい交渉に臨む。厳しく、かつ冷静に対応する。地元の板倉町や館林市との連携が必要なことはいうまでもない。

 この件については、もっと書きたいことがある。続きは続編(その2)で。