先週金曜日 (8/17) ハンガリー中央銀行は、7 23日に行われた政策決定会合の

議事録を公表した。 7月の政策決定会合では、政策金利である 2週間の預金金利を

7.75 % に据え置いたが、今回政策決定会合に参加した委員 10名のうち 1

( バンフィ理事 ) 25 bp の利下げを提唱。 シモール・ハンガリー中銀総裁を含む

残り 9名の理事が据え置きを主張している。

政策金利を据え置いた理由として、同国 6月の CPI が年率 + 8.6 % と、5月の

+ 8.5 % から悪化し、本格的な低下を示していないこと。 また一部理事の中で、商品価格

(穀物価格) と食品価格そのものの上昇で、多数の新興国のインフレが将来悪化する

可能性があること。 さらに労働市場で失業率の低下と大幅な賃上げが見受けられること

などから なお一層の検証が必要とし、政策金利は据え置きとなった。

ただ現行の経済環境からすれば政策金利は満足のいく水準にあり、将来予測される大幅な

年率ベースでの CPI 低下とともに政策金利は引き下げ方向にあることを確認。 労働市場に

不透明感が残るため、賃金が価格転嫁されるインフレ・リスクが大きくないと証明されれば、

段階的かつ慎重に利下げが実施されることになりそうだ。

また早急な利下げは自国通貨であるフォリント安を招く恐れがあることや、ハンガリーの

政策金利が急低下した場合、それに対して金融市場に緩和期待が大きくなり過ぎると

思われること。  各新興諸国金融資産が急速に上昇したことで、将来下落に転じる可能性を

指摘する意見もあり、今後の金融緩和措置は当初予測されていた以上に慎重に対応が

採られることになりそうだ。

一方ハンガリー政府は 2008年会計年度の 財政支出見通しを非公式ながら公表。 

財務省によると 公務員削減と支出削減で、2007年度の支出総額と比べ約 3.0 % の削減を

達成する見通しとしている。

ハンガリーは昨年実施した一連の構造改革が今年に入り功を奏し始め、昨年対 GDP

9.2 % まで上昇した財政赤字は今年 6.4 % にまで減少する見通し。 また2008年度の

財政赤字は 4.3 % になると見られている。

金曜日のハンガリー金融市場は、他の新興国金融市場と同様米国連銀の緊急利下げを好感し、

やっと反転。 フォリントは対ドル・ユーロともに急回復し、対ユーロで 262.00 から 258.00 まで

上昇。 そのまま一日の高値で一週間を終了している。

ただハンガリー債券市場は為替の動きについて行けず、終日足取りの重い展開。 先週一週間

急落となった後遺症が残り、2 10年債とも前日比 2.0 bp 上昇し、一週間での安値引けとなった。

米 ド ル/対 円:    114.15円 + 0.45    02年国債:  7.38 % + 2.0 bp

フォリント/対 円:      0.598円 + 0.010   10年国債:  7.02 % + 2.0 bp

米ドル/フォリント: HUF 191.10 + 2.300   原油価格:   $ 71.98 + 0.98ドル

ユーロ/フォリント: HUF 257.75 + 2.000    金価格:  $666.80 + 8.80ドル






昨日開催された政策決定会合で、ハンガリー国立銀行は政策金利である 2週間の預金金利

( 2-week Deposit Rate ) 7.75 % に据え置くことを決定した。

市場関係者 20名のエコノミストの内 3名が 25 bp の利下げを予測、残り 17名が金利

据え置きとしていたこともあり、ほぼ予測どおりの結果となった。

会議終了後、シモール・ハンガリー中銀総裁が会見。 今回の政策決定会合では 25 bp

利下げも検討されたが、議論が交錯。 最終的に市場の各項目をもう一度精査することで

各政策決定メンバーが合意したため、据え置きとなったと述べている。

6月のハンガリーのインフレは年率 + 8.6 % と、5月の + 8.5 % から上昇に転じたが、これは

一時的要因とし、今後は低下が見込まれるとしている。 結果将来の金融政策は、「緩和」の

方向で意見が一致しているとし、8月の政策委員会ではその検証をするとしている。

また最近の賃金上昇において、課税率の変更がサービス部門の賃金上昇を招き大幅アップと

なったが、今後もそれが続くものではないと見ており、現在は判断に難しい面が残っているものの、

穏やかな成長になると予測している。

シモール総裁は、「 近い将来現在の不透明要因が払拭されれば、当局は段階的に かつ

注意深く、金利引下げを実施することになろう  と述べ、会見を終了している。

昨日のハンガリー金融市場、トルコ総選挙が終了し目先のリスクが一巡したことでフォリントは

小動きの中対ユーロで堅調に推移。 またハンガリー国内金利も、将来の金利引き下げ期待を

好感し、短長期債とも 2.0 1.0 bp 利回り低下で引けている。  

今年後半にかけて、健全な金融市場を形成しそうだ。

米 ド ル/対 円:    121.05円 - 0.35    02年国債:  6.67 % - 2.0 bp

フォリント/対 円:     0.680円 - 0.003    10年国債:  6.46 % - 1.0 bp

米ドル/フォリント: HUF 178.05 - 0.300    原油価格:   $ 74.89 - 0.90ドル

ユーロ/フォリント: HUF 245.90 + 0.050    金価格:  $681.50  3.20ドル



昨日のハンガリーは朝一番に、今後の同国金融政策を左右する経済指標の一つである、

5月賃金上昇率が発表になった。

5 賃金上昇率 (グロス) + 1.6 % (MM) / + 7.4 % (YY) ( 4 – 0.3 % / + 8.4 % )

5月の賃金上昇率 (ネット) は、年率で + 7.4 % と、4 + 8.4 % 3 + 8.4 % 2ヶ月

連続高水準を記録したあと下落。 市場予測であった + 8.0 % をも下回る落ち着いた動きと

なった。 その内訳は民間部門の賃金上昇が、年率 + 11.1 % 3月の + 12.2 % から低下。

一方公務員部門は穏やかな伸びとなっているものの、3月の + 0.6 % から、4月は + 2.9 %

へと上昇している。

このように低下した賃金上昇から、来週 7 23 () に開催されるハンガリー国立銀行

政策決定会合で更なる利下げの期待も出ているが、すでに発表になった 6月の CPI が年率

+ 8.6 % と、なお高止まりしていることから、今月の政策決定は据え置きとなる公算が高いようだ。

現在 14名のエコノミストのうち、7.75 % の金利据え置きを予測している者が 13名。 

残り 1名が25 bp 引き下げ、7.50 % を見込んでいる。

この数値発表後、カルバリツ・ハンガリー中銀副総裁は、「 今後インフレが低下していくことから、

ハンガリー国立銀行は徐々に金利引き下げを実施して行く  と発言。 「 6月の CPI + 8.6 %

は、ほぼ想定内の数値であり、度重なる公共料金や税金引き上げの影響で、前年比ベースの

CPI は急上昇したが、この特殊要因が無くなる 9月ごろからハンガリーのインフレは劇的に

下がって行くであろう 」と述べている。

また  6月に政策金利を 25 bp 引き下げ 7.75 % へと導いたのは、フォリント高が進んで

いたこと。 さらに国内債券市場が非常にしっかりとした推移を辿っていたことで、利下げに

踏み切った  とし、「 これは決して予想外の利下げではなく、そこに利下げを実施する事実が

あったため  とハンガリー金融市場を精査し、その結果金融緩和策をとったとしている。

ただ一点だけ反省点があったという。  金融緩和に対する全ての環境が整っていたと見ていた

ものの、唯一賃金上昇率が高止まっていたことが間違っていた。 今後各リスクとの

コミュニケーションをより密にした政策運営を採りたい 」 と述べたものの、「 金融当局の政策

決定は正しい決断を下している」と、現在の金融政策の舵取りの正当性を主張した。


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上から  ↓


今後の政策運営についてカルバリツ副総裁は、「 金融当局は引き続き細心の注意を持って

全ての事象を検証したい。 また当局の経済見通しを再調査し、その時期とその (利下げ) 幅を

討議。来るべき時点で慎重な決断を下したい  と、今年後半にかけて段階的な利下げ

実施を表明している。

昨日のハンガリー債券市場は、5月の賃金上昇が予想外に低下していたことで安心感。 

ただ近い将来インフレ安定が予測され、金利低下に結びつくことからフォリントが対ユーロで

軟調推移となったことがこれを相殺。 ハンガリー国債利回りは短・長期債とも前日比ほとんど

変わらずで引けている。

またハンガリー政府は今後 2年間において総額 4,000億円にのぼる円建て外債の発行を

計画中と発表している。 その内訳は 2,000億円がサムライ・ボンド、残る 2,000億円が

売り出し債による発行となるとのこと。

ハンガリーは昨年 3月にも 250億円  クーポン: 1.67 % 7年サムライ・ボンドを発行

しており、当時の発行コストは 7 Yen Swap + 10 bp であったが、この銘柄の追加発行も

あるようだ。

米 ド ル/対 円:   121.95円 - 0.15    02年国債:  6.75 % - 1.0 bp

フォリント/対 円:     0.684円 - 0.001    10年国債:  6.55 % - 0.3 bp

米ドル/フォリント: HUF 178.20 - 0.050   原油価格:   $ 75.05 + 1.03ドル

ユーロ/フォリント: HUF 245.90 - 0.050    金価格:  $673.70 + 7.80ドル






先行きの利下げ観測期待が強く、その成り行きが注目されていた

ハンガリー 消費者物価指数 (CPI)

   6月 C. P. I.    + 0.4 % (MM) / + 8.6 % (YY) ( 5 + 0.8 % / + 8.5 % )

  6月 CPI (Core)  + 0.4 % (MM) / + 5.9 % (YY) ( 5 + 0.2 % / + 5.8 % )

前月比マイナスとなったのは衣料品価格 ( - 0.1 % ) と耐久財価格 ( - 0.1 % ) で、食品価格を

筆頭にその他 5品目は全て上昇。 年率ベースでの市場予測は + 8.4 % より高く、また

5月の数値を + 0.1 % 上回ってしまい、インフレ低下を見越して実施された6 23日の

25 bp 政策金利引き下げ ( 8.0 % 7.75 % ) 理由が若干色あせた形となってしまった。

特に昨年財政赤字早期削減のために実施された、電気・ガス料金引き上げの後遺症が未だ

拭い切れておらず、年率ベースで + 32.1 % ( 5 + 31.6 % ) となお高い水準に留まっている

ことが足かせとなっているようだ。  さらに同国平均賃金がここに来て大きく上昇してきている

こともあり、インフレへの影響も取りざたされている。

( 2007 平均賃金 年率 4 + 8.4 % 3 + 8.4 % 2 + 5.7 % 1 + 7.1 %)

ハンガリー中銀は CPI 同様、賃金動向を注意していると述べている。 なお 5月の平均賃金

上昇率は 7 18日に公表されるが、市場予測は + 8.1 % と前月比若干低下する見通し。

6 CPI + 8.6 % と高止まりを示したことで各社エコノミストは 7 23日に開催される

ハンガリー国立銀行 政策決定会合で、政策金利は据え置かれるとの観測を示している

ところが多く、夏休みシーズンを迎えることもあり、次の政策金利引き下げは9月以降になると

している。

同様にオブラス・ハンガリー中銀理事は、「 6月の CPI 上昇には少なからずショックであり、

良いニュースではない。 ただこの数値が今後予測されている金利引き下げに影響を及ぼすとは

考えていない」と、今後も利下げ方向を崩していないとする楽観的な意見を述べている。



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上から ↓

また昨日ジュルチャーニ首相は今年のハンガリー GDP 見通しを発表。当初政府の見通しで

ある + 2.2 % を上回り + 2.5 % + 3.0 % となろうと公表。 同時に 2008年は、

+ 3.0 % + 3.5 %2010年までに + 4.0 % の成長を見込んでいるとしている。

さらにバレス財相は、「現在ユーロとトレーディング・バンドでコントロールされているハンガリー・

フォリントは将来完全に自由化してもおかしくない。 閣僚のあいだでもフォリントを自由取引に

移行させる議論をすることをタブー視する向きはない」と新聞インタビューでコメント。  

現ハンガリー・フォリントは対ユーロで上限 240.01  下限 324.71 のレンジ内で制御されて

いるが、フォリントがほぼ上限バンドに差し掛かっていることや、兼ねてからハンガリー中銀は、

輸入インフレを避けるためにもフォリント高が望ましいという考えを示していたこともあり、

取引バンド撤廃議論が今後大きくなってきそうだ。 特にバレス財相が、インタビューの中で

「近々」 という言葉を使っていることもあり、夏休み明けにバンド撤廃を連想した関係者も

少なからずいたという。

昨日のハンガリー金融市場、高止まりした CPI 数値で長短金利とも小幅上昇 ( 1.0 bp )

したものの、早急な利下げが見込まれないことやバレス財相のコメントでフォリントは上昇。

6 8日に対ユーロで 255.55 の安値をつけた後ほぼ一貫して買い込まれ、昨日は 246.55 と、

この 1ヶ月間で 3.5 % の上昇となっている。

米 ド ル/対 円:   122.50円 + 0.75    02年国債:  6.81 % + 1.0 bp

フォリント/対 円:     0.683円 + 0.004    10年国債:  6.58 % + 1.0 bp

米ドル/フォリント: HUF 179.35 + 0.400   原油価格:   $ 72.56 - 0.25ドル

ユーロ/フォリント: HUF 246.55 + 0.100    金価格:  $662.10  2.90ドル



最近ハンガリーの金利低下が著しい。米国金利の急上昇の影響を受け、新興国金利が

急騰した 6 8日、ハンガリー 2年国債利回りも 7.25 % まで上昇したが、昨日引けは

7.05 % と、一週間強で 20 bp もの金利低下となり、10年債利回りも 6.87 % から

6.72 % へと 15 bp も下がっている。

これは5月の CPI が年率 8.5 % と、3 + 9.0 %4 + 8.8 % から順調に低下して

いること。 さらに今年の財政赤字の当初見積もりが対 GDP 6.8 % であったのが

税制改革が功を奏し、6.4 % 程度にまで減少すると見られていること。 また 2008年度の

目標数値である 4.3 % の達成にもほぼ目処が付き始めていること。 さらには輸出が好調で、

経常赤字も低減していることなどを背景に今月 6 26日のポーランド国立銀行 定例

理事会において利下げ措置は難しいとしても、7 23日の政策決定会合で 25 bp の金利

引き下げが視野に入ってきたことが主要因。

市場では 夏場以降の CPI の大幅低下 (昨年の増税による CPI 急上昇の反動が

見られる) が見込まれていることから、今後 1年間で政策金利が 125 150 bp 引き下がる

との観測が強く、これがハンガリー国内金利の低下を導いている。

唯一気になる点として、国内の賃金上昇がこのところ目立ち始めている。 本日 4月の平均

賃金が発表になるが、市場予測は年率 + 8.0 % と、3月の + 8.4 % からやや下回るものの

高水準を維持。これか 7.5 % を下回っているなら、利下げ観測がもう一段進みそうだ。

利下げ期待による国内経済環境の改善から、フォリントも続伸している。 上記どおり

608日に激震が新興国市場を襲ったこともあり、フォリントは対ユーロで 254.50 まで

下落したものの、その後順調に買い進まれ、先週後半には 250.00 を割り込む展開。

昨日は小動きながらも、利下げ期待感の高まりとともに、今後もう一段の上昇を見せる

ことも考えられる。

昨日のハンガリー債券市場、2年国債は 5.0 bp10年債は 8.0 bp 利回り低下と、イールド・

カーブ全体に大きく買い込まれて引けている。

現在のところ市場関係者の間で利下げ予測は少ないものの、来週火曜日 (6/26) の定例

会合後に予定されているシモール中銀総裁の記者会見に注目が集まりそうだ。

米 ド ル/対 円:    123.70円 + 0.20    02年国債:  7.05 % - 5.0 bp

フォリント/対 円:     0.664円 + 0.003    10年国債:  6.72 % - 8.0 bp

米ドル/フォリント: HUF 186.35 + 0.350   原油価格:   $ 69.09 + 1.09ドル

ユーロ/フォリント: HUF 250.05 - 0.100    金価格:  $659.90 + 1.20ドル



7 任期満了で 2人のハンガリー国立銀行副総裁が退任するが、その後任として挙がって

いるキラリー副総裁候補 (首相、大統領の承認は下りており、あとは議会承認を残すのみ) が、

雑誌社とのインタビューでコメント。 「ハンガリー国立銀行はインフレを防御することによって

信頼性を得ながらも、経済成長を考慮した金融政策を考えなければならない」とし、「中銀の

最終目標はインフレだけではなく、経済成長や競争力にも眼を向ける柔軟性に富んだ

金融政策が必要ではないか」と述べた。

これは昨年増税の影響でインフレが 9.0 % まで上昇。 同中銀の中期的インフレ・

ターゲットが + 3.0 % にもかかわらず、それに近づけようと政策金利を 8.0 % にまで

引き上げたのは同国経済にとって大きな圧力となってしまった。 このような増税による

インフレ上昇という例外的な現象に対して、中銀はより柔軟性のある金融政策で対処する

べきではなかったのかと、暗にヤライ前中銀総裁の手法を批判するような内容となっている。

キラリー新副総裁候補は、以前からの発言において、その内容にハト派的言い回しが多く、

現シモール総裁も含め、「今後ハンガリー国立銀行の金融政策運用スタンスが景気重視の

方向になるのでは」 との意見が多い。 同時にキラリー副総裁候補は、「過去の金利設定に

おいて、政策決定メンバーにおけるハト派とタカ派との意見の一致にセンスがない」 と

皮肉にも近いコメントを出している。

いずれにせよ 7月から政策決定メンバーの一人となるが、利下げ支持派にとっては好都合の

人選となるかもしれない。

一方ハンガリーの政局では、連立を組んでいる自由民主連盟 (SZDSZ) から、「構造改革の

スピードが遅すぎる」とクレームを持ちかけられていた社会党 (MSZP) は、現在国営管理

されている国民健康保険システムを地域に分散かつ民営化し、効率化を図ることを提案。

これにより老朽化した組織の再構築と保険料収入の再運用化およびコスト削減が図れると

している。 この法改正は今年秋口に議会提出。 運営は来年からを目指しているという。

これに対し自由民主連盟は、「時間がかかったものの この改正案には満足するものが

ある」 と評価。当面の課題であった連立政権解消の危機は、回避できるようだ。

 

昨日のハンガリー債券市場、市場の落ち着きから一昨日の新興市場で売り込まれた分を

取り戻し、2年債は 5.0 bp もの金利低下の 7.14 %。 

フォリントも対ユーロで 251.75と高値で引けている。

米 ド ル/対 円:     123.00円 + 0.45   02年国債:  7.14 % - 5.0 bp

フォリント/対 円:     0.651円 + 0.006   10年国債:  6.85 % - 3.0 bp

米ドル/フォリント: HUF 189.05 + 1.450   原油価格:  $ 67.65 + 1.39ドル

ユーロ/フォリント: HUF 251.70 + 1.450    金価格: $655.90 + 3.20ドル



昨日ハンガリー政府は今年度、およびその先の同国財政赤字見通しなどの報告書を

公表した。 2004年に欧州連合に加盟したハンガリーは、通貨統合適合基準である

GDP 3.0 % 以内を達成することが出来ず、昨年は 9.2 % と、基準の 3

以上に膨らんでいた。 このため欧州通貨委員会はハンガリーに対して早急な財政赤字

削減を厳命。 赤字削減に遅延が生じた場合、欧州連合からの補助金を打ち切るとした

ため、ハンガリー政府は昨年付加価値税増税、医療補助金の削減、公共料金の引き上げ

などで対処。 その結果増税分がオンされた3CPI は年率ベースで 9.0 % にまで跳ね

上がったが、この税金分のCPIへの負荷が秋口以降取り除かれるため、同国 CPI は急速に

低下することになる。  今回ハンガリー政府が改定した各種指数は下記の通り。

.                   2007年     当初見通し     2006

* 財政赤字 ( GDP)  + 6.4 %      ( + 6.6 % )     + 9.4 %

* 累積債務 ( GDP)  +66.2 %      ( - )     +70.1 %

* 経常赤字 ( GDP)  + 3.6 %       ( + 5.0 % )     

* C.P.I. (年率) 今年 3月  + 9.0 %      今年年末 + 4.5 % + 5.0 %

* 財政赤字見通し (昨年時点での見通し / 対 GDP)

.    2006年 + 10.1 %    2007 + 6.8 %    2008 + 4.3 %    2009 + 3.2 %

 

上記のように大幅な増税などにより、昨年予測した財政赤字は、対 GDP比で当初予測で

あった2006 + 10.1 % + 9.4 % へと低下。 また今年も + 6.8 % の予測が + 6.6 %

へと減少し、さらに + 6.4 % に低下する見通しとなっている。

この報告書と平行し、先週土曜日にジュルチャーニ首相は、更なる医療補助と教育費補助の

改革に意欲を示し、社会党 (MSZP) と連立政権を組んでいる自由民主連盟 (SZDSZ)

ほぼ基本合意に近づいていると語り、改革スピードが遅く、場合によっては連立解消も

辞さないとクレームを入れた自由民主連盟の意見を取り入れる見解を開いている。

またコカ自由民主連盟党首は、「まだ詳細部分について詰めなければならない部分がある」と、

より厳格な財政赤字削減が必要と示唆。 一方社会党内部からは、「貧困者に対しての

補助金カットは、充分な福祉がなされない」と大幅削減に難色を示す声も強い。

自由民主連盟は社会党に対し、6月末を期限に医療・教育支出削減の格子を求めると

しており、これが出来なければ連立政権外から社会党を支えると、社会党への協力関係の

希薄化を示している。

現在一般民衆による社会党への支持率は 20 % を切っており、連立政権自体への

支持率も 25 %程度。 この体制が壊れるなら議会解散も視野に入る可能性もあるため、

両党合意の可能性が高いと思われる。

昨日のハンガリー金融市場、先週金曜日の急落から主な新興市場国に巻き戻しの買いが

続き反転。 ハンガリーもその動きに乗じたこと。 また政府による財政赤字改善および

CPI 見通しを好感し、フォリントも対ユーロでしっかり推移。 

債券市場ではフォリント高が短期債の利回りを急低下させ、2年国債は前週末比 10 bp

利回り低下。 10年債も 6 bp金利低下で一日を終えている。

  ル   対 円 :   121.75円  + 0.10    02年債: 7.15 % -10.0 bp

フォリント/対 円 :     0.643円  + 0.001   10年債: 6.81 % - 6.0 bp

フォリント/対米ドル: HUF 189.40  + 0.450   原油価格: $ 65.97 + 1.21ドル

フォリント/対ユーロ: HUF 252.90  + 0.700    金価格: $659.00 + 8.70ドル



世界でも珍しい一院制を採るハンガリー議会、386議席で任期 4年の制度となって

おり、20064月の総選挙から一年強が経とうとしているが、週末与党連立政権に

軽い緊張感が走った。

現在のハンガリー議会与野党議席数は、

(1) 社会党            (MSZP)   190議席   第 1与党

(2) 自由民主連盟        (SZDSZ)    20議席   第 2与党

(3) フィデス青年市民同盟   (Fidesz)   140議席   第 1野党

(4) キリスト教民主人民同盟          23議席   第 2野党

(5) ハンガリー民主フォーラム (MDF)   11議席   第 3野党

ジュルチャーニ首相が率いる社会党 (MSZP) の議席数は 190議席と、議会過半数で

ある 194議席に届いていないこともあり、自由民主連盟 (SZDSZ) 20議席と連立政権

(合計 210議席) を組み議会運営を司っている。 一方野党議席総数は 174議席で

その差 36議席と与党優勢の状態。

しかしながら週末与党第 2党である自由民主連盟 (SZDSZ) は社会党に対し、「国内

構造改革のスピードがあまりに遅すぎる」 として、連立政権を脱退する可能性を示唆した。

さらに自由民主連盟は、連立政権の運営工程と見直しを社会党に迫っており、特に

社会経済システムのオーバー・ホールや、医療費支出改革に対する社会党の否定的な

態度に業を煮やしたかのように圧力を与え始めた。

ジュルチャーニ首相はこの自由民主連盟の要求に対しすばやく反応。 医療支出、教育、

税制システムの更なる改革に努めるとし、週内に自由民主連盟と会談を持つ予定。

昨年ハンガリーでは与党の政策を偽っている裏テープが発覚し、増税と共に市民の暴動に

近いデモへと発展。 結果野党第一党であるフィディス青年市民連盟の人気が高まり、

解散総選挙の声が時として浮上していた。 その後一連の構造改革が終了し小康状況を

辿っていた連立政権であるが、財政赤字削減が急務の課題となっていることもあり、

20議席と少数政党の自由民主連盟は 解散総選挙よりも更なる構造改革を野党に

迫ったほうが有利との考えで今回の連立解除を社会党に匂わせたようだ。

社会党内では医療改革は弱者切捨てとなるため反対の声が多いものの、最近の世論

調査で同党の人気が徐々に下がってきていることもあり、ジュルチャーニ首相は

自由民主連盟の要求をすんなりと受け入れる可能性が高く、もう一段の財政赤字

削減が期待されそうだ。

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