Dvořák: String Sextet in A Major, Op.48, B.80
ほぼ半年ぶりの更新となる。思うことがまとめられないならば、まとめられるまで待つしかなかった。曲も折に触れて何度も何度も聴き返したのだが、やはり名曲は飽きることがない。
これまで書いてきた室内楽について語れなくなってきた自分がいる。呼吸のように息を吸わなければ何も吐き出せない。やはり自分の身体を動かして楽器を鳴らし、譜面を読み、楽曲を感じ、楽しめなければ何の感興も起こらないということか。大病のあと、楽器に触れられなくなって久しい。でも当然ながら聴く喜びということだけは残っている。五感のうちの聴覚だけではどこか物足りないのかも知れない。
今後、ここで取り上げる曲についても、新鮮な体験や感動ではなく、遠い日の懐かしい思い出としてしか語れないことになるだろう。それがさびしい。
たまたま Youtube で見つけた30数年前のスメタナ四重奏団の最後のコンサートの動画がこの弦楽六重奏曲だった。懐かしさで聞き入ったのだが、画像を見ると舞台が狭苦しく、奏者の並び方が(6人なのでいつもの4人の並び方とは違って)不自然に見えた。驚いたのはヴィオラのシュカンパとチェロのコホウトがそれぞれ第2パートを奏いていて、助っ人参加の若い奏者の方に第1パートを任せていたことだった。ここにも彼らの「老い」を感じて寂しくなった。
立ち去りし老カルテット聴き偲び
The Smetana Quartet - Antonin Dvorak string sextet in A Major, Op. 48
this is their farewell performance in Prague
私が最後にこの曲を奏いたのは手術の3カ月前だった。その時はまだまだやれると思い込んでいたので、第1チェロをやらせてもらえて嬉しかった。一番広い練習室に扇のように6人が円弧を描いて並ぶのも壮観だった。室内楽と言いながらも、弦楽の6重奏曲、菅楽入りの7重奏曲、8重奏曲ではお祭りのイベントのように心が華やぐのを禁じ得なかった。
楽譜はIMSLPにオイレンブルク社版のスコアとパート譜が収容されている。
Dvořák: String Sextet in A Major, Op.48, B.80
第1楽章:アレグロ・モデラート

冒頭は広大な草原のイメージ。第1ヴァイオリンと第1チェロによって最初のテーマがしみじみと奏でられるが、それは1小節単位に分けられるモティーフの組み合わせなのがわかる。そのモティーフを前後交互に絡ませて曲想が展開していく。第2ヴァイオリンと第2ヴィオラの波が揺れるような装飾は草原を渡る風を思わせる。

別の新しいテーマが第1ヴァイオリンや第1ヴィオラから提示される。ちょっとわらべ歌のような弾んだリズムが楽しい。積み重なるうちに広大な展望がひらける印象がある。
第2楽章:ドゥムカ、ポコ・アレグレット
Dvořák: String Sextet in A Major, Op. 48, B. 80: II. Dumka. Poco allegretto
Wiener Oktett
ボヘミア独自の哀歌ドゥムカの楽章。ABCAの三部構成。最初はニ短調、4分の2拍子。憂いを帯びた踊りのような少し速めのメロディが第1と第2ヴァイオリンで奏でられる。チェロはピチカート。

二番目の部分は、アダージォ、8分の4拍子。嬰ヘ短調。ゆったりとまるで葬送行進曲のように進む。第2チェロの拍頭打ちが全体の歩みを決める。やはり第1と第2ヴァイオリンが哀調たっぷりの曲を歌う。

三番目の部分は長調に転じるが、前の部分とは同名調の嬰へ長調になる。しかし譜面上は#6つになるので、弦奏者にとっては厄介だ。牧歌的な流れにどこか宗教的な平安の祈りが込められて美しい。
第3楽章:フリアント、プレスト
Dvořák: String Sextet in A major, Op. 48: 3. Furiant (Presto)
Members of the Berlin Philharmonic Octet

フリアントとはボヘミアの民族舞踊の一つ。基本は快活な3拍子のリズム。イ長調。

鬼ごっこで追いかけるような素朴な愉快さがある。

舞曲の終りに中低音部だけが残って、まるでたたらを踏むように見栄を切るところが楽しく印象的。

中間部は第1ヴァイオリンの流麗さが美しい。第1ヴィオラに交代するのも面白味がある。
第4楽章:フィナーレ、主題と変奏曲、アレグレット・グラツィオーゾ・クァジ・アンダンティーノ
String Sextet in A Major, Op. 48, B. 80: IV. Tema con variazioni. Allegro grazioso quasi andantino
Kocian Quartet · Josef Kluson · Michal Kanka

短い主題と変奏曲が連なる楽章。主題は荘重に第1ヴィオラが奏する。ヴァイオリンは2人とも休み。英ヘ短調の響きがする。

第2変奏はスケルツォ風の動きが各パートに伝播する。

第3変奏は少しテンポを落として、第1チェロが野良作業の牛か馬のように苦役を耐え忍ぶような動きを見せる。

フィナーレ楽章の追い込み(ストレッタ)に入ると各パートに躍動するような動きがみなぎってくる。気持を晴れやかに高めて行く作曲手腕は見事と言うしかない。

























































































































































