Joseph Wölfl : String quartet in c-minor, Op.4 No.3 “Höllen-Quartett”
何年も何年も探していた譜面がやっと見つかった。といっても前提条件が「無料閲覧」だからであって、外国の出版社から高価な印刷譜を買ってしまえば問題ないのだが、貧乏かつ奏楽活動から引退した老人のささやかな願いだった。IMSLP にはなかなか収容されず、音大図書館にも所蔵なしなので気長に待つしかなかったのだ。
その曲とは、古典派後期のヴェルフルの弦楽四重奏曲 ハ短調 作品4の3である。もう何年も前のことになるが、最初にモザイク四重奏団による演奏でこの曲に一風変わった魅力を感じて、その譜面を見てみたい、そしてあわよくば演奏してみたいと思ったからだ。待っているうちに加齢と病気で演奏の道は断たれた。

ザルツブルク出身のジョゼフ・ヴェルフル (Joseph Wölfl, 1773~1812) はベートーヴェンよりも3歳年下だが、モーツァルトの父レオポルトやハイドンの弟ミヒャエルの指導を受けて、古典派の作曲技法を身につけた。若くしてウィーンに出て、ベートーヴェン等に伍して活躍したが、その後欧州各地をピアノ演奏家および作曲家として巡演していた39歳のときロンドンで急死した。品格のある優美な古典派の作風を継承した人だった。
ヴェルフル(Woelfl とも表記する)は埋もれた作曲家だったが、AIで調べてもらった結果、ドイツのボンに Wölfl Haus という研究総本部のような施設があることがわかった。さらに同住所の Apollon Musikoffizin という出版社からヴェルフルの楽曲が出版されていた。下記は問題の弦楽四重奏曲 ハ短調の楽譜紹介の頁である。
Joseph Wölfl : String quartet in c-minor, Op.4 No.3 “Höllen-Quartett”

「でもそれじゃ、ここで楽譜を買えってこと?」という疑問になるが、そうしなくてもタダで譜面が見れるのだ。PCで作譜したものをここではYoutube で(機械音のままだが)全曲鳴らして、画面上で譜面を目で追えるようにしている。あとはどれだけの人に興味を持ってもらえるか?ということになる。( H.N.さんのDTMテクニックとは比べようもないほど稚拙なものだが、無いよりはマシだろう)
最後にもう一つの話題は、この曲が「地獄の四重奏曲」(“Höllen-Quartett”)と呼ばれていることである。この曲は1796年の作曲と考えられているが、その前の年1795年にヴェルフルは歌劇(ジングシュピール)『地獄の山』 (Der Höllenberg) をシカネーダーの台本で作曲し、初演している。そこそこの評判だったようで、その劇中で使われたモテイーフをこの四重奏曲にも取り入れていたので、人々からこの渾名が付けられたのだという。この曲は彼の青年期の秀作の一つと考えられている。
Streichquartett, Op. 4 No. 3, C-Moll: I. Allegro
Quatuor Mosaïques

冒頭から不穏な響きのシンコペーションで始まるのが印象的だ。このモティーフ(譜例では赤枠)は楽章の至る所に頻繁に現れる。焦燥感に満ちた神経質なモティーフ(緑枠)と共にハ短調のメランコリックな主題を形成している。地獄の鬼火の浮遊感とでも言えるのかも知れないが、ここでは標題音楽ではないので、純粋な音楽表現として受けとめるべき。

それに続く経過句では、決然と試練に立ち向う意志を示すようなモティーフで、悲壮な表情を見せるが、そこにも最初のシンコペーションが付きまとう。

第2主題では、同主調の変ホ長調に転じて、安定した気持になる。しかしながらシンコペーションのモティーフはここでも執拗に登場する。ただし長調なので平穏な雰囲気は保たれている。このように曲の根底が背骨のように一貫しているのも手応えが感じられて印象が残ることになるのだろう。













































































































































