ホフマイスター:フルート四重奏曲 ハ短調 作品16の2 | 室内楽の聴譜奏ノート

室内楽の聴譜奏ノート

室内楽の歴史の中で忘れられた曲、埋もれた曲を見つけるのが趣味で、聴いて、楽譜を探して、できれば奏く機会を持ちたいと思いつつメモしています。

Hoffmeister : Flute Quartet in c-minor, Op.16 No.2
 
 日々の散歩コースの一つに緑道を抜けてコミュニティ・センターまで歩き、そこで小休止して帰ってくるのがある。休息できるスペースにはあまり利用者も多くなく快適なのだが、一つだけ気になるのはそこで流れているBGMである。通例当たり障りのない曲が選ばれるが、ここでは超名曲たちの選集で、あまり連日通うとそれらの名曲に「辟易」してしまうのだ。「曲を聴く」という行動は、名曲であろうと珍曲であろうと、心では「どこかに新鮮味」を感じながら聴きたいと思う曲を味わうことなのだ。無闇な繰り返しは毒気になる。耳に入ってくる曲を気にし過ぎる自分も悪いのかもしれないが、気にしないふりをするのも結構難しいものだ。
 

 

 かなり前に「古典派フルート四重奏曲38選(一人一曲)」を書いたことがある。室内楽をする仲間内でも人気のあるジャンルだが、書いたのはモーツァルト一極集中の傾向をなんとか分散したかったからでもあった。フルート四重奏曲は古典派時代に流行し、多くの作曲家が作品を出版していたのだが、モーツァルト以外はそれらの楽譜類は図書館や書庫の棚に無造作に放置され、忘れ去られて二百年になる。ようやく21世紀に入って再発見、再評価される曲が出てくるようになったのは嬉しい。

*関連記事:
古典派フルート四重奏曲38選(一人一曲) 
https://ameblo.jp/humas8893/entry-12616010830.html

 モーツァルトの友人だったホフマイスター(Franz Anton Hoffmeister, 1754~1812) も非常に多くのフルート四重奏曲、その他の室内楽曲を残している。自分で楽譜出版社を立ち上げ、自作をはじめ、モーツァルトの作品も出版したが、当時は作品番号の管理もいい加減で、版元が違うと番号も勝手に付与してしまったので、重複や飛び番が当たり前だった。
 ここに取り上げた作品16の2は、モーツァルトが作らなかった「短調仕立て」の曲で注目に値する。10年ほど前にyoutube にイスラエル・フィルのフルート奏者だったショハムが仲間たちとこの曲をUpしたのが最初で、それ以来このハ短調の曲は少しずつ演奏機会が広がっているように思う。


 

楽譜は独ハインリヒスホーフェン社 Heinrichshofenからきれいな印刷譜が出ているが、下記のKMSA室内楽譜面倉庫でも参照できる。
Hoffmeister - Flute Quartet c-moll_Op.16-2



第1楽章:アレグロ
Franz Anton Hoffmeister - Flute Quartet in C minor - 

            Cuarteto FIMA

 冒頭から嵐を思わせるハ短調の荒々しい骨太のテーマがフルートによって提示される。非常に印象的だ。



 第二主題は変ホ長調でなごやかなテーマになるが、フルートの高低音を飛び跳ねる勢いは持続している。


第2楽章:アンダンテ
Flute Quartet in C Minor, H. 5929 No. 4: II. Andante (Live)

 Boris Bizjak(fl), J-A.Richardson(vn), L.Trotovšek(va), T.Nagata(vc)

 ハ長調、4分の3拍子。穏やかなのどかさに満ちている。


 中間部では弦楽部でやや不穏な動きを見せるが、すぐに回復する。


第3楽章:アレグロ・ノン・モルト
Flute Quartet in C minor, Op.16 No. 2: Allegro non molto

The Galeazzi Ensemble
L.Holliday(fl), R.Wade(vn), V.Guiffray(va), G.Deats(vc)

ハ短調、4分の2拍子。ここでも高低音の飛躍のある動きがフルートで奏でられる。変奏曲風に次々とテーマが変化していく。


途中で一時ハ長調に転じて、のどかなテーマをヴァイオリンとオクターヴで奏でる個所もある。


またハ短調に戻り、フーガ風のモティーフに変容する。


終盤には疾走感のある弦の刻みの上をフルートが憂いを秘めたメロディで歌う。これらの多様性は聴いていて快い。
 

 

 

 

 

 

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