猛暑の日だった。
新神戸から三ノ宮へ地下鉄を乗り継ぎ、地上で出た途端に、まだ昼前の街は、湿った熱波を叩きつけてきた。神戸は素敵な街だ。こじんまりとしており、大阪のような大雑把な空気はない。六甲山へ向かって坂を登る。北野坂という坂だ。この通りには、ジャズ・クラブだけではなく、様々なレストラン、ビストロ等が並ぶ、観光客なら必ず登る坂だ。汗を垂らしながらようやく到着した「カフェ・ド・パリ」。フランス料理のお店のランチタイムに彼女のライブが開かれる。
彼女は大学のESSクラブの後輩だ。彼女は僕のことを現役時代から知っていたらしいが、残念ながら僕は覚えていない。そんな彼女が岐阜でプロのジャズ・シンガーをやっていると聴いた。実際、ESSクラブ設立50周年の会に彼女がゲストで呼ばれ、数曲歌った。重厚な低音が魅力なんだろなぁと思われるしっかりとしたボーカルにひかれた。
彼女からメッセンジャーで、新しいアルバムをリリースしたと知らされた。それを聴いた瞬間に、これはすごいと思った。そのアルバムが「Rockin' Jazz in a room」ロックの代表曲、Saturday in the parkやSmoke on the Water等を、スイングのジャズに焼き直すだけではなく、その曲のロックな部分も活かされていて、このアルバムは編曲の勝利だと思った。
その録音メンバーで初の関西ツアーをやる。その初日が神戸だ。一も二もなくチケットを手に入れて、馳せ参じた。大学時代の仲間も5人集まってくれた。
そのアルバムの編曲をしたのが、この人。平手裕紀氏。ひょうひょうとした雰囲気の青年で、トランペットを吹きながらピアノを演奏するという芸も持っている。「モーツアルト平手」とニックネームをつけた。
折しも神戸はJazz100周年の年で、様々なライブが街中で予定されているらしい。港町神戸にはJAZZがよく似合う。