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北杜市立泉小学校PTA会長として、よりよい子どもの育ちと学びのために、雑巾よろしく脳をしぼりながら、連日学ばせていただいています。
地域とともにある学校づくり推進フォーラム 2024山梨
今月の三連休の初日は、「地域とともにある学校づくり推進フォーラム 2024山梨」が甲府市の山梨県立文学館・山梨県立美術館であって、参加しました。
今回のフォーラムは、「学校と地域で高め合おう! 子供・教師・家庭・地域のウェルビーイング~コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的な取組を通して~」というテーマで開催され、私は午前のサブプログラム、午後のメインプログラム両方に参加しました。
ワークショップ・熟議体験
そのうち、午前のサブプログラムについては地域学校協働活動推進員などを対象としたワークショップ・熟議体験でした。地域学校協働活動推進員とは、地域学校協働活動を実施するに当たり、企画・提案や関係者との調整など全体のコーディネートを行う調整役です。
後ほど説明しますが、泉小中学校コミュニティ・スクールにこの地域学校協働活動推進員はいません。
ただし学校運営協議会委員でもあり、また見守りボランティア活動など、地域学校協働活動推進員に類する活動も私がしているということもあって、参加しました。私のグループのメンバーの多くは指導主事の人たちであり、6人のうち私を含めて5人が山梨県民でしたが、大分県からきた主事の方が1人いました。
ワークショップは「先行きが見えない時代を生き抜く力を育むためには、地域社会との良質なつながりや、信頼できる大人との豊かな関わりをすべての子供に届けられる学校づくり・地域づくりが重要」という了解のもとに、熟議体験を行いました。
まず、「第1段階『目指す子供の姿』を言葉にしてみよう」で、これからの時代を生き抜く子供たちに、「育てたい力」や「できて欲しいこと」など目指したい子どもの姿について一人3枚以上付箋に書き、グループ内でそれらを見せ合いながら、自分がそう考えた理由やエピソードを捕捉しながら紹介しました。
そして「育てたい力・ベスト3」を選び、丸型模造紙の中央に貼りました。
私たちのグループでは学ぶ力、つながる力、表現する力が選ばれました。
次に、「第2段階 現状を見つめ直してみよう」で、上の3つの目指す子どもの姿を育んでいく上で、「足りないこと」や「不安・心配なこと」、あるいは「現在、実施できていること」や「協力してもらえそうなこと・相手」などについて付箋に書き出して、グループ内で順番に紹介しながら、丸型模造紙の外側の縁に貼りました。
そして、「第3段階 『推進員(地域コーディネーター)としてできること』を考えてみよう」で、第1段階で出した「目指す子供の姿」と、第2段階で出した「現状」を踏まえながら、地域学校協働活動推進員(地域コーディネーター・学校と地域のつなぎ役)として「あなたができそうなこと」について書き出しました。それから、全員が自分の付箋を紹介しながら、青色の線の外側に貼っていきました。
最後に、どんな意見が出たか、グループごとに概要を発表しました。
興味深かったのは、各グループから発表された概要がコミュニケーション力、自己肯定力、学ぶ力といったところにだいたい収斂していたということでした。
面白いワークショップでしたが、地域学校協働活動推進員がグループにいなかったことが残念でした。
分科会
午後のメインプログラムは分科会でした。分科会は第1分科会・義務教育段階、第2分科会・高等学校、第3分科会・特別支援学校の三つに分かれていて、私は第1分科会に参加しました。
その理由は、私自身が泉小中学校学校運営協議会委員であるからということと、委員を務めながら学校運営協議会が機能し切れていないのではないかという問題意識を持っていたからです。その解決のヒントを得たいというのがこのフォーラムに足を運んだそもそもの動機だったので、こちらの分科会に参加しました。
分科会は、山梨県昭和町立押原小学校校長の深澤秀興さんから「令和の日本型『自分たちの“まち”の私たちの小学校』づくり―地域と連携・協働した教育課程の実現に向けて―」、高知県高知市立春野中学校校長の小川真悟さんから「『持続可能な地域とともにある学校』の体制の構築~めざす子ども像を中心としたチーム春野の実現 きらっと いきいき あったかい 教育を目指して~」、東京都八王子市立松木中学校学校運営協議会会長の金山滋美さんから「子どもたちの未来を支える両輪の活動を目指して~八王子市立松木中学校と八王子市の取り組み~」という発表がそれぞれありました。
いずれも示唆に富む内容で、泉小中学校学校運営協議会の現状について抱えていた疑問をかなり解くことができました。
学校運営協議会における熟議の充実
まず、気がついたのが、それぞれの学校運営協議会の年間開催回数です。押原小学校学校運営協議会が4回、春野地区小・中学校運営協議会が6~7回、松木中学校運営協議会が12回、加えて臨時会もありました。私が委員である泉小中学校学校運営協議会の年間開催回数は2回ですから、これには注意せざるを得ませんでした。
それではなぜ6~7回、あるいは12回という回数になるのでしょうか?それは、熟議が充実することによって委員の当事者意識が高まるからです。小川さんによれば、教員・保護者・地域住民等、多くの当事者が集まって課題について学習・熟慮し、議論をすることにより、互いの立場や果たすべき役割への理解が深まるとともに、それぞれの役割に応じた解決策が洗練され、個々人が納得して自分の役割を果たすようになるということでした。
またそれによって、校長にとっても、学校運営協議会は心強い存在となるということでした。学校運営協議会は法律に基づいた合議体です。現代では社会や問題が複雑化し、新型コロナウイルス感染症への対応や校則の改正など、学校独自で判断することが難しい家庭や地域が係ってくるような課題もあります。その際には、学校運営協議会で議論を重ねることで、校長だけで判断したのではなく、保護者や地域などの関係者で熟議・決定したということが校長の背中を後押ししてくれることにもつながり、保護者や地域で実際に行う取組みを担ってくれる可能性も生まれます。
そうしたことを実現するためにも校長は、学校と地域が一緒になって行う活動だけではなく、学校だけで解決することが難しい、例えば「いじめ」「不登校」「学力向上」「防災」「総合的な学習の時間の活用方法」等の課題やありたい姿を共有する必要があります。また委員には“当事者”として参画してもらうことで、目指す目標を共有しながら、目標の実現に向けた協議を重ねた上で、学校の取り組みを後押しすることが求められます。
そのためには学校運営協議会をセレモニーにせず、熟議を重ね、ベクトルを合わせ、いざという時に即決できる信頼関係が最も大事です。
そうした熟議を通した実践例として、松木中学校運営協議会の金山さんからは以下のような例の報告がありました。
まず、課題として「毎年の不登校の生徒の増加」がありました。小学校ですでに不登校になる児童もいるので、小学校と連携して対策を講じる必要があります。「どうすれば不登校を減らせるか」という問題を設定し、3校(松木小学校・長池小学校・松木中学校)合同学校運営協議会での熟議、地域の人々・保護者・教職員を交えた熟議へと進めていきました。
具体的な内容として、令和2年11月「子ども達が生き生きと活動できるために~不登校から考える」1をオンライン開催しました。そこでの熟議を通して、「不安を取り除くことが大切。」「不登校を無くさなければではなく、物理的心理的な安全基地をつくる。」「『大丈夫』を伝え続ける。」ことが大切であるという共通認識に至りました。
その次に、令和3年2月「子ども達が生き生きと活動できるために~不登校から考える」2を対面開催しました。そこで熟議の結果、「大人は子どもたちが学校に帰ってきてくれると嬉しいが、大事なことは、子どもたちが、将来社会に出て自立していくこと、あるいは、様々な支援を受けながら生活していけることが、不登校対策の一番の目的ではないか。そのためのつながる場所の提供をできないだろうか。」という結論になりました。
それを受けて令和5年3月より実際のサードプレイスこどもの居場所「ぬくぬく」を近くの自治会館を借りて開設しました。熟議を経て、大人が思いを共有しているので、実施のハードルは低かったといいます。
地域学校協働本部による協働活動の充実
さて、実際に目標を実現していくためには関係者が熟議等で確認をした共通のビジョンに向かって、それぞれの強みを持ち寄って実現する“協働”が重要となります。
熟議も、よりよい協働を生むために関係者がそれぞれの視点から見える「課題」や「実現したいこと」を共有し、そこからビジョンや自主的・実践的な活動を「話し合い」を重ねながら生み出そうとするものです。
したがって企画・計画段階から多様な関係者が参画し、関係者でその効果を振り返ったり、そこから次の活動につなげたりすることが肝要です。そのためには地域学校協働本部の設置等を通して、そうした協働活動を行いやすい環境を整えることが必要だそうです。
そこで各報告において、次に着目したのが組織図です。春野コミュニティ・スクールと松木中学校運営協議会には学校運営協議会と一緒に地域学校協働本部があり、押原小学校学校運営協議会にはありませんでした。
分科会の前にあった文部科学省の説明によると、地域学校協働本部は地域の人びとや団体による「緩やかなネットワーク」を形成した地域学校協働活動を推進する体制です。
その目的は地域で子どもを育てることであり、その役割は学校・家庭・地域をつなぐことです。
すでに学校運営協議会を設置しているところでは、地域学校協働活動とともに行うことで、地域の関係機関(公民館、図書館、社会教育センター、児童館、子ども会、青年会議所、商工会、商店街、農業協同組合など)や地域の人びとの力を再結集することができます。
学校運営協議会でベクトルを合わせ、地域学校協働につなげることで、「子どもの豊かな体験と学び」が可能になるということでした。
つながりはつなげている人がいるからこそ育まれます。その担い手が地域学校協働活動推進員、地域コーディネーターです。いわば地域の力を学校教育につなげる人財ですが、春野地区小・中学校運営協議会が6名、松木中学校運営協議会が4名、押原小学校学校運営協議会は1名でした。押原小学校学校運営協議会の地域学校協働活動推進員の数が1名というのは、地域学校協働本部が設置されていないことと符合しているように思われました。
地域学校協働本部が設置されている松木中学校運営協議会では地域コーディネーターの他に、地域スタッフが21名、地域講師が14名、同じく春野地区小・中学校運営協議会では76名が地域活動協働本部協議会員として活動していて、協働活動を充実させるためには地域学校協働本部の設置が不可欠だと思いました。
文科省も「学校運営協議会と社会教育活動である地域学校協働活動を一体的に推進することで、学校・家庭・地域が連携協働して、自立的・継続的に子どもを取り巻く課題を解決できる地域社会の実現を目指す」としています。
教育委員会の支援
最後に、大切なことだと思ったのが、コミュニティ・スクールを効果的・継続的に機能させるために教育委員会は、パンフレットの配布やフォーラムの開催などで理解を促したり、また学校運営協議会委員に対する報酬等の経費の確保や、機能強化のために地域学校協働活動推進員を配置するための予算措置など、積極的な財政支援を講じる必要があるという金山さんのお話でした。
コミュニティ・スクールを推進していくためには、行政の伴走支援としての予算の確保は欠かせないということです。
また学校運営協議会の委員には一定の責任が発生します。委員は学校の抱える課題に深く入れば入るほど学校の機密情報を聞く可能性も出てくるので、教育委員会は守秘義務を課すことなども必要です。
したがって学校運営協議会を効果的に活用するためには委員の人選が最も重要だということでした。委員にはそれなりの学習をされた方になっていただき、協力していただける方には学習講座などの機会をとらえて学んでほしいと金山さんは言われていました。
そうしたことから、定期的な研修機会の設定が非常に重要であり、協議会委員・学校管理職・地域連携担当教員等、対象を絞ってそれぞれに効果的となる研修を行うべきだという指摘も大事だと思いました。
学校運営協議会制度の導入から、効果的・継続的に機能させるまでに教育委員会が果たす役割は大きいのではないでしょうか。私もそうであったように、学校運営協議会を理解して参加している委員は少ないと思います。それ故に私はこのフォーラムに参加しました。教育委員会は研修会の開催を行い、理解を促す必要があります。そうでなければ、学校運営協議会を設置しても形式的なものとなってしまうでしょう。教育長を始めとした教育委員会みずからが協議会に対する深い理解と、なぜ今、みずからの自治体の学校に協議会という取組みが不可欠なのかを語ることができる必要があります。
金山さんは、職員会議や教員研修に学校運営協議会の委員も入れると、委員の中に対等に扱われているという意識が生まれると話されていました。
学校運営協議会制度と地域学校協働活動の一体的な推進による地域と学校の連携・協働体制の構築
分科会が終わった後、私はどうしても尋ねたいことがあって、小川さんのところにいきました。それは学校運営協議会と地域学校協働本部の関係についてでした。
冒頭書いたように、泉小中学校コミュニティ・スクールに地域学校協働活動推進員はいません。もちろん、地域学校協働本部もありません。このフォーラムに参加して、そのことと学校運営協議会が機能し切れていないという自分の感じとが関係しているのではないかと思ったからでした。
私の質問に対して小川さんは次のように答えられました。
「学校運営協議会は学校運営について協議し、方向性を確認します。協議した内容に基づいて実践・活動をするのが地域学校協働本部です。」
要するに、学校運営協議会を企画や協議等を担う「頭」とするならば、地域学校協働活動は実働部隊としての「足腰」であり、双方が揃って、初めて「コミュニティ・スクール」になるという答えでした。
これにしたがうなら、泉小中学校に学校運営協議会はあっても、コミュニティ・スクールはないということになります。
続いて金山さんにも同じ質問をしましたら、「学校運営協議会は課題を検討しその解決策を確認します。地域学校協働本部はその解決策を実施したり、活動にもとづいた企画を学校運営協議会に提案したり、人材・費用の検討をしたりします。」という答えでした。
その上で、「泉小中学校コミュニティ・スクールに地域学校協働本部がないのなら、北杜市教委に設置規則を作ってもらい、予算化してもらいなさい。それでないと地域学校協働活動推進員の身分保障はできません。またそれによって地域学校協働活動推進員の守秘義務も発生させることができます。他では進めているのに何でうちにはないのか、教育委員会に尋ねなさい。」と言われました。
後日、北杜市教育委員会に電話して地域学校協働本部を設置していない理由を尋ねましたら、「地域学校協働活動推進員への謝金の問題があって難しい。」「山梨県内の他の自治体、学校が設置してくれたら、続くことができる。」「ボトムアップでやって欲しい。」「泉小中学校には北杜市内のコミュニティ・スクールのパイロット校になって欲しい。」という返答でした。
財政的に難しいというのが主な理由のようでしたが、地域学校協働活動推進員や地域ボランティア等に係る諸謝金、活動に必要な消耗品等の学校運営協議会と地域学校協働活動を一体的に推進する自治体の取り組みに対しては、平成27年度から文科省による財政支援があります。
子どもにとって、コミュニティ・スクールは育ちと学びのセーフティネットです。「誰ひとり取り残さない」という言葉を単なるスローガンとせず、いじめ、貧困、虐待等の社会課題や不登校問題等を、学校だけで担い、解決を推進するのではなく、「チーム学校」として子どもを育むためにも、コミュニティ・スクールを実質化すること、そのために地域学校協働本部を設置することが必要です。地域学校協働本部を設置することで、学校運営協議会の機能を高め、地域学校協働活動との役割分担を明確化し、両輪の活動の一体的推進を進めることができます。北杜市教育委員会は各学校運営協議会が主体的に議論し判断できるように、地域学校協働活動が充実するように積極的に支援すべきだと思いました。
「持続可能な地域とともにある学校」とは?
最後に、心に残った言葉として、「『持続可能な地域とともにある学校』とは?」という小川さんの問いかけがありました。
それは教職員の人事異動に左右されない体制があることだと小川さんは言います。たとえ校長や教職員の人事異動があっても、コミュニティ・スクールがあれば地域との組織的な連携・協働活動がそのまま継続できるということでした。金山さんも、「コミュニティ・スクールにより、校長が代わっても、学校の良さや強みは変わらない。」と述べていました。
彼らの言葉からは、地域の学校として関わり育てていこうという強い意志が伝わってきました。持続可能な地域も、持続可能な学校も、地域と学校が固く結びつくことによって実現するという風に私は理解しました。
ちなみに、押原小学校学校運営協議会の議題例の中には「持続可能な成長を支える、新しい時代を担う人づくり」とありました。持続可能な「地域」ではなく持続可能な「成長」と書かれていたのが印象的でした。