つかの間の幸せ
前回までのお話
7年前はこんな場所に居ました
伊豆高原駅での出会い
肝細胞癌の彼
根治は難しいと宣告されて
生まれて初めての
病院勤め
配属は
5階の入院病棟
癌末期の方や
婦人科系の方が
多く入院されていました
「○○さんを車椅子で
レントゲンに連れてって」
「次は○○さんを
CTにお願い」
「○○さんが痛がってるから
さすって!」
次から次へと
指示が飛んできます
「急ぎの薬が出来てるから
早く取りに行ってきて」
「次はMRIよ!
金属系の物は
全部取って
中に入らないとダメだから」
大学病院内はとても広く
どこに何があるのか
直ぐには把握できません
患者さんを
検査に連れて行くのに
地図を持たされ
動き回りました
全くの未経験ですが
仕事内容は
プロ並みで
車椅子移乗
おむつ替えや
口腔ケア等・・・
レクチャーも
そこそこに
現場に放り込まれ
クタクタの毎日でした
ベテラン看護師や
古株の助手は
(最悪だった)
とにかく横柄で
キツイ性格の人ばかり
命を預かる
現場ですから
一刻の猶予も
無い場合もありました
無理もない事と
割り切っていたけれど
心はいつも
疲れ切っていました
病棟の朝は
ドクターが
インターンや看護師を
従えて
ぞろぞろと
やってきます
まるで
大名行列
あんなに威張って
歩かなくてもいいのに
そこのけそこのけ
お〇〇が通る
病院には
独特のルールがあり
エレベーターに乗る
優先順位も
決まっていました
「エレベーターを
待っている時間が
勿体ないから
階段から行って!」
階段を何度も
上り下りしました
こんな時
旅館でかなり
足腰が鍛えられていたから
役に立ちました
キラーン
へこたれるもんか
そんな
ピリピリした職場でしたが
いつも笑顔で
優しく患者さんに接する
介護士さんが
たった一人だけ
配属されていました
・入浴介助
・口腔ケア
・排泄介助
・お話相手
一手に引き受け
看護師からの
信頼も厚く
誰からも好かれる人でした
新人助手の私にも
嫌な顔一つせず
親切丁寧に
色んなことを
教えてくれました
この介護士さんの
仕事ぶりや
人柄に触れ
私もこんな人に
なれたらな
介護の仕事を
覚えたい
やってみたい
どんどん強くなりました
ここは伊豆の国市
辺鄙な温泉町です
近隣の市町には
介護を勉強する場所が
なかなか見つかりません
遠くの沼津市まで
休日を利用し
助手の仕事を続けながら
介護講座に通いました
休日返上!
彼に合う機会は
次第に減っていきました
「あと少し頑張れば
資格が取れる!」
寂しい気持ちや
心配な気持ちと
戦いながら
やっとの思いで
晴れて介護士に
私が介護士になるまで
彼は応援し
励まし続けてくれました
けれども
私が頑張れば
頑張るほど
態度が素っ気なく
感じるようになりました
なんで?
寂しいよ
会いたいよ
・・・
あの人の
喜ぶ顔が見たいだけ
あの人の
力になりたいだけなのに
それしか考えられない私でした
その間の
彼の状況は
一進一退を繰り返し
板前の仕事は
かろうじて
続けていましたが
手術の度に
休みをもらっていたため
勤め先である
隠れ家の宿には
居づらくなり
仕事場を
熱海市に移しました
顔が広い
板前の仲間が
彼の体調を
理解してくれる職場を
見つけてくれました
本当に有難かったです
彼も心機一転
ライブキッチンで
思いっきり
腕を振るい
次第に生活も
落ち着いてきました
念願であった
彼の娘さんとも
お会いできました
カラオケや食事
近場のドライブ
平和な日常を
取り戻したかのように
次第に元気を
取り戻したかのように
見えました・・・
(十八番は
平浩二・美空ひばり)
続きはまた
書きたいと思います
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