在外邦人保護で陸上輸送可能に
産経新聞 2013年11月15日(金)11時21分配信
緊急時に在外邦人を救助するため、
自衛隊による陸上輸送を可能にする改正自衛隊法が15日、
参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で成立した。
邦人10人が犠牲となった今年1月のアルジェリア人質事件を
踏まえた改正で、
航空機と船舶に限定されていた輸送手段に車両を加え、
空港や港湾から遠い内陸部にも
自衛隊部隊が救援に向かえるようにする。
輸送対象者も拡大し、
現地で事件・事故に巻き込まれ保護が必要な邦人だけでなく、
救援に随行する政府職員や医師、家族らも輸送できるようにした。
陸上輸送は危険性が高いため、
政府は拳銃や小銃に限定されている携行武器を強化する方向で
検討に入る。
ただ、武器使用基準そのものは緩和されず、
正当防衛や緊急避難に限定。
武器で防護できる対象も
「(自衛隊の)管理の下に入った者」だけで、
遠方で邦人が襲撃されても自衛隊は救援に向かえない。
また、実際の活動では
救援に向かう他国軍と車列を組む場面も想定されるが、
集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈が壁となる。
改正は一歩前進とはいえ「宿題は残っている」(安倍晋三首相)といえる。
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そもそも「日揮株式会社技術研究所」とは、どういう組織なの?
http://www.town.oarai.lg.jp/~seikatsu/machi/info_g_3_384.html
日揮は、わが国初の再処理工場の設計・建設・試運転や、
原子力発電所の放射性廃棄物処理施設の一括設計・建設など、
数多くの原子力関連プロジェクトを遂行してきました。
技術研究所は、昭和59年に設立され、
ろ過処理技術やセメント固化設備など様々な放射性廃棄物処理技術や
核燃料サイクル関連技術の開発を行ってきました。
平成11年には、
石油関連,触媒関連,材料関連,バイオ関連などの研究部門を統合し、
現在に至っています。
技術研究所は当初、
日揮の原子力分野の技術開発を担う中心的施設として、
昭和59年に設立されました。 その後、活動領域の拡張により、
エネルギー、環境、バイオなど日揮の明日を支える総合的技術開発拠点として位置づけられるようになりました。
原子力関連では、
核燃料サイクル全般にわたる研究開発を進めています。
たとえば、
再処理施設や原子力発電所向けの廃棄物処理技術の開発、
放射性廃棄物処分関連の基礎研究を行っています。
(以下省略)
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以上に引用した記事を御覧になれば、
《9条壊憲》が、戦争のためばかりではない側面を、
発見・確認することができます。
渡辺治氏は、
たとえば『増補 憲法「改正」』のなかで、
軍事・安全保障とは“異なった事情”からくる
『日本国憲法』の平和憲法「規定の削除」の背景を
次のように教えてくれています。
“[冷戦崩壊以降]
・・・・グローバル市場の安定を維持する役割を
アメリカ帝国の軍事力が担うことになったのです。
そのことを
クリントン政権の高官アンソニー・レイク氏は
露骨に話しています。
「冷戦の間、われわれは、
市場民主主義諸国に対するグローバルな脅威を
封じ込めた。
今や、われわれは、市場民主主義の広がりを
さらに拡張すべきである。
封じ込め戦略の後を継ぐのは、拡張の戦略、
市場民主主義諸国の自由世界共同体の拡張戦略
でなければならない」と。
つまり、アメリカや日本の企業が
自由に活動できる「世界」を「拡張する」というのです。
もちろん、刃向かう国は力で倒すというのです。
しかし、いくらアメリカでも、
一国だけでその負担をおうことはしませんでした。
できませんでした。
NATO諸国と日本にも軍事分担を求めてきたのです。
これが、
日本の軍事大国化を進める第一歩の要因となりました。
しかし、軍事大国化が求められる要因は、
それだけではありません。
日本の財界も、
政府に軍事大国化の圧力をかけました。
もともと日本企業は、
企業社会や自民党政治の恩恵を受けていましたから、
海外進出に消極的だったのですが、
円高や経済摩擦に押されて、
八〇年代後半に海外進出を始めました。
とくに日本の巨大企業は、
労賃も安く環境規制も緩いアジア諸国に
進出するようになりました。
(引用者中略)
・・・・アジア諸国は、他の諸国と比べても、
とくだんに政治的に不安定であり、
紛争の火種を抱えているところがたくさんあります。
朝鮮半島、中台紛争、インド、パキスタン、
アフガニスタン、イランなどです。
フィリピンやインドネシアも
深刻な国内紛争を抱えています。
こうした地域での日本企業の活動の安全のためには、
アメリカと一緒になった日本の軍事的プレゼンスが
強く求められることになったのです。
おまけに日本は、憲法九条の下で、
自衛隊は海外に行けませんでしたから、
よけい「普通の国」
つまりアメリカやイギリス並みの軍事大国への圧力は
高まったのです。
そこで、軍事大国化を阻んでいる九条の存在が
にわかに目障りになってきたのです。
しかしその点にふれる前に、
グローバル化にともなうもう一つの改革について
触れましょう。
経済のグローバル化にともなって求められた改革が
もう一つありました。
構造改革です。
グローバル企業どうしが競争するようになると、
いままでのように大企業は安穏に自分たちの利益を
むさぼっているわけにはいかなくなりました。
国内生産のときでも、日本の大企業は
厳しい企業社会の競争のなかで、
企業主義的な労働組合運動の協力をえながら、
労働者を「過労死」させるような働かせ方をして
利潤を増大させてきました。
しかし、世界の大競争時代になると、
日本企業のたぐいまれな競争力といっても、
三二分の一の賃金と競争させられたら、
かないっこないわけです。
そこで、大企業は正規雇用従業員を切り捨て、
年功賃金もあらためて、
非正規従業員やパートや派遣をどんどん増やす
というリストラを敢行するのと並行して、
製造業現場を
どんどん中国や東南アジアに移転するようになりました。
同時に、財界は既存の自民党政治に対しても
厳しい注文と改革の要求を突きつけたのです。
もともと日本は福祉国家ではありませんでしたから
大企業には至れり尽せりの措置がとられていましたが、
それをもっと徹底しろというわけです。
これが「構造改革」です。
ですから構造改革は、
多国籍大企業の競争力を強化するために、
既存の政治が大企業に課してきた負担や規則を取り払い
大企業の自由を回復させる改革のことです。
「構造改革」のことを「新自由主義改革」と呼ぶのは、
これら改革が、
企業が現代国家の下で失われていた「自由」を
回復することによって
競争力を強化しようとする改革だからです。
一九世紀の「自由競争」の時代には、
企業は労働者の雇用、労賃、労働時間などを
「自由」に決められた。
賃金の安い子供を雇って一四時間働かせることも
「自由」だった。
環境の破壊、市民の安全などもくそくらえだった。
そうした企業の野放図な蓄積の「自由」の回復を
めざす改革だからです。”
(P.50-54) ※強調は引用者
引用した渡辺氏の叙述箇所を読むと、
《改憲》は、
「多国籍企業の経済のグローバル化」を
“補完するもの”であり、
そしてまた《構造改革》も同様にして、
「経済のグローバル化」を背景に、
「財界などからの要請」であることを、
認識整理することができます。
邦訳では、渡辺治氏が監訳・解説をしている、
デーヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』で、
ハーヴェイ氏は「新自由主義」のことを、
一般国民が享受すべき国富の、
エリート層への「略奪による蓄積」と呼んでいます。
そうした“略奪による蓄積”をもたらす「新自由主義」政策の他方で、
たとえば、東京電力系列の除染下請け企業に、
国の費用で肩代わりして、
東電系列に利益を還流させたスキャンダルを
11月7日付『東京新聞』が報道してくれたように、
<国家政府>が、
“汚染の原因をつくっておきながら
除染の責任を十分果たそうとしない東電側に、
税金による事業で利益をもたらす構図”
(『東京新聞』)も、私たちは確認することができます。
一方は、
《国家政府の権限を介しての「小さな政府化」による、
「一般庶民から権力層への国富の略奪」》であり、
もう一方は、
《国家政府の権限でもっての「大きな政府」による、
権力層への「国富の横領」》。
興味ぶかいことに、どちらのパターンも、
《泣きを見るのは国民で、嗤うのは財界や大株主》
という構図なのではないでしょうか?
そんな雑感を抱きつつあるなか、
このモヤモヤした雑感に、ある補助線を、
後藤道夫 氏が、与えてくれています。
“・・・・多国籍企業が本国国家からきりはなされて
「無国籍国家」となることはありえない。
多国籍企業の本国は、
資本の所有権と指揮・管理権をもっている人間の
本国であり、
所有と管理の中核部分については
多国籍企業は「一国的」である。
多国籍資本も資本である以上、
国家によって
その所有と営業の安全を保障されていることには
変わりはない。
「国家なき資本は考えられない」のである。
しかも、現代では、
戦後アメリカ帝国のケインズ主義政策や
レーガン政権の軍事的ケインズ主義、
クリントン政権の情報産業政策など、
国家の経済関与の規模が飛躍的に増大しており、
さらに、後でみる、二重三重の帝国主義によって、
国内外での企業活動の強力なバックグラウンドを
国家が提供している。
本国国家と巨大企業との多様な回路による保護、
援助の関係はいっそう制度化され、
巨大なものとなっている。
安全の保障という課題にくわえて、
こうした諸力を動員できる「国家」抜きに、
多国籍企業は
互いの激しい競争に勝ち抜くことはできない。”
(後藤道夫「現代帝国主義の社会構造と市場秩序」
渡辺治・後藤道夫(編著)
『「新しい戦争」の時代と日本』所収 P.238)
この後藤氏による指摘は、
世界的に名の通った〈SHARP〉や〈Panasonic〉が、
新たな制度システム環境の事情からか、
“いつの間にか苦境に立たされている”
「経済のグローバル化環境」の“厳しさ”を
傍観すると、
たとえば、<政府/税務局>の権限を借りて、
<輸出大企業>が<中小企業>から、
“税金を横領する、きわめて不公平なシステム”だ
と湖東京至氏による指摘が、改めて連想されます。
(『週刊金曜日』2013年9月20日、960号など)
というのも、そうした
《グローバル経済&新自由主義支援型帝国主義》
あるいは《新自由主義型コーポラティズム》を、
中小零細事業者を自殺させると同時に、
輸出大企業が嗤う「欠陥的一般消費税システム」にも
その一端を、垣間見ることができるからです。
(関連記事)
「消費税増税の中止を求める税理士のアピール」 2013年8月29日記者会見
今回のブログ記事の冒頭に引用した記事は、
日本企業の海外での事業展開のために、
“自衛隊に護衛させる”ための《自衛隊法の改正》が
行われ、
そして「自衛隊の海外派遣」には、
「憲法9条」が壁として立ちはだかっていることを、
知ることができます。
「自国の企業の海外での経済展開」を
“自衛隊に護衛させる”側面をもった
「自衛隊法の改正」の背景は、
渡辺治氏の解説・案内のとうりです。
ここで今ひとつ、
「日本の多国籍企業の海外展開」を、
<本国政府>に“護らせる”もう一つの「回路保障」
として思い浮かぶのが、
《軍隊での護衛》という「ハードパワー」の一方の、
《TPPなど自由貿易協定》という「スマートパワー」
です。
TPPの先行モデルの《韓米FTA》や《NAFTA》に
組み込まれている「強力なISD条項」や
「非関税の防壁の剥奪(非関税障壁の撤廃)」は、
公害を起そうが、環境を起そうが、雇用を壊そうが、
社会を破壊しようが、食糧自主性を壊そうが、
「<自国の多国籍企業や資本>の、
海外での傍若無人で放逸な経済活動」を
<国家政府>が“援護・保障する”からです。
英国系巨大石油資本のアングロ・イラニアン社
(現在のBP:ブリティッシュ・ペトロリアム)が
保有していた油田を、
イランのモサデク政権が一方的に「国有化」する事で、
イランに、資産の油田が、強制的に「収用」される、
という事件が、1951年に起こりました。
英国と米国とが結託して、CIAの秘密工作によって
モサデク政権は転覆させられるのですが、
このイラン政府による油田の「収用」事件から学習して
<外資>は、
「収用でこうむる損失に対して、代償を求める」
という《「収用と補償」条項》というルールを
編み出したのでした。
(関岡英之『国家の存亡』/『TPPと日本の論点』)
まるで建設会社が、
組み立て式の「飯場」や「簡易トイレ」を、
建設現場に運んで組み立てて、
大いに現場で建設を進めるように、
<外資や多国籍企業>が、
海外の現地で経済活動するために
「飯場・簡易トイレ」さながらに、
《「収用と補償」条項》を使いこなすようになるのでした。
その「収用」を拡大解釈することで、
猛威をふるう《ISD条項》、
そして《非関税防壁の剥奪》
および「無制限な経済活動の自由の約束」は、
“環境破壊および社会破壊の合法化”であり、
アンドレ・フランク(&中山智香子)氏の指摘を
拝借すれば、「経済ジェノサイドの合法化」であり、
エマニュエル・トッド氏の指摘を拝借すれば、
「民主主義を破壊する自由貿易の合法化」であり、
平和学の知見を拝借すれば、
「構造的暴力の合法化」であり、
岩月浩二 弁護士による指摘を拝借すれば、
「主権在資」をもたらしてしまう憲法破壊の合法化
と言えるのではないでしょうか?
こんな発想をするのは、
『「日米地位協定」入門』での、
著者の前泊博盛氏による、
「支配の要領性」とも言えるような、
非常に興味深い指摘が、心に残っているからです。
“現在の世界において
超大国が他国を支配する最大の武器は、
軍事力ではなく法律です。
日本がなぜアメリカに対して
これほど従属的な立場に立たされているか
というのも、
条約や協定をはじめとする法的な枠組みによって、
がんじがらめにしばられているからなのです。” (P.90)
『韓米FTAと韓国経済の危機』のなかで、
「韓米FTA」(2012年発効)についての報告を
書いている洪基彬(金融経済研究所研究員)氏は、
“《ISD条項》というものは、
投資家(外国資本)の投資事業、
その利益のジャマにならないように、
「国家の行政活動や立法行為といった国家主権」
そして私たち「国民の主権」を“抑える”ことを
約束するもの”と指摘しています。
<国民>を“犠牲にしてまで”、
<国家政府>が、
「<多国籍企業>の海外事業展開を援護する
保護回路」としては、
A)治安が不安定な地域での《軍隊による護衛》
という“ハードパワー”と、
B)《自由貿易協定》という“スマートパワー”という
「21世紀型帝国主義的/コーポラティズム的な
保護回路」の一つを、
ここに挙げることができます。
そして平和憲法のもとの日本の場合、
“兵器のハイテク化が進む”昨今においては、
《憲法9条壊憲》は、財界にとって、
「大きな販路創出」をもたらすのでした。
(つづく)
(参考記事)
○ 【拡散希望】 『TPPと憲法』学習会講演記録 第9条の会名古屋(街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋)
○ 青年法律家協会 大阪支部「TPP参加に反対する意見書」
(関連記事)
○ 「道州制」は、“どこ”からの圧力/要求?
○ 1996年1月、 「グローバル国家」論の登場
○ 「道州制」など「地方構造改革/地域主権改革」は”米英モデル”の「新自由主義型地方分権」
○ ジェーン・ケルシー教授、1998年からの警鐘!
○ 「武器輸出三原則見直し/撤廃とTPPの相関性」&TPP反対市民学習会イベント案内
○ <ISD条項>「外国のファッテンファール社が、脱原発のドイツ政府を何十億で提訴」拙訳
○ 奴隷労働者供給構造と経済的徴兵制 ~貧困と監獄と軍隊と/日本版プラン・メキシコへの罠(最終回)~
○ <20世紀憲法としての「日本国憲法」が、保障してくれている「当たり前(?)」>
○ マスコミは教えてくれない「格差不公平税制」と、その一角としての「一般消費税」(前編)
“「広げられた格差によって、
ますます多くの子供たちが選択肢を狭められているんです。
ワーキングプアの子供たちが戦争にいくのは、
この国のためでも正義のためでもありません、
彼らは政府の市場原理に基づいた弱者切り捨て政策により、
生存権をおびやかされ、
お金のためにやむなく戦地に行く道を選ばされるのです」”
(堤未果『ルポ 貧困大国アメリカⅠ』(岩波新書)P.107)
“グローバリゼーションによって
形態自体が様変わりした戦争について、 パメラは言う。
「もはや徴兵制など必要はないのです」
「政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。
経済的に追いつめられた国民は、
黙っていてもイデオロギーのためではなく、
生活苦から戦争に行ってくれますから。」”
(同P.177-178)
(2000年12月に米軍入隊し、
イラク戦争に派兵された加藤秀樹(仮名)さん言葉)
“「アメリカ社会が僕から奪ったのは25条です。
人間らしく生きのびるための生存権を失った時、
9条の精神よりも、目の前のパンに手が伸びるのは
人間として当然ですよ。
狂っているのはそんな風に追いつめる社会の仕組みの方です。”
(同書Ⅰ P.187)