「相続財産の多くが貸地」という方は、結構いらっしゃいます。


 貸地は、相続税評価においては、「貸宅地」と呼ばれます。

この評価は、残念なところ低いです。


 通常の路線評価で、たとえば、1億円の土地であったとしましても、実際は、3000万円から4000万円ほどの評価になってしまいます。


 また、借りている側の借地人が亡くなった場合を考えて見ますと、こちらは6000万円や7000万円ほどの財産価値があるとして、高く評価されるケースも出てきます。


 このように、「貸宅地」が低く評価されるには理由があるようです。

貸地は、簡単には返ってきません。


 すなわち、「借地法」で借地人側の権利が、手厚く保護されてことにあります。


 そのため、「正当な事由」がないと、借地人の立ち退きを求めることもできません。


 たとえば、借地人が地代を払わないなどの「正当な事由」が必要で、なかなか容易ではありません。


 また、借地としての契約期間が切れたとしても、原則的には更新されるのが、実情のようです。


 貸地人がその更新を拒むにあたっては、これまた、「正当な事由」が求められます。


 「登記上は自分の土地であったとしても、実際は、借地人のもの」という格好です。


 土地所有者としては、大変理不尽で不可解なところと言えるかも知れません。


 「貸地は、なかなか容易には返還されない」という実情を、しっかり受け止めておく必要がありましょう。



      行政書士  平 野 達 夫


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 前回に続き、事例から「相続税額」を算出します。

この度は法定相続人が1人だけで、相続が開始したケースでの税額です。


 たとえば、現状のまま被相続人の配偶者奥さんが遺産の全てを相続して、将来奥さんが亡くなったときにはどうなるでしょうか。


 その時の相続人は、奥さんの妹さんだけとします。

ここでは、財産総額を11億円として、「相続税額」を算出して見ます。



  財産総額             110,000万円


  基礎控除額

      5,000万円+(1,000万円×法定相続人1人)

                     =6,000万円


  課税遺産総額          104,000万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  課税遺産総額に対する

  法定相続分           104,000万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  仮相続税額

    (法定相続分)  (税率) (速算控除額)

   104,000万円×50% - 4,700万円

                    =47,300万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  実際に相続する

  財産の割合               100・0%


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  相続税額               47,300万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  2割加算がある場合の

  相続税額            


      (相続税額)    (加算)

      47,300万円 × 1.2 = 56,760万円 


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 税額が加算される人とは、被相続人の兄弟姉妹、法定相続人以外で相続した人(友人など)、及び被相続人の養子となったその被相続人の孫(いわゆる孫養子)がこれに該当します。


 このような場合、算出した税額×1.2が納税相続税額となります。


 以上、相続開始により、全ての遺産を法定相続人1人だけで相続した場合の税額につき、順次算出し表して見ました。

 いかがですか、お分かりいただけましたか。



      行政書士 平 野 達 夫


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 前回に続いて、相続税額の算出をします。

法定相続人が、被相続人の妻と新たにむかえた養子の2人が法定相続人のケースです。


 同じように、それぞれ順次計算し表してまいります。

被相続人の遺産総額は、同様15億円とします。




  財産総額              150,000万円

  基礎控除額               7,000万円


  課税遺産総額           143,000万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  課税遺産総額に対する

  妻の法定相続分          71,500万円


  課税遺産総額に対する

  養子の法定相続分         71,500万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  妻の仮相続税額          31,050万円


  養子の仮相続税額         31,050万円


  仮相続税額の合計         62,100万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  妻が実際に相続する

  財産の割合                 50.0%


  養子が実際に相続する

  財産の割合                 50.0%


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  妻にかかる相続税額        31,050万円

  配偶者の税額軽減         -31,050万円

   

  最終的な税額                 0万円

 

  

  養子にかかる相続税額       31,050万円


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   相続税額の 合 計        31,050万円

  ------------------------------------------




 以上、法定相続人が被相続人の配偶者妻と養子の2人の場合で、財産総額が15億円から算出して出して見ました。


 もちろん、配偶者妻と実子の長男2人のケースも、同様の税額となります。




      行政書士  平 野 達 夫 


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 前述しましたように、法定相続人が配偶者の妻と被相続人の兄弟4人のケースで、相続税額につき、表にして順次算出していきたいと思います。

 ここでは、被相続人の遺産総額を15億円とします。




  財産総額          150,000万円

  基礎控除額         10,000万円   

  課税遺産総額       140,000万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  課税総額に対する

  妻の法定相続分      105,000万円


  課税総額に対する

  兄弟1の法定相続分      8、750万円

  課税総額に対する

  兄弟2の法定相続分      8,750万円

  課税総額に対する

  兄弟3の法定相続分      8,750万円

  課税総額に対する

  兄弟4の法定相続分      8,750万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  妻の仮相続額         47,800万円


  兄弟1の仮相続額        1,925万円

  兄弟2の仮相続額        1,925万円

  兄弟3の仮相続額        1,925万円

  兄弟4の仮相続額        1,925万円


  仮相続税額合計        55,500万円


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  妻が実際に相続する

  財産の割合              75.0%


  兄弟1が実際に相続する

  財産の割合               6.25%

  兄弟2が実際に相続する

  財産の割合               6.25%

  兄弟3が実際に相続する

  財産の割合               6.25%

  兄弟4が実際に相続する

  財産の割合               6.25%


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  妻にかかる相続税額      41,625万円

    配偶者の税額軽減    -41,625万円

    最終税額                0万円


  兄弟1にかかる相続税額     4,162.5万円

  兄弟2にかかる相続税額     4,162.5万円

  兄弟3にかかる相続税額     4,162.5万円

  兄弟4にかかる相続税額     4,162.5万円


  ( 兄弟につき、2割加算の対象となります )


------------------------------------------------------------------


   相 続 税 額 合 計     16,650万円


 


 以上、法定相続人が配偶者の妻と兄弟4人での税額を算出し表しました。




      行政書士  平 野 達 夫


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 甥を養子にすると、法定相続人は、「配偶者の奥さんと甥の2人だけ」になります。


  基礎控除は、7000万円しかありません。

課税遺産総額は、14億3000万円です。


 これを法定相続分どうりに「2人で半分ずつ」分けますと、それぞれ7億1500万円です。


 これに対する税額は、税率をかけ、速算控除額を差し引き算出しますと、3億1050万円ずつとなります。


 奥さんには、「配偶者の税額軽減」がありますが、甥には、3億円以上の税負担が課せられる格好になってしまいます。


 現状のままであれば、問題なく納税できるのに、甥を養子にしたことによって、まだ年若い甥に3億円以上の多額の税金が課せられることになってしまいます。


 もちろん、これだけを考えますと、「養子にするのは無理」と思われるかも知れません。

実際に、奥さんもそう感じたようです。


 しかし、何の変りもなく今のまま相続して、将来奥さんが亡くなったときにはどうなるでしょう。

すなわち、相続人は、妹さんだけです。


 たとえば、奥さんが亡くなったときの財産が11億円とします。

種々算出していきますと、5億6760万円の税金が妹さんに課せられることになります。


 普通に計算しますと、4億7300万円ですが、「妹が相続する」ことで、2割加算の対象になり、1・2を掛けて算出します。


 また妹さんが亡くなると、その子供、つまり、甥が相続することになります。

いずれ、同じように多額の相続税がかかってくることになります。


 しかも、相続した11億円の財産は、「被相続人Aさんの兄弟と共有」になっていることもあり得ます。


 これまた、甥から見れば、精神的な大きな負担も生じることになりましょう。


 このように先をながめ見て、「今、この時期、甥を養子にしよう」と、奥さんは決心しました。


 養子をむかえることは、長期的に見れば、決して「損」とはいえないものがあります。



      行政書士  平 野 達 夫


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 被相続人Aさんの財産は、15億円ほどありました。

なかなかの、財産持ちですね。


 現状のままの相続であれば、法定相続人5人、すなわち、配偶者の奥さんと被相続人の兄弟4人です。


 子供はいません。

もちろん、祖父母は、すでに他界しております。


 したがって、これら算出しますと、基礎控除は1億円です。

これを差し引いた14億円を、各々法定相続の割合で分けます。


 奥さんが10億5000万円、兄弟が各8750万円が相続分となります。


 これに対する税額、つまり、税率・速算控除額と計算していきますと、仮相続額は、奥さんが4億7800万円、兄弟が各1925万円となります。


 相続税額の合計が5億5500万円になりますので、実際の分割もこのとおりだとしますと、奥さんは4億1625万円の税額となります。


 ただここで、「配偶者の税額軽減」を使えば、最終的な奥さんに対する税額は、ゼロです。

 

 一方兄弟は、2割の加算を含めて算出し、それぞれ4000万円強の税金を負担することになります。


 4人の兄弟は、地主であり、支払い能力は、十分あるようです。

つまり、現状のまま、相続が発生しても、納税に不安は全くありません。



      行政書士  平 野 達 夫


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 「遺言書」を書くことで、「兄弟に相続させない」ことができます。


 ところが、被相続人のAさんは、種々の病気と加齢によって、意思表示がうまくできなくなっていました。


 このような状態になっては、たとえ「遺言書」を書いたとしても、裁判で被相続人本人の意思能力が争われ、無効となってしまうこともでてきましょう。


 被相続人の兄弟姉妹は、「被相続人に子供がいれば」、当然ながら法定相続人なることはできません。


 Aさんの奥さんは、「自分たちに子供がいれば」と、あらためて思います。


 ところで、奥さんには、妹がいます。

その妹の子供、つまり、奥さんからみれば、甥にあたります。


 小さい頃からとてもかわいがっていました。

夫のAさんも、甥を自分の子供のように接していたようです。


 夫のAさんが、まだ健康だった頃、「あの子に、私の財産を渡せないだろうか」と言っていたことを、奥さんは思い出しました。


 そこで奥さんは、考えました。

顧問の先生に相談します。


 甥を自分たちの「養子」にすれば、被相続人の財産は、配偶者の奥さんと甥が相続します。


 先の将来、甥の奥さん、その子供たちへと、その財産は引き継がれます。

これで、解決、一安心です。


 ただ、問題は、あります。

それは、相続開始に伴い、相続税の負担です。



      行政書士  平 野 達 夫


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 子供もいなくて、親もすでに他界している場合、被相続人に兄弟姉妹がいれば、「配偶者とその兄弟姉妹」が法定相続人となります。


 これが、よくトラブルのもとになります。

資産家でなくとも、ごく一般の家庭でもありうるトラブルのケースといえます。


 ここで実際によくある事例から見てみましょう。

サラリーマンのAさんが、55歳で亡くなりました。


 35歳のときに、一戸建てを買いました。

やっと、住宅ローンを払い終わったばかりでした。


 Aさんには、子供がいません。

両親も亡くなっています。

Aさんには、兄が1人いました。


 兄は、遠方に住んでいて、Aさんの奥さんとは、結婚式以来、ほとんど会ったことはありません。


 その兄が、「弟の自宅の4分の1は、自分が相続する権利がある」と主張してきました。


 突然のことで、奥さんは、驚きました。

確かに、法定相続の取り分は、そのようになっています。

結局話し合いはつきません。


 仕方なく、奥さんは、ローンが払い終わったばかりの住宅を売ることになりました。

その売ったお金の一部を、兄に渡すことになりました。


 このようなことを避けるためには、一般的には、「遺言書」が有効な手段になります。


 被相続人が、生前に、「全財産を妻に譲る」旨の遺言書を書いておくことです。


 兄には、「遺留分」があるのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。


 しかし、兄弟姉妹には、「遺留分ない」という民法の規定があります。


 前述の「全財産を妻に」という遺言書があれば、兄は全く反論できません。

一部の相続を主張することはできません。



      行政書士  平 野 達 夫


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 その方は、東京都内にたくさんの土地を持っています。

ほとんどは、「貸している」土地で、借りている人は、その土地の上に自分の家を建てて住んでいます。


 建物は、借りている人の名義になっています。

昔から代々続いている地主さんで、いわゆる大地主さんです。


 その方は、5人の兄弟の長男で、他の4人も親から土地を引き継いだ地主さんです。


 ところが、70歳を過ぎてから、病気がちになりました。

二人の夫婦には子供がいなかったこともあり、奥さんが代わって、それら全ての管理をするようになりました。


 管理するのは大変です。

「地代の払いが遅れる」「勝手に増改築をしている人がいる」「借地人が亡くなり、息子さんが代わって借地人になったので、その手続をする」等など、問題がどこかに生じます。


 夫の体調が思わしくないこともあり、「夫が亡くなった後、土地など、自分が相続できるだろうか」という心配がありました。


 夫がなくなったら、法定相続人になるのは、「奥さんと、4人の兄弟」となります。


 法定相続分どおりに分割する場合、奥さんが4分の3を相続し、残りの4分の1を、兄弟が相続します。


 しかし、この取り分の4分の3というのは、あくまで、「法律上の定め」と言われます。


 実際、どう分割するかは、話し合いとなることも覚悟しなければなりません。


 ある日のこと、兄弟が集まる機会があったときです。

兄弟たちが、「土地はできるだけ、自分たちで相続したい」


 「奥さんには、ある程度のお金を渡せばいいのではないか」という内容の会話をしているのを、奥さんは聞いてしまいました。


 兄弟からみれば、「嫁の私は所詮、他人である」

「あまり相続しないよう、4人から同時に強要されたら、断れないかもしれない」


 「最悪、いくらかのお金と引き換えに、相続放棄される可能性もある」

奥さんは、ますます不安がつのります。


 「そんなの、ありません!」

 「夫の兄弟には、夫の財産を渡したくない!」

 これが、奥さんの本当の気持です。



      行政書士  平 野 達 夫


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 「遺留分」は、生前に放棄できます。

 

 一方、「相続の放棄」は、被相続人が亡くなった後でないとできませんが、「遺留分の放棄」は、被相続人が生きているうちからできます。


 これを利用して、「相続時に、遺留分以下しか相続できなくても、納得します」という意味の約束を、法的にも済ませておくのです。


 実際には家庭裁判所の許可を得ておくことが必要です。

これも、遺産分割を円滑にさせる方策の一つといえましょう。


 ここで、家庭裁判所に申立・提出する「遺留分放棄」の記載例を上げてみましょう。



           「  申 立 て の 趣 旨 」


 被相続人甲野太郎の相続財産に対する遺留分を放棄することを許可する審判を求めます。



           「  申 立 て の 実 情 」


 1 申立人は、被相続人の長男です。


 2 申立人は、以前、自宅を購入するに際し、被相続人から多額の

  資金援助をしてもらいました。

   また、現在会社員として勤務稼働しており、相当の収入があり、

  生活は安定しています。


 3 このような事情から、申立人は、被相続人の遺産を相続する意

  思がなく、相続開始前において遺留分を放棄したいと考えますの

  で、申立ての趣旨どおりの審判を求めます。 





         財 産 目 録 (土 地)


 番 号   所 在   地 番   地 目   面 積   備 考  


  1  ○○市○○町   〇番〇  宅地     ○○㎡   建物1の 

     〇丁目                          敷地             

 


         財 産 目 録 (建 物)


番号  所在  家屋番号  種類  構造    床面積   備考


1 ○市○○町  〇番〇  居宅  木造瓦葺   ○○㎡ 土地1上

  ○丁目○番地            平屋建         の建物



         財 産 目 録 (現金 預貯金、株等)


番 号  品 目   単 位  数 量 (金 額)   備 考


1  預貯金      約 〇〇万円  




  以上です。 



        行政書士  平 野 達 夫


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