その方は、東京都内にたくさんの土地を持っています。

ほとんどは、「貸している」土地で、借りている人は、その土地の上に自分の家を建てて住んでいます。


 建物は、借りている人の名義になっています。

昔から代々続いている地主さんで、いわゆる大地主さんです。


 その方は、5人の兄弟の長男で、他の4人も親から土地を引き継いだ地主さんです。


 ところが、70歳を過ぎてから、病気がちになりました。

二人の夫婦には子供がいなかったこともあり、奥さんが代わって、それら全ての管理をするようになりました。


 管理するのは大変です。

「地代の払いが遅れる」「勝手に増改築をしている人がいる」「借地人が亡くなり、息子さんが代わって借地人になったので、その手続をする」等など、問題がどこかに生じます。


 夫の体調が思わしくないこともあり、「夫が亡くなった後、土地など、自分が相続できるだろうか」という心配がありました。


 夫がなくなったら、法定相続人になるのは、「奥さんと、4人の兄弟」となります。


 法定相続分どおりに分割する場合、奥さんが4分の3を相続し、残りの4分の1を、兄弟が相続します。


 しかし、この取り分の4分の3というのは、あくまで、「法律上の定め」と言われます。


 実際、どう分割するかは、話し合いとなることも覚悟しなければなりません。


 ある日のこと、兄弟が集まる機会があったときです。

兄弟たちが、「土地はできるだけ、自分たちで相続したい」


 「奥さんには、ある程度のお金を渡せばいいのではないか」という内容の会話をしているのを、奥さんは聞いてしまいました。


 兄弟からみれば、「嫁の私は所詮、他人である」

「あまり相続しないよう、4人から同時に強要されたら、断れないかもしれない」


 「最悪、いくらかのお金と引き換えに、相続放棄される可能性もある」

奥さんは、ますます不安がつのります。


 「そんなの、ありません!」

 「夫の兄弟には、夫の財産を渡したくない!」

 これが、奥さんの本当の気持です。



      行政書士  平 野 達 夫


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