心技体、すべてにおいて
小さいスケールでまとまっているチマチマ男。


メールを出すことも不得手で
簡単な報告をするのに
30分もチマチマ時間をかける男。


そんな仕事の遅い分際で
残業代は必ず申請をしてくる厚顔ぶり。


悲劇なのは
その申請を出す相手が「俺」であることだ。


「営業に残業代があるのが不思議なんよ、わし」
とお茶目に言っていたカムサハムノダさんの
仕事に対する厳しい言葉を
聞いてきた俺にとって


仕事を効率よく終えて残業しないデキる人間が
自分の段取りが悪くて仕事が遅いくせに
超過時間のお金だけはしっかりゲットする人間より
金銭的に損をするのが許せない。


よってチマチマ男の申請が明らかに
「非効率的な仕事ぶりに起因するもの」で
あれば市中引き回しの上、磔獄門にするのを日課としている。


あの強烈個性をして
『あいつはアカンわ~。目を光らせな、サボりよるで』
と俺にアドバイスしてきたほどの逸材だ。



他の部下のモチベーションもあるので
決して目を離さないでおこう。


部下を知るには
一緒にメシを食うのが一番だ。
職場では聞けない本音が聞けたりするし・・・。


「中○くん、昼飯でも行こっか?」



「はぃ」


管理職になって故郷に錦を飾りたい、
という野望を持っている割には
「自分さえ良ければそれでいい」という仕事ぶりで
職場でやや浮いている彼とじっくり話し込みをするいい機会だ。


根は悪い奴ではないと思うので
こちらが熱い思いを伝えれば分かってくれるだろう。





二人でメシに行く。
色々品数があり、それを自分で選んでとる形式だ。


不規則で外食中心の食生活の俺は
こんな店に来たら割と品目を多くオーダーする。

・ほうれん草のお浸し
・魚
・豚汁
・イカと大根の煮付け
・ソーメン

ご飯はこれ以上太ってはいけないので頼まない。
炭水化物を抜いたダイエット・・・だが
ソーメンを食っていては余り意味がないぞ、俺。


しかし20代の頃は
どんな時でも「脂ぎった肉」
肉、肉、肉と3食焼肉でもいけたもんだが
健康管理に留意しないといけないとは・・・。
年齢を感じる今日この頃だ。







20代中盤で、残業代もチマチマ稼ぎ
小銭を溜め込んでいるチマチマは
どんなオーダーをするのか興味があるぞ~。


・ごはん
・味噌汁
・鶏のから揚げ
・ひじき







彼のテキトーな仕事ぶりを注意しようと思っていた俺だが
どんな時でも安く済ませようとする彼の金銭管理と
さりげなく「ひじき」を注文している健康管理。

好きな物を好きな時、好きなだけ食っていた
節制できない自分の20代と比べ実にしっかりしている。


う~ん。


という訳で、大して話もせず
二人の昼食は15分ほどで終了。






休みの日
早く帰った日
会議で不在の日
俺が上記の理由で事務所から姿を消すと


不思議なことに必ず体調不良に陥り
「早く帰りたいのですが・・・。」と他の社員に訴えるチマチマ男。


俺が目を光らせている間は
一生懸命、青白い顔をしながら、
フラフラと幽霊のように客に対応する。

しかし、俺の不在時には
周りが全部自分より後輩で何も言えないのをいいことに
どんなにバタバタ忙しくなろうとも
席から一歩も動かず、知らん顔を決め込むチマチマ男。


その表裏の激しさを後輩達からすべて俺にチクられ、
結果怒った俺に罵倒される羽目になる。


その後は休憩室で深いため息と共にタバコを吹かす。
しかも結構長い時間、うつむいたまま、ジーーーーッとしている。


怒っておいて何だがそんな彼が正直、気味悪い時もある。


どんな時でも若乃花夫人の美恵子さんの若かりし日のように
お口をポカンと開けているチマチマ男。


26歳の若さ溢れる男子なのに
青白い顔色、何かと吐く深いため息、うつむきかげんの姿勢
小さい声に、普段からポカンと空いたしまりの無い口元。

まるで窓際族のまま定年を迎えたおっさんのような佇まいである。
似ている有名人をあえて探すなら貧乏神だろうか。


しかし、この男なかなかの吝嗇家(りんしょくか)で
無駄な金は一切使わないし、後輩に一度たりとも奢ったことはない。

食事も判で押したように「サンドイッチと午後の紅茶(レモンティー)」
とワンコインでお釣りがくるつつましさで
休みの日も寝ているか、掃除、洗濯くらいなもんで
本当に金を遣わない。

外食中心のだらしない食生活に加えて
金を湯水のように遣う俺とは大違いだ。

晩飯もほとんど食べず、
朝飯は自分で炊いたお米と少しのおかずで終わり
人間も小さいが食べる量まで小さくまとまっている。

気が小さく自己主張をする性格ではないようだが
どんな些細な残業代もキッチリ申請してくるし

他の社員が「仕事も残っているので、まだ帰れません」と謙虚に辞退する
俺からの「今日、早く帰ったら?」の温かい申し出にも
「ありがとうございます」と、どんな重要な案件を抱えていようとも
スッと帰れる大胆さを持っているのがよく分からない。


そういえば何度と無く地元に帰っているが
一度として彼からお土産を貰ったことがない。


世話になった九州アニキからの飲み会の誘いも
「彼女が来てますんでぇ・・・」
「今日はちょっと・・・」とすべて断っていたようだし、
若いのに「自分にとって損なことは嫌」という姿勢は徹底している。


自分が損をする状況に追い込まれたら
世界が滅びるくらい悲劇的な気持ちになるチマチマ男。

「損して得を取れ」なんて格言は
この男の辞書にはないのだ。



俺の不在時には
ある程度その願望を満たしているようだが俺は見た。


エレベーターに乗ったのはいいが
乗った位置がたまたま入り口近くだったため
毎回乗り降りする人の為にとドアを開け閉めせざるを得ない小さな背中を。


沢山の人が乗り合わせていたので
チマチマは俺の存在に気づいていなかったが、
実は乗客の陰から一部始終を見ていた俺。


「何で僕が・・・」と背中が怒っていた。


損することが人一倍嫌いなチマチマ男の引いた貧乏くじに
俺は笑いを堪えすぎて腹筋を痛めた。




仕事をすすめていく上で
パソコンの存在は欠かせない。

5年前はTVと同じく、モニターのスイッチを入れたら
パソコンが立ち上がると確実に信じていた俺。

ソフトとハードと言われても
ファミコンのソフトくらいしか連想できなかったし
Word(ワード)、Excel(エクセル)と言う単語を知っているだけで
知的だと勘違いしていたあの頃。
もちろん、使えるはずもない。


当時は塾の講師をして田舎の純朴なガキ共を
口の上手さで騙くらかしていた俺。


テストもあちこちの問題集から適当にパクり
あたかも自分が考えたかのようにガキに解かせていた。


しかし当時アイディアマンを自称していた俺は
手書きでテストを作るのが次第に面倒になり
「ガキ共にテストを作らせ、それをシャッフルして授業を進める」という
自分にとって楽な方法を編み出した。


一生懸命、自分達で問題を探し
手書きで同じクラスの仲間のテストを作る生徒達。


わざわざ月謝まで払っているというのに
自分達で問題を作成するという不条理。


金を払っている親が知ったら激怒するだろうが
ガキ共にそんな知恵があるはずもない。


「世の中、ずる賢い奴が勝つ」という現実まで
教えてやる俺は素晴らしい講師だったと今でも思う。


そんな俺のガキを舐めきった態度に
冷水をぶっ掛けたのは一枚のテストだった。


パソコンを使って作ったであろうそのテストは
俺の汚い字で書きなぐったようなテストとは雲泥の差があり
しかも「中学生がパソコンを使っている」という現実が
6年前の俺を打ちのめした。


「いかん・・こんなことでは・・・」ショックを受けた俺はそこから本屋でパソコン関係の本を貪り
スクールに通い、資格をとりまくって・・・・な訳もなく
一晩眠ったらキレイさっぱり忘れてパチンコ屋に早朝から並んでいた。



そんな俺が【デジタル時代ならではの仕事術をブログで公開】に
参加するなどおこがましいが、誰に迷惑をかける訳じゃなし許して欲しい。



俺の仕事術、それは・・・
「エクセルで作成した営業成績のグラフをいちいちプリントアウトして
事務所に貼るのが面倒臭いので一旦、プリントスクリーンをして
ペイント画面に貼り付け、GIF型式にして添付で送りつける」
という作業だ。




こんな感じで時々部下に嫌味たらしく送りつける。
紙代もかからないし、メールって便利ですよね~~。



GOPAN体操名人の仲良しさん、是非お試しください♪
(悔しいけど今日の一言コメント笑ってしまいました)

忙しい時の「チマチマ男」こと中○くんは
焦点の合わない目付きに加え、口をポカンと開けたまま
まるで夢遊病者のようにフラフラと移動をし続ける。


本当に申し訳ないのだが
そんな彼なりに頑張る姿を
こみ上げる笑いを堪えながら見ている俺がいる。


基本的に自分の損得には
26歳の独身男性と思えない程、敏感で
嫌なことやヤバイ事は、仮病を使ってでも逃げていたチマチマ男


本当は攻撃的な性格なのだろうが
器の小ささからかそれを表に出すことが出来ず
客から怒られたり、嫌なことがあると
「う”---------。」って感じで
休憩室で座ったまま一点を見つめてタバコを吸っている。


元々営業ををしていただけあって
「誠意がこもった風のお詫び&反省」系のトークは抜群に上手い。
それはもう若者とは思えない程だ。


その場をしのぐ術は天才的であるが
最近は毎回その2秒後くらいにウソがバレてしまい
俺に怒鳴られまくる。


怒鳴られると、人間って「萎縮する」か、「反抗的になる」
かパターンは2つなのだが、チマチマ男は
普通の人には無い反応をする。
微動だにしなくなる。
一切、身動きひとつしなくなるのだ。
まるでパントマイムのように固まってしまう。


それもまた俺のツボで
怒りながらも「チマチマ男がまた固まった。」と
こみ上げる笑いを抑えるのに苦労している。
本当に興味深い生き物だ。


後輩の新人宮○くんがタレ込んでくれたのだが

俺が不在になると、
チマチマ男の休憩室にタバコを吸いに行く頻度は急上昇し
普段は無口なのくせい急にテンションが上がり
おしゃべり野朗に変身しアチコチに話しかける豹変ぶりだ。


俺から無理やり誘われた宮○くんの歓迎会でも
電車時間の都合で先に帰った俺の後をうけて
宴も多少の盛り上がりを見せたらしいのだが
「2次会、どこ連れていってくれるんですか?」的ノリの
宮○くんの期待し対し

「あっ、もうこんな時間かぁ・・・」
「洗濯物が雨に・・・」

と小声でチマチマ呟き
速攻チャリに乗って帰っていったチマチマ男。


昨日も、お得意の組み合わせ
「サンドイッチ+午後の紅茶(レモンティー)」に加えて珍しく
「メロンパン」なんぞを昼飯に買ってきていたが
黙ったまま、ボソボソと食い、
せっかく買った「メロンパン」の封もあけずに残していた。


ここまで書くと暗い奴のように思われるかも知れないが
財布に大切に貼ってある「彼女とのプリクラ写真」は
プリクラ特有の瞳キラキラで本人とは似ても似つかない色男に
写っており、しかも、おどけたポーズさえとっている。


要は俺たちに注ぐべきである「気配り」と言う名の
エネルギーをケチっているのだ。

出世志向も強いチマチマ男だが、
自分さえ良ければというのは他の人間からの協力をもらえないと思うぞ。



色々あるけど頑張れよ、チマチマ男♪





  
     後輩とチマチマ男のツーショット
歳は3つくらいチマチマ男の方が上なのだが、宮○くんも貫禄があるので、
どうみてもチマチマ男が上司に怒られているようにしか見えない図。
腹を抱えて笑って見ている俺はいつか刺されるかも知れない。



本人達には内緒だよ
オチョコに水を入れたらすぐ溢れてしまう。
器が小さいからだ。


人間の器も同じであろう。
スケールの小さい人間は
少々のことですぐ「いっぱいいっぱい」になり
あるものは自爆し、またある者は底なし沼に自分を追い詰めていく。

俺の職場には身も心も小さい
そう「ミスターお猪口(おちょこ)」と呼ぶにふさわしい人間がいる。


俺?NONO!
俺はまだ茶碗くらいの容量はある。(つもり)


少し前からこのブログにまさにチョコチョコと登場している
中○くんだ。


縁あって岡山で一緒に仕事をすることになり
事前に携帯に挨拶の電話があったのだが
「よろしく、おねがいします。」という受話器の向こうの声は
丁寧なのだがボソボソと暗く全く印象に残らないものだった。


一緒に仕事をするようになり
彼のチマチマぶりを思い知るのは
それほど時間を必要としなかった。


仕事中、姿が見えないので探しにいくと
上司の俺の許可無く休憩室に腰を下ろし
暗~い表情でタバコを口に一点を見つめている。


知り合って間もないので。ムッとしつつも
「どしたん?休憩?」と皮肉っぽく声をかけても
恐縮するどころか
「はい。」と悪びれもせずに答える非常識ぶり。


仕事でもミスが多く、そのミスを隠す為に
その場しのぎのウソをつくのだが
持って生まれた星なのか、ことごとく速攻バレる。


それでも彼が俺の怒りにじかに晒されることはなかった。
その頃は俺も転勤したてで、且つ日々様々な事件が勃発し
とてもじゃないが彼に指導する余裕なんてなかったからだ。
だから、しばらくは彼にとって非常に居心地の良い職場であったはずだ。


しかし「天網恢恢疎にしてもらさず」

俺という我儘人間と同じ職場になったのが運のつき
やり場のないストレスの矛先に
ついにロックオンされる日がやってきてしまった。


まずタバコを許可無く吸いに行くことを禁じられ
少しの報告でも本当かどうか関連部署に確認の電話をされる
嫌味、皮肉、ささいなことで怒鳴られる、罵倒される
という地獄の日々の幕開けだ。


俺に怒鳴られると
まるで蛇に睨まれたカエルのように固まる中○くん。

可哀相に思ってフォローの言葉をかけると

「僕の為を思って言って下さるのがわかるんでぇ」とか
「僕は怒られ役であることは理解してますんでぇ・・」
「一番、辛いのは石○マネージャーなんでぇ・・」
挙句「こんなことを言ってくれるのは本当にありがたいことなんでぇ・・」

という風に必ず美辞麗句で
「怒られるのは自分が悪いからです、はい」
的な発言を殊勝にもしてくるが

陰では絶えず愚痴を言いまくり
誰にも相手にされないとなると
ついには前の会社の上司にまで愚痴を言いまくる
と絶えず自分が愚痴れる相手を求め続けるのだ。

だったら最初から格好のいいことを言わなければいいのだが
そういう性分らしく有言不実行で自分でストレスを溜め込むという悪循環。

俺は何度もそういう「ええかっこしい」の部分を注意した。

しかしその場は「ありがとうございます。後がないと思って死ぬ気でやります。」
と威勢のいいことをまたまた言ってのけ、直後大ポカをやる・・・の繰り返しだ。


仕事のミスは半端じゃないほど多く
クレームの電話は社内外を問わず
あちこちから顰蹙を買っているが

残業の申請だけは毎日キッチリと行っており
どんな些細な残業も絶対に抜け落ちることはない。


26歳の若者らしく色んなことにもっと豪快になって欲しいのだが
上司の俺がラーメン+カツ丼をガツガツと食っているのに

毎日の昼食は「サンドイッチと午後の紅茶(レモン)」
判で押したように決まっている。
食まで細い。



「おらっ!メシいくぞ!」と栄養をつけさせるべく
無理やり昼飯に誘っても「ひじき」とか注文して
俺の意図は全く伝わらない。


あの強烈個性でさえ、あきれた
中○くんのチマチマぶり・・・


いいか、今月が勝負だぞ!
頑張れよ、チマチマ男





高校を卒業してしばらく経つと
思いがけない事態に遭遇する。

俺の田舎高校では化粧なんてしてる女は滅多にいなかったが、
高校卒業して就職や短大や専門、大学に進学するにつれ
みんな化粧を当たり前のようにする。

ブスでもそれなりになる化粧。

当時はみんなで記念写真を撮った時に
化粧してる女は顔の色と首の色が
不自然に違うことにビックリしていたのも
ウブだった10代の頃の俺の大切な思い出だ。

女のコが劇的に変わる20歳前、
男もそれなりに変わり始める。

地味キャラ連中の逆襲が始まるのもこの時期だ。

高校時代には大人しい草食動物のような連中同士で
ツルんで、女子とまともに口も聞けなかったような
地味キャラが、自分の過去を知らず、それなりに扱ってくれる
大学の連中と付き合い、(まぁそれが悪い訳ではないのだが)
調子に乗って、高校時代には高嶺の花だった女子に
告白したりもするのだ。


それは別に悪いことじゃないし
「男子三日見ざれば刮目してみるべし」だしね。


しかし、俺の聞いた話はそんなレベルじゃない。

高校に入学して間もない頃、
「すげぇおもしれー奴がおるけぇ、見に行ってみぃ」
と誰かに誘われて1年8組に行った。


すでに人だかりが出来ており
その中心には


目を深く閉じて座禅をしている
バカボンのパパそっくりの男子高校生
がいた。


何の脈絡もなく、いきなり教室で座禅である。
しかも入学して間もない時期であり
鮮烈な高校デビューだった。



同じクラスの後ろの席に座る
エロメガネ井田をいじめ抜いていた
当時イタズラ小僧の俺でさえ話しかける勇気はなかった。

みんなの喧騒を全く無視して座禅し続ける
その男は強烈に頭が良く、東大を目指しているという噂だった。


2年生になるとこともあろうに
同じクラスにその座禅男がいた。


本来であればそいつをイジり笑いをとるのが
当時の俺の役割であったかもしれないが
高2になってもやるべきことは沢山あり、
結局中途半端に話をするにとどまっていた。


やがて大学受験にも失敗した俺は
座禅男のことなど忘れ去り、
よしあき達と味気ない浪人生活を送っていたのだが、
ひょんなことから座禅男の噂を耳にした。

高校卒業後、広島で浪人生活を送っていたそやつは
高3の時、同じクラスだった女子に
「ラブレターを出していた」というのだ。
当時としては衝撃情報だった。


男女の秘め事なんだから
ラブレターをもらった当事者にも
隠し通すデリカシーが欲しかったところだが
楽しめそうなネタだったのでそれは許そう。


それにしても「ラブレター」というセンスが凄い。
今から14年前だが、その当時でもラブレターを送りつける感覚には驚いたもんだ。


しかし、そんなのはまだ序の口で
内容というか文章はさらに座禅男の面目躍如で

「君を思ふ時・・・」という一文があったという。
そのラヴレターの中に。


時代は平成で、送りつけたのは10代のガキで
しかも全く口も聞いたこともない相手に・・・


「君をお・も・・時」



旧かなづかい、である。


自分の知性を強調したかったのかどうかは知らない。
でもラブレターを貰った女は知性のカケラもないコだったので
その「ふ」は永久に「書き間違い」として記憶されることだろう。



電車男はエルメスを見事落としたが
座禅男はきっとまだ独身だろう。
強烈男と同様に。そうあって欲しい。





電車通勤など
浪人生の時の3ヶ月くらいしか経験がない俺。


思えば小・中・高とすべて近場の学校に通い
大学時代は貧乏寮ながら大学から歩いて数分の場所に立地し
就職してもマンションを借り、
チャリンコで10分程度のところに職場はあった。


学校や職場なんぞ
「歩いて通う」か、せいぜい「チャリンコで通う」
のが当たり前の俺の32年間の通勤・通学記。


職場の先輩や後輩が
「電車の時間がないんでぇ~」
「終電が・・・」とか言って時計をチラリと見る


そんな話を聞くたびに
「電車通勤は大変ですね。」だの
「いっそのこと車で通えばええじゃん!」などと、
電車通勤に対して批判的な発言をしていた俺だが
実は少し憧れていたことを、ここに告白する。



「いつか電車とかで通勤するような生活するんかぁ・・・」
漠然と思っていたウブな俺。



そして時が経ち・・・
かつての俺が少し憧れていた電車通勤は現実のものとなる。

しかも
「新幹線通勤」という滅多に無い形で。


運がいいのか、悪いのかは分からないが
貴重な経験をしていることだけは間違いないだろう。


考えられない程、遅い時間に目覚めても
チャリンコさえブッ飛ばせば
アッという間に自分の机にふんぞり返っている・・・。
そんな夢のような生活は3月の末日で終了している俺。


今では「この電車に乗れば何時ごろ職場に着く!」
という計算の元、ギリギリまで睡眠を貪り


遅刻しそうになったら、赤信号などすべて無視し
対向してくる高校生を威嚇しながら
鬼のような形相で駅までチャリンコをこぎ

前を歩いているおっさんを突き飛ばすほど
ダッシュで階段を駆け上がり
新幹線のプラットホームで息も絶え絶えになりながら
空いてる席を物色する新幹線通勤の俺。



今日なんて、いつものように計算されつくした時間に起床し、
高速で着替えや歯磨きをすませ部屋を出ようとしたら・・・



チャリンコの鍵がない(T_T)


駅までの距離を歩いていくことは
緻密に計算された俺の通勤計画にはない。
チャリンコが必須だ。



必死で独り言をいいながら探す・・・


「ないっ!」

「どこじゃい?」

「オラッ、でてこいや!!」

誰に言っているのか自分でもさっぱり分からない。


あった!!!
ポケットに放り込み、いつものように高速スピードで駅まで・・


おりゃあぁぁぁぁぁl!!!!


俺の自転車のペダルはグルグルで書けるほど高速回転していた。
まるで漫画みたいに。




駅に着き、全身で前方を歩く人達を威嚇しながら
猛ダッシュで駆け抜ける32歳。

俺はいつからこうなってしまったのだろう・・・。



結局、お目当ての「ひかり」には置いていかれ
一本遅い「こだま」に乗った。


責任者として、遅刻をしては部下に示しがつかない。
イライラしながら窓の風景を睨む。


目的駅につき、そこからさらにバスに急いで乗る。


はよ、行けやッ、このボケバスがっ!!
関係ないバスに内心毒づく俺。



「あれッ??」



バスは俺の職場の方向に行くと見せかけて大きく右折した。



「えっ????」


ブロロロロ・・・。




慌てて降車ボタンを押し、
たった一駅で降りそのまま歩いて職場に行った。



もちろん、遅刻した。

先に来ていた部下達にはキレ気味に
「バス間違えたわ!!」と言い放ち、誤魔化した。





   
        帰りの新幹線のお供。

どうでもいいけど、
今日も「部下」と呼ばれる方々のお陰様を持って
希望の電車から3本遅れて帰路についた。



新人さんばかりなのでミスは仕方がないのは分かっているが
「すべてを許そうと慈悲の心」
「自分の失敗には寛容だが他人の失敗は絶対に許せない心」
が俺の心の中で戦い続けている。



田○さんの似顔絵は久しぶりの会心作なので
気を良くして本日は、他の人のも書いてみよう。






            カムサハムノダさん

俺より2歳年上だが、ルックス、考え、行動、すべてにおいて
俺よりも若い。トークは誰よりも達者で、押しも引きも変幻自在の広島男。
一旦キレたら喧嘩上等のヤンキー気質にいつでも戻れる35歳。









            職場の新人宮○くん

一見真面目そうに見えるが、なかなかのお笑いセンスを持つ新人。
入社してまだ2週間だが恐ろしいほど職場に溶け込んでいる。










ハリマネージャー

少年の心を持つ広島ルパン3世、物腰は柔らかだが
目的のためには手段を選ばないしたたかさを伏せ持つ人。
上期首領(かみきどん)が心を開いて相談する貴重な人。
しかし本人の中では上期首領は「単なる奇妙な生物」だろう。










               かみきどん

言わずと知れた強烈な個性の持ち主。
俺の携帯に毎日のように近況報告メールを送りつけてくる。
俺はあんたのママじゃない。












            ヨッシー

何も言うまい、TV出演したこの笑顔がすべてを物語っている。
北九州の誇る目立ちたがり屋の29歳。





本日は以上です。








ヨッシャーぁぁぁ!!!*:.。..。.:*・゚(≧∀≦)゚・*:.。. .。.:*

今日は9:51分の新幹線で帰れるぞ~~~~~ッ


責任者の立場にありながら、
基本的に自分のことしか考えられないセルフィッシュな俺は、
普段よりも2本も早い電車で帰れることを子供のように喜んでいた。


部下を事務所に残して
先に帰るのは気が引けるが月初くらいいいだろ?
みんな自宅は近くだけど
これから60kmの距離を帰るの俺だけなんだから、
そもそも、いつも毎朝9:00に来てるの俺だけじゃん
遅くまで残っても残業代もつかないんだし俺。



心の中で自分が早く帰ることを正当化し
ダッシュするか、タクシーに乗って駅まで向かうか
頭の中を高速回転させながら
「じゃあな!」と帰ろうとした瞬間・・・




「石○マネージャー、質問があるんですけど・・・」
かわいい部下が呼び止めた。





「明日じゃダメなんか?(--メ)」
と心の中でつぶやきつつ、



「何?」
と脳から「笑顔」と呼ばれる表情を作る信号を顔面神経に送った。




その質問に対処するのには
結構な時間がかかると質問者と俺が理解した頃には
お目当ての電車には絶対に間に合わないほど時間が過ぎていた。



早く帰れなかったことと
それについてヘコむ自分の狭小さを恥じながら
電車を待つ時間を有効利用し
「松屋」でブタ丼弁当、駅近くのテイクアウトの餃子屋で
餃子をオーダーし、新幹線の中で食べることにした。


まばらに人が乗っている「こだま」の車内。



俺は、他人の視線をものともせず
ブタ丼とニンニクがたっぷりの餃子をガツガツと貪った。



通路を挟んで座っていたオバサンは
なぜか顔を背けていた。




自分の弁当のキツイ臭いに不愉快になった俺は
禁煙車両から喫煙車両に移動し、タバコをふかしながら
なぜ自分がこの歳になっても独身なのか
少し理解できたような気がした。



「車」と「射撃」というシブい趣味を持ち
毎日、死ぬほど働いている温和な九州男子の
この人なら俺の今の気持ち分かってもらえると思うんだ。


ねっ!田○さん♪


高校生の時の俺は
今と変わらず、人見知りだが社交的という
やや分裂症気味のガキだった。


底意地も悪く、弱い者イジメも大得意で
悪口とイタズラをこよなく愛す嫌な奴。


俺を知っている女子達からアンケートを取れば
まぁ「嫌いな男子ベスト3」には入っていただろう。


類は友を呼ぶもので
俺の友達といえばほぼ全員が
どこかやや壊れていたように思う。


今このブログを読んでいる旧友達に否定はさせない。


そう、君達も十分、歪んでいたのだ。


そんなことはいいのだが
毎日、バカなことを言い合っては無邪気に笑い
受験勉強もそっちのけでツウの家で麻雀に興じていた俺たち。


「俺のことを好きな女を集めて、歌を聞かせたい」
という誇大妄想狂のまっさんはギターを掻き鳴らし

「将来は海賊になりたい」という夢を語っていた
現在、公務員のリョー

ロックを愛し「アナーキー」や「頭脳警察」など
俺のさっぱりわからない音楽にハマっていた田村(現:警察官)


それぞれが数々のエピソードを持つ
変人ではあるが、実は俺にはずっと心に秘めていた話がある。



いつものように授業が終わり、速攻帰宅をする俺。

普段であれば他のクラスにいたツウやまっさん、ザコなどと
一緒に帰るのだが、その時はなぜか一人でチャリンコをぶっ飛ばしていた。



前方を見ると同じクラスの原がいた。


たいして仲良くもないが
二言、三言は会話する同級生。


クラスでも地味な部類に属し、当時、俺の交友範囲にはいない奴。


普段なら無視して追い抜き
そのままツウの家に急ぐのだが
一人寂しく帰る原の姿になぜか話しかけてしまった。


「おう、原!」


「あぁ・・・!」


そのままチャリンコを並べて走る。
最初は会話も「お前、どこまで帰るん?」とかそんな感じだったと思う。


原も多少、ユーモアを解する奴だったので
俺もお得意の毒舌でクラスのブスの話なんぞをサービスし
奴もそれに合わせて、何だか友達のようになっていた。


そんな四方山話の途中、
いきなり原が言った。


「俺、元々この土地の人間じゃないんよ。」



「へッ?」



「俺、こっちに引っ越してきたんよ。」



僻地でほとんどの人間は土着民
だから知り合いの知り合いは誰かのツレ、
ってな俺たちの地元ゆえに
他の地域から来た奴っていうのは少しだけ興味の対象だ。


しかし、原がそうだったとは意外だ。


全国的に見れば誰も知らないクソみたいな町だが
当時は井の中の蛙で、世界の中心は府中にあり!と
結構マジで信じていた俺の目に原が急に異邦人のように見えてきた。


他の土地ならではの風習を聞きだし
ツウや他の無知な人間に講釈するネタができたと多少喜ぶ。
地味な原でも役に立つもんだ。


「ふ~ん、・・・でッ、何でこっちに来たん?」
興味シンシンだ。
何かおもろいコト言えよ。



原は答えた。


「俺の父親、病気であんまり長くないんよ。
だから最後は故郷で死にたい、っていうので来た。」





おみそれしました。<(_ _)>





お調子モンで、おちゃらけたテンションで話を聞いていた俺は
その内容のヘビーさに、何とも言えない気持ちになった。



「人にはそれぞれの地獄がある」
後年、何かの小説で見つけたフレーズだ。


自分の悩みこそが世界の悩み
世界は俺のためにある、とさえ思っていた俺にとっては
この不意打ちにも似た原の「身の上話」は効いた・・・。




地味キャラだと思っていた同級生の原。
もうぼやけてしまったその時の表情と共に
奴のオヤジはどうなったのか、
そんなことをフト考える今年33歳の俺。



色んな出来事を立ち止まってゆっくり考えたいなぁ、と思う今日この頃です。