休みの日
早く帰った日
会議で不在の日
俺が上記の理由で事務所から姿を消すと
不思議なことに必ず体調不良に陥り
「早く帰りたいのですが・・・。」と他の社員に訴えるチマチマ男。
俺が目を光らせている間は
一生懸命、青白い顔をしながら、
フラフラと幽霊のように客に対応する。
しかし、俺の不在時には
周りが全部自分より後輩で何も言えないのをいいことに
どんなにバタバタ忙しくなろうとも
席から一歩も動かず、知らん顔を決め込むチマチマ男。
その表裏の激しさを後輩達からすべて俺にチクられ、
結果怒った俺に罵倒される羽目になる。
その後は休憩室で深いため息と共にタバコを吹かす。
しかも結構長い時間、うつむいたまま、ジーーーーッとしている。
怒っておいて何だがそんな彼が正直、気味悪い時もある。
どんな時でも若乃花夫人の美恵子さんの若かりし日のように
お口をポカンと開けているチマチマ男。
26歳の若さ溢れる男子なのに
青白い顔色、何かと吐く深いため息、うつむきかげんの姿勢
小さい声に、普段からポカンと空いたしまりの無い口元。
まるで窓際族のまま定年を迎えたおっさんのような佇まいである。
似ている有名人をあえて探すなら貧乏神だろうか。
しかし、この男なかなかの吝嗇家(りんしょくか)で
無駄な金は一切使わないし、後輩に一度たりとも奢ったことはない。
食事も判で押したように「サンドイッチと午後の紅茶(レモンティー)」
とワンコインでお釣りがくるつつましさで
休みの日も寝ているか、掃除、洗濯くらいなもんで
本当に金を遣わない。
外食中心のだらしない食生活に加えて
金を湯水のように遣う俺とは大違いだ。
晩飯もほとんど食べず、
朝飯は自分で炊いたお米と少しのおかずで終わり
人間も小さいが食べる量まで小さくまとまっている。
気が小さく自己主張をする性格ではないようだが
どんな些細な残業代もキッチリ申請してくるし
他の社員が「仕事も残っているので、まだ帰れません」と謙虚に辞退する
俺からの「今日、早く帰ったら?」の温かい申し出にも
「ありがとうございます」と、どんな重要な案件を抱えていようとも
スッと帰れる大胆さを持っているのがよく分からない。
そういえば何度と無く地元に帰っているが
一度として彼からお土産を貰ったことがない。
世話になった九州アニキからの飲み会の誘いも
「彼女が来てますんでぇ・・・」
「今日はちょっと・・・」とすべて断っていたようだし、
若いのに「自分にとって損なことは嫌」という姿勢は徹底している。
自分が損をする状況に追い込まれたら
世界が滅びるくらい悲劇的な気持ちになるチマチマ男。
「損して得を取れ」なんて格言は
この男の辞書にはないのだ。
俺の不在時には
ある程度その願望を満たしているようだが俺は見た。
エレベーターに乗ったのはいいが
乗った位置がたまたま入り口近くだったため
毎回乗り降りする人の為にとドアを開け閉めせざるを得ない小さな背中を。
沢山の人が乗り合わせていたので
チマチマは俺の存在に気づいていなかったが、
実は乗客の陰から一部始終を見ていた俺。
「何で僕が・・・」と背中が怒っていた。
損することが人一倍嫌いなチマチマ男の引いた貧乏くじに
俺は笑いを堪えすぎて腹筋を痛めた。

早く帰った日
会議で不在の日
俺が上記の理由で事務所から姿を消すと
不思議なことに必ず体調不良に陥り
「早く帰りたいのですが・・・。」と他の社員に訴えるチマチマ男。
俺が目を光らせている間は
一生懸命、青白い顔をしながら、
フラフラと幽霊のように客に対応する。
しかし、俺の不在時には
周りが全部自分より後輩で何も言えないのをいいことに
どんなにバタバタ忙しくなろうとも
席から一歩も動かず、知らん顔を決め込むチマチマ男。
その表裏の激しさを後輩達からすべて俺にチクられ、
結果怒った俺に罵倒される羽目になる。
その後は休憩室で深いため息と共にタバコを吹かす。
しかも結構長い時間、うつむいたまま、ジーーーーッとしている。
怒っておいて何だがそんな彼が正直、気味悪い時もある。
どんな時でも若乃花夫人の美恵子さんの若かりし日のように
お口をポカンと開けているチマチマ男。
26歳の若さ溢れる男子なのに
青白い顔色、何かと吐く深いため息、うつむきかげんの姿勢
小さい声に、普段からポカンと空いたしまりの無い口元。
まるで窓際族のまま定年を迎えたおっさんのような佇まいである。
似ている有名人をあえて探すなら貧乏神だろうか。
しかし、この男なかなかの吝嗇家(りんしょくか)で
無駄な金は一切使わないし、後輩に一度たりとも奢ったことはない。
食事も判で押したように「サンドイッチと午後の紅茶(レモンティー)」
とワンコインでお釣りがくるつつましさで
休みの日も寝ているか、掃除、洗濯くらいなもんで
本当に金を遣わない。
外食中心のだらしない食生活に加えて
金を湯水のように遣う俺とは大違いだ。
晩飯もほとんど食べず、
朝飯は自分で炊いたお米と少しのおかずで終わり
人間も小さいが食べる量まで小さくまとまっている。
気が小さく自己主張をする性格ではないようだが
どんな些細な残業代もキッチリ申請してくるし
他の社員が「仕事も残っているので、まだ帰れません」と謙虚に辞退する
俺からの「今日、早く帰ったら?」の温かい申し出にも
「ありがとうございます」と、どんな重要な案件を抱えていようとも
スッと帰れる大胆さを持っているのがよく分からない。
そういえば何度と無く地元に帰っているが
一度として彼からお土産を貰ったことがない。
世話になった九州アニキからの飲み会の誘いも
「彼女が来てますんでぇ・・・」
「今日はちょっと・・・」とすべて断っていたようだし、
若いのに「自分にとって損なことは嫌」という姿勢は徹底している。
自分が損をする状況に追い込まれたら
世界が滅びるくらい悲劇的な気持ちになるチマチマ男。
「損して得を取れ」なんて格言は
この男の辞書にはないのだ。
俺の不在時には
ある程度その願望を満たしているようだが俺は見た。
エレベーターに乗ったのはいいが
乗った位置がたまたま入り口近くだったため
毎回乗り降りする人の為にとドアを開け閉めせざるを得ない小さな背中を。
沢山の人が乗り合わせていたので
チマチマは俺の存在に気づいていなかったが、
実は乗客の陰から一部始終を見ていた俺。
「何で僕が・・・」と背中が怒っていた。
損することが人一倍嫌いなチマチマ男の引いた貧乏くじに
俺は笑いを堪えすぎて腹筋を痛めた。
