高校を卒業してしばらく経つと
思いがけない事態に遭遇する。
俺の田舎高校では化粧なんてしてる女は滅多にいなかったが、
高校卒業して就職や短大や専門、大学に進学するにつれ
みんな化粧を当たり前のようにする。
ブスでもそれなりになる化粧。
当時はみんなで記念写真を撮った時に
化粧してる女は顔の色と首の色が
不自然に違うことにビックリしていたのも
ウブだった10代の頃の俺の大切な思い出だ。
女のコが劇的に変わる20歳前、
男もそれなりに変わり始める。
地味キャラ連中の逆襲が始まるのもこの時期だ。
高校時代には大人しい草食動物のような連中同士で
ツルんで、女子とまともに口も聞けなかったような
地味キャラが、自分の過去を知らず、それなりに扱ってくれる
大学の連中と付き合い、(まぁそれが悪い訳ではないのだが)
調子に乗って、高校時代には高嶺の花だった女子に
告白したりもするのだ。
それは別に悪いことじゃないし
「男子三日見ざれば刮目してみるべし」だしね。
しかし、俺の聞いた話はそんなレベルじゃない。
高校に入学して間もない頃、
「すげぇおもしれー奴がおるけぇ、見に行ってみぃ」
と誰かに誘われて1年8組に行った。
すでに人だかりが出来ており
その中心には
目を深く閉じて座禅をしている
バカボンのパパそっくりの男子高校生がいた。
何の脈絡もなく、いきなり教室で座禅である。
しかも入学して間もない時期であり
鮮烈な高校デビューだった。
同じクラスの後ろの席に座る
エロメガネ井田をいじめ抜いていた
当時イタズラ小僧の俺でさえ話しかける勇気はなかった。
みんなの喧騒を全く無視して座禅し続ける
その男は強烈に頭が良く、東大を目指しているという噂だった。
2年生になるとこともあろうに
同じクラスにその座禅男がいた。
本来であればそいつをイジり笑いをとるのが
当時の俺の役割であったかもしれないが
高2になってもやるべきことは沢山あり、
結局中途半端に話をするにとどまっていた。
やがて大学受験にも失敗した俺は
座禅男のことなど忘れ去り、
よしあき達と味気ない浪人生活を送っていたのだが、
ひょんなことから座禅男の噂を耳にした。
高校卒業後、広島で浪人生活を送っていたそやつは
高3の時、同じクラスだった女子に
「ラブレターを出していた」というのだ。
当時としては衝撃情報だった。
男女の秘め事なんだから
ラブレターをもらった当事者にも
隠し通すデリカシーが欲しかったところだが
楽しめそうなネタだったのでそれは許そう。
それにしても「ラブレター」というセンスが凄い。
今から14年前だが、その当時でもラブレターを送りつける感覚には驚いたもんだ。
しかし、そんなのはまだ序の口で
内容というか文章はさらに座禅男の面目躍如で
「君を思ふ時・・・」という一文があったという。
そのラヴレターの中に。
時代は平成で、送りつけたのは10代のガキで
しかも全く口も聞いたこともない相手に・・・
「君をお・も・ふ・時」
旧かなづかい、である。
自分の知性を強調したかったのかどうかは知らない。
でもラブレターを貰った女は知性のカケラもないコだったので
その「ふ」は永久に「書き間違い」として記憶されることだろう。
電車男はエルメスを見事落としたが
座禅男はきっとまだ独身だろう。
強烈男と同様に。そうあって欲しい。

思いがけない事態に遭遇する。
俺の田舎高校では化粧なんてしてる女は滅多にいなかったが、
高校卒業して就職や短大や専門、大学に進学するにつれ
みんな化粧を当たり前のようにする。
ブスでもそれなりになる化粧。
当時はみんなで記念写真を撮った時に
化粧してる女は顔の色と首の色が
不自然に違うことにビックリしていたのも
ウブだった10代の頃の俺の大切な思い出だ。
女のコが劇的に変わる20歳前、
男もそれなりに変わり始める。
地味キャラ連中の逆襲が始まるのもこの時期だ。
高校時代には大人しい草食動物のような連中同士で
ツルんで、女子とまともに口も聞けなかったような
地味キャラが、自分の過去を知らず、それなりに扱ってくれる
大学の連中と付き合い、(まぁそれが悪い訳ではないのだが)
調子に乗って、高校時代には高嶺の花だった女子に
告白したりもするのだ。
それは別に悪いことじゃないし
「男子三日見ざれば刮目してみるべし」だしね。
しかし、俺の聞いた話はそんなレベルじゃない。
高校に入学して間もない頃、
「すげぇおもしれー奴がおるけぇ、見に行ってみぃ」
と誰かに誘われて1年8組に行った。
すでに人だかりが出来ており
その中心には
目を深く閉じて座禅をしている
バカボンのパパそっくりの男子高校生がいた。
何の脈絡もなく、いきなり教室で座禅である。
しかも入学して間もない時期であり
鮮烈な高校デビューだった。
同じクラスの後ろの席に座る
エロメガネ井田をいじめ抜いていた
当時イタズラ小僧の俺でさえ話しかける勇気はなかった。
みんなの喧騒を全く無視して座禅し続ける
その男は強烈に頭が良く、東大を目指しているという噂だった。
2年生になるとこともあろうに
同じクラスにその座禅男がいた。
本来であればそいつをイジり笑いをとるのが
当時の俺の役割であったかもしれないが
高2になってもやるべきことは沢山あり、
結局中途半端に話をするにとどまっていた。
やがて大学受験にも失敗した俺は
座禅男のことなど忘れ去り、
よしあき達と味気ない浪人生活を送っていたのだが、
ひょんなことから座禅男の噂を耳にした。
高校卒業後、広島で浪人生活を送っていたそやつは
高3の時、同じクラスだった女子に
「ラブレターを出していた」というのだ。
当時としては衝撃情報だった。
男女の秘め事なんだから
ラブレターをもらった当事者にも
隠し通すデリカシーが欲しかったところだが
楽しめそうなネタだったのでそれは許そう。
それにしても「ラブレター」というセンスが凄い。
今から14年前だが、その当時でもラブレターを送りつける感覚には驚いたもんだ。
しかし、そんなのはまだ序の口で
内容というか文章はさらに座禅男の面目躍如で
「君を思ふ時・・・」という一文があったという。
そのラヴレターの中に。
時代は平成で、送りつけたのは10代のガキで
しかも全く口も聞いたこともない相手に・・・
「君をお・も・ふ・時」
旧かなづかい、である。
自分の知性を強調したかったのかどうかは知らない。
でもラブレターを貰った女は知性のカケラもないコだったので
その「ふ」は永久に「書き間違い」として記憶されることだろう。
電車男はエルメスを見事落としたが
座禅男はきっとまだ独身だろう。
強烈男と同様に。そうあって欲しい。
