これまでのお話
実家をしまう ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫
2階建ての納屋を解体することになり、中身を空にすべく弟と私は自分たちの私物を懸命に片していた。
助っ人として呼んだ夫は、自分の実家ではないので、やや暇そうである。
夫は主に私たちの教科書やテキスト、父の本類をビニール紐で束ねていた。
しかし、しばらくすると弟が言った。
「ねえちゃん、これ、誰のか知ってる?」
それは食器や日用品の入ったダンボールだった。
大き目の段ボール数個を弟が指差している。
私は見たことない物だった。
私は答える。
「わからない。見たことないと思う。」
弟が言う。
「俺が一人暮らししていた時のものかな でも、覚えがないな。」
2人で首をひねっていると、少し離れたところで本を束ねた夫が手を止めて近づいてきた。
夫はそれらを取り出し手に取ってしばらく眺めてから、「俺のかもしれない。」と言った。
見てすぐに分からないのか~い
と突っ込みそうなった。
が、30数年ぶりに見つけたのならこのくらいの反応なの
30数年前、私達は結婚して数ヶ月後には、1度目の駐在のため渡米している。
その数ヶ月の間、夫と私は実家に住んでいた。
その時、夫のひとり暮らしのアパートから全ての荷物を一旦私の実家に持ち込んだ。
その時の引っ越しといったら、引っ越しの前日まで夫は普通に暮らし、引っ越しの日に手近にあるものをそのまま段ボールに詰め、借り物のトラックで全てを運ぶ、という荒業だった。
その時なんだか、夫の片付け方が、母の片付け方と似ていると思った
類は友を呼ぶのかもしれない。
あの時の夫の引っ越し方を見た時、ちょっと不安だったことを思い出した。
そしてその後、夫の荷物は納屋にあるものだけでなく、母屋からも出てくることになる。
今回の実家じまい、夫には関係ないのに手伝ってもらい申し訳なく思っていたが、夫の物も割と多く出てきたので安心した。
夫は、手伝うべくして手伝う人だったのかもしれない
これで気兼ねなく、夫にも手伝ってもらおう、と思った。
あれから夫と私は8回の引っ越しを経験した。
最初は仕分けたり処分することが苦手だった私達夫婦も、さすがに成長していると思う。
これから私達は、整然とした家でキレイに暮らしていこう、と思った。
これからは、きっとキレイに暮らしてみせるぞ