右上だけに有った親不知抜歯後 2日目。
腫れは昨日よりさらに無い感じで歯の有った場所も楽な感じ。薬は一回も飲んで無い。
テクニック上の機能的にはもう何の問題も無い感じ。初日は唇自体が打撲傷のような感じで腫れていて吹き難く、昨日はかなり良くなったがほんの少し違和感が残るままだった。
予想していた不調とひょっとしたら良い方向へ向かうので無いかと考えていた事は両方と予想通りになりそう。不調はあっけない程早く修正されてる。良い方向は新しい事なので少し時間がかかるかな。
有るのは感覚のズレだけ。此処は意識的に時間をかけて丁寧に。音も少し変化してるけど慣れてしまいそのうち意識出来なくなるだろう。
此処からは物理的、医学的には全く根拠の無い仮説。
本来右の歯の有った隙間から頰の方へ空気が流れてアンブシュアは左にごく僅かに流れる。吹き始めはそのほんの少しの誤差を口当たりやアンブシュアの違和感として気になる。
(以前の感覚で構えるから)
でも、ウォームアップを続けるうちにそのギャップが埋まる。
構え方の力のバランスはほんの僅か左側に落ち着く。
(高い音を吹き続けると傷が痛むので何らかの負担はかかってるのだろう。)
このギャップはどこから来るのだろう?歯が無くなった逆の方向へアンブシュアのバランスが流れるのは生徒さんの親不知抜歯の時に確認済みで、そこを筋力で補おうとするとうまくいかず、逆に流れる方へ流される事が自然で効果的な事は実証済み。
ではどうやってそのバランス度合いを選ぶのか?
まあ、音を頼りにゆっくりと合わせていけば身体が選ぶが何を手がかりにするか?
マウスピースを唇に乗せる時ちゃんと呼吸が取れていれば、プレスを押し返す力が一番強くコントロールしやすい所にマウスピースを乗せようとすると思う。上下それぞれの唇に有るポイント。
唇やその周りの筋肉の中で一番力が使えるポイント。個人的には赤い部分と白い部分の境目辺りか少し外側だと思う。
それが「その人の真ん中」となる。それは、筋肉の強さ(左右でも違う)や骨組みとなる歯並びでも場所は変わるだろう。外から見て大きくずれてる事も有るだろう。でも、その人にとっては真ん中。
この時に息が吸えて身体の中に楽器を吹くエネルギーが満ちて無いと正確な位置は選べないと僕は考える。演奏家の中で息を吸いながら構えたり、構えてから大きく息を吸う人が居ると反論されそうだけど、彼等には演奏してるその瞬間のイメージが確立されていて全てが同時に動いていたり、後から吸ってる様に見えて実は既にかなりの量の息が身体に取り込まれている事も多いと思う。
さて、何かトラブルが起きた時やアンブシュアのバランスが変更される事象が起きた時にその筋肉の強さエネルギーのバランスの真ん中がそれまでの物理的な場所からずれる事が多いと予想する。
身体全体での構えの位置や唇の表面の位置と筋肉の新しいバランスのズレから迷う事になる。この時、アンブシュアのコントロールが悪く感じたり曲がった様に感じたり、張り付いた様に感じたり、不快に感じるのではないのだろうか。。
表面で無くて筋肉(骨格や歯の並びを含んだ)の力のバランスの真ん中にマウスピースを乗せてあげればコントロールは回復すると思う。これは息を吸い丁寧にマウスピースを唇の上に乗せるプロセスを何度かやりつつシンプルなフレーズを吹けば感じ取れるだろう。後は記憶に残る表面の場所や構えた時の微妙なズレを新しい場所に上書きすれば良い。大事なのは筋肉のバランスが取れる事でマウスピースを受け止めた時に柔軟さと強さを感じ取れる場所である事。
これは最初にガッツリ押さえ込むとその場所は判らなくなるので、息を取ってから最後に乗せる事を勧めてる。
(例えばスタンプの教本にも最後にマウスピースのプレスをかけると有る)
新しい真ん中が見つけられればそれ以外の全ては意外に簡単に見つかるのでは無いかな。
アンブシュアは身体や呼吸、構え方、喉、舌、全ての最終的な結果が現れていると考えている。だから見た目を変えても上手いかない事が多いのだと思う。アンブシュア単体だけを見ても見えない筋肉の強さ(動きは見える)が大きなポイントでは無いかなと思う。
僕は毎日その日のベスト(ベター?)な感覚を探すようにウォームアップをする。だから毎日少しづつバランスは違うかも知れない。その振れ幅を少し大きく捉える事で今回は楽に対処出来そう。
後は慣れた曲で自分の状態を確認する方が基礎トレーニングに拘るより明確になる事も少なくない。
そして「音楽家のためのインナーゲーム」の考え方とこの音のセンターを明確にしてくれるマウスピースのリングもこういう時に助けてくれる。
こういう機会はあまり無いのでこの観察は色々な場面で役に立つと思う。
(あまり出会いたく無い状況だけど 笑)
レッスンで大事なのはどうやったら出来るを教える事よりどうやったらやり方を見つけられるか?を会得してもらう事だと思うこの頃。
しかし、毎日吹けなくて、しかも大変な楽譜を吹かなくてはならず調子がブレやすい社会人の愛好家の方のレッスンなどはそのバランスを戻してあげるようなインストラクター、トレーナーの一面と自分で紐解いてもらう様にさらに先に進めるようにレッスンをする二面が必要だと考えてる。
今日は少し手早く調子の調整と曲のアプローチと思って2時間経ち終わったと思った所で「もう一曲あるのですが…」とピアノとフォルテのソナタのパート譜が登場(笑)
そこから一時間やりましたとも。
その中で「このフレーズの感じ方を会得できる練習方法は有りませんか?」と訊かれたのだけど、「有りません」と正直に答えて、そのフレーズを出来るだけ簡単にした状態を吹いてもらいどうやったらフレーズの一番コア部分が感じ取りやすくなるかを伝えた。幸いそれで感じ取って貰えてその瞬間にタンギングや技術も改善された。
身体がどう動くか?どんな奏法をしてるか?に留まらずにその人が何を聴いて何を見て何を考えているか?に辿り着くことが教える時には外せない。根本が変わらないとまた違う道程を辿って同じ迷路にはまると思う。身体に現れてることは結果だから。僕は身体だけを見るのは浅いと考えてる。
今日の質問からは、やはりその方の何処かにマニュアルを求めているのだなってのが判る。これは悪口で無くて誰でもある事で自分自身にも有る。こうやったら全て上手くいくのでは無いかって… でも、そんな便利な物があったら誰でも直ぐに上手になるし、それを唱えている人が居たらその人は天才級に演奏出来る筈。やっぱり出来るまで、違いを感じ取れるまで練習したり求めるのが第一に有って、教える側はその本人が気がついてない事、表に出てない深い部分を見抜いてヒントを渡す事がとても重要だと思う。
先日は活動の中で無理をした事により、倍音の変わり目でどうしても唇を強く閉じ音を口で掴む感じに陥って唇の振動が止まる様に陥ってしまった方に、口はそのままにしながら(唇に余分な力が働かない様に動きたいように自由にさせる様に)もっと歌う事、喉を使いましょうと日頃の一番かけるアドバイスをして「唇が開きますよね〜?」て声をかけたら「はい、それが怖くて(音が出なくなるのではないかと)閉じるようにしてます」と返事が……
本人が無意識のうちにかなり意識して行動してる事が本人の口から語られた瞬間。気が付いた途端に音はかすれが消えた。僕としては口を閉じるのは何か他の意識が原因?って考えまくってたのだけど、答えは一番単純だった。もちろん、そこに陥る様になった原因が有って本当に意識する部分はそちらなのだけど、先ずは音が消える事への不安を取り除かないと先へ進めない。
難しいのは本人が気がつかないうちにただ指摘だけをしても意識の深い所に届かないか、分かって貰えないと誤解を受けるか、やっぱりダメなのか…ってなりやすい事。本人の口から語ってもらうのが一番早い。本人も「え⁈」てなる。本人が大切だとか常識だと思ってる事にその1番の大元が隠されてる事が多い。
そのお二人に音の出だしで効果的に働いた言葉。
「音程を歌う喉、タンギング、唇の3つが同時に動く様に意識して下さい」(最初はタンギングと唇だけでも良い)
本当は呼吸や様々な事全てが同時に動く事が必要だけどその3つだけでも、一つ一つに注目する事によりバラバラになった事が同時に動き始めるだけで全体として動き出す。僕の感覚とは違うのだけど本来あるべきバランスに繋げるにはとても効果的。