数ヶ月前に読んだ脳科学の本 | HARUのブログ

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ある本屋さんの本のオススメのレビューでピンと来てすぐに買った。読んだのは数ヶ月前。
それから事ある度にこの内容を確認する事となっている。

我々は考えて分析すれば全てが明確に解決する。分析する方が良い方向に進むと思いがちだが何かの技術を会得するプロセスでそれが邪魔をする事も知るべきだと言うことを感覚的でなくて脳の働きとして理解出来た。いや、人間は全てを理解出来ない(脳が意識に対してさせない〜ある意味ブロックがかかってる)事を理解したし、そこに触れようとする事は全ての動きをぎこちなくする事を学んだ。

教える立場にある人はその教えることだけで無く、人の脳のシステムの事も少し知るべきではないだろうか?と考えされられた一冊。それが教えるメソードと矛盾がある時はメソードを疑う事も必要だろう。それはメソードそのものより自らの理解度、理解の仕方かも知れない。少なくてもこの本を理解出来る位の思考能力は理論を論ずるには必要だと思う。(正しいと思うかとは別)



専門的な表現もあり、この位の量の本を読む時間のだいたい倍程度の時間がかかった。
知りたかった事と言うか、確認したかった事は前半に多かったが、後半の「意識」とはなにかも興味深かった、人格にまで踏み込むし犯罪や刑罰にも踏み込むのでこの辺りは好き嫌いや意見が分かれそう。著者は此処が一番論じたかったのかも知れない。

ただ、科学は絶対的なものでは無く、何十年か何百年先には今の理解が稚拙に感じる部分が有るであろうと言う意見を読めたのは、科学はその時々の最新だと思う自分にとって研究者自身の言葉に寄って確認が出来た。(これが唯一の方法で正しいと述べる唯一論や、乱暴に言うとより細かい方に注目すれば解明すると言う還元主義、的なパフォーマンスへのアプローチが多いのがとても気になっている。そんな単純では無いと感じている。)

楽器やスポーツ、パフォーマンスをする事において、その瞬間の動きを分析する事は「それ」が上手く運ぶのには逆効果だとも触れて居る。もちろん、自身の目標や求めるもの、方向性を決めるのは自身の意識でありそこが意識の仕事なのだけど、実際は脳や身体の中のそれぞれのパートや時には多くのパートが連携して動き、その働きのシステムには意識はアクセスすら出来ない。またアクセス出来ない領域に記憶されないと上手く働かない。
楽器なら演奏中に演奏の方法を考えると上手く動かない、動かし方が判らなくなるなどと言う事。何故そうなのかと理解をする為に様々な脳の働きやそれに対しての認知から判りやすく〜専門的な知識の理解を求められるが、ちゃんと説明されていてそこを理解して乗り越えれば「様々な解りやすい本やメソード」より明確に何をどう見るべきかを提案してくれている。

もちろん、この著者の述べる事は全てとは限らないし、上にも書いたけど時が経てばもっとこの世界の認識は変わるだろう。著者もそこに触れている。

人は何処か、何か、一つの物に寄りかかりたくなるしそれによって安心を得るが、常に変化して追い求める事〜自らの中でもいくつもの意見や感じ方を持ち結論を出しそれも常に変化していく事が何故大切なのかも科学的な根拠を上げて論じられてる。

意識が気がつく前に脳自体は気が付く事や、人が何か行動を起こす時には意識が1/10秒前に動き、脳は実は1秒前から動いていると言う測定結果が有り自分の意思が実は意識する前の脳の活動から選ばされていると言うことが一番印象的だった。
音楽の演奏に当てはめると、指揮の動き見て合わせていたり、音を聴いて合わせようとしても既に間に合わない。要はどの時間で事がどう起きるのかを予測して動き始めて無いとならない。その為にはその行為を行っているその時に意識しても時間的には間に合わない。音を移る瞬間に意識を持っても既にその音は終わって居る。
意識の例として指をパチンと鳴らす事を意識が理解出来るのは、脳の物理的仕組みから時間的には全て終わってからだそう。でも、私達はその瞬間的に見て聴いてると知覚してる。これは時間の感じ方すらもコントロールして“脳が意識に観せて居る”そうだ。

演奏中の分析や細かい所への意識が役に立たなく返って悪い方向へ導くのは経験的に感じていたし〜私達の意識は大きな方向性を決めて舵取りは出来るが、細かい動きにはアクセス権を持っていない。僕の個人的な意見では、先人達の長く使われているメソードにはそのエッセンスだけが記されていて理解は難しいけど、そこを理解しようとする事、意識がアクセス出来ない領域に仕事をさせる〜身体が覚えるまでって事はとても科学的な事なのだと理解出来る一冊。

最初から最後までとても筋が通っていて後へ行くほど最初の記述への理解が深まる。

普通に上達するには特段に必要な知識では無いし楽器のことに対して理解する為に書かれた本では全く無い事は確かだけど、自らの中に新しいシステムを構築する事や既存のシステムを改良したり、再構築するにはとても役に立つ知識、考え方だと思う。