ここで紹介する「アスラエル交響曲」は実に暗澹たる重たい空気を身に纏った作品だ。「アスラエル」とは「死の天使」を意味する言葉で、ドヴォルザークと自分の妻(ドヴォルザークの娘)を立て続けに亡くした直後に書かれた大作である。曲は、全5楽章に亘って弔い、追憶、葬送の音楽に終始している。なんともいえぬ気持ちになる作品といえる。
【推奨盤】

ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団[1983年2月録音]
【SUPRAPHON:11 1962-2 932(輸)】
メキシコの作曲家、フベンティーノ・ローサス(1868~1894)が残した不朽の名作『波濤を越えて』を紹介する。
26歳の若さで亡くなったローサスが、23歳の時に書いた作品であり、序奏と終結部の間にいくつかのワルツが登場する簡潔明瞭な作品だ。特に序奏の後に現れる最初のワルツが有名である。作品名の通り、波間をゆっくりと進む様子を表現しているかのような、ゆったりとした流麗なワルツであり、その旋律こそがこの作品の聴きどころでもある。
ウィーンのオーケストラで聴くと、まるでシュトラウス一家の音楽と誤解してしまう位に美しい作品であり、ウィーンの音楽家による録音をお薦めした。
フランツ・バウアー=トイスル/ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団[1980年代録音]
【PHILIPS:468 123-2】
ベルギー生まれだが、フランスで活躍していたセザール・フランクの代表作を紹介しようと思う。
古今のヴァイオリン・ソナタの名曲の数々の中でも、真っ先に名前が挙がるのがフランクのソナタである。
フランクお得意の循環形式で書かれており、ヴァイオリンとピアノが対等な立場で音楽が進行するソナタといえる。19世紀の最高傑作を、今日はシャハムとオピッツで聴いてもらいたい。
録音当時18歳だったシャハムのアグレッシブな音楽作りはここでも健在。流麗な語り口で聴かせる第3楽章の美しさは、際立っているといえる。名曲に正面から真摯に立ち向かうその姿勢は、大物への予感を感じられる演奏といえ、その後のシャハムの音楽的成長は言わずもがなである。ピアノのオピッツの演奏も美しく、安心して聞くことができるオーソドックスな名盤といえる。
【推奨盤】
ギル・シャハム(Vn)/ゲルハルト・オピッツ(Pf)[1989年6月録音]
【DG:POCG-4123】