パガニーニとほぼ同時期に活躍したドイツの作曲家であるシュポアは、ヴァイオリニストとしても活躍していた。その彼が残した数多くの作品の中では比較的演奏される機会に恵まれているのが、この協奏曲第8番といえる(といってもそんなに多くないが)。《劇唱の形式で》と付されているだけあり、ヴァイオリンが、あたかもオペラのアリアを歌うかのように見せ場は多く、音楽的な表情も豊かである。ヴァイオリニストの歌心の本領が発揮されるこの曲を、ハーンのヴァイオリンは様々な表情を的確に描写、表現してくれている。むせび泣くような悲哀に満ちたその表情(音色)には「ドキッ」とさせられる一瞬がある。とりわけ、約20分の中で目まぐるしくも変わるヴァイオリンの音色は、彼女がこの曲に対する自信の裏付けともいえる説得力に満ちており、「自らの魅せ方を弁えているな~」、と感心させられてしまう。彼女の魅力は計り知れない・・・、そう感じさせてくれる一枚だ。なお、指揮は大植英次が務めているが、どうにも「どっしり」構えすぎた演奏のように感じられる。もっとスマートだと、ソリストは格段に映えるような気がする。
【推奨盤】

大植英次/ヒラリー・ハーン(Vn)/スウェーデン放送交響楽団[2006年2月録音]
【DG:00289 477 6232(輸)】
【推奨盤】

大植英次/ヒラリー・ハーン(Vn)/スウェーデン放送交響楽団[2006年2月録音]
【DG:00289 477 6232(輸)】