ボヘミアの作曲家、ヨゼフ・スーク(1874~1935)は、師であり義父でもあるドヴォルザークの影響を大きく受けている作曲家といえる。あまりにも義父が偉大すぎて(?)、スークの作品は目立って演奏機会には恵まれないが、1世紀のチェコ国民楽派には欠くことのできない存在となっている。
ここで紹介する「アスラエル交響曲」は実に暗澹たる重たい空気を身に纏った作品だ。「アスラエル」とは「死の天使」を意味する言葉で、ドヴォルザークと自分の妻(ドヴォルザークの娘)を立て続けに亡くした直後に書かれた大作である。曲は、全5楽章に亘って弔い、追憶、葬送の音楽に終始している。なんともいえぬ気持ちになる作品といえる。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団[1983年2月録音]
【SUPRAPHON:11 1962-2 932(輸)】