1895年、作曲家50歳の時に書かれたこの作品は、晦渋に満ちた晩年の作風とは違い、初期から中期にかけてフォーレの作品に感じ取れる、明快な和声、構成となっている。
作品は主題と11の変奏から成り、最後の変奏だけが同名長調に転調するといった、実にわかりやすい変奏曲の態を成している。
フランスの名ピアニスト、アルフレッド・コルトーは、「音楽的な豊かさ、表現の深さ、器楽的内容の質の高さからして、あらゆる時代のピアノ音楽のうち、希有で最も高貴な記念碑のひとつ」とこの作品を称賛した話しは特に有名で、この作品を語るには欠かすことのできないエピソードといえる。
演奏はイギリスのピアニスト、ポール・クロスリーの録音が聴きやすい。フォーレのピアノ曲の全集を録音し、フォーレの作品を熟知しているだけあり、精緻な音楽的な読み込みが如実に感受できる演奏である。華美な脚色のない、フォーレの美しさを奇麗に纏め上げているといえる演奏だ。
【推奨盤】
ポール・クロスリー(Pf)[1980年代録音]
【crd:CRD 3423(輸)】