こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と007クロニクルというテーマで

 

007/ワールド・イズ・ノット・イナフ (1999)

(原題:THE WORLD IS NOT ENOUGH)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★想像力と007クロニクルとは?

007シリーズは、常に時代の空気を読んでジェームズ・ボンドのキャラクターや作品のテイストを変更させ続けて続けて来た作品。

本シリーズは、24作もの後続作品を生み出す事ができた「映画史の中でも類まれなマーケティング戦略に成功し続けた007作品」を年代記風に解説してみようという企画です。
 

 

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ピアース・ブロスナン版007のウィークポイント!

 

本作は1999年に公開された007シリーズの第19弾。

 

リアルな世界観でポスト冷戦の世界を描いた「007/ゴールデンアイ」と「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」が大ヒットとなったピアース・ブロスナン版007ですが、本日の「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」あたりから、リアルな世界観であるからこそのウィーク・ポイントが見え隠れし始めます!

 

 

アルな世界観であるからこそのウィーク・ポイントとは?

 

 

それは、現実社会でも解決できていない問題は、架空のスパイであるジェームズ・ボンドも解決する事ができないという虚無感!

 

 

「007/ゴールデンアイ」で描かれた「旧ソ連の武器の流出問題」も「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」で描かれた「メディアによる利益誘導を目的とした恣意的な偏向報道問題」も、ジェームズ・ボンドが行ったのは敵となった人物が関与した事件を未然に防いだだけであり、残念ながら描かれている問題自体を解決させるには至らなかったのです…

 

「やった!旧ソ連の人工衛星を一つ破壊したぞ!」

でも、全てのソ連の武器流出問題が

解決した訳ではありませんよね…

(「007/ゴールデンアイ」より)

 

 

「やった!悪のメディア王を倒したぞ!」

でも、世界中の邪悪なメディア王たちは

今日も元気に捏造報道してますよね…

(「トゥモロー・ネバー・ダイ」より)

 

 

そんな虚無感に襲われるような問題を描き続けたピアース・ブロスナン版ボンドは、次第に重苦しい雰囲気となった後に、現実世界ので起こったフィクションを凌駕するようなショッキングな出来事によって、シリーズを終える事となってしまいます(この件については次回解説いたします)。

 

本作で描かれている問題は、国をまたいで作られるようになったエネルギーを輸送する長距離パイプライン!

 

 

船や列車を使用せずにエネルギーをパイプラインを通じて他国に供給できるようになった世界では、パイプラインの存在そのものが国の命脈を握る生命線になり得るようになったのです…

 

長いパイプラインを作ったら

エネルギー問題は解決?

 

いいえ。

パイプラインの建造は

他国の生命線を握る

エネルギーによる侵略戦争の

始まりだったのです!

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

英国諜報部MI6の諜報員007ことジェームズ・ボンドの活躍を描くシリーズ第19作。

監督は「ネル」のマイケル・アプテッド。

脚本は「トゥモロー・ネバー・ダイ」のブルース・フィアステイン、ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド。

原案はパーヴィスとウェイド。

製作のバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンと音楽のデイヴィッド・アーノルドは「トゥモロー・ネバー・ダイ」に続く参加。

撮影はエイドリアン・ビドル。美術は「タイタニック」のピーター・ラモント。編集はジム・クラーク。

出演は「トゥモロー・ネバー・ダイ」に続きピアース・ブロスナン、「ファイアーライト」のソフィ・マルソー、「ワイルド シングス」のデニーズ・リチャーズ、「フル・モンティ」のロバート・カーライル、「危険な動物たち」のジョン・クリーズに加えて、レギュラー陣のデズモンド・ルウェリン(本作撮影後に死去し、遺作となった)、ジュディ・デンチらが登場。
 

 

 

 

デズモンド・ルウェリン?

 

 

はい。

 

デズモンド・ルウェリンとは、長年007シリーズでQを演じられていた俳優さん。
 
 
ショーン・コネリー版007からずっと007シリーズを支えて来たデズモンド・ルウェリンは、20世紀の007シリーズを総括するように1999年にお亡くなりになられました。
 
最後の秘密兵器はコチラ!
どうぞ安らかにお休みください…
 
 
そんなQの遺作でもある本作は、観終わった後に、なんともやるせない感情がわきあがるようなシニカルな作品。
 
 
映画の冒頭、スペインにあるスイス産業銀行の支店に入ったボンドは、支店長からイギリスの富豪のロバート・キング卿が不当に支払った金を返金してもらいます。
 
支店長は努力したと言いますが、ボンドは「キング卿が買った報告書が盗まれて諜報部員が殺されたので、誰が殺したのか知りたい」と言い、要求を拒否した銀行員たちと撃ち合いになったボンドは支店長以外を射殺し、支店長の口を割らせようとしますが、支店長は後ろから投げナイフで殺害されてしまい、結果として誰が諜報員を殺したか分からないままボンドはイギリスへと引き上げる事になります。
 
情報を聞こうとした支店長は
後ろから投げナイフで殺害されます!
 
 
ん?
 
キングは報告書を買ったのに盗まれたから、払ったお金を回収しようとしたという事?
 
そもそも盗まれた報告書って何?
 
これについてはイギリスに帰国したボンドのMとの会話で、説明される事になります。
 
 
 
ロバート・キング卿は大手建設会社を経営しているMの大学時代の友人。
 
オックスフォード大学で同期だった2人。
 
 
そんなキング卿が大金を出して手に入れようとした報告書は、ロシア原子力局の秘密文書。
 
キング卿はロシアを経由した石油パイプラインを建設中でしたが、テロリストがパイプラインを襲撃するという情報を耳にしており、テロリストの正体が書かれているとされる報告書を何としても手に入れようと考え、何者かに金を払って報告書を手に入れようとしていたのです。
 
ですが、お金を払った後に報告書が盗まれてしまったという報告があり、払い込みをしたスイス銀行に返金を要求して007に引き取りに行かせたというのがこの事件の顛末。
 
 
ですがボンドが取り戻して来たお金を回収しに行ったキング卿は、札の表面に塗られていたマグネシウムの爆発によって爆死し、MI6本部も大破してしまったのです!!!
 
キング卿のバッヂに反応して
突然発火して大爆発してしまったお金!
 
 
 
ん?
 
と言うとこは、ボンドが持ち帰ったお金はキング卿を抹殺するための罠だったという事?
 
そもそも、もしこんな国際的な陰謀の話なら、卿自身が大金を払って情報を購入する必要はなく、最初から英国政府やMI6に相談すれば、キング卿自身が金を失わずに済んだのでは?
 
 
 
はい。
 
本作は、この爆死を巡ってのミステリー作品!!
 
 
 
果たしてボンドが持ち帰ったお金の本当の使い道は、どんな目的だったのでしょうか?
 
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
 
MI6本部が爆破された後に、
007を襲撃して来た女テロリストは
逃げられないと悟ると
自ら気球に引火させて自爆!!
キング卿殺害の真犯人は一体誰なのか?
 
 
【私の感想】絶望の複雑性理論

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、恐らくですが本作は、1990年代に流行ていした「複雑性理論」をベースに生み出されたストーリー

 

 

複雑系理論をざっくりと説明すると、世の中にはいろいろなイレギュラーな出来事が起こるので、人間が想定した通りの結果にはならない事が多いという考え方!

 

本作に登場する

ロシアのマフィアが使用している

トルコの秘密基地は

「ロシアより愛をこめて」で

007が襲撃したソ連大使館の跡地!

 

ソ連政府が使用していた場所が

ソ連の悪党によって使用されており

かつてそこを破壊したボンドが

そこを頼ってやって来る…

 

このような事象が

複雑系理論の予期せぬ出来事!

 

 

複雑系をテーマにした映画で有名なのは「ジュラシックパーク (1993)」であり、1999年に公開された本作もまた、世界とは誰が思い描いたような結果にならないものであるという考え方に基づき、ジェームズ・ボンドやMなどの英国情報部側だけでなく、キング卿の跡継ぎの娘エレクトラやテロリストの首魁レナードなどの想いも踏みにじるようなカタチで結末を迎える事になるのです…

 

パイプラインを狙うテロリストのレナードは

MI6の009と戦った際に頭に銃弾を受け

痛覚や感情がマヒしてしてしまった男。

 

そんな死に瀕した男が

暴走してテロを起こすなんて想定外!

 

ですがレナードを生み出したのもまた

複雑系理論のなせる業なのです…

 

 

そう。

 

人間は人生の主役になる事はできても、自分の人生の脚本を書く事はできないもの!

 

キング卿の希望を託したお金は、何者かを絶望させる結果となり、キング卿を助けようとしたMは、007を遣わした事で彼の死を招く事になり、この事件を解決しようと奔走したボンドは、自分の意志を曲げなくてはならない苦渋の決断をする事となり、死ぬまでの時間を幸福に過ごしたいと願っていたレナードは、自分の行った計画によって最愛の人を喪ってしまいまい、本作は「人生とは一体何だ!?」という哲学的な問いかけを観客に投げつけるような寂しい結末を迎える事となるのです…

 

亡くなったキング卿のデータを

調査し始めたボンドは

キング卿が中東にパイプラインを

建設し始めた後に

娘のエレクトラがキプロスで

誘拐されていた事を知るのです。

 

卿の払った金は、もしかすると…

 

 

 

私見ですがそんな本作は石油パイプラインを利用した陰謀を007が阻止するクション映画であると同時にワールド・ワイドとなった1990年以降の世界は、様々な人の思惑や行動が複雑に絡み合い、想像もできないような悲劇を引き起こす可能性に満ちた「複雑系理論の世界」に陥ってしまっている可能性を描いた作品としても観る事ができるのではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

キング卿の娘エレクトラは

大戦前に母親が所有していた土地に

眠っている石油の採掘して

パイプラインで運ぼうとしていますが

そのパイプラインの北側には

既に3本のロシア製パイプラインが!!

 

自分の利益を追求すると

他者の利益を阻害する事となり

争いが生まれて行くのも

複雑系理論による予期せぬ結果。

 

残念ながら世界平和は

永久に実現されないかもしれません…

 

 
 
 

という訳で次回は

 

作品が魂を奪われる時

 

というテーマで

 

007/ダイ・アナザー・デイ 

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい複雑系理論の映画
「バタフライ・エフェクト」

 

もし過去に戻って失敗を修正すれば

より良い人生が送れるのでしょうか?

自分の書いた日記を読むことで

タイムスリップができる事を知った青年は

恋人を幸せにするために

過去にさかのぼるのですが

その度に状況は悪化していきます。

 

過去に戻って過ちを修正すれば

幸福になれるのか?

それは、過ちを修正をした結果

何が起こったのかで

再び変化してしまうものなのです!

 

そんな複雑系理論の映画は

21世紀になって多産されるようになり

今ではマルチバースとも

呼ばれるようになっているのです😊