※相変わらず長文で候。そして、ネタバレか否かは読者の自己責任なので、あしからず


 シネマ#50


 『 爆 弾 』 


 in TUTAYA 


 監督/永井聡  


出演/佐藤二朗●山田裕貴●伊藤沙莉●染谷将太●坂東龍汰●夏川結衣●渡部篤郎etc


 2025年/フジテレビ●ワーナー・ブラザースetc 




 採点/75点






いよいよ、ゴールデンウィークも終盤に傾き、連休を活かし、見逃していた話題作を求め、いつものTSUTAYAに入り浸る。

早速、今作を手に取って、風呂上がりに煎餅カジリながら、戦慄をツマミに、呑気に息呑み、眺めゆく。

喧嘩で逮捕した浮浪者/自称タゴサクをトラブル処理のため何気なく片付けようと警察署は、尋問していたが、彼は都内で爆破テロ事件が起きると予知し、やがて直ぐに現実に発生してしまう。

未曾有の爆破テロは続き、一向に彼の予言も後は絶たない。

彼の仕業だと推測する警察は、惨劇を食い止めようと躍起になり、必死で問い詰めるバイオレンスサスペンス。

一貫し、爆破は霊感が察知してくるのだと、不気味な笑みを浮かべ、事件の鍵を次々とほのめかす怪しい男を演じたのは、我が国のエンタメ界を代表する怪優・佐藤二朗。

爆発に巻き込まれた犠牲者なんざぁ知ったこっちゃないと、人の死を何とも思わず、ゲーム感覚で尋問を楽しみ、胡散臭さ全開で煙に巻く狂気は、持ち前の笑いの才能をかなぐり捨てて、成立しており、愛嬌に逃げず、愉快に地獄絵図へと突き進む。

『鎌倉殿の十三人』での比企能員で感じていたが、純度の高い狂気・暴走こそ、彼の俳優道の真骨頂だと思っていた。

笑わせる技を一切、放棄したからこそ、発揮する俳優・佐藤二朗の真の魅力は今作で遂に大爆発したと、凍る背筋に確信したが、そんな戯言は、日本アカデミー賞の後でグダグダ述べても、今更、手遅れに過ぎない。

築く死体の山々の一報を面白がる怪物に、恐怖に顧みず向き合い、己を曝け出す刑事・山田裕貴との対峙は、サイコサスペンスの巨塔
『羊たちの沈黙』
のノリを当初、予想していたが、修羅場の根本は、とある事件を巡る警察自体の過去に潜んでおり、狂った暴君の皮を被ッていた彼は、腐敗した警察内部をほじ繰り返す為の案内役に過ぎないと思い知らされる。

同時に、得体の知れない黒幕と催眠術の如き悪夢の誘いは、鬼才・黒沢清のカルト作
『CURE』
で出くわす嫌悪感に徐々同じ臭いを無意味に嗅ぐ。

いつも正義なんてアテにならない。

何処までが罠で、何処までが真実で、何処までが罪なのか?

大事なのは、爆弾の在り処ではなく、仕掛けた導火線の主は誰なのかと。

現実は常に支離滅裂で、不条理であるとも、説いている様で、疑問を抱いている彼に、散々振り回される警察は、他人の立場から観たら、尚更、無惨であり、憐れすら思う。

後味の悪さと興味深さを代償に残るモヤモヤは、
『セブン』
の余韻に通ずると、最後の最後でようやく甦った気がしたが、そんな事はやっぱし、手遅れなのかもしれない。

京都での小学生失踪事件とか福生市ハンマー男事件での犯人逮捕までに至る警察とマスコミの失態を、裏でさぞかし、慌てふためいていたんやろなぁと、今作と重ね合わせながら観ている自分もレッキとしたタゴサクなのかと痛感するが、そんな地雷を踏んだ後の虚しさを静かにエンドロールに浮かべ、眺める5月の寒い夜なのであった。




では、最後に短歌を一首

『潜る笑み 問いの尾を踏み 囲む部屋 煙る針折る 鼠の報い』
by全竜