チャンネルはそのまま! 3巻/佐々木倫子
スタッフに借りた。
2巻から結構日が空いていたが、面白く読めた。
やっぱり佐々木漫画は面白いね。強引な展開が来ると、待ってましたという感じ。
どれぐらいが誇張なのかは分からないが、テレビ業界の裏側が色々分かるのも興味深い。
そこでまず感じるのは、テレビというものの愚かさだ。
高給取りが何人も集まって、莫大な時間と労力を割いて、取るに足りない詰まらない映像を作成し、放送して、多数の善良な市民の貴重な時間を浪費せしめているのだなあ、と言うことだ。
この作品はギャグとしてもちろん面白いが、しかし、どことなく一線を突き抜けた感じがしない。それは、ここに原因があるのではないだろうか。
雪丸を通じて表現されるギャグが、現実のテレビ放送の愚かしさ故に、そこに対比の妙が出てこないからだ。現実の方がくだらなすぎて、埋没してしまうのだ。
ひょっとするとこの点は作品のアキレス腱になるかも知れないと心配になった。
まあ、杞憂だろうが。
4巻も借りているので早速読もう。
佐々木倫子
チャンネルはそのまま! 3巻
2巻から結構日が空いていたが、面白く読めた。
やっぱり佐々木漫画は面白いね。強引な展開が来ると、待ってましたという感じ。
どれぐらいが誇張なのかは分からないが、テレビ業界の裏側が色々分かるのも興味深い。
そこでまず感じるのは、テレビというものの愚かさだ。
高給取りが何人も集まって、莫大な時間と労力を割いて、取るに足りない詰まらない映像を作成し、放送して、多数の善良な市民の貴重な時間を浪費せしめているのだなあ、と言うことだ。
この作品はギャグとしてもちろん面白いが、しかし、どことなく一線を突き抜けた感じがしない。それは、ここに原因があるのではないだろうか。
雪丸を通じて表現されるギャグが、現実のテレビ放送の愚かしさ故に、そこに対比の妙が出てこないからだ。現実の方がくだらなすぎて、埋没してしまうのだ。
ひょっとするとこの点は作品のアキレス腱になるかも知れないと心配になった。
まあ、杞憂だろうが。
4巻も借りているので早速読もう。
量子もつれとは何か/古澤明
書評がよかったので読んでみた。
「不確定性原理」と複数の量子を扱う量子力学、との副題だが、著者の専門とする量子光学の実験についての解説がメインで、そのベースとなる理論的背景を駆け足で説明するような感じか。
ページ数の割に消化不良感が否めない。
多分、著者が文章が下手な為だろう。何というか、言いたいことは分かるのだが、そう思うのは多分、そもそも言いたいことが分かっているという読者だけであって、言いたいことが分かってない人が最初にこの文章を読んだら混乱して意図が汲めないだろうな、という雰囲気がひしひしと伝わってくる文章なのである。
決して手を抜いている訳ではないのである。むしろ何とか説明しようと工夫しているのは見えるし、丁寧に引っ張ろうとしているのも分かるが、どこか空回りしている印象なのだ。
まるで自分の文章を読んでいるみたいだった。文章って難しいよね。
そんな訳で、量子力学の初学者には向かないだろう。また、ターゲットの、量子もつれ、についてもその理論的背景や物理学的な解釈はほとんど無く、量子光学の実験に興味がない素人さんだと、読んでいてもあまり面白くないだろう。
とても分かりにくく書いてあったが、個人的には、著者の物理像、量子力学像は、結構好感が持てる解釈だと思うし、目から鱗の指摘も多数あり、そうした所は読んで為になった本であった。
古澤明
量子もつれとは何か
「不確定性原理」と複数の量子を扱う量子力学、との副題だが、著者の専門とする量子光学の実験についての解説がメインで、そのベースとなる理論的背景を駆け足で説明するような感じか。
ページ数の割に消化不良感が否めない。
多分、著者が文章が下手な為だろう。何というか、言いたいことは分かるのだが、そう思うのは多分、そもそも言いたいことが分かっているという読者だけであって、言いたいことが分かってない人が最初にこの文章を読んだら混乱して意図が汲めないだろうな、という雰囲気がひしひしと伝わってくる文章なのである。
決して手を抜いている訳ではないのである。むしろ何とか説明しようと工夫しているのは見えるし、丁寧に引っ張ろうとしているのも分かるが、どこか空回りしている印象なのだ。
まるで自分の文章を読んでいるみたいだった。文章って難しいよね。
そんな訳で、量子力学の初学者には向かないだろう。また、ターゲットの、量子もつれ、についてもその理論的背景や物理学的な解釈はほとんど無く、量子光学の実験に興味がない素人さんだと、読んでいてもあまり面白くないだろう。
とても分かりにくく書いてあったが、個人的には、著者の物理像、量子力学像は、結構好感が持てる解釈だと思うし、目から鱗の指摘も多数あり、そうした所は読んで為になった本であった。
WiiWare/BIT.TRIP VOID リズム星人の弾幕/アークシステムワークス
リズム星人シリーズ第三弾。500ポイント。
例によって、また妻がプレゼントに貰いました。
今作は、文字通り弾幕。かといって、シューティングではない。弾幕を避けるだけ。
斑鳩よろしく、白と黒の弾幕が全方位より隊列を組んで押し寄せてくる。
主人公機は黒い丸である。
よって、白い弾を避けつつ、黒い弾を受けて取る。
斑鳩との違いは、白黒チェンジが無く永遠に黒サイドである点と、受けるべき黒を取り逃してもミスになる点だ。
また、主人公機は、黒い弾を受ける度に直径が増えて大きくなってしまうので、時々Aボタンでシュリンクする。
径が大きくなると、白い弾に当たりやすくなり、また移動速度も遅くなると言うデメリットもあるが、逆に、黒い弾も取りやすくなり、また、まだあまりやり込んでいないので、これは憶測だが、高得点にも関係するように思う。
弾幕ということは、基本はやはり覚えゲーである。
とりあえず軽くプレイしてみると、ステージ1のボスまで行って死んだ。少々練習すれば何となりそうな感じ。
4人までのマルチプレイにも対応しているのでトライしてみたが、これはさっぱりだ。
二人でやったのだが、自分の黒丸を見失うこと甚だしい。2Pは赤丸とか、せめてサイドについている数字の色を目立つようにしてくれないと、全くプレイにならない。
もう少しやり込んだらまたレポートしよう。
というか、激走もまだクリアしてなかった。あれもそのうちやろう。
例によって、また妻がプレゼントに貰いました。
今作は、文字通り弾幕。かといって、シューティングではない。弾幕を避けるだけ。
斑鳩よろしく、白と黒の弾幕が全方位より隊列を組んで押し寄せてくる。
主人公機は黒い丸である。
よって、白い弾を避けつつ、黒い弾を受けて取る。
斑鳩との違いは、白黒チェンジが無く永遠に黒サイドである点と、受けるべき黒を取り逃してもミスになる点だ。
また、主人公機は、黒い弾を受ける度に直径が増えて大きくなってしまうので、時々Aボタンでシュリンクする。
径が大きくなると、白い弾に当たりやすくなり、また移動速度も遅くなると言うデメリットもあるが、逆に、黒い弾も取りやすくなり、また、まだあまりやり込んでいないので、これは憶測だが、高得点にも関係するように思う。
弾幕ということは、基本はやはり覚えゲーである。
とりあえず軽くプレイしてみると、ステージ1のボスまで行って死んだ。少々練習すれば何となりそうな感じ。
4人までのマルチプレイにも対応しているのでトライしてみたが、これはさっぱりだ。
二人でやったのだが、自分の黒丸を見失うこと甚だしい。2Pは赤丸とか、せめてサイドについている数字の色を目立つようにしてくれないと、全くプレイにならない。
もう少しやり込んだらまたレポートしよう。
というか、激走もまだクリアしてなかった。あれもそのうちやろう。
ほこ×たて/フジテレビ
ゴールデン1発目のスペシャル。
録画したものの、3時間半もあるという事で、長くて手を出しづらい。もっと短くまとめてくれよ。
結局、ちびちび1対決ずつ数日に渡って観た。
ネタ的には、まずまず面白かった。ゴールデン最初のスペシャルと言うことを考えれば当然だろう。
ただ、尺が長すぎる。間延びして時間の無駄。
特に最初のタカなぞ、勝負1本で1時間も掛けてどうする。
4本+小企画の5本分×30分で2時間半でいいはずだ。
最強金属対決の引き分けにはびっくりした。想定外の決着というものもあるものだ。まあ、怯えてしまったタカも同じようなものか。
マニア対決は、どうしても本人側が気を遣うだろう。その辺のさじ加減で決まってしまう訳で、企画として微妙だろう。
本人が大人げなく本気で向かっていったらマニアだろうと太刀打ちできるはずがない。もちろんそんな絵は視聴者にも面白くないだろう。
次は1週空いて2時間スペシャルらしい。平常時のネタ密度がどうなるかが心配だ。
録画したものの、3時間半もあるという事で、長くて手を出しづらい。もっと短くまとめてくれよ。
結局、ちびちび1対決ずつ数日に渡って観た。
ネタ的には、まずまず面白かった。ゴールデン最初のスペシャルと言うことを考えれば当然だろう。
ただ、尺が長すぎる。間延びして時間の無駄。
特に最初のタカなぞ、勝負1本で1時間も掛けてどうする。
4本+小企画の5本分×30分で2時間半でいいはずだ。
最強金属対決の引き分けにはびっくりした。想定外の決着というものもあるものだ。まあ、怯えてしまったタカも同じようなものか。
マニア対決は、どうしても本人側が気を遣うだろう。その辺のさじ加減で決まってしまう訳で、企画として微妙だろう。
本人が大人げなく本気で向かっていったらマニアだろうと太刀打ちできるはずがない。もちろんそんな絵は視聴者にも面白くないだろう。
次は1週空いて2時間スペシャルらしい。平常時のネタ密度がどうなるかが心配だ。
GBA/カルチョビット/任天堂
先日の3DSカンファレンスでは、そのソフトラインナップに驚いた訳だが、メジャータイトルよりむしろマイナータイトルにアンテナが反応した。その筆頭はもちろんカルドセプトだが、カルチョビットも、おっ、と思ったタイトル。
アドバンス版発売時には、かなり興味を持っていたことを思い出した。
カンファレンスムービーを何度か見ているうちに、旧作のプレイ欲求が高まってきて、ついつい安い中古を見かけた時に買ってしまった。
そして、最近になってようやくプレイ始めた。しかし今時、GBASPを遊んでいると結構目立つかもしらん。こないだ何ぞは、地下鉄でじいさんに、兄ちゃんそれは新しいテレビか?などと聞かれたので、古いゲームですと答えて逃げてきた。よく分からんが横長じゃないのでおかしいと思ったらしい。
本当はミクロがちょっとだけ欲しいが、まあ急がずとも多分そのうち手に入るだろう。
で、内容については、まだ始めたばかりなのでそんなに書けないが、結構楽しいと思う。
一言で言うと、プロサッカーチームの監督になって、練習や戦術を指示し、チームを育てて日本一を目指すゲームである。サカつくの面倒くさい部分をそぎ落として神髄だけを取り出した感じだ。また、製作がパリティビットの薗部さんなので、ダビスタのサッカー版みたいな印象、と思ってもあながち間違いではないかも知れない。ベストプレーのサッカー版の方が近いか。
試合をすると局面に応じて課題が見付かり練習メニューをゲットできるので、試合後にそれを使って特訓する、そして試合で成果を確認する、またまたゲットしたメニューで練習する…。と、延々これを繰り返すだけのゲームだ。
はっきり言って非常に楽しい。
まず、1試合はほんの数分でテキパキ進む。そして、2頭身のデフォルメキャラが、ちょこちょこピッチを動き回って、結構それらしくサッカーをする様は見て飽きないし、実は結構凄いと思う。また、何より凄いのは、練習の成果を、成長のサイクルで絶妙に反映できている所。手を掛ければ良くなることがちゃんと目で見て分かるので、ついついもう一サイクルとやめ時を失う。
3DS版では、自慢のチームがすれちがいで親善試合したりするんだろうか。Wifiリーグなども良いな。続報が楽しみである。
任天堂
カルチョビット
アドバンス版発売時には、かなり興味を持っていたことを思い出した。
カンファレンスムービーを何度か見ているうちに、旧作のプレイ欲求が高まってきて、ついつい安い中古を見かけた時に買ってしまった。
そして、最近になってようやくプレイ始めた。しかし今時、GBASPを遊んでいると結構目立つかもしらん。こないだ何ぞは、地下鉄でじいさんに、兄ちゃんそれは新しいテレビか?などと聞かれたので、古いゲームですと答えて逃げてきた。よく分からんが横長じゃないのでおかしいと思ったらしい。
本当はミクロがちょっとだけ欲しいが、まあ急がずとも多分そのうち手に入るだろう。
で、内容については、まだ始めたばかりなのでそんなに書けないが、結構楽しいと思う。
一言で言うと、プロサッカーチームの監督になって、練習や戦術を指示し、チームを育てて日本一を目指すゲームである。サカつくの面倒くさい部分をそぎ落として神髄だけを取り出した感じだ。また、製作がパリティビットの薗部さんなので、ダビスタのサッカー版みたいな印象、と思ってもあながち間違いではないかも知れない。ベストプレーのサッカー版の方が近いか。
試合をすると局面に応じて課題が見付かり練習メニューをゲットできるので、試合後にそれを使って特訓する、そして試合で成果を確認する、またまたゲットしたメニューで練習する…。と、延々これを繰り返すだけのゲームだ。
はっきり言って非常に楽しい。
まず、1試合はほんの数分でテキパキ進む。そして、2頭身のデフォルメキャラが、ちょこちょこピッチを動き回って、結構それらしくサッカーをする様は見て飽きないし、実は結構凄いと思う。また、何より凄いのは、練習の成果を、成長のサイクルで絶妙に反映できている所。手を掛ければ良くなることがちゃんと目で見て分かるので、ついついもう一サイクルとやめ時を失う。
3DS版では、自慢のチームがすれちがいで親善試合したりするんだろうか。Wifiリーグなども良いな。続報が楽しみである。
CRAZY FOR YOU 2巻/椎名軽穂
ちょっと間が空いてしまったが、機会があったので2巻買ってきた。
1巻では親友間での三角関係と、かなり急転直下のドロドロ化を果たしたが、2巻では、復興がメインテーマである。
結局、心底悪い奴はいないし、自分の心に正直になれば、嘘を突き通せない。
そんな心が伝わることで、何と、ユキと朱美が付き合うことになったにもかかわらず、友情にもヒビが入らず、関係は修復されてしまった。むしろ以前より深まった様子。
ちょっと意外な展開。
さっちゃんの奔走と人徳による物が大きいだろう。
ただし、じゃあ、これでめでたしかというとそうではない。さっちゃんの中の気持ちは完全に昇華された訳ではない。
赤星の人気は首肯できるが、雄平の人気がなさ過ぎるのは驚いた。哀れなり。
今後の動きはどうなるだろう。
椎名軽穂
CRAZY FOR YOU 2巻
1巻では親友間での三角関係と、かなり急転直下のドロドロ化を果たしたが、2巻では、復興がメインテーマである。
結局、心底悪い奴はいないし、自分の心に正直になれば、嘘を突き通せない。
そんな心が伝わることで、何と、ユキと朱美が付き合うことになったにもかかわらず、友情にもヒビが入らず、関係は修復されてしまった。むしろ以前より深まった様子。
ちょっと意外な展開。
さっちゃんの奔走と人徳による物が大きいだろう。
ただし、じゃあ、これでめでたしかというとそうではない。さっちゃんの中の気持ちは完全に昇華された訳ではない。
赤星の人気は首肯できるが、雄平の人気がなさ過ぎるのは驚いた。哀れなり。
今後の動きはどうなるだろう。
生きるってなんやろか?/石黒浩・鷲田清一
アンドロイド研究の第一人者石黒先生と、阪大総長で異色の哲学者鷲田先生の対談集。
書評の点が良かったのと、石黒先生の名前で読んでみた。
若者に向けて、どう生きるのか、生き方のヒントになるかもしれないような事柄を、いろんなテーマに沿って語り合う。
実際、進学や就職を控えて悩み、かつ著者二人の名前も業績も何も知らない、という人であれば、かなり目から鱗が落ちるであろう。
この社会で普通に平凡にそこそこ成功したいが、既定路線の先が見えない、何か漠然とした不安がある。
そんな人に対して、優しく背中を押して、安心を与える本では決してない。
むしろ、破壊系の本である。
若者に対して、かなり厳しい態度で語られている。若者は血反吐を吐くほど悩んで立ち上がるような力を付けよ、というようなスタンスである。
生きる事に不安がある人は、ますます追い込まれて不安に思うかも知れない。
しかし、その程度の人は所詮その程度と言うことで、まあ、仕方ないだろう。多分悩む若者10人いたら、この本読んで発奮できる人、糧にできる人は一人二人が良い所ではないかと思う。
学究徒を志す人以外に、一般の人でももちろん参考になるだろう。
公開対談をまとめた本なので、あまりまとまりがないのは仕方ない所か。
石黒浩・鷲田清一
生きるってなんやろか?
書評の点が良かったのと、石黒先生の名前で読んでみた。
若者に向けて、どう生きるのか、生き方のヒントになるかもしれないような事柄を、いろんなテーマに沿って語り合う。
実際、進学や就職を控えて悩み、かつ著者二人の名前も業績も何も知らない、という人であれば、かなり目から鱗が落ちるであろう。
この社会で普通に平凡にそこそこ成功したいが、既定路線の先が見えない、何か漠然とした不安がある。
そんな人に対して、優しく背中を押して、安心を与える本では決してない。
むしろ、破壊系の本である。
若者に対して、かなり厳しい態度で語られている。若者は血反吐を吐くほど悩んで立ち上がるような力を付けよ、というようなスタンスである。
生きる事に不安がある人は、ますます追い込まれて不安に思うかも知れない。
しかし、その程度の人は所詮その程度と言うことで、まあ、仕方ないだろう。多分悩む若者10人いたら、この本読んで発奮できる人、糧にできる人は一人二人が良い所ではないかと思う。
学究徒を志す人以外に、一般の人でももちろん参考になるだろう。
公開対談をまとめた本なので、あまりまとまりがないのは仕方ない所か。
観用少女 プランツ・ドール 2/川原由美子
と言うことで、2巻も読んでみた。
この巻も生きる人形、プランツにまつわる不思議な話、9編が収まっている。
1巻に比べると、やや焦点が広がった感じの印象。しかし悪くはない。
「メランコリィの花冠」が柱か。サスペンス調でミステリアスな雰囲気の中編として出色。
甘美な憂鬱を知った少女(プランツ)は、大人の女になってしまう、というモチーフは深いものがある。
プランツが生長してしまう話は1巻でもあるし、2巻の「サークル」でも同じような展開があった。
禁じ手っぽい展開だけに、あまり増えすぎると食傷だ。
3巻は無いようである。残念。もう少し読んでみたかった。
川原由美子
観用少女 プランツ・ドール 2
この巻も生きる人形、プランツにまつわる不思議な話、9編が収まっている。
1巻に比べると、やや焦点が広がった感じの印象。しかし悪くはない。
「メランコリィの花冠」が柱か。サスペンス調でミステリアスな雰囲気の中編として出色。
甘美な憂鬱を知った少女(プランツ)は、大人の女になってしまう、というモチーフは深いものがある。
プランツが生長してしまう話は1巻でもあるし、2巻の「サークル」でも同じような展開があった。
禁じ手っぽい展開だけに、あまり増えすぎると食傷だ。
3巻は無いようである。残念。もう少し読んでみたかった。
お茶にごす。/西森博之
10巻11巻と完結巻までイッキ読み。
帰省の切符代でゴボッとポイントが入ったので、例によって楽天ブックスでまとめて購入した。
素晴らしい漫画だったが、正直読み出した頃はこれほど感銘を受けるとは、全く予想していなかった。
そこそこ面白いギャグマンガが読めればよい、ぐらいに思って手に取ったのに、これほどどっぷりとハマるとは思っても見なかった。
素晴らしいギャグマンガ、青春学園漫画であると同時に、少年漫画の王道として、一人の少年の成長を描ききった大作であると思う。
今年読んだ漫画の中でトップなのは当然として、これまでのすべての漫画を合わせても十指に入る傑作なのは間違いない。
主人公まークンは、資産家の婚外子として生まれ、母親を早くに亡くした。まークンを引き取る気のない父親は、母方の祖父に不動産を与え、まークンの世話をさせ、自分は縁を切る。そんな不憫な幼少期の回想シーンがある。
福祉施設らしき所を訪ねた、父親の秘書らしき宮城さんという女性は、まークンを哀れに思い、諭すように励ますように言葉を贈る。
「雅矢クン。 優しい人になって。 そしたら きっと、 君の欲しいものが 手に入るよ」
それを聞いた同行の父親は自分の遺伝子を受け継ぐ息子の性質を理解しており、バカにしたように笑い飛ばす。
「そいつが優しく なれるわけが ねーだろ!!」
これがまークンの原点だった。父親の言葉を見返してやろうと、絶対に優しい奴になってやると決心したのだ。
まークンには、別段欲しいものはなかった。育ち故か感情に乏しく、意志だけは強く譲らない性格から、喧嘩を繰り返し敵も多かった。だが、彼は常に優しい奴を目指していたのだ。
そんなまークンに、目標として尊敬できる人物が現れる。茶道部の姉崎部長である。誰にでも分け隔て無く接する部長の優しさに惹かれ、少しでもそこに近づきたいと、茶道部に入部する。
部長に出逢い、色々なことを教えられ、悩みながらも日々優しさを実践しようと努力するまークン。努力は報われ、仲間達にも救われ、少しずつ彼は変わってゆき、少しずつ優しさに近づいていった。
部長への思いは、すぐに恋へと変わった。それが初恋であると本人も自覚があった。しかし、それは本当の恋ではない。物語の終盤で、もう一度まークンは部長への本当の恋に落ちることになる。
父親への意地、自分自身への意地だけで優しさを目指したまークン。その姿は求道者のようであった。
自分自身を、腕力を振るうことで優しい人の役に立つ係、と心に決めて、一片の迷いもなく、時には目的も見失いつつ、クールに係に徹するのだった。
しかし、優しい腕力は、敵も多く生み出す。部長をごたごたに巻き込まない為、敢えて距離を置こうとするまークン。そして、優しい奴になる、というまークンの譲れない想いを知る部長は、そんなまークンの決意を尊重し、「あまり 無理しないでね。」と見守ることを心に決める。そして部長は卒業していった。
想い合う二人が、想い合うが故に、離れてゆくのである。
2年になり、新入部員勧誘に励む部員達。まークンの内面を知る身近な人達はすっかり慣れて忘れていたが、まークンのその悪魔的相貌のため、新入生は逃げてしまう。そんな折り、ようやく山田が見つけてきた今風の女の子に、73分けでさらに凶貌さが増したまークンがお茶を点てる。
ギャグシーンからの続きだというのに、一転、まークンの流麗な所作に、はっと息を呑む。
堅苦しい茶道に騙されたと失望を募らせ、まークンの風貌に恐怖で腰を抜かしそうにしていた新入生のヒナが、まークンの、部長直伝の振る舞い、そして部長直伝の心遣いに打たれ、茶の湯の心に触れ、入部を決意する。新入生の時には、どの部の勧誘員からも目を逸らされた、あのまークンが、こんなに短時間で、茶道を通して彼の内面の素晴らしさを理解されるという、まークンの成長にじんわりと胸が熱くなるシーンである。ヒナだけでなく、こちらも、なんかスゴイ、と背筋が伸びる思いだ。
諦められるぐらいなら恋ではない。部長がいなくなっても意外と普通に振る舞うまークンの姿に、夏帆はずっと疑いのまなざしを向けていた。そしてついに、どうしようもない思いを川面にぶつけるまークンを河原で見つけた夏帆は、走ってまークンを川へ蹴り落とす。
「そんなんで 優しい人間に なったつもり なの!? 何もしないで 身を引く… そんなの どこの腰ヌケに だって出来る事 じゃないの? (略) よく聞けよ このバカ野郎が!! 自分にも優しく出来ない奴は、 人に優しくなんて 出来ねーんだよ!!」
いつでもまークンは、「誰か」の為に戦っていた。そうすることが彼にとって優しさだと思っていたからだ。自分の欲しいものも特に無いまークンには、それで良かったのだ。しかし、自分の心に蓋をしたままの慈善事業は、山田の指摘通り、自身を削るような域になろうとしていた。
夏帆は見ていてくれたのだ。夏帆はまークンの心を解き放った。
自分の為に優しくなっても良いんだ。それが優しい人間になる第一歩なんだ。夏帆の言葉でそう悟ったまークンは、一目散に部長の元へと駆け出す。
夏帆は、あんなになりたいとあこがれていた、部長のような優しい人になることができただろう。多少柄は悪いが、本心からの本当の意味で優しい言葉を人に掛けることができたのだ。
自分の他にも、本当にまークンを理解してくれている人がいた、自分にはできなかったまークンの心を解放することができる人がいたことに、山田は感動していた。しかもそれは自分が惚れた人だった。親友を思って涙する山田も、もちろん夏帆にも、仲間を思う暖かい気持ちで胸が一杯になる。
濡れた服を微塵も気にせずまークンは走る。部長に会えるんだ、というその歓び。色恋というより、もっとプリミティブな、好きな人に会いたい、という子供のような素直な感情が全身から溢れるまークンの躍動に心打たれる。
もはや表情が違う。
人は目を逸らし、デビルと恐れられ、優しさも知らず、自分の欲しいものも知らなかった男は、もう、どこにもいない。
部長に会える。嬉しい!と笑顔で走るまークンを見守る道行く人達の、皆にこやかで優しい表情はどうだ。
まークンはまだ気づいていないが、ずっと手に入れたかったものの一つを、たった今手に入れたのだ。
部長のいる大学に近づくに連れ、徐々に恐怖も感じる。部長に、どんな顔して会ったらいいのか。何を話したらいいのか。会ってくれるのか。大学の仲間に囲まれ大人びて見える部長を見つけると、緊張と恐怖はMAXに。うれしさも恐怖もいろんな感情が交じり合い高ぶって、思わず人生初の涙がにじむまークンだった。
応援してくれた友を思い、意を決してグループに向かうと、部長はいない。
あれ?と向きを変えると、そこには、最高の笑顔で両手を拡げてまークンを迎える部長の姿があった。
部長は待っていたのだろう。まークンが自分の心に気づき、その優しさに気づくことを。無理をせず自然にバランスを取れるようになることを。そうして、自分に会いに来てくれたということで、部長は全てを理解したのだろう。
素晴らしい余韻に包まれて、ボーイミーツガールの物語はこれで終わりである。
最後のコマにある掛け軸「開径待佳賓」。みちをひらきてかひんをまつ。5月の禅句との事だ。文字通り、大切な人を迎える為に心配りするというような意味らしい。茶室にこの掛け軸が掛かっているのを見たのは初めてである。
私にとってこの漫画は、まークンの成長譚であった。
心を持たないといわれるほどクールでデビルと恐れられた男が、優しくなりたいと願い、それを果たすまでの物語である。
優しい人になるという目標は、上記のような意地からでもあるが、根底では、優しくされたいという希望の裏返しでもあっただろう。心がないんじゃないかと自分で悩むほどの感情の起伏の少ない(怒りを除く)のは、人間らしい感情を育む環境、それを許す相手がいなかったからだ。まークンに眠る人間らしい感情のうねりは、ずっと出口を求めて揺れていたのである。優しい人間になれば、人からも優しくされ、感情を解き放てるのではないか。無意識にそう願っていたのではないだろうか。作中、ずっとギャグとしてそのクールさ鈍さを披露してきたまークンの、部長に会いに走るコマの、あの素晴らしい笑顔を見よ。あんな顔のできる男なのだ。人に優しくしようと努力し、最後、自分にも優しくできた、自分で自分を認められた事で、あんな感情をようやく取り戻したのである。何度読んでもこのコマでは落涙を禁じ得ない。このコマこそがこの漫画の頂上なのである。
あんな表情のできる男は、もうデビルでも何でもない。誰にとっても、とても嬉しいことがあって走っている、ただの兄ちゃんなのだ。これからはもうずっと、まークンはただの兄ちゃんでいることだろう。
だから、姉崎部長との恋路は、この成長譚には描く必要のない後日談に過ぎないのだ。部長と上手くいくかも知れないし、ふられるのかも知れない。それはどちらか分からないし、どちらでも良いのである。どちらにしろ、人間性を取り戻したまークンには、大切な人生の糧としてそれを処理していく、生きる力、つまりは優しさが、すでに備わっているからだ。
もちろん、相思相愛で上手くいくだろうと想像するし、そう強く願う。そしてその物語を読みたいと熱望する。
だが、それらは描かれない。
それが、「お茶にごす」という意味だろうか。にごして曖昧にすることで、却って引き立つ心象風景があるのだろう。
また、まークンがずっと身につけてきた、自分の感情を抑圧しクールに振る舞う姿を指して「お茶にごす」と表現した意味合いもあるのかも知れない。
正直、終わってしまうなんてヤダヤダとだだをこねようと思えばいくらでもこねられる。
部長とまークンのその後が見たかった。
山田と夏帆もどうなるのか。ブルーと智花は。というか、ブルーのアイデンティティは回復するのか。男古田との友情は。アニ研恋愛事情は。若菜の思いは恋へ変わるのか。
ジジィと少年二人の冒険譚も読みたかった。幼少期のもっと詳しい話や、父親のその後など。
新入部員ヒナ、そして茶道部面々のドタバタと楽しい日常をいつまでも読んでいたかった。
が、冷静に考えると、無いのだ。
あのまークンの笑顔で、部長の笑顔で完結した、素晴らしいストーリーの、途中にも後にも、もう何も付け加えられそうな物語構成上の余白がないのだ。
何をどう描いた所で、テンポ・流れ・印象と、どれも変わってしまう。間延びしてしまう気がするのだ。
だから、これで良いのである。想像の余地を目一杯残して、一番良い所で、締めたのである。
素晴らしい漫画の素晴らしいエンドだったと思う。
今回、西森漫画をきっちり最初から最後まで、初めて通して読んだ。正直、この作者の作品はヤンキー系漫画でバイオレンス描写も多いような印象で、敬遠していた所もある。しかし、ギャグ・ストーリー・バイオレンスは、三位一体となって、この佳作の欠くべからず要素であることが分かった。アメリカの犯罪都市のようなトラブル発生率の高さも、まークンの心象描写には必須なのであろう。
特にギャグは重要である。ギャグを抜いたらベースを抜いたロックみたいになってしまうだろう。ギャグマンガでしか表現し得ない純愛ストーリーもあるのだ。
例えば、10巻の名シーンである、夕陽の場面。いつも陰となり日向となり自分を見守ってくれているまークンを、部長は秘密の場所に誘う。ごみごみした工場と埠頭の間に、夕陽が見えるポイントがあるのだ。だが、その日はもう夕陽を眺められるタイミングではなかった。「今日は 夕陽は 無理ね。」残念そうな部長に、まークンは、落ちていたゴムマリを掲げて言う。「夕陽。」「今日は ズイブン 低いトコに 出たね。」マリを蹴り上げるまークン。高く高く上がったマリを見つめる部長とまークン。人通りもなく危険な秘密の場所から自宅まで部長を送り届けると、別れ際、振り返って部長は言う。「ちょーだい。 夕陽。」。通い合う二人の心を描いた素晴らしいシーンだが、蹴り上げたマリが、最後部長の顔面に直撃する、というギャグが、このシーンのテンションを維持しているのであって、それを抜いてこうして文章で書いてしまうと何でもない凡庸なシーンであることがよく分かる。
漫画ならではの、背景やコマ奥の描き込みも素晴らしい。
何気ないポーズやアイテムが伏線の帰結だったり、何度も読まないと気づかないような細かな遊びが溢れていて、非常に好みのタイプの漫画である。ストーリーに密接に関係してくるものもあれば、エンド間際の「コピー\0 紙\100」「CRY歯科」のようなお遊びも多い。部長との再会シーンの背景で「deep black」と言う名の喫茶が「Open」になっている、というのはやはり暗喩だろうか。
他の西森漫画にも期待である。
西森博之
お茶にごす。
帰省の切符代でゴボッとポイントが入ったので、例によって楽天ブックスでまとめて購入した。
素晴らしい漫画だったが、正直読み出した頃はこれほど感銘を受けるとは、全く予想していなかった。
そこそこ面白いギャグマンガが読めればよい、ぐらいに思って手に取ったのに、これほどどっぷりとハマるとは思っても見なかった。
素晴らしいギャグマンガ、青春学園漫画であると同時に、少年漫画の王道として、一人の少年の成長を描ききった大作であると思う。
今年読んだ漫画の中でトップなのは当然として、これまでのすべての漫画を合わせても十指に入る傑作なのは間違いない。
主人公まークンは、資産家の婚外子として生まれ、母親を早くに亡くした。まークンを引き取る気のない父親は、母方の祖父に不動産を与え、まークンの世話をさせ、自分は縁を切る。そんな不憫な幼少期の回想シーンがある。
福祉施設らしき所を訪ねた、父親の秘書らしき宮城さんという女性は、まークンを哀れに思い、諭すように励ますように言葉を贈る。
「雅矢クン。 優しい人になって。 そしたら きっと、 君の欲しいものが 手に入るよ」
それを聞いた同行の父親は自分の遺伝子を受け継ぐ息子の性質を理解しており、バカにしたように笑い飛ばす。
「そいつが優しく なれるわけが ねーだろ!!」
これがまークンの原点だった。父親の言葉を見返してやろうと、絶対に優しい奴になってやると決心したのだ。
まークンには、別段欲しいものはなかった。育ち故か感情に乏しく、意志だけは強く譲らない性格から、喧嘩を繰り返し敵も多かった。だが、彼は常に優しい奴を目指していたのだ。
そんなまークンに、目標として尊敬できる人物が現れる。茶道部の姉崎部長である。誰にでも分け隔て無く接する部長の優しさに惹かれ、少しでもそこに近づきたいと、茶道部に入部する。
部長に出逢い、色々なことを教えられ、悩みながらも日々優しさを実践しようと努力するまークン。努力は報われ、仲間達にも救われ、少しずつ彼は変わってゆき、少しずつ優しさに近づいていった。
部長への思いは、すぐに恋へと変わった。それが初恋であると本人も自覚があった。しかし、それは本当の恋ではない。物語の終盤で、もう一度まークンは部長への本当の恋に落ちることになる。
父親への意地、自分自身への意地だけで優しさを目指したまークン。その姿は求道者のようであった。
自分自身を、腕力を振るうことで優しい人の役に立つ係、と心に決めて、一片の迷いもなく、時には目的も見失いつつ、クールに係に徹するのだった。
しかし、優しい腕力は、敵も多く生み出す。部長をごたごたに巻き込まない為、敢えて距離を置こうとするまークン。そして、優しい奴になる、というまークンの譲れない想いを知る部長は、そんなまークンの決意を尊重し、「あまり 無理しないでね。」と見守ることを心に決める。そして部長は卒業していった。
想い合う二人が、想い合うが故に、離れてゆくのである。
2年になり、新入部員勧誘に励む部員達。まークンの内面を知る身近な人達はすっかり慣れて忘れていたが、まークンのその悪魔的相貌のため、新入生は逃げてしまう。そんな折り、ようやく山田が見つけてきた今風の女の子に、73分けでさらに凶貌さが増したまークンがお茶を点てる。
ギャグシーンからの続きだというのに、一転、まークンの流麗な所作に、はっと息を呑む。
堅苦しい茶道に騙されたと失望を募らせ、まークンの風貌に恐怖で腰を抜かしそうにしていた新入生のヒナが、まークンの、部長直伝の振る舞い、そして部長直伝の心遣いに打たれ、茶の湯の心に触れ、入部を決意する。新入生の時には、どの部の勧誘員からも目を逸らされた、あのまークンが、こんなに短時間で、茶道を通して彼の内面の素晴らしさを理解されるという、まークンの成長にじんわりと胸が熱くなるシーンである。ヒナだけでなく、こちらも、なんかスゴイ、と背筋が伸びる思いだ。
諦められるぐらいなら恋ではない。部長がいなくなっても意外と普通に振る舞うまークンの姿に、夏帆はずっと疑いのまなざしを向けていた。そしてついに、どうしようもない思いを川面にぶつけるまークンを河原で見つけた夏帆は、走ってまークンを川へ蹴り落とす。
「そんなんで 優しい人間に なったつもり なの!? 何もしないで 身を引く… そんなの どこの腰ヌケに だって出来る事 じゃないの? (略) よく聞けよ このバカ野郎が!! 自分にも優しく出来ない奴は、 人に優しくなんて 出来ねーんだよ!!」
いつでもまークンは、「誰か」の為に戦っていた。そうすることが彼にとって優しさだと思っていたからだ。自分の欲しいものも特に無いまークンには、それで良かったのだ。しかし、自分の心に蓋をしたままの慈善事業は、山田の指摘通り、自身を削るような域になろうとしていた。
夏帆は見ていてくれたのだ。夏帆はまークンの心を解き放った。
自分の為に優しくなっても良いんだ。それが優しい人間になる第一歩なんだ。夏帆の言葉でそう悟ったまークンは、一目散に部長の元へと駆け出す。
夏帆は、あんなになりたいとあこがれていた、部長のような優しい人になることができただろう。多少柄は悪いが、本心からの本当の意味で優しい言葉を人に掛けることができたのだ。
自分の他にも、本当にまークンを理解してくれている人がいた、自分にはできなかったまークンの心を解放することができる人がいたことに、山田は感動していた。しかもそれは自分が惚れた人だった。親友を思って涙する山田も、もちろん夏帆にも、仲間を思う暖かい気持ちで胸が一杯になる。
濡れた服を微塵も気にせずまークンは走る。部長に会えるんだ、というその歓び。色恋というより、もっとプリミティブな、好きな人に会いたい、という子供のような素直な感情が全身から溢れるまークンの躍動に心打たれる。
もはや表情が違う。
人は目を逸らし、デビルと恐れられ、優しさも知らず、自分の欲しいものも知らなかった男は、もう、どこにもいない。
部長に会える。嬉しい!と笑顔で走るまークンを見守る道行く人達の、皆にこやかで優しい表情はどうだ。
まークンはまだ気づいていないが、ずっと手に入れたかったものの一つを、たった今手に入れたのだ。
部長のいる大学に近づくに連れ、徐々に恐怖も感じる。部長に、どんな顔して会ったらいいのか。何を話したらいいのか。会ってくれるのか。大学の仲間に囲まれ大人びて見える部長を見つけると、緊張と恐怖はMAXに。うれしさも恐怖もいろんな感情が交じり合い高ぶって、思わず人生初の涙がにじむまークンだった。
応援してくれた友を思い、意を決してグループに向かうと、部長はいない。
あれ?と向きを変えると、そこには、最高の笑顔で両手を拡げてまークンを迎える部長の姿があった。
部長は待っていたのだろう。まークンが自分の心に気づき、その優しさに気づくことを。無理をせず自然にバランスを取れるようになることを。そうして、自分に会いに来てくれたということで、部長は全てを理解したのだろう。
素晴らしい余韻に包まれて、ボーイミーツガールの物語はこれで終わりである。
最後のコマにある掛け軸「開径待佳賓」。みちをひらきてかひんをまつ。5月の禅句との事だ。文字通り、大切な人を迎える為に心配りするというような意味らしい。茶室にこの掛け軸が掛かっているのを見たのは初めてである。
私にとってこの漫画は、まークンの成長譚であった。
心を持たないといわれるほどクールでデビルと恐れられた男が、優しくなりたいと願い、それを果たすまでの物語である。
優しい人になるという目標は、上記のような意地からでもあるが、根底では、優しくされたいという希望の裏返しでもあっただろう。心がないんじゃないかと自分で悩むほどの感情の起伏の少ない(怒りを除く)のは、人間らしい感情を育む環境、それを許す相手がいなかったからだ。まークンに眠る人間らしい感情のうねりは、ずっと出口を求めて揺れていたのである。優しい人間になれば、人からも優しくされ、感情を解き放てるのではないか。無意識にそう願っていたのではないだろうか。作中、ずっとギャグとしてそのクールさ鈍さを披露してきたまークンの、部長に会いに走るコマの、あの素晴らしい笑顔を見よ。あんな顔のできる男なのだ。人に優しくしようと努力し、最後、自分にも優しくできた、自分で自分を認められた事で、あんな感情をようやく取り戻したのである。何度読んでもこのコマでは落涙を禁じ得ない。このコマこそがこの漫画の頂上なのである。
あんな表情のできる男は、もうデビルでも何でもない。誰にとっても、とても嬉しいことがあって走っている、ただの兄ちゃんなのだ。これからはもうずっと、まークンはただの兄ちゃんでいることだろう。
だから、姉崎部長との恋路は、この成長譚には描く必要のない後日談に過ぎないのだ。部長と上手くいくかも知れないし、ふられるのかも知れない。それはどちらか分からないし、どちらでも良いのである。どちらにしろ、人間性を取り戻したまークンには、大切な人生の糧としてそれを処理していく、生きる力、つまりは優しさが、すでに備わっているからだ。
もちろん、相思相愛で上手くいくだろうと想像するし、そう強く願う。そしてその物語を読みたいと熱望する。
だが、それらは描かれない。
それが、「お茶にごす」という意味だろうか。にごして曖昧にすることで、却って引き立つ心象風景があるのだろう。
また、まークンがずっと身につけてきた、自分の感情を抑圧しクールに振る舞う姿を指して「お茶にごす」と表現した意味合いもあるのかも知れない。
正直、終わってしまうなんてヤダヤダとだだをこねようと思えばいくらでもこねられる。
部長とまークンのその後が見たかった。
山田と夏帆もどうなるのか。ブルーと智花は。というか、ブルーのアイデンティティは回復するのか。男古田との友情は。アニ研恋愛事情は。若菜の思いは恋へ変わるのか。
ジジィと少年二人の冒険譚も読みたかった。幼少期のもっと詳しい話や、父親のその後など。
新入部員ヒナ、そして茶道部面々のドタバタと楽しい日常をいつまでも読んでいたかった。
が、冷静に考えると、無いのだ。
あのまークンの笑顔で、部長の笑顔で完結した、素晴らしいストーリーの、途中にも後にも、もう何も付け加えられそうな物語構成上の余白がないのだ。
何をどう描いた所で、テンポ・流れ・印象と、どれも変わってしまう。間延びしてしまう気がするのだ。
だから、これで良いのである。想像の余地を目一杯残して、一番良い所で、締めたのである。
素晴らしい漫画の素晴らしいエンドだったと思う。
今回、西森漫画をきっちり最初から最後まで、初めて通して読んだ。正直、この作者の作品はヤンキー系漫画でバイオレンス描写も多いような印象で、敬遠していた所もある。しかし、ギャグ・ストーリー・バイオレンスは、三位一体となって、この佳作の欠くべからず要素であることが分かった。アメリカの犯罪都市のようなトラブル発生率の高さも、まークンの心象描写には必須なのであろう。
特にギャグは重要である。ギャグを抜いたらベースを抜いたロックみたいになってしまうだろう。ギャグマンガでしか表現し得ない純愛ストーリーもあるのだ。
例えば、10巻の名シーンである、夕陽の場面。いつも陰となり日向となり自分を見守ってくれているまークンを、部長は秘密の場所に誘う。ごみごみした工場と埠頭の間に、夕陽が見えるポイントがあるのだ。だが、その日はもう夕陽を眺められるタイミングではなかった。「今日は 夕陽は 無理ね。」残念そうな部長に、まークンは、落ちていたゴムマリを掲げて言う。「夕陽。」「今日は ズイブン 低いトコに 出たね。」マリを蹴り上げるまークン。高く高く上がったマリを見つめる部長とまークン。人通りもなく危険な秘密の場所から自宅まで部長を送り届けると、別れ際、振り返って部長は言う。「ちょーだい。 夕陽。」。通い合う二人の心を描いた素晴らしいシーンだが、蹴り上げたマリが、最後部長の顔面に直撃する、というギャグが、このシーンのテンションを維持しているのであって、それを抜いてこうして文章で書いてしまうと何でもない凡庸なシーンであることがよく分かる。
漫画ならではの、背景やコマ奥の描き込みも素晴らしい。
何気ないポーズやアイテムが伏線の帰結だったり、何度も読まないと気づかないような細かな遊びが溢れていて、非常に好みのタイプの漫画である。ストーリーに密接に関係してくるものもあれば、エンド間際の「コピー\0 紙\100」「CRY歯科」のようなお遊びも多い。部長との再会シーンの背景で「deep black」と言う名の喫茶が「Open」になっている、というのはやはり暗喩だろうか。
他の西森漫画にも期待である。
理系の人々/よしたに
別に狙って読んでいる訳ではないが、たまたま、またまた理系もの。
妻が読んでいたので、読んでみたのだった。
オタリーマンで有名な作者である。きちんと読んだことはないが。
アキバや理系クンが、パートナーを代表とする一般視点(もっともそうしたパートナーを選んだ時点で既に一般と見なして良いかどうかは疑問であるが)からの描写だったのに対し、こちらは、本人視点。
つまりネタは、自虐、自戒、自尊などである。
意外と絵は上手い。内容的には予想の範囲内で、目を引くようなものはない。ふーんと読みつつ、時々、ニヤッとできれば良いだろう位の気持ちで描かれ、だいたいそのような反応で消費されてゆくモノであろう。
本人視点モノは、結局最初からコミュニケーションにしろ批判にしろ、自己完結してしまっているので、そこが空しいというか、寂しい感じがする。
あと、作中で、理系と工学系を弁別するようなくだりがあって笑ってしまった。目くそ鼻くそではないが、それを言うなら、情報系が理系というのは寧ろ違和感だ。情報学科は立派に工学系だろう。妻など、情報系は文系だと思っていたぐらいである。
閑話だが、個人的にはSEは寧ろ文系の能力が重要な職種であると思う。日本で開発されるシステムの半分以上が使い物にならないという異常事態の原因の少なくはない部分が、この点に掛かっている筈である。
PONの思い出話は出色だった。
よしたに
理系の人々
妻が読んでいたので、読んでみたのだった。
オタリーマンで有名な作者である。きちんと読んだことはないが。
アキバや理系クンが、パートナーを代表とする一般視点(もっともそうしたパートナーを選んだ時点で既に一般と見なして良いかどうかは疑問であるが)からの描写だったのに対し、こちらは、本人視点。
つまりネタは、自虐、自戒、自尊などである。
意外と絵は上手い。内容的には予想の範囲内で、目を引くようなものはない。ふーんと読みつつ、時々、ニヤッとできれば良いだろう位の気持ちで描かれ、だいたいそのような反応で消費されてゆくモノであろう。
本人視点モノは、結局最初からコミュニケーションにしろ批判にしろ、自己完結してしまっているので、そこが空しいというか、寂しい感じがする。
あと、作中で、理系と工学系を弁別するようなくだりがあって笑ってしまった。目くそ鼻くそではないが、それを言うなら、情報系が理系というのは寧ろ違和感だ。情報学科は立派に工学系だろう。妻など、情報系は文系だと思っていたぐらいである。
閑話だが、個人的にはSEは寧ろ文系の能力が重要な職種であると思う。日本で開発されるシステムの半分以上が使い物にならないという異常事態の原因の少なくはない部分が、この点に掛かっている筈である。
PONの思い出話は出色だった。