ごんざの辞書の日本版16ページの「8.キリル文字による日本語音節の表記」によると、ごんざの日本語表記のダ行音は
「ダ」(да)(da)「ヂ」(джи)(dzhi)「ヅ」(дз)(dz)「デ」(де)(de)「ド」(до)(do)
になっている。
「ヅ」は無声化すれば(дз)(dz)だけど無声化しなければ(дзу)(dzu)だ。
この「ヂ」(джи)(dzhi)と「ヅ」(дзу)(dzu)の子音のつづりの区別がごんざにはむずかしかったようだ。
「ヂ」は(джи)(dzhi)、「ヅ」は(дзу)(dzu)と、子音がちがう上、日本語には「ヂュ」という音もあって、これは(джу)(dzhu)とつづらなければならない。
鹿児島県立図書館の原稿コピーをみると、かきかえた例がたくさんみつかった。
このことはごんざの日本語の音韻に関するたいせつな情報だとおもうけど、日本版ではふれられていない。
「мышка」(myshka)「鼠」『ねづみ』нЕдзумь
・нЕдとかいてからжの途中でзにかきかえてある。
「шапка」(shapka)「つばのない帽子」『づきん』дзукинъ
・зはжとかさなっている。
「корчуся」(korchusya)「曲がる、縮まる」『ちぢゅむ』чиджумъ
・чидзとかいてからзにかさねてжумъとかいてある。
「утЕшаюся」(uteshayusya)「慰めとなる」『あすぢきげんとる』асуджькигенторъ
・асудзとかいてからзにかさねてжがかいてある。
「стружки」(struzhki)「鉋屑」『かなくづ』канакудзъ
・жをзにかきかえてある。
「помалу」(pomalu)「少しずつ」『ちっとづつ』читтодзуцъ
・жの上にзをかさねてかいてある。
「земледЕланiе」(zemledelanie)「耕すこと」『ぢつくること』джицкуркотъ
・дзとかいてからзにかさねてжицкуръとかいてある。
「бездЕлiе бездЕлное дЕло」(bezdelie bezdelnoe delo)「無為、くだらぬこと」『いたづら』итадзъра
・джとかいてからжにかさねてзがかいてある。
「выскакиваю」(vyskakivayu)「跳び出る」『とぶづる』тобдзуръ
・тобджуръのжにかさねてзがかいてある。
「гладило」(gladilo)「滑らかにする物」『なづると』надзуртъ
・наджとかいてからжにかさねてзуртъとかいてある。
「предвосхожду」(predvoskhozhdu)「予め上に出る」『ふぁよづる』фаЮдзуръ
・фаЮджとかいてからжにかさねてзуръとかいてある。