経営の勘どころ・つかみどころ
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  新NISA。半年で7.5兆円の投資資金流入! 

 2024年1月1日からスタートした新NISA。半年経過した6月末時点で、個人による購入額が、主要証券会社の専用口座を経由で7.5兆円に及んだことが報道された。
NISAとは、少額投資非課税制度のことで、イギリスのISA=Individual Savings Accountの日本版である。NISAが始まったのは2014年(平成26年)1月から。その後2016年にはジュニアNISA(未成年者少額非課税投資制度)、2018年には積立NISAがスタートし、そして今年新NISAに制度改正がなされた結果人気を博し、多くの個人投資家が新NISAを利用した長期投資を始めたことが明らかになった。新NISA制度では、国内外の個別株を投資対象とする「成長投資枠」と投資信託への「積立投資枠」の2つのタイプを任意に選択することでき、投資枠上限は年間360万円(内、積立投資枠120万円)となっている。また非課税口座の開設期限も恒久化され、生涯に亘って株式投資に係る非課税の優遇措置が受けるため、折からの株高の追い風を受けて人気に火がついたようである。


 それにしてもNISAが初めて非課税の優遇税制措置として誕生してから10年経過して、やっと本悪的な利用が始めたかと思うと複雑な心境である。折角の非課税メリットが制度そのものの制約で打ち消されて、旧NISAはあまり人気を集めることができなかった。折角、国民に対して、株式投資による資産運用のメリットと公的年金だけでは不足するであろう老後の生活資金の確保のチャンスを提供しようとする制度の趣旨が十分に活かされず、中途半端な制度で10年間も放置された印象が強いのだ。新NISAはその意味で、改正案が公表されたときはかなりの手応えを感じた覚えがある。あにはからず、半年間で7.5兆円の個人投資家の資金が非課税専用口座に集まったことは注目に値する動きである。


 今、足下の経済の基礎的環境を見ると、円安・株高・資源高・物価高・人件費上昇・マインス金利からプラス金利に転換するなど、大きな環境変化を迎えつつある。その一方、経済成長を下支えする人口動態は少産多死社会に突入しおり、日本社会はダウンサイジングの道を辿り始めている。円安に伴う輸入物価上昇や最低賃金の引き上げや人手不足による人件費上昇の圧力を受ける中、海外市場を持たない多くの中小企業は国内市場において、業容拡大という裏付けのないままコストアップだけを受け入れざるを得ないというジレンマに陥っている。これが中小企業経営の実情であろう。


 そんななかで、国外に目を転じてみると、世界人口は増加し続けいる。世界市場の経済成長も日本を上回っている。世界は人口も経済も成長しているのに、国内経済は人口減少の長期的影響を受けて経済は低成長の罠に嵌ったままである。庶民としては、この矛盾に満ちた経済の下で生活防衛するには、成長している国外の富を、安全かつ手軽に自らの富として取り込むことができれば最も効果的な資産形成が実現できる。それを可能にしてくれるのが新NISAかも知れない。新NISAで国内外の株式や全世界株式型(オールカントリー)投資信託を選択すれば、世界中の株式に長期投資が可能になる。10年後20年後にはその間に膨らんだ世界の富を手中にすることができるのだから、資産運用とインフレ対策にこれほど有効は投資手段はないと思われる。その他にもゴールド(金)投資が注目されているが、こちらは希少価値と実物資産、無国籍通貨としてその有効性が注目されいるのだが、財(富)の価値保全とインフレ回避に有効な点では、新NISAといくつかの共通点がある。


 今や、現金を保有するにはリスクが大き過ぎる時代となっている。現金は必要最低限を手元に置いておくキャッシュレスの時代だ。個人の資産運用も大きく変わる時代である。

もうすぐ7月3日。 新1万円札の顔となった渋沢栄一の精神に学ぶ。

(筆者拙稿:商工会議所職員研修レジメ一部抜粋) 

 
1.商工会議所の創設の歴史
□1878年(明治11年)  

 渋沢栄一(1840~1931年)により設立された「東京商法会議所」を起源とする。


□商工会議所のルーツ

 中世~近世。欧州諸都市で結成された「ギルド」とされる。


□世界初の商工会議所     

 1599年に設立されたフランス・マルセイユ商工会議所といわれる。


□東京商法会議所の設立の歴史的背景  
 当時の明治政府は不平等条約解消のための交渉過程で、欧米列強が「日本には民意がない。それを代表する団体も

 ない。」と強く反駁する姿勢に対抗するため、民意を集約する民主的な団体が必要となった。
 

大隈重信・伊藤博文らは、民間の実力者・渋沢栄一に相談。

結果、イギリスの商工会議所を模範として「東京商法会議所」を設立。初代会頭に渋沢が就任した。

2.令和の時代まで受け継がれる渋沢栄一の精神と時代背景
□「道徳経済合一説」
 公益の追求を尊重する「道徳」と、生産利殖という私益を追求する「経済」は、

 元来ともに進むべきものであり、その合一を重視すべきであるとする説。

 □渋沢栄一が尊敬し影響を受けた二人の人物の名言!                              
    〇二宮尊徳(1787~1856年)                                               
    道徳を忘れたは經濟は罪悪だ  經濟を忘れた道徳は寝言である      
 

   ※經濟とは「経世済民」のこと。世を經め民を濟うの意。経済の語源。


    〇昭憲皇太后(1849~1914年)                                          │   
    持つ人の 心によりて 宝とも 仇ともなるは 黄金なりけり     

  │   
※もとより黄金(お金)に善悪を判断する能力はない。

持つ人の心次第でお金は世の中の役に立つ宝ともなるし、

世を乱すお金にもなり得るという意。


 □論語と算盤  

                                                                
 論語(道徳・公益=国の繁栄) +  算盤(生産利殖・私益=民の繁栄 )                                    
                
※論語と算盤は「民の繁栄が、国の繁栄につながる」という道徳経済合一説と同義。

□アダム・スミス(1723~1790年)の国富論
 〇経済理論一(独占の禁止)

 

 「神の見えざる手=経済活動はすべて市場には任せ、国は加担しない。」


  〇経済理論二(最低賃金の責任)

 

 「経営者は労働者の賃金に最低限(夫婦子供2人)の責任を負う。」
  

※国富論の本質=国民全体が豊にならなければ、国(社会)も豊にならない。

栄一の「論語と算盤」や彼より少し年上の二宮尊徳や昭憲皇太后の名言に通底する精神は、「民の繁栄こそ国の繁栄」

という点に尽きる。この3人の更に先を生きた英国のアダム・スミスの国富論にしても同じである。

もしかすると彼らが生きた時代は、今より「民」すなわち「国民」を大事に思う時代だったのかも知れない。

7対1の奇妙な予測値!

 7対1という奇妙な予測値が相次いで報道された。一つは増え続ける空や家問題である。

総務省が5月に発表した情報によると全国の空き家が2023年10月1日時点で900万戸に達したという。全住宅数6500万戸に占める空き家の割合は13.8%に達し、つまり全住宅戸数の7戸に1戸が空き家ということになる。30年前の1993年の空き家率が9.8%であったというから率にして3.7%も増加したことになる。今後も空き家は増え続けると予想されているので事態はますます深刻になりつつある。空き屋の発生源を用途別に見ると、①賃貸用が443万戸、②用途不明が385万戸、③別荘用が38万戸、④売却用が33万戸となっており、この中でも特に問題なのが②の用途不明の空き家である。

 その発生原因は、単身高齢者の死亡や介護施設への入居によって空き家になってしまうことである。高齢社会の陰を垣間見ることができる。


 もう一つの7対1の予測値が、厚生労働省が同時期に公表した要介護人口の将来推計値である。同省が公表したところによると、2030年には、高齢者人口の14%が要介護になると推計している。実に高齢者の7人に1人が介護が必要になると予測しているのである。これに伴い、社会的には介護に必要な人材不足を引き起こし、仕事と介護の両立を強いられるビジネスケアラーが急増すると予測している。介護のためにやむなく職場離脱することに伴う経済損失は実に9兆円に及ぶと推定している。

 同時期に公表された「空き家」と「要介護人口」の比率がいずれ7対1という予測値の一致は、何かを示唆しているようで実に奇妙である。しかしながら、この奇妙な割合の一致こそが、若年人口の減少と高齢人口の増加が同時に進行している日本社会の「老化」を具体的な数値によって示唆しているものと解釈すべきであろう。
 
 まさにその意味において、「7対1」は日本の社会がこのまま少産多死社会に突入したまま老いてしまうのか、出生率向上と仕事と介護の両立が可能な社会を本気で目指していくのかを決める分岐点になる重要指標(KPI=Key Performance Indicator)というべきでろう。政治家もお役所も経営者も働く人たちも等しく「7対1」を重要な社会指標として位置づけ、これを起点として、いかにして活気ある数値に変換するかに英知と努力を集結させていけるなられば、ある程度の時間は必要としても、やがて「8対1」に、「9対1」へとKPIを変化させることも可能であると思うのである。
 7対1を今の日本の共通した社会的指標として受けとめたうえで、この指標の改善を通じて必ずや人々の夢を繋げる「未来社会」を手作りで構築できるとKPIであると信じたいものである。
 
 円安だ、円高だ、金利が上がる下がるなどは社会の未来構築には何の関係もない単なる一時の経済指標に過ぎない。今我々日本人が必要とするのは夢ある社会形成に欠かせない人的資源の再構築だろう。7対1の指標の方が、1ドル150円だとか、長期金利が1%だとかの指標よりも重要である。もっと強調するならば、「7対1」は、付加価値の総和としての「GDP」よりも、はるかに重要な社会的KPIであると思うのである。
 

円安がついに160円台に突入! でもこれってまだいいよね。本当に怖いのは!?

 4月29日外国為替相場で、円が対ドルで160円を付けた。その後、円は一時154円台まで急騰し、一日の振れ幅が6円近くにもなった。日本はゴールデンウィークに入り、国内市場が休場であった事もあり、外国勢の投機筋が円売りを仕掛けたようである。一方で突然反転した円高に関しては、財務省・日銀による為替介入があったとする見方が有力だ。円安傾向は2024年のトレンドであるが、今回の波乱相場は、4月26日の金融政策決定会合での植田日銀総裁の発言が大きく関わっていることは間違いないであろう。


 植田総裁は現在の円安は、「基調的な物価上昇率に影響を与えるという可能性はありうる」としたものの、「円安に金融政策で直接対応するつもりはない」との日銀の正論に市場関係者が注目した結果ではないかとの見方が報道されている。一向に縮まらない日米の金利差。高い経済成長率とインフレ。加えて金利下げが遠のいた米国の金利。市場関係者は当分は日銀は動かないと見て、円売りスタンスを強めた結果の160円台の円安であろうことは素人にも分る気がするのである。


 しかしながら人間の心理はつくづく複雑である。一昔前は「恐怖の円高」に怯えていた日本人だったが、今は「負け犬円安」に震えている。外国からのインバウンド客は大いに日本を楽しんでいる一方、アウトバウンドを満喫する日本人はいない。今や海外の宿泊先の部屋で自炊をする日本人客も多いと聞く。これが戦後79年を経過した日本経済の実情と思うと情けなくなる。
 だがものは考えよう。円安は企業業績を押し挙げる。輸入物価インフレは企業の価格転嫁努力がある程度達成できれば、売上増につながる。結果、法人税や消費税の税収がその分自然膨張し、国の財政の支えになる。賃金の上昇も基調的に上昇に転ずれば、可処分所得の増加につながり、かつ、所得税の税収も増える。この分で行けば、2024年度の税収は75兆円から80兆円になる可能性もある。但し、このようなユートピア的なストーリーは、国内政治の安定と国際経済が安定的に推移することが大前提である。


 しかし足下の国内政治は自民党の裏金問題で波乱含みである。衆議院の補欠選挙では自民・公明の与党は惨敗を期している。今後、自民党の総裁選も絡んで野党の解散要求は強まるであろう。国際政治もウクライナ戦争やガザ地区での人道問題。イランとイスラエルが直接衝突する危険性。北朝鮮に対する国連安保理の制裁措置の機能不全。圧力を強める中国の南シナ海や台湾海峡での軍事的威圧行動。ロシア周辺国で活発化するテロ活動。世界の政治と軍事を巡る情勢は日に日に険しくなりつつあるように思える。


 ある日突然、ペルシャ湾やマラッカ海峡が封鎖されるという「油断」が日本経済を直撃する事態も排除できないのである。
 円安だ円高だ!金利を上げろ!下げろ!というのは経済だけの問題であり、それをはるかに超えるのが安全保障環境である。今、世界の安全保障の動向は、誰もその動きを覚知できない地下深くで蠢くマントルに例えることができよう。いつ平時のバランスを突き動かす臨界点に達するか誰一人として予想できないのである。

 過去の大きな戦争も想定外の事態の積み重ねの中から起きていると思うと、真実、今の世界は新冷戦の時代の入口に立っているような気がしてならない。これから先、新冷戦が冷戦のまま終結し、熱戦にならないことを、ただひたすら祈るのみである。

2024年3月29日。令和5年度・年度末の日本の姿とは!

 令和5年度が3月29日実質的に幕を閉じた。自民党の裏金問題が最大の焦点となった国会だったが、呆気ないほど平穏に次年度予算112兆円が参議院を通過成立した。コストインフレに伴う物価高と賃上げを巡る春闘相場も政労使がまるで三位一体になったような形で軒並み満額回答が続出した。高度経済成長期の労使が激しく対決した春闘の姿は今はない。これでは野党も「出る幕なし」である。裏金問題しか攻め手がないのも頷ける。


 日経平均も29日に終値40,369円44銭をつけた。バブルの狂乱相場で付けた38,915円87銭を1,453円57銭も上回る相場だが、国民の間には高揚感はない。実に不思議な現象である。都内の新築マンションの平均販売価格も1億円超となって久しい。片や為替相場を見ると、1ドル151円33銭と一段と円安傾向で幕を閉じた。この円安水準は、1985年(39年前)のプラザ合意後に付けた152円台の相場と同水準である。思い返せば、このプラザ合意を契機に日本はバブル経済へと突き進んで行ったのだが、マンション価格や株価はバブルピーク時を上回るが、為替相場はバブル経済の起点となった時期に先祖帰りしたようである。

 

  マンション価格や株価高騰は、中国の経済減速を嫌気した海外資金の逃避先として日本が受け皿になっているとの見方が根強い。決して日本の経済が過熱していると考えている人は皆無だろう。為替相場で円安が進んでいるのは、誰が見ても国内の金利水準の低さにあることは間違いない。日銀は3月の金融政策決定会合で2013年に導入されたマイナス金利政策に終止符を打った。併せてイールドカーブコントロール(長短金利操作)も止め、ETF(上場投信等)の市場買入れも停止した。物価2%と賃金上昇の相関関係を総合的に判断した措置というが、国債買入れはまだ続行し、かつ、長期金利も1%±0.5%を目途とする慎重姿勢は崩さなかった。その結果、米国の金利引き下げは当分ないと予想した市場関係者は安い円で資金調達してドルを買って高利回りの運用をするという円キャリー取引を安心して続けられるとの思惑から、円安は39年ぶりの水準まで売られているのが実態だろう。

  この円安で企業は輸入物価上昇圧力に晒され続け、悪性コストインフレと賃金コストの上昇・人手不足の三重苦を背負わされるリスクが高くなったようである。特に価格転嫁に苦しむ中小・零細企業の先行きは極めて厳しいものになると云わざるを得ない。


 政府は、賃上げ税制や定額減税で企業や国民の負担軽減措置を講じたつもりのようだが、そもそも、赤字企業が多い中小・零細企業には税額控除の恩典はそれほど大きいとは思えない。定額減税においても、あらゆる企業が長期に亘り減税事務負担が生じるなどデメリットが目立つ。ましてや昨年10月から開始されたインボイス導入に伴う事務負担や、電子帳簿等保存法の電子取引の強制適用をめぐる複雑な経過措置を踏まえた対応は中小・零細企業に大きな困惑をもたらしている。国民のためと云いつつ、国民に負担を強いているのが今の国の政策であるように思えてならない。


 令和5年度末の日本の姿は、株高・円安・低金利の三つの相場から読み取れるのであるが、真の原因は少産多死社会の道を突き進む「国の老い」にあることを見逃してはならないだろう。国や会社が成長できる根本は、社会基盤を支える世代が末広がり存在することに他ならない。正ピラミッド型の姿である。この実現を政治は目標にすべきである。

 

夢喪失社会はご免被りたいものだ!

  2024年1月1日元旦。突如として能登半島地方をM7.6、最大震度7の大地震が襲った。

 

地震発生から1ヶ月。1月30日現在で災害関連死を含む死者の数は238人にのぼり、今なお多くの人々が厳寒の地で避難を強いられている。激しい地割れや崖崩れによる道路水道等のインフラ網の寸断。海底隆起を伴う津波と漁港破壊は更に復興を困難なものにしている。

 

  省みれば、平成には阪神淡路大震災・東日本大震災と原発事故・熊本大地震など歴史に残る自然災害が相次いだが、まさか令和の時代6年目を迎えた正月元旦にこのような大地震が起きるとは夢想だにしなかったことである。翌2日には救援物資を積んだ海上保安庁機と日本航空機が羽田空港の滑走路で衝突炎上事故を起し、あわやの大惨事となるところであっが、幸いにも日航機の乗客全員が「奇跡の脱出」に成功したため、不幸中の幸いと胸を撫で降ろすことができた。

 

  海の向こうでは理不尽な戦争による殺戮が今なお続いている。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ地区侵攻がもたらす人道的悲劇は見るにも聞くにも耐えがたい感情を禁じ得ない。かかる混乱のさなか、国内政治は、パーティ-券の裏金問題が露呈し、自民党の派閥を巡る「金と人事」へと問題が飛び火し、大きな政局に発展しつつある。

 

  かかる混乱の中で、来年度予算案を審議する重要な通常国会を迎えることになった。しかしながらこの政治資金を巡る疑惑は、政治家がいかに自分や身内に甘く、他人に厳しいかを思い知らされた気がする。法律をつくる者が法律を守らないという、かかる政治家のご都合主義と不条理な振る舞いには多くの国民が憤りを感じている事であろう。


  正直な話、今年は初夢を見るどころではないというのが偽らざる国民感情であるように思う。しかしながら、この先どんな経済的混乱や政治的茶番劇を見せつけられようとも、夢なき社会、夢喪失社会だけはご免被りたいと思う。


 地震・風水害・戦争・政治不信・物価高等々の課題てんこ盛りのこんな時だからこそ、先人の教に耳を傾けてみたい。

今年は新円切り換えの年である。長年お世話になった1万円札の顔は、7月から福沢諭吉から渋沢栄一に交代する。
この渋沢栄一翁が世に残した「夢七訓」を心静かに黙読し、今年1年に臨みたいと思う。
         
         夢七訓
      夢なき者は 理想なし                               
            理想なき者は 信念なし
      信念なき者は 計画なし
            計画なき者は 実行なし
      実行なき者は 成果なし
            成果なき者は 幸福なし
            故に幸福を求める者は 
           夢なかるべからず

今年も様々なことが起きるだろうが、決して夢を喪失する社会にしてはなるまい。
 

2023年(令和5年)もいよいよ大詰め! わずか1年、されど1年!

 昔から11月は「霜月」と呼ばれるが、いよいよもうすぐ12月の「師走」を迎えようとしている。今年を省みると様々なことが脳裏をかすめていく。徒然なるがままに、今年の出来事に思いを馳せてみた。
 今年はとりわけ夏の暑さ、即ち猛暑が印象に残った。夏日は11月まで続き、秋の訪れを感じる暇がなかったように思う。この異常気象が今年1年で終わってくれれば良いが、これが来年も発現するとなると大変である。日本の「四季」が文字通り喪失し、秋のない「三季」になりかねない。最悪の場合は、夏と冬の「二季」になってしまう懸念すら覚える。来年こそは「秋の紅葉」を堪能したいものである。
 今年は、世界第2位の経済大国たる中国経済の低迷ぶりも目につくようになった。同国の不動産大手・恒大集団や碧桂園等の相次ぐデフォルト報道。若者の失業率が本年6月時点で21.3%に達しているとの報道が目についた。
 経済成長を示すGDPも5%ラインを軸に低迷をかこっている。人口13億人を擁する中国の出生数も1000万人を割り込み、いわゆる「未富先老」の様相が露わになりつつある。今後の中国経済の動向は中長期的には日本経済にも負の影響を及ぼすであろうから、注目せざる得ないであろう。

 

 米国やEU各国では、ウクライナ戦争の影響を受けてインフレが進行し、それを抑え込むために各国の中央銀行は金利を急激に引上げた。その結果、マイナス金利下の我が国では、為替市場で急激な円相場の下落を招き、結果として「輸入物価インフレ」を引き起こし、資源や食料の輸入物価が軒並み上昇した。ひと頃のウッドショックやアイアンショックよりも国民生活に与える影響度はるかに大きく、岸田政権も対策が後手に回り、慌てて減税を打ち出して支持率を下げる結果を招いている。これに加えて、先月突如として勃発したハマスとイスラエルとの軍事衝突の影響で、昭和の石油ショックを想起させる「油断の危機」に直面する事態となり、エネルギー価格の動向は今後も目が離せない情勢である。


 その他の国内の出来事を省みると、まずは10月からスタートした消費税のインボイス制度が挙げられる。平成元年にスタートした消費税はEU諸国のインボイス方式ではなく、長らく帳簿方式を採用してきた。軽減税率導入を契機としてインボイス制度が本年からスタートしたのである。今後、企業の大小を問わずインボイス制度が適用され、思わぬ事務負担や免税事業者の取引排除などの混乱が予想される。特に免税事業者には副業解禁に伴ううサラリーマンが多い。その殆どが売上規模1千万円以下の層が多数を占めるので、課税事業者になることによる消費税の納税義務の発生による混乱が予想される。

 

 年明けからは改正電帳法に伴う電子取引データの保存義務が待ち受けている。多くの中小企業者はこれに未対応であり、改正内容を知らない事業者も多い。混乱は避けれまい。贈与税改正でも3年以内加算制度が今年で終了し、来年1月1日からの贈与から7年以内加算が適用される。更に110万円までの贈与は持戻し加算なしという「新相続税精算課税制度」もスタートする。生前贈与対策も新たなフェーズに突入することになろう。
新NISAも来年1月1日からスタートする。国内金利も今年後半から上昇し、いよいよ金利のある時代が到来する雲行きである。

 

さて、こうして振り返ってみると、見過ごせない色々な事が身の回りで起こっていることが分る。

わずか1年、されど1年である。

 

世界はこのまま暗闇の中に突入してしまうのだろうか?

10月7日、パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃が勃発した。寝耳に水の事態に信じられない思いで、各局のニュース番組を次々と視聴して事態の把握に必死になったものである。2022年⒉月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻とその後の両国の戦争状態に関心を引きつけられていた最中であったので、まさかという衝撃と底知れぬ危機感を抱かざるを得なかった。発生からこの一ヶ月、ガザ地区とイスラエルでは合わせて1万人前後の犠牲者を出している。


 ウクライナ戦争では、それと同じような事態が、この東アジア、とりわけ南シナ海や台湾海峡で引き起こされるかも知れない危機感を想起させたが、パレスチナのイスラム組織ハマスとイスラエルの今回の衝突は、偶発的な事件として片付けられず、事態の深刻化が懸念される。特に、ハマスを支援するレバノンのイスラム組織ヒズボラ、さらにはこの2つのイスラム組織を支援するイランやその他の中東の国々。加えて、ロシアや中国も虎視眈々とこの事態に乗じて中東諸国を自陣営に引き込もうとする姿勢が垣間見える。


 他方でイスラエルを強く支援する米国や英国を含むヨーロッパの主要国も水面化で事態の掌握と抑制に動き出している気配を感じるが、イスラエルの自衛権は否定できないとして一定の理解と支援の姿勢を強めている。かかる外部勢力の動向もさることながら、ハマスとイスラエル双方が納得のいく解決策を見い出すことは極めて困難と思われる。双方の武力衝突の現実は、日に日にエスカレートしている様子が窺える。今後の事態の進展次第では、一気に地域諸国を巻き込む大きな戦争へと発展しかねない。


 特に、イスラエルを含むこの地域は、長年にわたる宗教対立を続けていて、中東の火薬庫と称されて久しい地域である。もし仮に、イスラエルとイランが正面から対立するようなことになれば、日本にとっては最大級の危機に追い込まれる。昭和の時代の「油断」の事態の再来を招きかねないのだ。東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、日本の主要なエネルギー源は石油である。その石油は92.5%が中東地域からの輸入に依存している。この地域全体に戦禍が拡大すれば、日本の経済は息の根を止められてしまう程の危機的事態に陥ることも想定されるのだ。まさに20世紀において数次わたって訪れた石油危機の再来を覚悟しなけばならない。
 そうなればまさに悪夢と呼ぶ他はない。ウクライナに続き、今般のハマスとイスラエルの軍事衝突は、世界中を黒い雲で覆いかねない事態である。世界はこのまま暗闇の中に突入していまうのだろうか?18世紀から19世紀にかけての産業革命時代の植民地主義と民族圧迫。それに続く20世紀は大戦争の時代(第一次世界大戦・第二次世界大戦・核武装を競い合った東西冷戦時代)。21世紀に入り四分の一世紀を迎えんとする今日、人類は平和共存の道を歩めるのか、はたまた時間を巻き戻すように核戦争をも辞さないとする政治指導者によって人類破滅の大戦争の道に踏み込もうとしているのか?大きな岐路に立たされているように思える。 

 

戦争が愚かなことは誰しも疑う余地がない。それにもかかわらず人類史においては、戦争が常に存在していた。この歴史の事実(真実)に今を生きる現代人は何を学ばなければならないのか?

 今を生きる一人ひとりが立ち止まって真剣に考える時ではなかろうか。

いよいよ始まる「インボイス制度開始」に思う事!

 いよいよ本年10月1日から改正消費税法の「適格請求書等保存方式制度(インボイス制度)」が施行される。世間の反応は「インボイス」て何に?・・・などと、聞き慣れない言葉に戸惑ているようである。

 

  インボイス制度とは何か?その回答は、要するに、事業者自らが取引上発生する消費税に関する正確な情報を、インボイスという書面(データ含む。)を交付する事で、取引相手先に確実に伝達すると同時に、自己が消費税の納税義務者であることを証明する仕組みの事である。インボイスには事業者が交付する請求書や領収書・レシートなどがあるが、10月1日以降はこれらの書面を発行する際には税務署に登録申請して通知を受けたインボイス番号(T+13桁の数字で構成)を記載する事が求められる。登録番号の記載のない請求書等はインボイスとは認めらず、その結果、交付を受けた相手側(買手)が消費税課税事業者である場合、原則、当該相手側の事業者は、自己の消費税の申告納税額の計算上、負担した消費税を控除(「仕入税額控除」という。)できなくなり、その分消費税の納税額が増加することになる。買手である相手側にとっては、インボイスを受け取ることは、まさに10%分の消費税の控除が受けられる金券となるのである。

 

  インボイス制度の問題点も広く認識されている。最大の焦点は金券視されるインボイスの発行事業者となって買手にインボイスを交付できるようにするか否かの決断だ。普通に考えるならば、10%の金券を発行できる方が良いと思うが、その反面、インボイス発行事業者になると年商が小さくとも原則消費税の納税義務が発生する。特に今まで前々年の課税売上高が1千万円以下の事業者は消費税が納税免税だったので、金券発行による取引面でのメリットと消費税の税負担発生のデメリットを考慮しなければならず、判断に苦慮している様子が窺える。国税庁の本年8月末現在でのインボイス登録状況によると、法人事業者では、全体約287万社の内、270.5万社(73.2%)がインボイス登録申請を済ませているのに対して、個人事業者534万者(令和3年分不動産所得者・事業所得者)の内、登録申請済みの事業者は142.5万者(26.6%)に留まっている。特に免税事業者419万者においては1割程度の登録申請しかなく、フリーランスやIT関連の副業者、デザイナーや翻訳業、声優・タレントその他多くの零細事業者の戸惑いが透けて見えてくる。


 政府はこれら小規模事業者に対していくつかの優遇措置を打ち出している。免税事業者からインボイス番号の記載のない請求書等を受領した場合にも買手に制度開始から3年間は80%、その後の3年間は50%の「仕入税額控除」を認める経過措置や、従来、免税事業者であるはずの者がインボイス登録したことで納税義務者となることに配慮し、かかる事業者の納税額を売上消費税の2割とする「2割特例」を制度開始3年間に属する課税期間に限って適用する経過措置を講じた。

  また、前々年の課税売上高1億円以下の課税事業者(前年の特定期間の課税売上高5千万円以下の課税事業者を含む。)には3年間に限って、一回の取引額が税込1万円未満の取引についてはインボイスの保存を不要とする事務負担軽減措置も講じている。

 

  が?しかしである。いずれの措置も期間限定であり、制度導入を実現するための目先優先の弥縫策という印象が強い。
インボイスの交付と保存という法的措置が施行されることに伴う事業者の事務負担は、法人・個人の事業者を問わず事務量増加と処理コスト増は確実に発生する。

 

人手不足と物価高に苦しむ多くの中小企業にとってインボイス制度は、鬼門になりかねない。
 

「地球沸騰化」を想起させる今夏の異常気象!

   気象庁は今月28日に開催した「異常気象分析検討会」において、「・・・歴代と比較しても圧倒的な高温で異常気象だといえる。」と今年の夏を結論づけた。
グテーレス国連事務総長が今月4日に、地球の気候変動を「地球温暖化から地球沸騰化の時代が到来した」と警告を発したばかりだが、まさに今年の夏、とりわけ7月以降の猛暑は地球沸騰化を彷彿させる暑さとなった。この異常な高温現象は日本に限らず地球規模で発生しており、多数の犠牲者を出したハワイ・マウイ島の山火事や、カナダやスペイン、南米、アフリカなど広範囲で山火事が発生している。


 気象庁によると、日本の猛暑の要因を次のように指摘している。7月後半から列島の高度上空を流れるジェット気流が平年より北に流れたため、その下の太平洋高気圧の張り出しが強くなり、その結果、列島全体が暖かい高気圧に覆われ、全国的に気温が上昇した。更に迷走台風が列島周辺に居座り続けたため、長期間にわたり高温多湿の空気が列島全体に吹き込み連日の猛暑となる。加えて日本海側では山を越えて吹き下ろす台風の風が乾燥する「フェーン現象」に見舞われ、高温酷暑に襲われてしまったという。

 

  また、太平洋側の三陸沖では海洋内部まで水温が顕著に高くなり、北日本周辺の海面水温が記録的に高くなった。そのため沖縄から本州・北海道に至る広い海域で暖かい海水に囲まれてしまった。まさに列島全体がサウナ風呂に入ったような状態だ。気象庁の統計記録125年間で最も暑い夏になることは確実だという。どうやらこれが今年の日本の夏ようである。


 ところで、今年の猛暑・酷暑は果たして異常気象で片付けていいものだろうか?来年もそのまた次の年も異常気象と称される猛暑・酷暑に見舞われないだろうか?仮にこの猛暑が連年続くとなれば、もはや「異常気象」という認識は間違いということになる。仮に地球沸騰化の始まりだとすれば、今年の酷暑は異常気象でなく沸騰化時代の正常気象ということになる。まさにこの点に地球環境の深刻さを垣間見る思いがするのである。


 夏の暑さを表す言葉に、「夏日」「真夏日」「猛暑日」「熱帯夜」という気象用語がある。
夏日は、日中の最高気温が25℃以上の日、真夏日は30℃以上の日、猛暑日は35℃以上の日をいう。熱帯夜は、夜中の最低気温が25℃以上の寝苦しい夜のこと。


  記録によると1980年代後半以前の夏日は年間50日前後のところ、近年は60日前後に増加し、猛暑日ともなると1970年前半以前は年間5日前後のところ、現在は20日前後に増加しているという。東京の熱帯夜に及んでは1960年代は年間9日前後だったものが最近は40日を超えるまでに増加している。もはやクーラーなしには東京の夜は寝付けない暑さである。今、気象関係者は「熱帯夜」に代わる新用語を思案中という。「超熱帯夜」、「スーパー熱帯夜」「沸騰夜」等々まだピントこない用語しか浮かんでいないようだが、できれば新用語がこれ以上増えないで済むことを心底願いたいものである。


 人類の歴史が温暖化を惹起したとも云われている。石器・鉄器時代に火を制し道具を手にした人類は森林を開拓して農耕を始める。食糧増産は人口増と定住化をもたらし、集落・町・都市国家を生み出す。産業革命は大量生産・大量物流を実現し、化石燃料を大量消費した。現在はデジタル革命が進展し紙から電磁的記録へ。再生可能エネルギーや水素等の新エネルギ-に期待がかかるが、一方で戦争や山火事でCO2排出の抑制はままならない。人類の危機だという切迫感も薄弱だ。

 

 人類が「ゆで蛙」にならなければいいのだが!
 

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