7対1の奇妙な予測値! | 経営の勘どころ・つかみどころ

7対1の奇妙な予測値!

 7対1という奇妙な予測値が相次いで報道された。一つは増え続ける空や家問題である。

総務省が5月に発表した情報によると全国の空き家が2023年10月1日時点で900万戸に達したという。全住宅数6500万戸に占める空き家の割合は13.8%に達し、つまり全住宅戸数の7戸に1戸が空き家ということになる。30年前の1993年の空き家率が9.8%であったというから率にして3.7%も増加したことになる。今後も空き家は増え続けると予想されているので事態はますます深刻になりつつある。空き屋の発生源を用途別に見ると、①賃貸用が443万戸、②用途不明が385万戸、③別荘用が38万戸、④売却用が33万戸となっており、この中でも特に問題なのが②の用途不明の空き家である。

 その発生原因は、単身高齢者の死亡や介護施設への入居によって空き家になってしまうことである。高齢社会の陰を垣間見ることができる。


 もう一つの7対1の予測値が、厚生労働省が同時期に公表した要介護人口の将来推計値である。同省が公表したところによると、2030年には、高齢者人口の14%が要介護になると推計している。実に高齢者の7人に1人が介護が必要になると予測しているのである。これに伴い、社会的には介護に必要な人材不足を引き起こし、仕事と介護の両立を強いられるビジネスケアラーが急増すると予測している。介護のためにやむなく職場離脱することに伴う経済損失は実に9兆円に及ぶと推定している。

 同時期に公表された「空き家」と「要介護人口」の比率がいずれ7対1という予測値の一致は、何かを示唆しているようで実に奇妙である。しかしながら、この奇妙な割合の一致こそが、若年人口の減少と高齢人口の増加が同時に進行している日本社会の「老化」を具体的な数値によって示唆しているものと解釈すべきであろう。
 
 まさにその意味において、「7対1」は日本の社会がこのまま少産多死社会に突入したまま老いてしまうのか、出生率向上と仕事と介護の両立が可能な社会を本気で目指していくのかを決める分岐点になる重要指標(KPI=Key Performance Indicator)というべきでろう。政治家もお役所も経営者も働く人たちも等しく「7対1」を重要な社会指標として位置づけ、これを起点として、いかにして活気ある数値に変換するかに英知と努力を集結させていけるなられば、ある程度の時間は必要としても、やがて「8対1」に、「9対1」へとKPIを変化させることも可能であると思うのである。
 7対1を今の日本の共通した社会的指標として受けとめたうえで、この指標の改善を通じて必ずや人々の夢を繋げる「未来社会」を手作りで構築できるとKPIであると信じたいものである。
 
 円安だ、円高だ、金利が上がる下がるなどは社会の未来構築には何の関係もない単なる一時の経済指標に過ぎない。今我々日本人が必要とするのは夢ある社会形成に欠かせない人的資源の再構築だろう。7対1の指標の方が、1ドル150円だとか、長期金利が1%だとかの指標よりも重要である。もっと強調するならば、「7対1」は、付加価値の総和としての「GDP」よりも、はるかに重要な社会的KPIであると思うのである。