2024年3月29日。令和5年度・年度末の日本の姿とは! | 経営の勘どころ・つかみどころ

2024年3月29日。令和5年度・年度末の日本の姿とは!

 令和5年度が3月29日実質的に幕を閉じた。自民党の裏金問題が最大の焦点となった国会だったが、呆気ないほど平穏に次年度予算112兆円が参議院を通過成立した。コストインフレに伴う物価高と賃上げを巡る春闘相場も政労使がまるで三位一体になったような形で軒並み満額回答が続出した。高度経済成長期の労使が激しく対決した春闘の姿は今はない。これでは野党も「出る幕なし」である。裏金問題しか攻め手がないのも頷ける。


 日経平均も29日に終値40,369円44銭をつけた。バブルの狂乱相場で付けた38,915円87銭を1,453円57銭も上回る相場だが、国民の間には高揚感はない。実に不思議な現象である。都内の新築マンションの平均販売価格も1億円超となって久しい。片や為替相場を見ると、1ドル151円33銭と一段と円安傾向で幕を閉じた。この円安水準は、1985年(39年前)のプラザ合意後に付けた152円台の相場と同水準である。思い返せば、このプラザ合意を契機に日本はバブル経済へと突き進んで行ったのだが、マンション価格や株価はバブルピーク時を上回るが、為替相場はバブル経済の起点となった時期に先祖帰りしたようである。

 

  マンション価格や株価高騰は、中国の経済減速を嫌気した海外資金の逃避先として日本が受け皿になっているとの見方が根強い。決して日本の経済が過熱していると考えている人は皆無だろう。為替相場で円安が進んでいるのは、誰が見ても国内の金利水準の低さにあることは間違いない。日銀は3月の金融政策決定会合で2013年に導入されたマイナス金利政策に終止符を打った。併せてイールドカーブコントロール(長短金利操作)も止め、ETF(上場投信等)の市場買入れも停止した。物価2%と賃金上昇の相関関係を総合的に判断した措置というが、国債買入れはまだ続行し、かつ、長期金利も1%±0.5%を目途とする慎重姿勢は崩さなかった。その結果、米国の金利引き下げは当分ないと予想した市場関係者は安い円で資金調達してドルを買って高利回りの運用をするという円キャリー取引を安心して続けられるとの思惑から、円安は39年ぶりの水準まで売られているのが実態だろう。

  この円安で企業は輸入物価上昇圧力に晒され続け、悪性コストインフレと賃金コストの上昇・人手不足の三重苦を背負わされるリスクが高くなったようである。特に価格転嫁に苦しむ中小・零細企業の先行きは極めて厳しいものになると云わざるを得ない。


 政府は、賃上げ税制や定額減税で企業や国民の負担軽減措置を講じたつもりのようだが、そもそも、赤字企業が多い中小・零細企業には税額控除の恩典はそれほど大きいとは思えない。定額減税においても、あらゆる企業が長期に亘り減税事務負担が生じるなどデメリットが目立つ。ましてや昨年10月から開始されたインボイス導入に伴う事務負担や、電子帳簿等保存法の電子取引の強制適用をめぐる複雑な経過措置を踏まえた対応は中小・零細企業に大きな困惑をもたらしている。国民のためと云いつつ、国民に負担を強いているのが今の国の政策であるように思えてならない。


 令和5年度末の日本の姿は、株高・円安・低金利の三つの相場から読み取れるのであるが、真の原因は少産多死社会の道を突き進む「国の老い」にあることを見逃してはならないだろう。国や会社が成長できる根本は、社会基盤を支える世代が末広がり存在することに他ならない。正ピラミッド型の姿である。この実現を政治は目標にすべきである。