いよいよ始まる「インボイス制度開始」に思う事! | 経営の勘どころ・つかみどころ

いよいよ始まる「インボイス制度開始」に思う事!

 いよいよ本年10月1日から改正消費税法の「適格請求書等保存方式制度(インボイス制度)」が施行される。世間の反応は「インボイス」て何に?・・・などと、聞き慣れない言葉に戸惑ているようである。

 

  インボイス制度とは何か?その回答は、要するに、事業者自らが取引上発生する消費税に関する正確な情報を、インボイスという書面(データ含む。)を交付する事で、取引相手先に確実に伝達すると同時に、自己が消費税の納税義務者であることを証明する仕組みの事である。インボイスには事業者が交付する請求書や領収書・レシートなどがあるが、10月1日以降はこれらの書面を発行する際には税務署に登録申請して通知を受けたインボイス番号(T+13桁の数字で構成)を記載する事が求められる。登録番号の記載のない請求書等はインボイスとは認めらず、その結果、交付を受けた相手側(買手)が消費税課税事業者である場合、原則、当該相手側の事業者は、自己の消費税の申告納税額の計算上、負担した消費税を控除(「仕入税額控除」という。)できなくなり、その分消費税の納税額が増加することになる。買手である相手側にとっては、インボイスを受け取ることは、まさに10%分の消費税の控除が受けられる金券となるのである。

 

  インボイス制度の問題点も広く認識されている。最大の焦点は金券視されるインボイスの発行事業者となって買手にインボイスを交付できるようにするか否かの決断だ。普通に考えるならば、10%の金券を発行できる方が良いと思うが、その反面、インボイス発行事業者になると年商が小さくとも原則消費税の納税義務が発生する。特に今まで前々年の課税売上高が1千万円以下の事業者は消費税が納税免税だったので、金券発行による取引面でのメリットと消費税の税負担発生のデメリットを考慮しなければならず、判断に苦慮している様子が窺える。国税庁の本年8月末現在でのインボイス登録状況によると、法人事業者では、全体約287万社の内、270.5万社(73.2%)がインボイス登録申請を済ませているのに対して、個人事業者534万者(令和3年分不動産所得者・事業所得者)の内、登録申請済みの事業者は142.5万者(26.6%)に留まっている。特に免税事業者419万者においては1割程度の登録申請しかなく、フリーランスやIT関連の副業者、デザイナーや翻訳業、声優・タレントその他多くの零細事業者の戸惑いが透けて見えてくる。


 政府はこれら小規模事業者に対していくつかの優遇措置を打ち出している。免税事業者からインボイス番号の記載のない請求書等を受領した場合にも買手に制度開始から3年間は80%、その後の3年間は50%の「仕入税額控除」を認める経過措置や、従来、免税事業者であるはずの者がインボイス登録したことで納税義務者となることに配慮し、かかる事業者の納税額を売上消費税の2割とする「2割特例」を制度開始3年間に属する課税期間に限って適用する経過措置を講じた。

  また、前々年の課税売上高1億円以下の課税事業者(前年の特定期間の課税売上高5千万円以下の課税事業者を含む。)には3年間に限って、一回の取引額が税込1万円未満の取引についてはインボイスの保存を不要とする事務負担軽減措置も講じている。

 

  が?しかしである。いずれの措置も期間限定であり、制度導入を実現するための目先優先の弥縫策という印象が強い。
インボイスの交付と保存という法的措置が施行されることに伴う事業者の事務負担は、法人・個人の事業者を問わず事務量増加と処理コスト増は確実に発生する。

 

人手不足と物価高に苦しむ多くの中小企業にとってインボイス制度は、鬼門になりかねない。