音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~ -4ページ目

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

宮城県の仙台市で開催された、第9回仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門(公式サイトはこちら)。

もうとっくに終わっているけれど、私は結果を知らないので、今更ながら予選のネット配信を聴いてみた(こちらのサイト)。

ちなみに、第9回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第8回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)が終わって

ピアノ部門 予選 第1~3日

ピアノ部門 セミファイナル 第1日

ピアノ部門 セミファイナル 第2日

ピアノ部門 セミファイナル 第3日

ピアノ部門 ファイナル 第1日

ピアノ部門 ファイナル 第2日

ピアノ部門 ファイナル 第3日

ピアノ部門 まとめ

 

 

 

 

 

なお、以下の協奏曲は仙台フィルハーモニー管弦楽団及び山形交響楽団によるオーケストラ(指揮者なし)との共演である。

 

 

 

 

 

【課題曲】

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ト長調 op.27-5

モーツァルト:アダージョ ホ長調 K261

モーツァルト:ロンド ハ長調 K373

 

 

 

 

 

第1日 5月24日(土)

 

 

01 サミール・アグラワル Sameer AGRAWAL (アメリカ 2005年生まれ)

05 エリック・チェン Eric CHEN (アメリカ/台湾 2001年生まれ)

28 落合 真子 OCHIAI Mako (日本 2001年生まれ)

36 ユリアン・ヴァルダー Julian WALDER (オーストリア 2000年生まれ)

04 ツァオ・ジャーチェン CAO Jiachen (中国 2006年生まれ)

03 ザカリー・ブランドン Zachary BRANDON (アメリカ 1998年生まれ)

29 パク・ソヒョン PARK Seohyeon (韓国 2005年生まれ)

18 イ・ジユン LEE Jiyoon (韓国 1999年生まれ)

12 チン・イェヨン・ジェニー JIN Yeyeong Jenny (韓国 2003年生まれ)

32 ヴィクラム・フランチェスコ・セドーナ Vikram Francesco SEDONA (イタリア 2000年生まれ)

15 キム・ハラム KIM Haram (韓国 1998年生まれ)

30 パク・ウォンミン PARK Wonmin (韓国 2004年生まれ)

16 キム・ヒョンジ KIM Hyeonji (韓国 2000年生まれ)

 

 

 

 

 

第2日 5月25日(日)

 

 

26 ムン・ボハ MOON Boha (韓国 2006年生まれ)

40 吉本 梨乃 YOSHIMOTO Rino (日本 2003年生まれ)

27 ミヒャエル・ノーデル Michael NODEL (ドイツ/アメリカ 2002年生まれ)

10 ヤニス・グリソー Yanis GRISÓ (ルクセンブルク 2003年生まれ)

13 ジュリア・ジョーンズ Julia JONES (アメリカ 2004年生まれ)

24 松木 翔太郎 MATSUKI Shotaro (日本 2007年生まれ)

35 ツァイ・エリック TSAI Eric (台湾/アメリカ 1997年生まれ)

09 ジナ・ケイコ・フリージケ Gina Keiko FRIESICKE (ドイツ 2002年生まれ)

39 ユン・ヘウォン YOON Haewon (韓国 2005年生まれ)

34 シーバース・エマニュエル SIEVERS Emmanuelle (日本/アメリカ 2002年生まれ)

19 レイ・ハイルイ LEI Hairui (中国 2005年生まれ)

 

 

 

 

 

第3日 5月26日(月)

 

 

33 シン・ジェイク・ドンヨン SHIM Jake Dongyoung (韓国 2001年生まれ)

21 リュウ・ティェンヨウ LIU Tianyou (中国 2009年生まれ)

07 ヴィルモシュ・チコシュ Vilmos CSIKOS (ベルギー/ハンガリー 1996年生まれ)

41 ジャン・アオジュ ZHANG Aozhe (中国 2008年生まれ)

11 フィオーナ・キサラ・イヨク Fiona Kisara IYOKU (アメリカ/日本 2007年生まれ)

37 ワン・ダンダン・ジンフェイ WANG Dandan Jingfei (中国 2005年生まれ)

25 リアン・マガウアン Leanne MCGOWAN (オーストラリア 2001年生まれ)

17 コー・ドンフィ KO Donghwi (韓国 1997年生まれ)

38 ウー・シーユエ WU Xiyue (中国 1997年生まれ)

23 的場 桃 MATOBA Momo (日本 2007年生まれ)

22 ズィー・ヤン・ロウ Zi Yang LOW (マレーシア 2004年生まれ)

20 リ・ジンジュ LI Jinzhu (中国 2007年生まれ)

 

 

 

 

 

まだざっとしか聴けていないが、第1~3日を併せて、セミファイナルに進める人数である12人を選ぶとすると

 

第1日

12 チン・イェヨン・ジェニー JIN Yeyeong Jenny (韓国 2003年生まれ)

15 キム・ハラム KIM Haram (韓国 1998年生まれ)

16 キム・ヒョンジ KIM Hyeonji (韓国 2000年生まれ)

 

第2日

26 ムン・ボハ MOON Boha (韓国 2006年生まれ)

40 吉本 梨乃 YOSHIMOTO Rino (日本 2003年生まれ)

10 ヤニス・グリソー Yanis GRISÓ (ルクセンブルク 2003年生まれ)

13 ジュリア・ジョーンズ Julia JONES (アメリカ 2004年生まれ)

24 松木 翔太郎 MATSUKI Shotaro (日本 2007年生まれ)

 

第3日

07 ヴィルモシュ・チコシュ Vilmos CSIKOS (ベルギー/ハンガリー 1996年生まれ)

41 ジャン・アオジュ ZHANG Aozhe (中国 2008年生まれ)

17 コー・ドンフィ KO Donghwi (韓国 1997年生まれ)

23 的場 桃 MATOBA Momo (日本 2007年生まれ)

 

あたりになる。

 

 

 

 

 

さて、予選の実際の結果は以下のようになった。

 

 

【セミファイナル進出者】

 

第1日

04 ツァオ・ジャーチェン CAO Jiachen (中国 2006年生まれ)

29 パク・ソヒョン PARK Seohyeon (韓国 2005年生まれ)

15 キム・ハラム KIM Haram (韓国 1998年生まれ) ○

16 キム・ヒョンジ KIM Hyeonji (韓国 2000年生まれ) ○

 

第2日

26 ムン・ボハ MOON Boha (韓国 2006年生まれ) ○

19 レイ・ハイルイ LEI Hairui (中国 2005年生まれ)

 

第3日

33 シン・ジェイク・ドンヨン SHIM Jake Dongyoung (韓国 2001年生まれ)

07 ヴィルモシュ・チコシュ Vilmos CSIKOS (ベルギー/ハンガリー 1996年生まれ) ○

41 ジャン・アオジュ ZHANG Aozhe (中国 2008年生まれ) ○

11 フィオーナ・キサラ・イヨク Fiona Kisara IYOKU (アメリカ/日本 2007年生まれ)

23 的場 桃 MATOBA Momo (日本 2007年生まれ) ○

20 リ・ジンジュ LI Jinzhu (中国 2007年生まれ)

 

 

なお、○をつけたのは私がセミファイナルに残ってほしかった12人の中の人である。

12人中6人。

半分しか当たらなかった。

前々回大会(その記事はこちらなど)で第6位に入賞したコー・ドンフィは、なんと予選敗退。

なかなか良い音を出していると思ったのだが。

前回大会で爽やかな音色が気に入ったヤニス・グリソー(その記事はこちら)も、また落ちてしまった。

今大会は、驚異の超高速左手ピッツィカートを披露したキム・ハラムをはじめ、技巧面に強みのある韓国や中国の奏者が多く、そういうタイプの人が高く評価されている気がする。

そんな中、技巧・音の両面で優れた実力者であるジャン・アオジュが最有力優勝候補だと感じたのだが、どうだろうか。

日本の的場桃やフィオーナ・キサラ・イヨクもがんばってほしいところ(といっても、とっくに全て終わっているのだけれど、結果を知ることなく全部聴き通してみたいのでお許しください)。

 

 


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宮城県の仙台市で開催された、第9回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門が終わった(公式サイトはこちら)。

これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)、感想を書いてきた。

とりわけ印象深かったピアニストについて、備忘録的に記載しておきたい。

ちなみに、第9回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第8回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)が終わって

ピアノ部門 予選 第1~3日

ピアノ部門 セミファイナル 第1日

ピアノ部門 セミファイナル 第2日

ピアノ部門 セミファイナル 第3日

ピアノ部門 ファイナル 第1日

ピアノ部門 ファイナル 第2日

ピアノ部門 ファイナル 第3日

 

 

 

 

 

36 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

 

今大会の第5位。

明るく晴れやかなロマン性を持ったピアニストで、音が力強く、リストを得意とする。

いわゆるヴィルトゥオーゾ・タイプだが、あまりガツガツしたり煽ったりせず、丁寧で品が良いため、ロマン派の曲だけでなくハイドンやモーツァルトもサマになる。

そしてリストの協奏曲第1番は彼の性質にぴったりで、今後も持ち曲となりそう。

 

 

42 エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

 

今大会の優勝者。

ロシアの華やいだ美音を持ったピアニストで、音が軽やかであり、モーツァルトを得意とする。

セミファイナルおよびファイナルでモーツァルトが課題曲となった本大会は、彼女にぴったりだったと言えるだろう。

のみならず、ファイナリストたちの中で一番ミスが少なかったのも彼女であり、仕上げ力に優れている。

 

 

14 キム・ドンジュ KIM Dongju (韓国 2004年生まれ)

 

セミファイナルで選出されなかった人から一人選ぶなら彼か。

洗練されたスマート系技巧派ピアニストで、クセやデフォルメのない端正な音楽性を持つ。

チョ・ソンジンの流れを汲む、と言ってもいいかもしれない。

彼が今回弾いたハイドンのソナタ第42番、ショパンのスケルツォ第3番、ベートーヴェンのソナタ第31番は、それぞれの曲における最高クラスの演奏だと思う。

そのうちに著名な国際コンクールで良い結果を残しそう。

なお、セミファイナルで選出されなかった人でもう一人、ジョシュア・ハン Joshua HAN (オーストラリア 2002年生まれ)もやはり洗練されたスマート系技巧派ピアニストで、これまた最高クラスの演奏によるリストのパガニーニ大練習曲第6番、バルトークのエチュード、ショパンのアンダンテ・スピアナートが印象に残った。

 

 

20 アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

 

今大会の第2位。

重厚で温かみのある音の持ち主。

パワーもあるが、いわゆる爆音系ピアニストとは違い、ペダリングはどちらかというと薄めで、明瞭性を重視するタイプ。

そのため、ロシアものだけでなく、モーツァルトを得意とする。

セミファイナルおよびファイナルでモーツァルトが課題曲となった本大会は、そんな彼にぴったりだったといえるだろう。

ロマン的すぎない、朗らかなモーツァルトを弾ける人。

 

 

10 ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

 

今大会の第4位。

軽快でくっきりした独墺系の音の持ち主。

モーツァルトを弾かせれば、これぞ本場といった様式感。

セミファイナルおよびファイナルでモーツァルトが課題曲となった本大会は、そんな彼にぴったりだったといえるだろう。

また、端正のようでいて無鉄砲なところがあって、その勢いでラフマニノフなども意外に良い味出している。

 

 

29 ヤン・ニコヴィッチ Jan NIKOVICH (クロアチア 2001年生まれ)

 

今大会の第6位。

他のピアニストより一段階も二段階も大きな、存在感のある強靱な音を持つ。

フレージングの息が長く、音楽のスケールが大きい。

21世紀生まれの彼だが、どこか20世紀の香りがする。

こういう人は、現代のせせこましいネット社会においては、もうクロアチアのような国にしか現れないのかもしれない。

チャイコフスキーの協奏曲第1番、両手二重オクターヴの迫力は、かのリヒテルをさえ思わせる(リヒテルほどの底知れぬ巨大さはなく、もう少し素朴な感じだが)。

この曲の最近の名演というと、Kevin CHENとAngel Stanislav WANGが印象に残っているが(その記事はこちら)、今回のJan NIKOVICHの演奏もこれらに並べていいように思った(技巧と洗練のKevin CHEN、音圧と迫力のJan NIKOVICH、それらのバランスの取れたAngel Stanislav WANG、といったところか)。

 

 

40 辻本 莉果子 TSUJIMOTO Rikako (日本 1998年生まれ)

 

予選で選出されなかった人から一人選ぶなら彼女か。

切れ味鋭い、野性味のあるスカルラッティやプロコフィエフを弾く。

ハイドンのソナタ第6番は、浜コンでの鈴木愛美の伸びやかで詩的な名演が記憶に新しいが(その記事はこちらなど)、今回の辻本莉果子のシャープで直情的な演奏もまた別の魅力がある。

なお、予選で選出されなかった人でもう一人、大山 桃暖 OYAMA Modan (日本 2005年生まれ)は対照的に爽やかな優しい演奏が印象に残った。

 

 

01 天野 薫 AMANO Kaoru (日本 2013年生まれ)

 

今大会の第3位。

また、私の中での個人的な今大会のMVP。

たいていのピアニストは大学生か高校生の間に音楽的に成熟していくものだと思うが、中学生でも早いと感じるところを、彼女の場合は小学生にしてすでにほぼ完成されている。

その意味では小林愛実と同じ、神童タイプである。

2人ともロマン的なピアニストだが、特色としては違いがあり、小林愛実が甘美な音楽性を持つのに対し、天野薫は清澄な音楽性を持つ。

前者をコルトーにたとえるとすると、後者はリパッティにたとえられようか。

天野薫の音は、色とりどりというよりは無色透明で澄んでいて、その透明度があまり高いが故に、無色であるとかえって青みがかって見える水晶体のごとく、ほのかに憂いを帯びて聴こえる。

彼女のバッハやモーツァルトが、ことさらに悲しみを表現するのでないのに、陽気よりは哀切をもって聴き手の心に迫るのは、そういうわけなのだと思った。

矢代秋雄の協奏曲も見事だったが、彼女のシューマンやグリーグの協奏曲がどう響くのか、いつか聴いてみたいものである。

彼女は今後様々なコンクールやコンサートで間違いなく活躍するだろうから、機会もきっとあろう。

 

 

 

 

 

以上のようなピアニストが、印象に残った。

 

 

先日のエリザベートコンクール(その記事はこちらなど)の1次予選では、著名な大物コンテスタントが勢揃いだった一方、新しい才能はそれほど見られなかった。

今回の仙台コンクールの予選では、大物があまりいなかった一方、まだ名の知られていない若き才能がたくさんいた。

大物と新人、両者とも驚くほど粒ぞろいだったのが先日の浜コン(その記事はこちらなど)の1次予選であり、仙台コンクールはまだそこまでの域には達していないものの、名高いエリザベートコンクールにも引けを取らないのではないかと思われるほどの、相当なレベルの予選になってきているように感じた(ファイナルはさすがにエリザベートコンクールに軍配が上がるように思うが)。

仙台コンクールは新人の登竜門としての地位を、かなりのところ確立したのではないか。

 

 

そして、それは仙台コンクールが低年齢の制限を設定していないことにもよるだろう。

こうした一定の地位を確立した国際ピアノコンクールで、小学生が入賞するなどということは、通常あり得ない。

前代未聞のことが起こったのも、仙台コンクールが幅広く門戸を開いている証左である。

あまりにも若い段階で国際コンクールに出場することには賛否あるのかもしれないが、指導者でなく単なる一鑑賞者としては、才能や将来性の発展につながる良い経験だと私は思う。

 

 


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宮城県の仙台市で開催されている、第9回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

6月28日は、ファイナルの第3日、ついに最終日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第9回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第8回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)が終わって

ピアノ部門 予選 第1~3日

ピアノ部門 セミファイナル 第1日

ピアノ部門 セミファイナル 第2日

ピアノ部門 セミファイナル 第3日

ピアノ部門 ファイナル 第1日

ピアノ部門 ファイナル 第2日

 

 

 

 

 

なお、以下の協奏曲は高関健指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。

 

 

 

 

 

第3日 6月28日(土)

 

 

36 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ニ短調 K466

 

ピアノはスタインウェイ。

セミファイナル同様、ロマン的に解釈したモーツァルトで、短調の曲でもありいっそうサマになっている。

終楽章コーダ、最後の最後でここぞとばかりに装飾をたくさんつけるのも楽しい。

 

 

42 エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ハ長調 K467

 

ピアノはカワイ。

こちらもセミファイナル同様、ロシアの音が美しい。

軽やかな音質もモーツァルトに合っているが、アレクサンドル・クリチコや天野薫の同曲演奏と比べると、音階音型などでペダルを少し濁らせがちではある(それほどは気にならないが)。

 

 

29 ヤン・ニコヴィッチ Jan NIKOVICH (クロアチア 2001年生まれ)

 

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23

 

ピアノはスタインウェイ。

この強靱な音!

音の存在感だけで見るならば、迷うことなく彼が優勝だろう。

この曲にふさわしいスラヴ風の連綿たる情緒もある。

技巧的には完全に洗練されていると言えないのは確かで、チャイコフスキーコンクールでのAngel Stanislav WANGくらい鮮やかなら文句なしだったが(その記事はこちらなど)、それでもここまで弾けていたらまずまず許容範囲か。

 

 

01 天野 薫 AMANO Kaoru (日本 2013年生まれ)

 

矢代秋雄:ピアノ協奏曲

 

ピアノはヤマハ。

この難解な曲を小学生で弾きこなすだけでもものすごい。

終楽章など技巧的にも大変鮮やか。

ただ、ヤン・ニコヴィッチを聴いた後だけに、音圧が弱く感じられてしまうのも確か。

けっこうなパワーを要する曲であり、どちらかというとリリシズムで勝負する曲のほうが彼女には合っていたかもしれない。

 

 

 

 

 

そんなわけで、ファイナル第1~3日の6人の演奏を気に入った順に並べると

 

1. 29 ヤン・ニコヴィッチ Jan NIKOVICH (クロアチア 2001年生まれ)

2. 36 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

3. 20 アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

4. 01 天野 薫 AMANO Kaoru (日本 2013年生まれ)

5. 10 ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

6. 42 エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

 

といったところか。

私の中ではヤン・ニコヴィッチと島多璃音の一騎打ちといった様相なのだが、一体どうなるだろうか。

 

 

 

 

 

さて、ファイナルの実際の結果は以下のようになった。

 

 

【ファイナル結果】

 

1位: エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

2位: アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

3位: 天野 薫 AMANO Kaoru (日本 2013年生まれ)

4位: ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

5位: 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

6位: ヤン・ニコヴィッチ Jan NIKOVICH (クロアチア 2001年生まれ)

 

審査委員奨励賞: ペ・ジヌ BAE Jinwoo (韓国 2001年生まれ)

 

聴衆賞: エリザヴェータ・ウクラインスカヤ(6月20日)、アレクサンドル・クリチコ(6月21日)、天野 薫(6月22日)

 

 

 

 

 

以上である。

前回同様(その記事はこちら)、むしろ逆から並べた方が近かったという結果であり、お恥ずかしい限り。

しっかりと丁寧にまとめた演奏が高く評価されているか(私は派手目の演奏を好みがちなのかもしれない)。

天野薫は第3位、島多璃音は第5位、ともに優勝はならなかったが、見事な入賞である。

今後のさらなる活躍を楽しみにしたい。

 

 


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宮城県の仙台市で開催されている、第9回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

6月27日は、ファイナルの第2日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第9回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第8回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)が終わって

ピアノ部門 予選 第1~3日

ピアノ部門 セミファイナル 第1日

ピアノ部門 セミファイナル 第2日

ピアノ部門 セミファイナル 第3日

ピアノ部門 ファイナル 第1日

 

 

 

 

 

なお、以下の協奏曲は高関健指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。

 

 

 

 

 

第2日 6月27日(金)

 

 

29 ヤン・ニコヴィッチ Jan NIKOVICH (クロアチア 2001年生まれ)

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ニ短調 K466

 

ピアノはスタインウェイ。

第1日のユリアン・ガストの軽快な本場の同曲演奏とはまた違った、強靱かつ情緒的なスラヴ風のモーツァルト。

第2楽章の歌が美しく、ペダルを使わない中間部も何だか新鮮。

即興的な装飾の入れ方も面白い。

どちらのモーツァルトのほうが良いとは一概に言えないが、ミスが少ないのはニコヴィッチのほうか(それでもミスはあるが)。

 

 

01 天野 薫 AMANO Kaoru (日本 2013年生まれ)

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ハ長調 K467

 

ピアノはスタインウェイ。

第1日のアレクサンドル・クリチコの明るくハキハキした同曲演奏とはまた違った、憂いを含んだたおやかなモーツァルト。

一見機械的なパッセージにも逐一表情を吹き込み、しっとりとした歌にしている。

華やかなクリチコと流麗な天野薫、どちらのモーツァルトが良いとも言いがたいが、第1楽章の副主題部で暗譜が飛んでしまったのが痛いところで、総合的にはクリチコにわずかに軍配が上がるか。

 

 

20 アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

 

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 op.30

 

ピアノはヤマハ。

やっぱりお国ものは強く、第1楽章カデンツァといい終楽章コーダといい、こういう強靱で輝きのある音は他国の人にはなかなか出せない。

最高度のテクニシャンというわけではないのだが、仕上げは丁寧で、終楽章の同音連打などもペダルでごまかさずしっかり弾き分けており、この曲を弾くに不足はない。

私のイメージするこの曲にしてはロマンティシズムが足りないきらいはあるが、そのあたりは好みの問題か。

 

 

10 ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

 

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 op.30

 

ピアノはヤマハ。

先ほどのクリチコと曲が重なり引き立て役になってしまった、と当初は思ったが、聴き進めていくと本場ロシアとはまた違った独自の味があるのは確か。

スラヴ風のモーツァルトが良かったのと同様に、ドイツ風のラフマニノフもなかなか悪くない。

第2~第3楽章移行部の上行アルペッジョが軽快なのも新鮮。

全体にミスはあるものの、意外によく弾けているところも多い。

 

 

 

 

 

そんなわけで、ファイナル第1、2日の6人の演奏を気に入った順に並べると

 

36 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

20 アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

01 天野 薫 AMANO Kaoru (日本 2013年生まれ)

29 ヤン・ニコヴィッチ Jan NIKOVICH (クロアチア 2001年生まれ)

10 ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

42 エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

 

といったところか。

アレクサンドル・クリチコが優勝する可能性が高いかもしれないが、私は島多璃音のリストのヴィルトゥオーゾ風ロマンティシズムが気に入ったので、このように並べた。

そして第3日には天野薫とヤン・ニコヴィッチの大コンチェルトが待っており、彼らが優勝争いに食い込んで、4人による熾烈な混戦が繰り広げられるのではないかと予想しているが、どうだろうか。

 

 

 

 

 

次回(6月28日)はファイナルの第3日。

ついにファイナルの最終日である。

 

 


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宮城県の仙台市で開催されている、第9回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

6月26日は、ファイナルの第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第9回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第8回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)が終わって

ピアノ部門 予選 第1~3日

ピアノ部門 セミファイナル 第1日

ピアノ部門 セミファイナル 第2日

ピアノ部門 セミファイナル 第3日

 

 

 

 

 

なお、以下の協奏曲は高関健指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。

 

 

 

 

 

第1日 6月26日(木)

 

 

20 アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ハ長調 K467

 

ピアノはヤマハ。

セミファイナル同様、分厚い音によるモーツァルトで、オーケストラに埋もれずしっかり聴こえる。

分厚いといっても、ペダルが薄めにしてある分、音は歯切れよくて重くなりすぎず、ちゃんとモーツァルトになっている。

高評価を受けそう。

 

 

10 ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 ニ短調 K466

 

ピアノはヤマハ。

こちらもセミファイナル同様、本場の感性というべきか、独墺系の典雅な音色や様式がモーツァルトにふさわしい。

ただ、技巧面では弱さがあり、特に終楽章ではミスやズレがどうしても目立つ。

 

 

36 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

 

リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S124

 

ピアノはスタインウェイ。

冒頭からリストにふさわしい、充実した強音が鳴っている。

明るくロマンティックな音楽性も、この曲にぴったり。

全体的にアグレッシブというよりはやや控えめなテンポ設定だが、そのぶん目立った綻びなくまとまっており、またここぞというところの加速もちゃんとあって(第1楽章のpoco a poco stringendoの両手アルペッジョや終楽章コーダなど)、ヴィルトゥオーゾらしいツボを押さえている。

ミスもないではないが、これだけ弾ければ大したもの。

 

 

42 エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

 

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23

 

ピアノはカワイ。

ロシアらしい美音が曲にふさわしく、さすがはお国もの。

先ほどの島多璃音に比べるとパワーは少し弱く、ややモーツァルト風の趣のあるチャイコフスキーだが、これはこれで悪くない(終楽章のエピソード主題直前の繰り返す音階上行音型など、モーツァルトらしい軽やかな装いを見せる)。

 

 

 

 

 

そんなわけで、ファイナル第1日の4人の演奏を気に入った順に並べると

 

36 島多 璃音 SHIMATA Riito (日本 2001年生まれ)

20 アレクサンドル・クリチコ Aleksandr KLIUCHKO (ロシア 2000年生まれ)

42 エリザヴェータ・ウクラインスカヤ Elizaveta UKRAINSKAIA (ロシア 1996年生まれ)

10 ユリアン・ガスト Julian GAST (ドイツ 1999年生まれ)

 

といったところか。

まだ初日なので何とも言えないが、島多璃音は優勝圏内の演奏だったのではないだろうか。

 

 

 

 

 

次回(6月27日)はファイナルの第2日。

 

 


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