大阪フィルハーモニー交響楽団
第558回定期演奏会
【日時】
2022年5月30日(月) 開演 19:00
【会場】
フェスティバルホール (大阪)
【演奏】
指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:北村朋幹 *
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:須山暢大)
【プログラム】
ハイドン:交響曲 第104番 ニ長調 Hob.I-104 「ロンドン」
ラヴェル:組曲「クープランの墓」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」 (1911年版) *
大フィルの定期演奏会を聴きに行った。
指揮は、大御所シャルル・デュトワ。
彼の実演を聴くのはこれで2回目(1回目はこちら)。
最初の曲は、ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」。
この曲で私の好きな録音は
●フルトヴェングラー指揮 テアトロ・コロン管 1950年4月14日ブエノスアイレスライヴ盤(CD)
●カラヤン指揮 ウィーン・フィル 1959年3月27、28日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1982年1月4日、2月16日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
あたりである。
また、これらにも増して、カンブルラン&京響の実演が忘れがたい(その記事はこちら)。
そして、今回のデュトワ&大フィルの演奏。
前回デュトワを聴いたときにも感じたことだが、彼はシモーネ・ヤング(その記事はこちら)やヤクブ・フルシャ(その記事はこちら)と同様、聴き慣れた大フィルを一振りでいつもと違う極上の音に変えてしまう、稀有な才能の持ち主である。
デュトワが振ると、いつもの大フィルがパリ管弦楽団に変身する。
特に弦楽器が、実に華やかでカラフルな、フランスの音になるのである。
デュトワの色彩感あふれるハイドンと、カンブルランの透明感あふれるハイドン、甲乙つけがたい。
ハイドン最後の交響曲ということで、晩年の透明感を実現しえた後者のほうに私は軍配を上げたいけれど、演奏の質としては並ぶものだと感じた。
なお、終楽章終盤に再現する副主題を彩る、田中玲奈の吹くフルートの上行音階風オブリガートが、大変に美しく印象に残った。
次の曲は、ラヴェルの「クープランの墓」(オーケストラ版)。
この曲は、私にはこれぞといった好きな録音が思い当たらない(ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィル盤など比較的好きだが)。
ピアノによる原曲のほうが好き、というのも一因かもしれない。
そのためか、今回のデュトワ&大フィルの演奏を聴いて、前回の「ダフニスとクロエ」同様にラヴェルらしい精緻な表現は彼にはあまり向かないとは思いつつも、これほど彩り豊かな「クープランの墓」は聴いたことがないとも感じた。
総合的には、これまでに聴いた最上の同曲演奏だったと言っていいかもしれない。
最後の曲は、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」。
この曲で私の好きな録音は
●ブーレーズ指揮 ニューヨーク・フィル 1971年5月セッション盤(Apple Music/CD)
あたりである。
また、実演ではカンブルラン&洗足学園音楽大学管弦楽団による圧倒的な名演が印象深い(その記事はこちら)。
「ペトルーシュカ」は大好きな曲の一つで、以前にも記事を書いたけれど(その記事はこちらなど)、複雑に絡み合うきめ細かな仕掛けが縦横無尽に組まれた、大変な傑作である。
だからこそ、曲全体をしっかり透明化して、一つ一つの仕掛けをくっきりと鳴らし明らかにしていく、そんな演奏でなければ、この傑作のもつ魅力、光の散乱のごときめくるめく眩い世界を十分に表現できない。
その意味では、今回のデュトワ&大フィルの演奏からは、上述のブーレーズやカンブルランほどの感動を味わうことはできなかった。
しかし、複雑な声部の絡み合いをクリアに鳴らせなくても、デュトワの音には明るい輝きがあるため、曲の色彩感はかなりのところまで表現できていた。
少なくとも、ラトル&ベルリン・フィルの同曲演奏のような暗めで筋肉質な音(その記事はこちら)よりは、この曲のイメージに近かった。
これまでに聴いた「ペトルーシュカ」の実演としては、上記カンブルランに次ぐ2番目の出来だと思う。
なお、ピアノパートを北村朋幹が担当したのも、なかなか贅沢なことだろう。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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