ホリプロステージ 「奇跡の人」
【日時】
2022年5月28日(土) 開演 17:30
【会場】
東京芸術劇場プレイハウス
【プログラム】
「奇跡の人」
【あらすじ】
アラバマのケラー家。アーサー・ケラー大尉(池田成志)とその妻ケイト(村川絵梨)がベビー・ベッドを心配そうに覗き込んでいる。1歳半の娘ヘレン・ケラー(平 祐奈)が熱を出したのだ。やっと熱が下がり安心したのも束の間、ヘレンは音にも光にも全く反応しなくなっていた……。
それから5年。それ以降、ヘレンは見えない、聞こえない、しゃべれない世界を生きている。そして、それゆえ甘やかされて育てられたヘレンは、わがまま放題。まるで暴君のように振る舞うヘレンを、家族はどうすることもできない。そんな折、ボストン・パーキンス盲学校の生徒アニー・サリヴァン(高畑充希)の元に、ヘレンの家庭教師の話が舞い込んでくる。誰もがお手上げの仕事ではあったが、孤独で貧しい環境を20才まで生きてきたアニーは、自立という人生の目標を達成するため、初めて得た仕事に果敢に挑戦しようとする。
はるばる汽車を乗り継いでケラー家にたどり着いたアニー。アーサー、そしてヘレンの義兄ジェイムズ(井上祐貴)は、余りにも若い家庭教師に疑念を抱くが、ケイトだけはアニーに望みを掛ける。そして、アニーとヘレンの初対面の時。ヘレンはアニーに近づき、その全身を手で探る。それはふたりの闘いのはじまりだった……
【スタッフ】
作:ウィリアム・ギブソン
翻訳:常田景子
演出:森新太郎
美術:二村周作
照明:小笠原純 佐々木真喜子
音響:藤田赤目
衣裳:緒方規矩子
ヘアメイク:鎌田直樹
アクション:渥美博
演出助手:坂本聖子
舞台監督:髙橋大輔
【キャスト】
アニー・サリヴァン:高畑充希
ヘレン・ケラー:平祐奈
ケイト・ケラー:村川絵梨
ジェイムズ・ケラー:井上祐貴
ヴァイニー:山野海
アナグノス/召使い:森山大輔
医師/ハウ博士:佐藤誓
エヴ伯母:増子倭文江
アーサー・ケラー:池田成志
倉澤雅美、中野 歩、秋山みり、小林佑玖・荒井天吾(Wキャスト)、鈴木結和・石塚月雪(Wキャスト)
古賀ありさ(スウィング)
「奇跡の人」の舞台を観に行った。
高畑充希が出演する舞台を観るのはこれで3回目。
ストレートプレイは、私は観た経験がほとんどなく、新鮮だった。
オペラやミュージカルと違って、感情の高ぶりを歌で表現することなく、あくまで台詞のままで叫ぶため、「奇跡の人」という古典的な演目であることもあってか、自然というよりは大仰に感じる面もあった。
筋書きも、ちょっとうまくいきすぎのように感じてしまうところもあったり(実在の人物だがエピソード自体は創作も多いよう)。
躾についてなど、少し時代を感じさせるところもあったり。
しかし、それでもさすが古典として演じ続けられるだけの普遍性ももつ作品だと感じた。
親が子供を甘やかすことが、そんなにいけないことなのだろうかともつい思ってしまうが、世界は甘くないこと、親はいつまでも一緒にはいられないこと、これはいつの時代も変わらない。
そして、私もいつの頃からか強く感じていることだが、“言葉は世界の窓”だということ。
子供の頃から辛酸をなめてきたサリヴァン先生だからこそ、20歳にしてすでに、独り立ちの大事さ、考える大事さ、知る大事さ、そしてそのための言葉の大事さを知り尽くしていたのだろう。
かつて弟を助けることができず、自分だけ助かった罪悪感に苛まれ続けてきたサリヴァン先生が、その贖罪の対象をヘレンに見出した、という流れが分かりやすい演出になっていたように思う。
物語の最後、ずっと反抗的だったヘレンがついに言葉を知り、笑顔でサリヴァン先生に感謝のキスをするシーン。
言葉を知っただけですぐにこうはなるまい、あざとい筋書きだ、などと思いながらも、肩を震わせるサリヴァン先生を見ていると、彼女の労苦が報われた気がして感動してしまうのもまた確かなのだった。
演技については、私にはよくわからないけれど、主演の高畑充希にはこれまでの舞台ともまた違った、貫禄のようなものを感じた。
役柄の性格によるところもあるかもしれないが、座長としての経験をたくさん積んできたというところもあるのかもしれない。
ヘレン役の平祐奈も、今回が初舞台とは思えない堂々たる演技ぶりだったし、父役、母役、兄役の人たちもみな熱演だった。
また、高畑充希には短いけれど歌のシーンもあって、とてもきれいな澄んだ歌声だった。
高畑充希が舞台俳優を志すきっかけになったという、この作品(その記事はこちら)。
ヘレンを2シーズン演じ、サリヴァン先生を演じるのが今回で2シーズン目という、彼女のライフワークのような作品だが、相当な体力が必要なため、今シーズンで演じ収めになるかもしれないとのこと。
観ることが叶ってよかったと思う。
(画像はこちらのページからお借りしました)
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