大阪フィルハーモニー交響楽団
第528回定期演奏会
【日時】
2019年5月23日(木) 開演 19:00 (開場 18:00)
【会場】
フェスティバルホール (大阪)
【演奏】
指揮:シャルル・デュトワ
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭) *
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:崔文洙)
【プログラム】
ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」 作品9
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」 第2組曲 *
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14
大フィルの定期演奏会を聴きに行った。
指揮は、巨匠シャルル・デュトワ。
大フィル初登場である(ちなみに彼が関西のオーケストラを振るのもこれが初めてとのこと)。
私が彼の指揮を生で聴くのも、今回が初めて。
最初の曲は、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」。
この曲で私の好きな録音は、
●ピエルネ指揮コンセール・コロンヌ管 1930年頃セッション盤(CD)
●ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィル 1972年セッション盤(Apple Music/CD)
●カンブルラン指揮SWR響 2002年1月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●飯森範親 指揮 東響 2007年5月17-19日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
今回のデュトワ&大フィルの演奏は、これらに匹敵する名演だった。
冒頭からして、何とも彩り鮮やかな音。
いつもの大フィルとは、別の楽団のようである。
少し大げさに言うと、白黒写真からカラー写真に変わったかのような鮮やかさだった。
上記の4盤でいうと、飯森範親盤にやや近いか。
デュトワがモントリオール響を振った録音を聴いても、音質のせいかここまでの色彩感は伝わってきにくい(あるいは彼自身が録音当時よりも進化したのかもしれないが)。
生で聴くことで、またいつも聴き慣れている大フィルで聴くことで、彼の才能が本物であることがよく分かった。
次の曲は、ラヴェルの最高傑作「ダフニスとクロエ」から、第2組曲。
この曲では、私は
●ネゼ=セガン指揮ロッテルダム・フィル 2008年セッション盤(NML/Apple Music/CD) ※第2組曲のみ
●ネゼ=セガン指揮ロッテルダム・フィル 2012年6月セッション盤(NML/Apple Music/CD) ※全曲版から
というあまりにも圧倒的な名盤を聴き慣れてしまっているため、さすがのデュトワの演奏もそこまでの感銘は得られなかった。
まるで繊細なガラス細工のようなラヴェルの筆致を、ことごとく細やかに表現しつくすネゼ=セガン。
それと比べてしまうと、デュトワはやや大味か。
それでも、やはり華のある演奏ではあった。
なお、第2曲「無言劇」での長大なフルート・ソロを担当したのは野津臣貴博で、もちろん良かったのだけれど、ここはできれば田中玲奈の演奏で聴いてみたかった(彼女はこの曲ではアルトフルートの担当だった。なお、次の幻想交響曲では彼女は第1フルート担当であり、期待通り大変素晴らしかった)。
最後の曲は、ベルリオーズの幻想交響曲。
この曲の録音では、私は
●ネゼ=セガン指揮ロッテルダム・フィル 2010年3月セッション録音(NML/Apple Music/CD)
が最も好きで、他には
●モントゥー指揮パリ響 1930年セッション盤(CD)
●フルシャ指揮 都響 2012年12月20日東京ライヴ盤(NML/Apple Music/CD)
●アバド指揮ベルリン・フィル 2013年5月19日ベルリンライヴ(動画)
あたりも捨てがたい。
今回のデュトワの演奏は、これらに引けを取らない名演だった。
最初の「ローマの謝肉祭」同様、まるで油彩画のように色彩豊かである。
より具体的に言うと、音色が明るく、抑揚の幅が大きくロマン的で、それでいてコテコテにならず、センスの感じられる(「エスプリ」と言ってもいいかもしれない)演奏となっている。
フランス風ロマンにあふれた第1、2、3楽章といい、派手で強烈な色彩を持つ第4、5楽章といい、デュトワの演奏はフランス・ロマン主義音楽の開始を高らかに謳ったこの曲にふさわしい。
繊細なネゼ=セガン盤とはまた別の良さがあった。
やはりデュトワには、ベルリオーズのようなパッとした華やかな曲がよく似合う。
彼のおそらく最も得意とするレパートリーで彼の実演に初めて接することができたのは、幸運だった。
終演後、近くの席の人が「金色のフルートのお姉さんがすごく良かった」と言っているのが聞こえた。
私は嬉しくなって、「そうですよね!」と心の中で強く同意したのだった。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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