2018年リーズ国際ピアノコンクール セミファイナル 第3日 および結果発表 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イギリスのリーズで開催されている、2018年リーズ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

9月11日は、セミファイナルの第3日(最終日)。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、2018年リーズコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選 まもなく開始

2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選通過者発表

リーズコンクールの課題曲

2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選動画公開

2018年リーズ国際ピアノコンクール 2次予選の曲目発表

2次予選 第1日

2次予選 第2日

2次予選 第3日

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

 

 

Tamila Salimdjanova (age: 26 Uzbekistan)

 

Debussy – Estampes

H. Lachenmann – Five Variations on a theme of Franz Schubert

Chopin – Ballade Op. 52 No.1 in G minor

Rachmaninov – Cello Sonata in G minor Op.19

 

素朴な味わいはあるし、テクニックもそれなりにある。

ただ、細部まで丹念に音楽を作りこむというよりは、やや勢い任せなところがある。

テンポも、各所で少しずつ自由に変わり、あまり一定しない。

ラプソディックな良さがあるといえばそうかもしれないが、それなら次のEvelyne Berezovskyのようにとことん情熱的にやってほしいところ。

室内楽もまずまずか。

 

 

Evelyne Berezovsky (age: 27  United Kingdom)

 

R.Strauss – Piece No.1 from Five Piano Pieces Op.3

Beethoven – Sonata No.6 in F major Op.10 No.2

Chopin – Fantaisie in F minor Op.49

Ligeti – Two Études: No.5 Arc-en-ciel; No. 13 L’escalier du diable

Beethoven – Violin Sonata No.7 in C minor Op.30 No.2

 

情熱的で自由奔放な演奏。

アルゲリッチ風のセンスがあり、芸術家肌といった印象を受ける。

リゲティのような現代曲でさえ、独特のロマンティックな雰囲気を醸し出している。

没個性的になりがちな室内楽でも、しっかりと個性の刻印された演奏となっている。

ただ、ミスがちょこちょこあって、弾き直している箇所さえある。

こういった点がコンクールにおいてはどう評価されるか。

 

 

Eric Lu (age: 20  USA)

 

H. Lachenmann – Five Variations on a theme of Franz Schubert

Chopin – Sonata No.2 in B flat minor Op.35

Dvořák – Piano Quintet in A major Op.81

 

濁ることのない美しい音に、安定したムラのない打鍵。

彼ならではの歌心も健在で、完成度もきわめて高い。

ただ、欲を言うと、安定しすぎて単調になっている面もある。

ソナタ第2番は、ショパンのソナタの中でも不安定で幻想曲風な、新たな領域にチャレンジした曲である。

こうまで安定してリリカルに弾くのでなく、もっと激情的な焦燥感とその先の限りない憧憬とをしっかり対比させた、陰鬱でデモーニッシュな要素が感じられると良かった。

 

 

Yuchong Wu (age: 22  China)

 

Kurtág – Selection from Játékok

Mussorgsky – Pictures from an Exhibition

Dvořák – Piano Quintet in A major Op.81

 

テンポを揺らしたり、細部にニュアンスを込めたりということをあまりしない彼には、クルタークのような現代曲は割と合っている。

ムソルグスキーも、力強いけれどいわゆる爆演というよりはすっきりめの安定した演奏となっている。

室内楽も悪くないし、全体的にあまり穴がない。

ただ、安全運転的な演奏であることは否めず、特別に洗練された技巧だとか、耳を惹かれる雄弁な表現力のような、聴き手を強く魅了する要素にはやや乏しいか。

 

 

そんなわけで、第3日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは

 

Evelyne Berezovsky (age: 27  United Kingdom)

Eric Lu (age: 20  USA)

 

あたりである。

ただし、Evelyne Berezovskyは弾き直しもあったのでコンクール的に難があるとすると、代わりにYuchong Wuでも良いと思う。

 

 

第1~3日を併せて、ファイナルに進める人数である5人を選ぶとすると

 

第1日

なし

 

第2日

Mario Häring (age: 28  Germany)

Anna Geniushene (age: 27  Russia)

Siqian Li (age: 25  China)

 

第3日

Evelyne Berezovsky (age: 27  United Kingdom)

Eric Lu (age: 20  USA)

 

あたりになる。

 

 

さて、セミファイナルの実際の結果は下記のようになった。

 

【ファイナル進出者】

 

第1日

Xinyuan Wang (age: 23  China)

 

第2日

Mario Häring (age: 28  Germany) ○

Aljoša Jurinić (age: 29  Croatia)

Anna Geniushene (age: 27  Russia) ○

 

第3日

Eric Lu (age: 20  USA) ○

 

 

なお、○をつけたのは私がファイナルに残ってほしかった5人の中の人である。

5人中3人。

今回も、2次予選ほどではないにせよ、私にとっては割と意外な結果だった。

まぁ、私は生で聴いたわけではないし、好みの問題もあるし、こんなものかもしれない。

 

 

ファイナルは、9月14、15日。

曲目もけっこうばらけており(審査員が曲を指定するからだが)、楽しみである。

 

 


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